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高慢女上司の災難
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リーダーはキャビネットから体を離すと、
最初のようにキャビネットの前にしゃがむようにして
両腕で体をしっかりと巻くようにして小さくなっていました。


「安心して、本当になにもしないから、
服をだしてあげるから、そこをどいてくれる?」


「うっ、うっ、うっ、」 


そのとき、今まで気丈にふるまっていたリーダーが泣き崩れました。
キャビネットの引き出しの前に全裸で座ったまま
泣いているのでキャビネットを開けて服を出すこともできません。


僕が近づくと、ハッと体を堅くしたのがわかりました。
リーダーは僕の意図を誤解したようでした。
さっきまで以上に腕に力をいれて膝をかかえていて、
こちらを向こうともしません。
僕は無理矢理引き離すようにして
彼女の右手首をもって、体から引き離しました。


「お願い、やめて」
リーダーが泣きじゃくるような鼻声で頼みます。


「これ、鍵だから、自分で開けてね、それじゃ俺は行くから」


彼女の右手をこじあけるようにしてキャビネット
の鍵をねじこむように握らせると、僕も応接室をでました。
廊下を見回しましたが、ほかに人影はありません。


僕にとっては何時間にも思える出来事でしたが、
気がついてみると、さきほどからまだ30分ほどしかたっていません。
Mの姿はオフィスにも見当たりませんでした。


僕は自分のデスクに戻りました。
オフィスはその時間でもまだ閑散としています。
時計が9時をまわるころになると一人、二人と人数が増えてきます。


Sリーダーも僕のあと20分ほどで
オフィスへと何事もなかったかのようにもどってきました。
オフィスの入り口のあたりで一瞬何かを恐れるかのように
フロアを見回すように視線を泳がせましたが、
そのあとは昨日までと全く変わらぬ、颯爽としたスーツ姿に、
細いメガネをかけた理知的な顔立ちで仕事へと没入していきました。


僕のほうには一日中まったく視線を向けず、
ひとつの仕事の依頼もしませんでした。
毎日が戦場のような、この会社の忙しさのなかでは、
そのようなよそよそしさに気づく者がいようはずもなく、
早鐘が鳴るような僕の胸のうちとは別に、
まったく何事もなかったかのように
オフィスでの一日が過ぎていきました。



僕は頭の中で一日中、グルグルと無駄な
思考をうずまかせていました。
これからどうしたらいいんだろう?
また今までと同じように、何事もなかったように
毎日が続いていくんだろうか?
リーダーの僕への態度は変わるんだろうか? 
それはそれで周りの目とか気になって困るし・・
リーダーは会社やめるんだろうか?
僕にやめて欲しいと思っているかな?


・ ・・そして一番には、リーダーの白い裸体を
脳裏に焼き付けるように、何度となく思い返していました。


デスクに座ってそれらしくはしているものの、
仕事はまったく何も手につきませんし、
実際になにもしていませんでした。
とにかく今日は早く帰ろう。 
そう思っていました。


情けない話ですが、 帰れば、応接室での出来事を思い返して
リーダーの肢体をオカズに自慰にふけるであろうことも自分でわかっていました。


やっぱり、Mのいうとおり格好つけずに、やっておくんだったかな・・・
もしかしたら、やらなかったことを一生後悔するのかな。


終業時間が近づいてきていました。
もちろん普段なら、それから4時間以上は残業で残るところです、
仕事も実際には溜まっていました。
それでも今日は時間がきたらさっさと帰ろうと
僕は決めていました。
さすがに今日ばかりは、リーダーも残業しないで
帰ることを咎めるような元気はないだろうと思いました。


「○○君、ちょっと、これを頼みたいんだけど」
帰り支度を始めようとしていた私にリーダーが、
この日はじめて声をかけました。


まさかとは思いましたが、朝あんなことがあったのに
残業の依頼でしょうか、少しあきれた気持ちになりながら、
僕はリーダーのデスクの前に立ちました。
無意識のうちに僕の視線は、今はスーツの襟元から
覗く白いシャツに守られたリーダーの胸元にすいつけられています。


僕に向かって眼差しを上げたリーダーも、
その視線の意味を、瞬間に察したようでした。
今は、 まったく素肌が露出してもいない襟元を隠すように、
少し抑えるようにしながら、1枚の書類を私に渡しました。
「別に急ぎではないから、明日でも構わないからやっておいて」


普段ならリーダーがまず口にしない言葉です、
いつもなら「今日中に・・」か「すぐにお願い」
が口癖なのですから。
でも、フロアーの誰も特に気にとめた様子はありません、
まあ他人のことなど気にしている余裕はないというところなのでしょう。


渡された書類は、実際には書類ではなく、ごく短い伝言でした。
「明日の21時、今日の事で話がしたいので××で待っています」


××はたまに社用で使うレストランバーです。
小さな個室がたくさんあるタイプの店で
商談などにも使いやすいので、リーダーがたまに使っている店です。


話っていっても、あんなことの後で何を話せって言うのかと思いながらも、
仕事の依頼ではなかったことに内心ほっとして、その日は帰宅しました。






その夜はとても安らかに眠れる気持ちではありませんでした。
写メのリーダーの写真を見ながら。
キャビネットに突っ伏したリーダーを立ちバックの体位で、
ひたすら犯し続ける様子を頭のなかで繰り返し繰り返し妄想して、
一人寂しく慰めていました。


リーダーは理知的な顔立ちやそこそこのスタイルもあって、
たしかに世の一般的な評価基準からいけば、悪くない女だと思います。
それでも、僕はどうしても彼女を好きになれるとは思えませんでした。


今朝のあんなことがあった後では
可哀想という気持ちもないではありませんが、
それでも彼女の性格や考え方、そういうものを思うと
男女としての好き嫌いという気持ち以前に、
正直、辟易とした気分になってしまうからです。


不思議なものです。
そんな相手が対象であっても、性的な欲望はこんなにも
湧くのだというのは、僕にとっては新しい発見でした。


翌日も平凡な?毎日に戻ったかのような一日でした。
ただ僕の頭のなかだけでは、すぐ数m先に座っている
凛としたスーツ姿のリーダーに、立ちバックの姿勢で股間を曝け出していた
素っ裸のリーダーの姿が重なった映像が
一日中ちらついていて、ジーンと頭の芯がしびれるような感じと、
たえず喉の渇きを感じているような一日でした。
リーダーは20時ころに帰って行きました。


僕は××の店内にはいると店員に
「21時に2名で予約しているSですが」とリーダーの名前をつげました。
案内された狭い個室にはいると、テーブルには幾品か肴がもうだされており、
リーダーは生ビールを飲んでいました。


「悪いわね、喉がかわいたので先にやらしてもらってるわ。 生ビールでいい?」


昨日の今日の気まずい雰囲気を払拭するようにリーダーは、
僕のぶんの生ビールを追加オーダーして席をすすめました。
それでも気まずさはいかんともしようがありません。


狭いテーブルに差し向かいで手が届きそうにも感じられるリーダーを見ながら、
いやおうもなく僕の頭は昨日の彼女の痴態と、
目の前の彼女を重ね合わせて想像してしまっています。
その雰囲気がリーダーにも伝わっているのが、なんとなくわかります。


「まあ今日は私の驕りだから、
遠慮しないで、どんどん食べて飲んでよ」


生ビールから冷酒へと切り替え、追加の肴なども頼みながら、
二人はほとんど無言に近い感じでした。


息苦しい時がどれくらい過ぎたでしようか、
その重苦しい雰囲気をふっきるようにリーダーが話し始めました。


「もちろんわかってると思うけど、
今日は昨日のことを話そうと思って・・・」


「結論から言うけど、忘れて欲しいんだ。 
誰にも口外しないって約束もしてほしいんだけど」


「○○君(私)が私のこと嫌いなのは判ってるけど、
でも忘れるほうがお互いにいいって君も判ると思うし」


彼女の物言いにちょっとムカッとしかけました。
(困るのはお互いじゃなくて、そっちじゃないのか?)


あんな無様な姿を見られているくせに、
よくそんな上から見下ろすような物言いができるもんだ。


「私がバカだったんだよねえ、
Mから聞いたんでしょ、私と部長のこと」


「もう終わってるんだから、気にすることなかったのに、
なんだか会社にいられなくなるような気がして」


「M君にあんなこと・・・」


高圧的な感じの物言いは彼女のいつものクセで、
ついそういう口調になってしまっただけのようでした。
すぐに、今までにない、しおらしげな口調にかわりました。


「M君もずっと連絡してこなかったから、
すっかり終わったと思ってたんだよね、
そしたら昨日、急に呼び出されて・・・」


「まさか君まで出てくるなんて思いもしなかったし」


「でもありがとう、それだけは言いたかったんだ。」


「たぶん、M君も、本当にもう連絡してこないと思うんだよね」


「私も昨日みたいなことは、もう耐えられないから、
もう一度、昨日みたいなことがあるようなら本当に警察に行こうと思ってるし」


「合意だってM君は言ってるかもしれないけど、
あれはやっぱりレイプだよ、私にとってはそう」


「まあ、そうしたら私も終わりだけどね。 
でも、本当にそうしようと思ってる」


ここで、もう一度じっと私の目を
のぞきこむようにして、ダメを押しました。
「だから、君も昨日の事は忘れて」



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