庭の中に入る時に私は、犬小屋が裏寂れている原因を知りました。
幼少の頃、たくさんのワンちゃんたちが居ただけに犬小屋は、
ちょっとした長屋のように庭の一辺を完全に塞ぐように並んでいました。
それは今も変わらなかったのに。
ワンちゃんは、一匹しか居ませんでした。
立った一頭しか居ないことは、驚きでした。
私の記憶では、常に3、4頭のワンちゃんが居たのに、なのに今は、
他の犬小屋は、放置されて等しい感じで汚れたり、
壊れていたりしてました。
家に住人が居ないこともあり、ちょっと、怖くなりました。
だって、最後に残っている一頭が、暑気を嫌ってか犬小屋の中から、
庭に入ってきた不審者である私を窺っているのが、判ったので。
よくよく考えれば、私の知っているワンちゃんが、まだ居るとは限らないし
そのワンちゃんは、犬小屋の奥から、私を見ている感じでした。
犬小屋からして、結構な大型犬だと判りました。
そのワンちゃんが、ゆっくりと立ち上がり、犬小屋から
出てこようとした時には、正直、足が恐怖にすくんで、
動けなかったです。
そのワンちゃんは、黒いジャーマンシェパードだったけど、
ジャーマンシェパードって警察犬などに使われるように
凛々しいと言うか勇ましいと言うか、
こういう場面だとやっぱり怖かったです。
だけど、その子の全身が、犬小屋から見えた時、その大きさに驚き、
成犬なので大きかったし、私も、その当時、大分成長したとは言え、
140になるかどうか、やはり、華奢で30キロに満たないガリガリで
したから。
襲われたらただではすまなかったと思います。
だけど、そのワンちゃんは、私のほうを窺いつつ、
大きな黒い尻尾を振って友好的な雰囲気が見えて、
ホッとしました。
それにそのワンちゃんには、ちゃんと鎖が繋がれているのも判って、
私は、安心しました。
あと記憶の中に昔飼っていたワンちゃんの中にシェパードが居たこと、
そういうことが過ぎって、もしかしたらと思った瞬間でした。
そのワンちゃんが、私に突進してきたんです。もう一瞬でした。
あの一瞬は、恐怖を感じる暇もなかったです。
あっと思った時には、ワンちゃんの突進に気が付いた時には、
私は、その場に倒されていたんだと思います。
何が起きたのか判らなかったです。
視界が真っ暗になって、尻餅ついて地面に座っていました。
こういう時って悲鳴すら上げられないんですよ。
気が付いたら、そんな状態でした。
私は、ワンちゃん跳び付かれて地面に倒されていたんです。
ワンちゃんは、私に抱き着くようにして私の顔を嘗め回していました。
って気が付いた時は、そんな余裕もなかったですけど。
だって大きなワンちゃんの顔が目の前にあって、しかも、
口を大きく開けているんですよ。
まぁ、怖いとか考える暇もなく、ただ、パニックでしたけど
私が、その場でジタバタと暴れるとわんちゃんの方は、
それが楽しいのか、そのまま、私に圧し掛かるようにして
顔を首をと嘗めて来るんですけどね。
私の方も、パニック状態から次第にワンちゃんの嘗め回しがくすぐった
くってさらに転げ回っちゃいましたけど。
傍目には、犬に襲われているように映ったかも知れませんね。
こら!と女の人の声が飛んだのは、まさにそんな時でした。
続いて、ワンちゃんを叱責する声が飛んで、ようやく、
私に圧し掛かっていたワンちゃんが、
嘗めるのを止めて上から退いてくれました。
そして、声の女性が、慌てて、私に駆け寄ってくれました。
大丈夫かいって声を掛けながら、私を起こしてくれて服に付いた泥を払っ
てくれました。
で、私の顔をマジマジと見るおばさん、私もようやく助けてくれた人が、
おばさんだって気が付きました。ってなんか知っているような知らない
ようなおばさんだったんですけど。
○○ちゃんかい?
ってそのおばちゃんは、私の名前を呼びました。
やっぱり、知ってる人だったみたい。
と言うか、お話してみるとお隣に住んでいる人でした。
だから、両親とも顔見知りで当然私の小さい時のことも知っている
ご近所さんだったわけです。