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最愛の彼女の悲しいビデオが送られてきた(後編)
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460 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:30 ID:sjh1JPwQ
テレビの上に千春からもらった誕生日プレゼントの紙袋があった。
中身を空ける。中から新品の財布が出てきた。

私は高校時代から財布を変えた事がない。
就職して千春に何度となく変えるよう薦められた。
私の財布は、社会人が持つ財布ではないとの事だった。

私はもう使い古してボロボロの財布から、
千春がくれた真新しい財布に中身を入れ替える。
入れ替えながら涙が止まらなかった。





462 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:33 ID:sjh1JPwQ
ふと、千春が尋ねて来た時の事を思い出した。

”良ちゃんのお父さんから聞きました。”

千春は親父から聞いてこの住所を知った。

もしかしたら親父が何か知ってるかもしれない。





465 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:36 ID:sjh1JPwQ
また親父が電話口に出た。

「千春から電話番号とか聞いてないか!?」
「誰だそれは?」

「この間親父が住所を教えた女の事だ。連絡先知らないか?」
「そんなの知る訳ないだろう。」

「・・そうか。」

「なんだそれだけか?」
「・・ああ。それだけだ。んじゃあな」

「何だお前は・・ああそういえば昨日その子から何か届いたぞ。
お前に電話するの忘れてたな。」

「それを早く言え!そこに連絡先書いてあるだろう!」





466 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:38 ID:sjh1JPwQ
「ああそうか。でもそんなの取っといてあるかなあ。」

「早く探せ!」

「それが人に物を頼む態度か!」

「いいから早くしてくれ!」

親父は舌打ちして、乱暴に受話器を置く。
その様子が受話器を通して耳に伝わってきた。
遠くで母親を呼ぶ声がする。

親父が戻ってくるまでの時間が待ち遠しい。






467 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:42 ID:sjh1JPwQ
「おう、あったぞ。」
「教えてくれ!」

私は親父が読み上げる千春の自宅の住所と電話番号を書き留めた。

「ところで何が届いたんだ。」

「ああ何かえらく高級なチョコらしいな、確か”デコバ”とか言う・・」

「”ゴディバ”じゃないのか?」

千春は私をはじめ家族全員が甘党である事を知っていた。

「ああそれそれ。母さんが喜んでたぞ。
後で手紙書くって言ってた。お前からもお礼言っとけ。」

「わかった。悪かったな。」





468 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:44 ID:sjh1JPwQ
「用事はそれだけか?いいなら切るぞ。」

「親父」
「何だ」

「今度帰る時何か買ってってやる。何がいい?」
「めずらしいじゃないか、そうだな・・んじゃ”万寿”がいいな。」

「マンジュ?」

「久保田の万寿だ。酒屋に行ってそう言えば解る。」
「わかった。買ってくよ。」

「母さんの奴、最近徳用の焼酎ばっかり買ってきやがんだよ。
未だに酒と焼酎の違いが解ってない。
お前からも言ってやってくれ。」

「まあ仲良くやってくれ。んじゃあな。」

何も言わず親父から電話を切る。これが親父の悪い癖だ。
この3週間後、まるで親父に騙されたかの様に財布の中身から1万3000円が消えていった。





472 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:47 ID:sjh1JPwQ
電話はしなかった。この日私は会社を休んだ。
直接千春の自宅まで向かった。
千春と同じ事をしてみようと思った。

玄関のチャイムを鳴らす。
しばらくして千春の母親が出てきた。

私は自分の名を告げ、千春を呼び出してもらった。
すると母親は微笑み、千春を呼びに行った。
千春の母親は全てを悟っているようだった。

千春は驚くだろうか?
あの日から5日間が経過していた。





474 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:50 ID:sjh1JPwQ
千春が階段から駆け降りて来た。
千春の部屋は2階らしい。

「良ちゃん?!」
千春が驚いていた。

「どうして?」
ジーンズに真っ白なブラウス。
ラフな格好だが、そんな姿が千春には一番似合っている。

「”デコバ”のチョコレート悪かったな。お袋が喜んでたそうだ。」

「ゴディバでしょ」

千春が笑顔に変わった。
皮肉にも2度に渡り二人を引き合わせたのは親父だった。





476 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:55 ID:sjh1JPwQ
「こんな所まで・・電話してくれればそっち行ったのに・・」

「俺と同じ思いをさせてやろうと・・」

「上がって」

千春の部屋に初めて入った。
整理整頓という言葉が最も似合う、千春らしい部屋だった。
壁にかかるコルクボードは、私と千春の写真で埋め尽くされていた。
その全てが幸せの絶頂の二人を映し出していた。


やがて千春がコーヒーを両手に2階に上がってきた。





478 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:00 ID:sjh1JPwQ
「座って」
「あ、うん。」

「初めてだね。部屋入るの。」
「綺麗にしてるんだな。」

「私A型だもん」

しばらく沈黙した。先に切り出したのは私の方だった。

「ずっと千春の事を考えてた。」
「私も良ちゃんの事考えてた」

「やっぱり千春が好きだ。別れたくない。」
「・・・・・・。」

千春がうつむいた。

「彼女はいいの?」
「あんなの嘘だ。彼女なんかいないよ。」

千春が顔を上げる。既にその瞳には涙が溜まっていた。





479 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:02 ID:sjh1JPwQ
「私を許せるの?」
千春は涙声だった。
千春は私の前で随分と惨めな思いをした筈だ。
随分と傷ついた筈だ。
それでも千春は私を必要としてくれた。

「もう許すとか許さないとかどうでも良くなった。
千春が居てくれればそれでいい。」

「良ちゃん・・」

「一緒に暮らそう千春」





483 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:07 ID:sjh1JPwQ
一年後・・

二人は千春の実家へ向かっていた。
一年前のこの日、二人はその場所から再出発した。

そしてその場所は、また新たな生活を始めるために最初に行かなけれ
ばならない場所だ。

「俺殴られないかな?」
「解んない。うちのお父さん空手やってるからなあ・・」

「うわぁ・・胃が痛い。お前守ってくれよ。」
「大丈夫だよ。何となく話しておいたから。怒ってなかったよ。」

「そうだといいけど・・」
結婚するにはいささか若い二人だ。しかし、急がなければならない。

千春のお腹の中に新しい生命が宿った。





485 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:08 ID:sjh1JPwQ
千春とともに歩む事を決めた。
守らなければならないものがもう一つ増えた。

迷いも後悔もない。
千春がいる。子供が産まれる。私の”家庭”が出来る。
私は今幸せの絶頂だ。

不安が無いと言えば嘘になる。
でも以前の不安とは百も違う。

足りないものは二人で補っていけばいい。
失ったものは二人で埋めていけばいい。

大事なのはお互いが”信じる”ことだ。





495 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:14 ID:sjh1JPwQ
二人は扉の前に立った。
この扉の向こうに新しい世界が待っている。
千春を見た。
千春が微笑んだ。
いつも千春が隣に居てくれる。

千春が扉を開き中へと進む。
私もその後に続く。

奥から初めて聞く、千春の父親の声がする。

私は千春に気づかれぬ様、手の平の汗をそっと背広で拭った・・・

F I N







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500 名前: 良介@あとがき 投稿日: 03/07/04 18:16 ID:sjh1JPwQ
高平と千春の関係は同じ職場の先輩と後輩で、
千春の新人研修の担当していたのが高平だったと言う。

いつも千春と行動を共にする高平に、
仕事帰りによく食事に誘われたらしい。
高平は千春の研修担当だ。
食事に誘う口実はいくらでもある。

その日も高平に食事に誘われたらしい。
いささか酔った千春は、朝目覚めると高平が横で寝ていたと言う。
千春が推測するに、この時千春の手帳を見られ、
私の住所を高平が知ったのでは無いかと言う事だった。
それからも高平は執拗に千春を誘う。

千春は何度もそれを拒否したが、ある時高平が私に関係を暴露すると
脅してきたらしい。





505 名前: 良介@あとがき 投稿日: 03/07/04 18:18 ID:sjh1JPwQ
千春は私への後ろめたさを感じ、もう一度だけ高平に体を許したという。
そこからが始まりだった。

だんだんエスカレートしてきた高平は、
千春に色々な事を要求するようになった。

千春も雪だるま式に私への秘密が増え、
受けざるを得なくなったと言う。

やがて高平のSEXに溺れていくようになり、
最終的にはあのような千春になっていったのだ。

しかし、高平はそれだけに留まらずさらなる興奮を求めるようになる。
それがあの私への挑発だろう。

その時点で恐らく千春は、高平にとってただの玩具に成り下っていたのだ。






>>次のページへ続く




 

 

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