もうその心地好さったらなかったです。
マルスが、この場所にやってきて一休みするのがよく判る気がしましたから。
私もいつの間にか、ハンカチを川の水に濡らして、顔や手を
濡れたハンカチで拭って涼を味わってました。
と不意にマルスが、水を飲むのを止めて私の方を見上げていたんです。
私はどうしたのかなと思って、マルスに問い掛けようとしたその矢先、
マルスが、私に飛び掛るように後ろ足立ちして顔を私の顔に寄せてきて、
私を驚かせたんです。
マルスは、多分、濡らしたハンカチに興味がそそられたのかと思います。
そのまま、私は、マルスに覆い被せるようにされて、バランスを崩し、
川の中に尻餅を着いてしまいました。
火照った身体に川の水は冷たくて心地好いんですが、
お尻が完全に水の中に浸かったのは、さすがに困りものです。
だけど、マルスは、私が困った様子などお構いなしに
顔を寄せて私の顔を嘗め回してくるんです。
どうも、マルスは、舐めるのが好きみたいで、為す術なしでした。
とは言え、服、私は、中学くらいまで服と言うとワンピースか
スカートと言うパンツルックには縁のない人だったのですが、
この日も、白のワンピースでした。
スカートをビショビショにされては、暴れるしかなかったです。
さすがにマルスも、私が本気で怒っているらしいことを感じ取って、
それでも、しばらくしてから、私から離れました。
そして、ようやく、下半身ずぶ濡れ状態で起き上がることができました。
マルスに文句の一つでもと思ったのですが、
マルスの方は、川から上がったところで
申し訳なさそうに伏せて私の方を見上げていました。
その反省っぷりと言うか、マルスには悪気がないんだろうってことも、
理解できたので私も怒る気が失せていました。
私は、怒るのを止めると取るものも取り合えず、川から上がり、
スカートの裾を持って、水を絞りました。
ただ、もうそんなことをしても、水に浸かってしまっていただけに
焼け石に水状態で、効果はなかったです。足に纏わりついて気持ち悪くて。
もうどうしようって感じでした。
けど不思議なんですけど、こういう場合って、すぐに家に帰ろうと思う
よりも、この場でどうやって誤魔化そうかしらって私は考えてしまうん
です。
まぁ濡れ鼠で戻ってどう説明するのかって言うのも、あるんですけど、
なぜか、母子家庭で育った所為か、私は、いい子でいないといけない
手のかかることをしてはいけないって強迫観念が働きます。
恥ずかしいと言う部分もあるんでしょうけど。
真夏だから、濡れてもすぐ乾かせるだろうと言う思惑もあったと思います。
それに人気も感じられなかったし・・・
それで私は、周囲をもう一度見渡し、人気のないのを確認して、
マルスと私だけと言うのを再確認してから、川辺から少し離れた
大きな木の下に移動しました。
マルスを繋いでる紐は、手近な枝に括って、
私は、木陰でワンピースを脱いじゃいました。
今考えると大胆と言うか、その方が恥ずかしいと思うんですが、
当時の私は、恥ずかしかったですが、
その方がマシだと思ったんです。
ワンピースは、木陰の間から日の射す枝に乾して私は、
スリップとパンツだけの格好になりました。
現在もそうですが、当時の私は、胸なんてありませんでしたから、
大体、まだ生理も始まっていないお子様でしたから、
ブラなんて着けていなかったです。
スリップにグンゼだったと思いますが、お子様パンツだけの格好です。
マルスと二人と言う状態とは言え、誰かに見られたらどうするつもりだったんでしょう?
とにかく、人気を感じない山の中と言うのが、大胆にさせていたのかもしれないです。
ちょっと大胆になった私ですが、さすがに少し恥ずかしくなって、
少し距離を取らせていたマルスの紐を解いて、傍に引き寄せました。
マルスの身体も、まだ濡れてましたけど、マルスを抱き寄せると
その温もりと存在感が、伝わってきて緊張感が緩みました。
マルスも、私が抱き締めると私の顔を窺いながら大人しく目を閉じてくれました。
そのまま、しばらく、私も目を閉じて静かに川のせせらぎとか、森の音を
聞いていたのかなぁ。
少しだけウトウトしていたと思います。
じっとしていたことで体温が下がったからなのか、
スリップもパンツも濡れていたからか、
ここにきて肌寒さを少し覚えてきて更にマルスを抱き寄せました。
そうして、マルスの背中に顔を埋めると少し心地好かったですが、
湿った背中は、寒さを増長させたかも。