アドレス帳から千春との共通の友達を探す。
千春を知る私の男友達は、千春の電話番号など知るはずもない。
そして私が知る千春の女友達の電話番号は私は誰一人として知らない。
千春の自宅へは行ったことが無い。
千春は両親と同居の為、会うのはいつも私の自宅だ。
どの町に住んでいるかは知っている。
ここから電車で大凡一時間の所だ。
しかしそこから千春の自宅を探しだすのは至難を極める。
それなら駅で待ち伏せしてみたらどうだろう?
通勤時間を狙えば千春は現れる筈だ。
しかし、千春が会社を退職している事に気づくまでそう時間は掛からなかった。
テレビの上に千春からもらった誕生日プレゼントの紙袋があった。
中身を空ける。中から新品の財布が出てきた。
私は高校時代から財布を変えた事がない。
就職して千春に何度となく変えるよう薦められた。
私の財布は、社会人が持つ財布ではないとの事だった。
私はもう使い古してボロボロの財布から、
千春がくれた真新しい財布に中身を入れ替える。
入れ替えながら涙が止まらなかった。
ふと、千春が尋ねて来た時の事を思い出した。
”良ちゃんのお父さんから聞きました。”
千春は親父から聞いてこの住所を知った。
もしかしたら親父が何か知ってるかもしれない。
また親父が電話口に出た。
「千春から電話番号とか聞いてないか!?」
「誰だそれは?」
「この間親父が住所を教えた女の事だ。連絡先知らないか?」
「そんなの知る訳ないだろう。」
「・・そうか。」
「なんだそれだけか?」
「・・ああ。それだけだ。んじゃあな」
「何だお前は・・ああそういえば昨日その子から何か届いたぞ。
お前に電話するの忘れてたな。」
「それを早く言え!そこに連絡先書いてあるだろう!」
「ああそうか。でもそんなの取っといてあるかなあ。」
「早く探せ!」
「それが人に物を頼む態度か!」
「いいから早くしてくれ!」
親父は舌打ちして、乱暴に受話器を置く。
その様子が受話器を通して耳に伝わってきた。
遠くで母親を呼ぶ声がする。
親父が戻ってくるまでの時間が待ち遠しい。
「おう、あったぞ。」
「教えてくれ!」
私は親父が読み上げる千春の自宅の住所と電話番号を書き留めた。
「ところで何が届いたんだ。」
「ああ何かえらく高級なチョコらしいな、確か”デコバ”とか言う・・」
「”ゴディバ”じゃないのか?」
千春は私をはじめ家族全員が甘党である事を知っていた。
「ああそれそれ。母さんが喜んでたぞ。
後で手紙書くって言ってた。お前からもお礼言っとけ。」
「わかった。悪かったな。」