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嫁童貞の自分がビッチと出会って恋をした
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53 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 21:13:03.24 0
帰りの車内。帰り際にかけられた言葉を反芻する。

「・・・また、明日・・・会おうね☆」

そりゃ、会社の人だ。明日も会うに決まってる。
特に意味はない。普通の挨拶。でも意味がないとは考えられない。
明日からどうすりゃいいんだ。
また正月の時のように、モンモンとしだした。
帰って嫁と話していても、どこか落ち着かない。
嫁だってかわいい。気も利くし、いつも笑顔で支えてくれる。
自分にはもったいなくらいの嫁だ。
気持ちの高揚感と罪悪感が交差する。
嫁の笑顔に対して、自分は笑顔で返せていたか不安だった。





54 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 21:19:37.71 0
飯を食って布団に入って寝る。すると、必ずといっていいほど朝は来る。
20代中盤では業務が過密すぎて、会社に行きたくないって気持ちもあった。
毎日のルーティンワーク。こんなんでいいのかって葛藤する時期もあった。

でも今は違う。朝が来れば会社に行ける。かおりさんに会える。会社に行く
ことに対して、これほどモチベーションが上がったのは入社した時以来だった。
足取りが軽い。しかし、どこかソワソワしている。早く行きたいが、
早く言ったところでかおりさんはいない。普段通りの時間に、普段通りの
テンションで、普段通り挨拶しながら出社する。車の中でそう思いながら、
会社の駐車場を後にする。




55 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 21:27:15.83 0
会社の自動ドアを通る。心臓はバクバクと音をたてていた。入口の最も近い
位置に、かおりさんの席がある。これまでなら、別に見なかった。おはよう
ございますと言いながら、タイムカードに打刻する。しかし、その日は違った。
自然と視線が動いた。

かおりさんと目があった。
その顔は、熟れたりんごのように真っ赤だった。
その瞳は、恋する乙女のような輝きと潤いに満ちていた。

『おはようございます。』
「・・・おはよう☆」

お互いがお互いに、言葉を介さなくとも伝わってきた。
自分もかおりさんも、お互いを好きだってことを。






56 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 21:35:41.64 0
かおりさんの連絡先は知っていた。電話番号だけ。
知った理由は、自分の結婚式に出てほしいと電話するため。
自分が結婚式を挙げる時期、かおりさんは諸事情により長期間、
会社を休んでいた。

でも、電話をかけようとは思わない。会社にいるときに、たくさん話をすれば
いいんだと思っていた。社内にある唯一の給湯室。そこに誰が入っていくかは、
かおりさんの席からは丸見えだ。だから、自分がコーヒーでも飲もうと
給湯室に行くとかおりさんが必ずやってきた。そこでする会話なんて、
他愛もないものだった。

昨日、子供がなにしたとか、旦那がこんなこと言ったの酷くないとか、
この服買ってきたんだ〜かわいいでしょ?みたいな、これまでとそんなに
変わらない会話だった。




57 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 21:39:45.66 0
でも、ひとつだけこれまでと変わったところがあった。会話も終わりに差し
掛かると、かおりさんはあの潤んだ瞳でこちらを微笑みながら見てくる。
自分も、かおりさんの顔を微笑みながら見る。数秒ほど見つめあい、最後に
満面の笑みを見せてかおりさんが言う。


「・・・それじゃ、仕事に戻ろっか☆」
『そうっすねwww』

「またね・・・」
『ういっす!』


お決まりの別れの会話。そして現実に戻る。
たったこれだけで、本当に幸せだった。




58 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 21:47:06.59 0
・・・回想

高校はクラス全員男子で、女の子とつながりなんてなかった。
部活と勉強に打ち込み、地元から離れた大学に行った。
地元から離れて、知っている人間なんていなかった。


もさい高校生活と比べて、大学生活は周りにたくさんの女の子がいた。
女性経験などない自分であったが、もともとおしゃべりであったことも
あってサークルなどでもすぐに打ち解けた。
嫁さんとはサークルの同級生で、大学に入ってすぐに付き合った。


紆余曲折を経て、大学卒業後ちょっとしてから嫁さんと結婚した。
その間、いろいろな女の子と遊んだ。でも、遊んだだけでそれ以上の関係に
はならなかった。
見た目は肉食系だったが、周りからは嫁さん(当時は彼女)に飼いならされ
ていると思われていたため、向こうも何も思ってこなかった。

今思えば、何も思ってこなかったと思っていたのは自分だけだったのだが。




59 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 21:55:36.27 0
時はちょっとだけ進む。

2月、繁忙期、くそ忙しい毎日。そんな中、会社の所属する協会活動のイベ
ントがあった。今年はうちの会社の当番であったため、受付や司会、会場
設定等の仕事が山のようにあった。

社長にこの大役を任されたのは、司会がうまい上司、コンピュータ系に詳し
い先輩、何でも屋の自分と、会社でも受付嬢をしている かおりさんだった。
割り振りを社長と上司が決める。受付と会場案内は自分とかおりさんになった。

イベントには、懇親会もある。毎回懇親会の後は、社長や上司はじめ、
偉い人たちはお酒を飲んで、そのまま夜の街へと接待で消えていく。会場も
会社から離れているため、社員も各自の移動手段で解散となる。




60 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:01:48.20 0
懇親会では、参加費用を徴収する。そのため、受付と経理も担当するかおり
さんは会社に戻ってこなくてはいけない。これは、2人きりになるチャンス
かもしれない。本能は理性を凌駕し、良くも悪くも都合のいい方向へと思考
させる。

イベントまでの間、自分は根回しする。できるだけ、みんな直帰するように促す。
平日のど真ん中であるため、みんな簡単に了承する。
あとは、会場に一緒に行く先輩をどうするか。その一点のみだった。
そうこうするうちに、イベント当日を迎える。





61 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:10:04.90 0
イベント当日。
スーツでビシッと決めた自分を、またポ〜っと顔を赤らめてみるかおりさん。
恋する乙女ってのは、やっぱかわいい。

しかし、トラブルが発生する。
上司が「これだけの人数では準備が大変だろうから」と、余計な気を回し
後輩を急きょ一人準備係に追加したのだ。人生はうまくいかない。しかも、
確率論なんて無視して悪いことは重なってゆく。このときは、わからなかった。





62 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:14:27.02 0
会社の1BOXに荷物を積み込み、さあ行きましょうと声をかける。
先輩と後輩は、なぜか後部座席に座った。
必然。助手席には、かおりさんが座った。
近い。とにかく近い。
かおりさんの匂いがする。
なぜにこうも女の人ってのはいい匂いがするものなのか。


お互い落ち着かず、運転席と助手席の2人では会話が続かない。
かおりさんが、後ろの2人に話を振る。でも、あまりにも不自然。
だって、わざわざ後部座席に振り返って話をしているのだから。
しかも、自分とは逆・・・つまり左側を向いて。

普通なら座りながら、あるいは真ん中のシートとシートの間から顔を出して
話をするもんだろうwwwこの人も動揺してるな・・・ちょっと笑ってしまった。




63 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:21:29.69 0
そんなドキマギした車は、イベント会場に到着する。すでに社長たちは
来賓の方とラウンジでコーヒーをすすりながら打ち合わせしていた。

イベントが始まる。
受付なんて、イベントが始まってしまえば荷物の番くらいしかやることはない。
会場の配慮でコーヒーが出された。かおりさんとズズっとすすりながら、
会話をする。本来、写真撮影の係も兼ねていた自分は、急きょ追加された
後輩に全てを任せ受付にいた。かおりさんと会話をいても、考えることが
ただ一つ。いかにして、先輩を帰らせるかだった。




64 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:27:58.77 0
・・・懇親会も終わりに近づく。

『先輩!社長たちをお願いしますよ!あの人ら、次の日会社来ないくらい
 飲むんだからwww』

本音は、とにかくどこでもいいから飲みに消えてくれ、だった。
今考えれば、不自然極まりない。明らかに先輩は排除対象であったし、
自分は全力で排除しようと動いていた。

結局、先輩は折れず会社までかおりさんと3人で帰ることになった。
朝の後輩の急きょの追加、先輩の排除失敗。悪いことってのは、重なるね。
悲劇のヒーローのような気持ちで帰路につく3人。
しかし、かおりさんが突然こう言いだした。

「○○さん(先輩のこと)!今から代行呼んでおけば、すぐに帰れるよ☆」

・・・え?自分はそのかおりさんの策士っぷりに脱帽した。
そうだね、と言い先輩は代行を呼ぶ。
会社に到着し、荷物を降ろしていると代行が来た。
薄情な先輩は、代行来たから帰るわ!と消えていった。
いまさら消えんなよ・・・。

そして気づいた。これで、僕らは2人きりだということに。




65 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:33:28.66 0

荷物を降ろし終える。別にやることなんてない。このまま帰ってもいい。
時刻は21時前だった。しかし、お互いに帰らない。いや、帰れない。
給湯室で何かをしているかおりさん。無駄にテレビを見る自分。

「・・・ビールでも飲もうか?」
『ええと、会社の冷蔵庫にありましたっけ?』

「ちょっと待って・・・う、ないや・・・」
『う〜ん、どうしましょwww』

「おし!ち、近くの居酒屋行こう!ね☆?」

歩いて居酒屋に向かう。酒を飲んでも、やはり会話はあまり弾まない。
しかし、雰囲気は悪くない。今日のイベントの反省や、かおりさんの旅行
の話など。ところどころ話が切れるものの、それでも悪くない。
2人でいれることが、こんなにも居心地がいいとは思わなかった。




66 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:40:03.24 0
1時間くらい飲んだだろうか。
かおりさんが、そろそろ出ようかと言ってきた。
お会計を済ませ、店を出る。

『かおりさん、代行でしょ?呼ばなくていいんすか?』

「うん、そうだけど・・・会社に戻ってから呼ぼうかな☆」

なんで会社に戻ってから呼ぶのかな?自分でフラグを立てておいて、相手の
フラグには全く気付かない。とある小説や漫画に出てくる、右手に類まれなる
力を宿しているツンツン頭の主人公ばりの鈍感力。かおりさんはトイレに
行くといって会社に入る。自分も会社に入ったものの、なぜか電気はつけよう
としなかった。

ここらへんも、本能的に何が起こるか期待して、悟っていたんだろうな、と思う。




67 :名無しさんといつまでも一緒:2013/10/27(日) 22:47:40.52 0
トイレから出てきたかおりさん。なぜか、会社のドアのカギを閉める。

『あ、やっぱそうなりますよね・・・』

人間、期待した通り、予想した通りの展開になりすぎると次の行動が鈍るよ
うだ。


それでも、自分の腕の中に飛び込んできたかおりさんを、優しく抱きしめ、
キスをした。この日も、お互いを求め、気持ちをぶつけた。
汝の欲することをなせ。昔の偉い人はよく言ったもんだ。



>>次のページへ続く


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