私は、すっかり硬直したものを妻の中に挿入しました。
深々と貫かれた妻は「ああっ」と声を上げて背中を弓なりにそらします。
まるで妻ではない別の女を犯しているような錯覚に陥った私は、乱暴にピストン運動を始めます。
「あっ、ああっ」
妻のその部分は私をなだめるように優しく包み込み、
私に反撃するようにリズミカルに締め付け、
また、私に甘えるように絡み付いてきます。
「いい、いいっ」
「気持ちいいのか」
「気持ちいいっ」
「どこが気持ちいいんだっ」
「ああっ、オマンコっ、オマンコが気持ちいいっ」
いつもなら妻がこんな反応を示すようになると、征服感に満たされ有頂天になるところです。
しかし今日の私は暗い怒りと深い悲しみで一杯でした。
これでこの女を抱くことはできなくなるのか。
プロの女でも感じることができなかったこの奥深い感触を味わうことはできなくなるのか。
「ああっ、あっ、イキそうっ。イっちゃいそうっ」
妻が切羽詰まった声を上げ始めます。
キューンと締め付けてくる妻に思わず引き込まれそうになった私はいったん抜こうとします。
「いやっ、抜かないでっ」
妻は、そうはさせじとばかり私の下腹部にヒップを押し付けてきます。
「しかし……」
「いいのっ、今日はいいのっ。一緒に、一緒に、紀美子の中にきてっ」
哀願するような妻に応えて、私は改めて妻に深々と押し入ります。
ついに快感の堰を突き破られた妻は全身を硬直させます。
「ああっ、早くっ」
妻の声に引き込まれるように私も絶頂に達します。
身体そのものが妻の中に引き込まれるような圧倒的な快感。
妻が「イクっ」と声を張り上げるのに合わせて、
私も「ああっ」と情けない声を上げていました。
その後、私と妻は激しいセックスの後、一緒に風呂に入りました。
恥ずかしがり屋の妻は明るい場所でのセックスだけでなく、
私と風呂に入ることも嫌がります。
ごくたまに妻と2人で温泉に行った時、家族風呂に入る程度です。
妻は、私の身体を丹念にスポンジで洗いました。
背中を洗っている時にふざけたように乳房を押し付けて来たのが、
一瞬ソープでの女の子の行為を思い出させました。
妻が恥ずかしそうな笑みを浮かべながらペニスを手を使って洗っていた時、
私の中で再び怒りと興奮の交じった感情が湧き上がって来ました。
これも男に仕込まれた行為なのか。
男と2人での温泉旅行で、同じように2人で風呂に入り男のペニスを洗っていたのか。
いや、それは2人の情事の際の習慣になっていたのではないのか。
私は、回復したモノを妻にしゃぶるように命じました。
妻はある程度予想していたのか抗いもせず、
私のモノをアイスキャンディのように嘗め始めました。
妻にフェラチオされるのは初めてではありませんが、
いつもなら少ししゃぶっただけで「もう、おしまい」と恥ずかしそうに口を離すのが常でした。
しかし、その時の妻は私のモノをさも愛しそうに、延々としゃぶり続けるのでした。
先程放出したばかりの私のそれは、たちまち回復していきます。
鈴口を舌先でくすぐるように嘗めたり、
玉袋をくわえ込んで舌の上で転がしたりしていたかと思うと、
いきなり喉に届くほどに深く呑み込み、
まるで口が性器になったように激しく上下させます。
風俗の女顔負けのテクニックに私は耐えられなくなり「出すぞっ」と妻に告げました。
妻は口を離すかと思ったのですが、うん、うんと頷くようにすると口の動きを速めます。
私は2回目とは思えないほどの量を妻の喉奥に注ぎ込んでいました。
その後、2人で夕食を取りました。
妻は料理が得意で、その日は子供が外食するということでしたので、
食卓の上には私の好物ばかりが並びました。
妻とのセックスも最後だが、妻の手料理を味わえるのも恐らく今日が最後だろうと思うと、私は暗澹たる気持ちになりました。
妻は、そんな私の気持ちに気づかぬ風で、今日久しぶりに会った友人たちの近況を明るく話します。
間もなく子供達が帰って来ました。
私は内心の動揺を必死で隠し、子供たちの前では出来る限り普通に振るまいます。
夜、私達は同時にベッドに入りました。
妻は流石に疲れたのか、すぐに「お休みなさい」といって目を閉じます。
私の中に妻を滅茶滅茶にしてやりたいという暴力的な衝動が生まれて来ました。
私はベッドを出ると、パジャマを脱ぎ捨てて妻のベッドには入り込みます。
妻は「えっ」というような驚いた表情をしましたが、
私に抱きすくめられると無言で抱き返して来ました。
温泉旅行で8回イったという妻。
私は、妻を一晩中嬲り抜いた男に挑戦するような気持ちで責め上げました。
しかし舌や指先を使って2回イカせたところで私は我慢できなくなり、妻の中に押し入りました。
妻が3回目の絶頂を私と同時に迎えた後、私は妻を抱いたまま力尽きたのです。
***
翌日の朝、妻が実家へ帰った後、私は自分の部屋のPCの前で腑抜けのように座り込んでいました。
一日で3回も射精したのはいつ以来でしょうか。
ソープでもほとんど経験できなかったことです。
私は妻を責め抜こうとして、逆に妻に精気を吸い取られたような思いでした。
2人の息子はそれぞれクラブと、友達と映画に行くと言って外出しています。
中学生や高校生の男の子にとって母親の一時的な不在は寂しいというよりも開放的な気分になるのでしょう。
しかし、これがずっといなくなるとどうでしょうか。
妻が男と暮らすために家を出たとすると、
2人の息子はおそらく家族を裏切った妻を許すことはないでしょう。
妻と子供たちの絆は永遠に断たれてしまうかも知れません。
子供たちが負うであろう心の傷を思うと、いたたまれない気持になります。
私も妻の裏切りを到底許すことはできませんが、
子供たちのために何か出来ることはないか、という気持も湧いて来ました。
私は、ようやくマウスに手を伸ばし、バックアップしてあったメールソフトを立ち上げます。
最初は例の温泉旅行のビデオファイルをチェックしようと思っていたのですが、気力が出ないのです。
それに昨日、妻が本当に男と会っていなかったのかということも気になります。
さらに今日、実家に帰ると言って出て行ったことも信用できません。
たとえ本当に実家に帰るのだとしても今日と明日は休日ですから、途中どこかで男と落ち合うことは簡単にできます。
いや、先月のように一泊してくるかも知れません。
もしそうなら、男と連絡した痕跡がメールソフトに残っているでしょう。
「健一(この時点では私は男の名前をどんな漢字で書くのか認識していませんでした)」
という男の素性を探る手掛かりもあるはずです。
妻と男は、本気なのか遊びなのか、男は独身なのか、
それとも妻子もちでいわゆるW不倫なのか、
それによって対処の仕方も違うと思いました。
ソフトはライセンスがPCに紐づけられていないようで、すんなり起動画面が立ち上がりました。
しかし、その途端ダイヤログボックスが開き、IDとパスワードを要求して来ました。
(……)
二重にロックがかかっているのです。
随分念入りだと感じました。
妻は、PCに関しては、ごくごく初歩的な知識しかもっていません。
専用のPCを買い与えた当初、オフィスやIE、メールソフトの使い方はすべて私が教えました。
PCやメールソフト起動時のパスワード設定を、妻が自力で行ったのでしょうか。
画像やビデオのファイルについても変と言えば変です。
ファイルはもともと男がもっていたと思われますが、どうやって妻のPCに移動させたのでしょうか。
デジカメのファイルだけでも一日分が200メガバイトはあります。
ビデオは、大きなファイルが2ギガバイトです。
ネット経由でやりとりするのは困難です
(今なら光ファイバなどの高速ブロードバンドを使えば可能ですが、
2004年の夏から冬にかけてはブロードバンドの普及期で、
高画質・長時間のビデオファイルのやり取りはまだ一般的ではありませんでした)。
おそらくビデオも写真も、男のPCと妻のPCを直接接続させて移したのでしょう。
妻のPCの設定も男が行ったに違いありません。
私が買い与えたPCに刻印を残すように自分の名前をパスワードとして設定する男、
それを笑顔で見ている妻の姿が目に浮かびました。
私は起動時と同じく、IDに「kimiko」、
パスワードに「0715」と入力しました。
当然解除されると思っていたロックはそのままです。
(あれ?)
私はふと思いつき、パスワードに男の名を入力して見ました。
やはり解除されません。
妻の名、男の名、妻の誕生日、そして男の誕生日を使ったあらゆる組み合わせを試して見ましたがやはり解除されません。
念のために私や子供たちの名前や誕生日を入力してみましたが、同じことでした。
疲れた私は、メールソフトのロックを解除するのをとりあえず諦めました。
やはり覚悟を決めてビデオをチェックする必要があります。
それも最も長く、最も過激と思われる温泉旅行のビデオを。
その中に男の素性を示す手掛かりがあるのかもしれないのです。
私は、ふと思い立ってリビングルームへ行くと、棚をチェックしました。
やはり妻のノートPCはなくなっています。
義父の介護をするために実家に帰るのにどうしてPCが必要なのでしょう。
男と連絡を取るためとしか思えません。
携帯での連絡は便利ですし、
着発信履歴を消してしまえば通話の痕跡は残らないように思えますが、
電話会社から送付される通信料が明らかに増えますし、
発信記録を取り寄せればある程度のことはわかってしまいます。
携帯メールもパケット通信料が増えることに加え、
入力を容易にするために変換辞書に過剰なまでの学習機能がありますから
(たとえば「あ」と入力すれば「愛してる」、「け」と入力すれば「健一」と変換されるなど)、
男との浮気の連絡に使うのは危険です。
私は、気持を落ち着けるためにインスタント珈琲をいれ、部屋に戻ります。
一口飲んでから深呼吸をして「20041204a」というビデオファイルをクリックします。
メディアプレイヤーが起動し、画面に妻の姿が現れました。
場所は昨日見たデジカメの画像と同じ公園の脇のベンツの前です。
この冬私が買ってあげたグリーンのコートを着た妻は、ビデオカメラの方を見て、困ったような微笑みを浮かべいます。
「どうした、早く言わないか」
「だって……」
「言わないのならまたケツを丸出しにさせるぞ。知っている人に見られてもいいのか」
「待って……言いますわ」
妻は覚悟を決めたように口を開きます。
「私、○○紀美子は今日と明日、
夫のことも子供のことも忘れて春日健一の妻、
春日紀美子として過ごすことを誓います。
あなた、紀美子を2日間、思い切り可愛がってね」
私は妻の言葉に大きな衝撃を受けました。
いや、妻の裏切りを知ってから何度もショックは受けてきたのですが、
今聞いた妻の言葉はこれまでのどんなものよりもショックでした。
妻ははっきりと、夫のことも子供のことも忘れて2日間情事に溺れるということを宣言したのです。
もはや私が愛した妻はもはやどこにもいないと言っていいでしょう。
私は妻を完全に失ってしまったのです。
(春日……健一)
唯一の収穫は男の名前が割れたことでした。
なんとしてでも妻と男に思い知らせてやる。
私の心に復讐心がメラメラと燃え上がっていきます。
「よく言えたぞ」
男は妻に近寄り、ぐいと抱き寄せます。
男と妻はかたく抱擁しながら熱い接吻を交わし合います。
まるで本当の夫婦、いや、恋人のようです。
私と妻がSEXの時以外で最後にあんな熱い接吻を交わし合ったのはいつのことだったでしょうか。
ビデオの画面が変わりました。
高速のサービスエリアの駐車場のようです。
妻は、やはり車の前に両肢を大きく開いて立ち、照れ臭そうな表情を見せています。
妻は例のグリーンのコートは脱いでおり、
やはり、お気に入りのベージュのジャケットにパールホワイトのシャツブラウス、
そして膝までの黒いミニスカートに革のブーツというスタイルです。
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