最愛の彼女が変わり果てたビデオが送られてきた
千春との出会いは今から4年半前になる。
同じ専門学校で同じクラスになったのがきっかけだ。
出会った頃の千春にはいわゆる”色気”というものを感じた事がなかった。
この頃の女性は高校時代には禁止されていたであろうあらゆる策を講じ
色気を装う。
しかし千春にはそれが無かった。
活発でいつも明るく、化粧もしない。
そんな飾らない千春が私にはたまらなく魅力的だった。
私の他にも千春に想いを寄せる奴らはいたが、
それを巧みに笑ってあしらうのも千春ならではの技だ。
千春とつきあう事になったのはそれから1年後の事だった。
付き合ってからも千春は変わらなかった。
いつも友達のような感覚。でもそれが又嬉しかった。
千春とのSEXは週に一〜二回程度。週末に私の家に泊まりに来る。
SEXの時の千春は普段と打って変って静かになり、恥じらいさえも見せる。
普段”性”を感じさせない千春が性を見せる瞬間。
この時だけは”女性”の表情なる。私だけしか知らない表情だ。
そう思うとたまらなく愛しくなり、私自身、優越感にさえ浸ってしまう。
そして又、いつもの千春に戻ってゆく。
上京した私は都内にワンルームのアパートを借りていた。
狭い部屋だったが、千春と二人で過ごすには十分な広さだった。
千春といる時は いつまでもこんな日が続けばいいと思っていた。
他に何も望まなかった。
しばらくして千春が就職活動を行うようになった。
無論私も同様である。
交際してから初めて千春の化粧姿を見た。驚く程綺麗だった。
スポーツで鍛えられた見事なプロポーションはリクルートスーツがよ
く似合っていた。思えば、その頃から千春は普段から”性”を見せる”女性”に
なっていったのではないかと思う。
私はまた大きな優越感に浸りながら、その反面この頃から不安を
感じるようになっていた。
そして事実この不安は的中する事になる。
(゜ー)(。_。)(゜-゜)(。_。)ウンウン
それで?
「付き合ってどれ位?」
千春との交際期間を聞かれると私は迷わず「3年」と答える。
正確には”3年半”だ。
しかし私はその”半”を認めたくなかった。
この半年間は千春との交際期間には加えたくなかった。
一年半前に遡り、ここからの半年間は、
私にとって絶えがたい苦痛の毎日だった。
千春との別れを考えたのはこの期間だけだった。
4月を迎え、二人は共に就職することになった。
4社目にしてようやく内定をもらった私に比べ、
優秀だった千春は一発で第一志望の大手人材派遣会社に就職が決まった。
週に一度千春は泊まりに来る。
そのペースは就職しても変わらなかった。
変わったのは私の千春対する意識だ。
スーツ姿の千春を見ると どうしても欲情が湧いてきてしまう。
化粧した千春の表情にどうしても”性”を感じてしまう。
玄関で出迎え、そのままベッドに押し倒すこともあった。
しかし、会う度色気が増してくる来る千春に対して、
私は益々不安になっていった。
こんな事を他人に話してもただの”のろけ話”にしか聞こえないだろう。
事実二人は愛し合っていたし、千春も男の気配など微塵も感じなかった。
無論私も浮気などしていない。
それでも恋人の事を不安に感じるのは至極自然な感情であると思う。
愛していればこそだ。
さらに時が過ぎ、お互い入社2年目に迎えた頃の事だ。
窓の外を見渡せば桜も散り始めた頃、その手紙は届いた。
ドキドキ(´Д`;)
ドキドキ
差出人は不明、消印も無い。
ポストに無造作に投げ込まれたようなそれは、
明らかに直接投函されたものだ。
茶封筒に若干のふくらみがあった。
中には一通の手紙とカセットテープが入っていた。
不思議に思い、すぐにその場で手紙を開いた。
「お前は何も知らない」
たった一行だけ記されていた。
しかし そのたった一行は、私を疑心暗鬼に陥らせるには十分過ぎた。
とっさに千春の事が頭に浮かんだのだ。嫌な予感がした。
私は同封されていたカセットテープを手に取り、部屋へ入った。
部屋に入り、もう一度手紙を眺める。
しかし、やはりそれ以上の事は書いていない。
「何も知らない」とはどういう事なのだ。
千春の事だろうか?
どうしても千春と結びつけてしまう自分がそこにいた。
そしてその真実がこのカセットの中にあるはずだった。
しかし、音楽を聴かない私は
これを再生する機器を持ち合わせていなかった。
そんなの千春に頼めば済む話だったが、なぜか頼めなかった。
自分でまず確認したかったのかもしれない。