妻が何か私に話しかけています。
そんなことをぼうっと考えていた私は、妻の言葉が聞き取れません。
「……それで……申し訳ないのですが」
妻がすまなそうな顔付きで私に謝っています。
私と別れたい、男と一緒になりたいと頼んでいるのでしょうか。
私の心臓がビクンと跳ね上がりました。
「何だって? 何が申し訳ないんだ」
「あら、聞いていなかったんですか」
妻が大きな目を丸くします。
「あなたは時々上の空になるんだから……
××(妻の実家の姓です)の父が急に明日から一時帰宅出来ることになったので、
しばらく帰らせていただきたいんです」
「え?」
「母は一人で大丈夫だというのですが、やはり看病でだいぶ疲れているようで……食事やおトイレの世話も大変で……」
妻の父は、しばらく前から入退院を繰り返していました。
正月には帰宅出来るはずが急に容態が悪化し、
年末年始は病院で過ごすことになったのです。
それが、ここ数日でだいぶ回復し、急に帰れることになったようです。
義父は、これが自分の家で過ごせる最後の正月かもしれない(といってももう1月の8日ですが)と気弱になっているようです。
私も義父には随分世話になっており、妻からそう言われると帰るなとは言えません。
また、そう言う事情なら、なおさら今日、修羅場を演じる訳には行かなくなって来ます。
ひょっとして妻は私が何か気づいたことを察知し、義父の病気を理由に先手を打って来たのかも知れません。
そこまで妻が腐ったとは思いたくないのですが、裏切りの証拠を見せつけられた私はそんなふうにも考えてしまいます。
「いいよ、帰っておいで」
「ありがとうございます」
妻はパッと表情を輝かせます。
「いつまで帰るの?」
「勝手を言って申し訳ないのですが……水曜日まで……」
「わかった」
明日は日曜日、明後日(11日)の月曜日は祝日です。
その間ゆっくり今後のことを考える時間は取れます。
私は今後、妻に対してどのように対応するにしても、とにかく妻のことは全部知っておきたいと思いました。
特に先月の温泉旅行。
出発から野外露出プレイまで演じた妻が、旅館でどのような痴態を演じたのか、知らないままではいられないのです。
私は明日と明後日で残りのビデオや写真をすべてチェックするつもりでした。
「今日も留守番をさせたのに、また不自由をさせてすみません」
そんな気遣いを今までは妻の優しさからくるものだと思っていたのですが、今は素直には受け取れません。
愚かな私を腹の底で笑っているのではないかと思ってしまうのです。
私は、いきなり立ち上がり、珈琲を飲み終えた妻の肩に手をかけます。
「どうしたの?」
怪訝そうな表情を向ける妻の唇をいきなりふさぎます。
かすかにチーズケーキの甘酸っぱい味がします。
「駄目……」
私は妻を立たせると強く抱きすくめ、ソファの上に押し倒します。
「服が皺になっちゃう……」
オレンジ色のブラウスに手をかけ、荒々しく剥ぎとろうとする私の手を妻は両手で抑えます。
「自分で脱ぐわ」
妻は、私の手をやんわりと払いのけてブラウスを脱ぎます。
白いレースに縁取られたコーラルピンクのブラジャーが露わになります。
いかにも高級そうなブラジャーですがそれほど淫らな感じはありません。
(今日は会っていなかったんだろうか……)
私は、ブラのホックを外し、妻を上半身裸にします。
妻の裸身を明るいところで見るのは久しぶりです。
セックスのときも妻は恥ずかしがって、電気をつけさせようとはしません。
あの男に対しては何もかも見せているのに。
私は、妻の身体に浮気の痕跡を探します。
妻の柔肌のどこかにキスマークはないか、男に甘く噛まれた痕はないか……。
「そんなに見ないで……恥ずかしい」
妻は両手で小ぶりの乳房を隠します。
(何が恥ずかしいだ……お前は「淫乱人妻」だろうが……)
「スカートを脱げ」
妻は、私の乱暴な口調に戸惑ったような表情を見せますが、素直にスカートを脱ぎます。
妻のパンティはブラジャーとお揃いのコーラルピンクで、やはり綺麗なレースの縁取りがあります。
私は、それに両手をかけて一気に引き下ろします。
「嫌っ」
いきなり全裸にされた妻は、悲鳴のような声を上げてしゃがみこみます。
「まっすぐ立て」
「あなた……今日はどうしたの? 変だわ」
「言うとおりにするんだ」
妻は少し脅えた表情で私を見ると、言われたとおりに立ち上がります。
しかし、両手でしっかりと前を隠したままです。
「隠すな。ちゃんと見せろ」
「そんな……」
「いうことが聞けないのか」
妻は、しょうがなく手をどけ、両脇に垂らします。
私はいつの間にかビデオの中の男のような命令口調になっています。
私は、妻の正面像を丹念にチェックすると後ろを向かせます。
背中からヒップにかけてのラインは妻の身体の中でもっとも私が好きな箇所です。
思わず見惚れてしまいそうになりますが、当初の目的を思い出し、浮気の痕を探します。
しかし、結局、それらしい痕はどこにもありませんでした。
妻は、不思議そうな顔を私に向けています。
私は心の中の動揺を誤魔化すように妻を抱きすくめると、ソファの上に押し倒しました。
「子供たちが帰ってくるわ……」
「今日は遅くなるはずだろう」
「夕食の支度をしなくちゃ……」
「後でいい」
(この女を抱けるのは今日が最後かもしれない……)
私は先ほど、自分が妻を追求しなかった本当の理由がやっとわかりました。
私が心から愛した女、妻ともう一度セックスがしたかったのです。
修羅場を演じていたら妻を二度と抱くことは出来なかったでしょう。
「ああ……」
うなじから胸元、そして乳首に接吻を注ぐと、妻は早くも切なげな声を上げ始めます。
妻の秘部に手をやると、早くもそこはぐっしょりと潤っていました。
(どうしてこんなに濡れるのが早いんだ)
(今日も男に抱かれていたからじゃないのか)
妻の愛液で濡れた指先で、硬く尖ったクリトリスをゆっくりと愛撫します。
妻の喘ぎ声はますます大きさを増していきます。
「ああ……いいわ……」
(そんな顔を男にも見せていたのか)
(今も男に可愛がられていることを想像して感じているんじゃないのか)
妻と男に対する腹立たしさが私の愛撫を荒々しくさせます。
しかし妻は、そんな私の乱暴さにもかかわらず、
いつもよりも興奮するのが早く、振幅も大きいようなのです。
(男に仕込まれたからか)
そんな言葉が頭の中に浮かびますが、艶っぽさを帯びた妻の動きに、私もすっかり煽られていきます。
私は、妻をソファに横たえると、両手を両腿にあてて思い切り開かせます。
まるで男に剃毛されたときのようなポーズです。
「こんな格好……」
妻は、悲鳴のような声を上げて足を閉じようとします。
私は、そうはさせじとばかりに、いきなり妻の秘苑に口を押し付けました。
むっとするような妻の香り、甘ささえ感じさせる妻の果汁。
急に泣きたくなるような悲しみが込み上げてきました。
少なくとも今この時は、私の中に妻に対する怒りはありませんでした。
妻のその部分をこの目に焼き付けておきたい、この舌で味わっておきたい。
狂おしくなるような思いが私を駆り立てました。
「ああっ、あなたっ」
クリトリスを強く吸い上げられた妻が私の名を呼びます。
まるで私をまだ愛しているかのように。
私は妻を後ろ向きにさせ、ソファに頭を埋めるような姿勢を取らせました。
後背位から妻を犯そうと思ったのです。
突き出された妻のお尻が圧倒的な迫力を感じさせます。
妻は、結合が深くなるためか「痛い」といって後背位を好みません。
妻のお尻が好きな私はたまにはバックで攻めてみたいのですが、いつも逃げられてきました。
しかし今日の妻は、なにか覚悟を決めたように素直にお尻を突き出し、私が侵入するのを待っています。
妻の女陰だけでなく、双臀の狭間に秘められた肛門までが堂々とさらけ出されています。
私は、またビデオの一場面を思い出し、怒りが込み上げてきました。
残酷な気持ちに駆られた私は、指先で妻の愛液をすくい取ると、あらわになった肛門をくすぐるようにします。
「いや……」
思いがけない箇所を攻められた妻は、私の指先を避けるようにヒップを揺さぶります。
これまでも私は妻とのセックスで悪戯心を起こして妻の肛門を攻めたことはありますが、常に拒絶されてきました。
(男の前ではおかしな玩具までくわえ込んだだろう)
妻は、しばらくの間消極的な拒否を示していましたが、やがて諦めたように尻の動きを止めます。
私はゆっくりと指先を妻の肛門に沈めていきます。
「あーん」
妻は、甘えるような声を上げると私の指先をきゅーんと締め上げ、ゆるやかに尻をくねらせました。
そんな淫らがましい妻の姿が腹立たしく、
私は上半身で妻の身体を押さえ付けるようにすると、
片手で肛門を攻めながら空いた方の手で乳房を揺さぶります。
「あっ、ああんっ……」
妻は、いよいよ情感が迫ってきたのか、甘いすすり泣きの声を上げ始めます。
あの7月15日のビデオ以来、妻は男によってずっと肛門の性感を開発されてきたのでしょうか。
私にはずっと隠してきた淫らなものをすっかり引き出されたように、妻は悶え泣いているのです。
「お尻の穴が感じるのか」
妻は黙って首を振ります。
それを見た私が指を一気に第二間接まで突っ込むと、妻は「ああっ」と悲鳴のような声を上げます。
「正直に言わないとここを犯すぞ」
「いや……」
「なら、ちゃんと答えるんだ」
「……感じます」
妻は蚊の鳴くような声で答えます。
「もっと大きな声で、紀美子のお尻の穴が感じますと言ってみろ」
「ああ……ひどい」
「いわないと犯すぞ」
「あ……いいますわ……だからそれは許して」
ついに屈服した妻は「紀美子のお尻の穴が感じます」とはっきりした声で私に告げます。
紀美子は、そんな言葉に自分の情感がかきたてられたのか、
「ああ、熱い、熱いわ」とほんのりピンクに染まった裸身をくねらせます。
私は、男と同じように妻に「ケツの穴」という言葉を吐かせたかったのですが、それは思いとどまります。
そうすると私が既にビデオを観たということが妻に分かってしまうかも知れませんし、
そこまで妻を貶めたくないという気持ちもあったのかも知れません。
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