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高慢女上司の災難
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彼女の人間性に対する嫌悪感が変わったわけではありませんが、
素直に礼を言われたことと、本当に彼女が苦しみ悩んで
警察に行くことも覚悟しているのを感じて、
昨日の朝、哀れに感じた気持ちが僕によみがえってきていました。


「わかりました。 忘れましょう。 
それに、誰にも言わないと約束します。」


言葉ではなく本当にそう思いました。
これで終わりにしよう、これは悪い夢だ。


「ありがとう」
そう言いながらリーダーはまだ何か言いたげにしています。


「それから・・・・・、あの画像、
削除してくれないかな」


「Mからもらったでしょ?」


ああ、そのことか。
「わかりました、削除しときますよ」


「今持ってる?」


「ええまあ、受信しただけなんで
携帯にはいってますけど」


「今ここで消してくれないかなあ・・」
ことここに至っても交渉ごとの押しの強さというか、
あつかましさは健在です。


「いいですよ」
彼女の厚かましさというか、そういうのに、
ちょっと意地悪な気持ちになったこともあり、
画像を彼女に見せながらいいました。


「それにしても、すごい格好撮らせましたねえ、
これ消せばいいんですよね」


さすがに視線をはずすようにしながら頷きます。
画像を消去しました。
まあこんなことは何でもありません、
すでにパソコンにコピー済みです。


ちょっと考えればわかりそうなものですが、
リーダーは受信したまんまという僕の言葉を間に受けたようでした。
やっと少しだけ安心したような表情になりました。


また黙々とした会食が続きました。
気まずさもあって黙々と酒を煽っているので、
さすがに少し酔いもまわってきそうになり、
そろそろ退散するかと考えていたころ。
リーダーのほうも最後の話題というような
感じで話しかけてきました。


「あのさ、もうあんなところ見られちゃってるし、
本当のところ聞きたいんだけど」


「嫌われてるのはわかってるんだけどさ」


「私って、そんなに魅力ないのかな?」


!!! 
えっ! なんだって・・・
俺の事を口説いて・イ・ル・ノ・カ !!


まさかね・・・


「別にそんなことないですけど・・・」
何と答えていいやら口ごもる僕


「でも、魅力ないんだよね。わかってる。 だって昨日も・・」


「本当に感謝してるけど・・・」


「あの状況で手をだされなかったのは、
ある意味、感謝してるのと同時に屈辱的っていうか・・・」



はあ?
やっちまわれた方がよかったって言うのかい?
そんな言葉は僕には口に出せません。
「昨日のは、魅力があるとか、ないとかそういうんではなくて・・・」


「でも私には、なんていうかそういう気持ちになれないっていうことでしょ?」


「そういうふうに言ってたよね、
なんていうか、・・・たたないとか・・」


会社ではなんともない風を装っていましたが、
あんな姿を見られているという気持ちが僕に対する、
恋愛感情というか、そんなようなものを
彼女の中で育んだとでもいうのでしょうか?


どんな女でも女なんてやられてしまえば・・・
などと下衆なことが言われますが、
リーダーのように強気な女性でも、やられてはいなくても、
あんな姿を見られては、その男に対して・・・
というようなことなのでしょうか。


「まあ、そういう風に言われれば、
そういうことになるかなあ」


なんと答えていいのか僕も
とまどいながらあいまいに答えました。


「私の体じゃあ、○○君にはなんの
価値もないってことだよね」
言葉の端になんだか言外の意味が感じ取れます。


僕もそれほど察しのいい方ではないのですが、
なんとなくリーダーの考えていることが
やっと判ったような気がしました。


要するにリーダーは僕を信用していないのです。


もちろんのこと恋心に近い感情など、
彼女からみれば「能無男である僕」に持つはずもなく。


写メは削除させたし、あとは僕さえ黙っていてくれれば、
会社での彼女の地位は安泰というわけです。


でも、こいつは低能野郎だから、
もしかしたら誰かに吹聴するかもしれない・・・
しょうがない、黙っているなら、
一回やらしてやってもよいか、と言っているのです


口止め料か・・・
同じことをして、Mにあんな目にあわされたばかりだというのに、
まつたく懲りていないというか。
はっきりと判りました。やはりこの女の性根は腐っている。



要するに、いまだに僕のことを見くびって、
いや、見下しているのです。


「あんたみたいなのが、私のような有能でいい女を抱けるのよ、
口止め料としては申し分ないでしょう。」
そういった高慢な態度が言葉の端々から覗えるのです。


なんだか、少しでも可哀想とか感じた
自分がばかばかしくなってきていました。


しかも、Sリーダーは自分のそういう考え方とか
態度が僕にどう思われるかなどということは
まったく気にもしていないのです。
彼女としては歯牙にもかけていない
僕の感情など気にするわけもないのでしょう。


僕にもMの気持ちがやっとわかった気がしました。
何故、人がかわったようにMが暴力的な接し方で
リーダーを犯していたのか・・・
何故、あんな非常識とも思えるような行動にMがでたのか。
セックスさえさせてやれば、言うことをきく、
所詮はその程度の男なんでしょう、あんたは。
そういう彼女の心の声が聞こえるのです、
それがMをつき動かしていたのかもしれません。


こんなことなら助け舟など出さないで
全社員の前に素っ裸で放り出してやったほうが
よっぽどよかったのかもしれないと心底思いました。


彼女が言いなりになるのは弱味を握られているからだけ。
体を投げ出していても、その実プライドはまったく
傷ついてはいなくて、股ぐらに男根を突っ込まれているときでさえも、
やはり心の隅でMを見下していたのです。


そしてMも僕も自分たちが小ばかにされていることをはっきりと感じるのです。
この女の高慢なそのプライドがMや僕をムカムカさせるのです。
なんとしてでも、僕たちを見下している態度を改めさせてやる。
Mは思ったのでしょう、そのためには徹底的に貶めてやるのだと。


僕はコップの酒をリーダーの顔にぶちまけて帰りたい衝動にかられました。
でもヘタレの僕の口から出たのはそれとはまったく違う言葉でした。





「そんなことはありません、
十分価値のある魅力的な体だと思ってますよ」


「あの時は、あんな風な状況で、
そうなるのがどうかと思っただけで、今なら違います」


「なんなら、これから試してみますか?」


ホラ、餌に食いついた。 
所詮はこの程度の男なのよこいつは。
彼女の心の声がはっきりと聞こえました。


「え~、そんなつもりで言ったんじゃないんだけどなあ」


「でも応接室では助けてもらったし、
部長のことも、M君のことも、それから応接室のことも
絶対誰にも言わないって約束してくれるなら、
お礼で今夜だけって約束ならいいかな」


弱味があるのは自分のほうなのに恩着せがましいセリフです。


僕の中でどす黒い決意というか憎悪というものが、
雪ダルマのように膨れていきます。
よし、やってやろうじゃないか。 
Mが砕くことができなかった、お前のそのプライドを、
俺が徹底的に叩き潰して心底から後悔させて、
足許で泣いて詫びをいれさせてやる。


「そうですか、今晩だけですね。
いいですよそれで。じゃあ行きましょうか」


心の内の憎悪はお首にも出さず、
僕は軽い感じで彼女を誘い店をでました。



タクシーにのり新宿5丁目の交差点でおり、
以前から知っているラブホテルへと向かいます。
リーダーも無言で寄り添うようについてきます。


入り口のところでちょっと躊躇するような
素振りをみせましたが軽く肩を押すようにすると
そのまま、すっと入り口へとはいりました。



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