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32 :名無しさん@ピンキー:2005/09/10(土) 01:32:00
俺も書いて見ようか。

3年前のある日曜の事。

2ヶ月程抱いていた疑念を確信に変えるべく嫁の携帯を盗み見た。

午後から友達と出かけると予め聞いていた。

フォルダに残っていた着信メールを順に読んでいくとやはりあった。

その発信先のメールはそれだけだったが内容からして初めてのメールでない事は明らかだった。

無用心にも削除してなかったようだ。



嫁を見送り、急いで息子を近所の実家に預け、女性名義のメールにあった5つ先の駅近くの喫茶店まで車で飛ばし目立たないところに停めた。

待ち合わせ時刻までは10分程。

喫茶店の出入り口を注視していると嫁が入っていくのが見えた。



程なくして先に来ていたと見られる男と連れ立って嫁が出てきた。

俺とほぼ同年代と見られる男に肩を抱かれて楽しそうに歩き出す。

方角は駅裏手のホテル街。

途中のコンビニで買ったのはビールの様だ。

暫く歩いて一つのホテルに入る。

嫁は戸惑い一つ見せなかった。

歩いてつけてきた俺は車を取りに戻り、ホテルの前に停めた。



二人が入って約2時間、それまでの事を思い出していた。

つきあい始めてから結婚、息子の誕生、それなりに幸せだったと思う。

悔しいとか腹が立つといったものも沸く事無く、今後の事を淡々と考えていた。







33 :32:2005/09/10(土) 01:33:18
1組の男女が出てきた。

二人の顔を確認して俺は車を出た。

突然二人の前に現れた男を見て嫁は最初キョトンとしていたが見る見る顔から血の気が引いていくのがわかる。

嫁の様子から俺が誰であるか男にもわかったようだ。



数秒間嫁を眺めたあと普段の口調で「帰ろうか」と言った。

修羅場になるとでも思っていたのだろう、嫁は「えっ?」とだけ発して俺に手を引かれるままにその場を離れた。

男がどんな表情をしていたかは見なかった。








34 :32:2005/09/10(土) 01:35:40
車の中でも俺は普段と同様に振舞ったが嫁はうつろな表情で時折相槌を返すだけだった。

「晩飯の買い物をしていこう」と3人でよくいくスーパーへハンドルをきった。

入店して数分経っても嫁はカゴに何も入れようとしない。

「今日は外で食べるか」といって嫁を促して車に乗せ、実家に預けた息子を拾い、隣町のファミレスに入った。

箸がすすまない嫁に「ママ食べないの?」と言った息子に、「ママお腹の調子が悪くて。食べていいよ」と返す。

無邪気に息子は嫁の皿にフォークを伸ばしていた。



家に帰り、息子にとってはいつもの調子で俺にじゃれ付くが、息子に対しての俺の感情が明らかにそれまでと違っていた。

一緒に風呂に入った。

これが最後だろうと思いながら。



翌朝も普段どおりに出勤した。

只一つ違うのは、昨晩のうちにまとめた着替えなど当座の生活に必要なものをつめたカバンを持っていた事。



その日から俺は実家で生活するようになった。

突然の事に両親は驚いたが「珍しく喧嘩でもしたのだろう」程度に思っていたようだ。






35 :32:2005/09/10(土) 01:36:55
実家に帰って三日目、帰宅すると見慣れた靴がある。

居間に俺の両親とともに嫁がいた。

「ただいま」とだけ言って俺は風呂にむかった。



湯船につかっているとドアの開く音がし、脱衣所で土下座している嫁の姿が磨りガラス越しに見える。

「ゴメンなさい。本当にゴメンなさい。」

俺は無視して体を洗い始めた。



暫くして男との経緯を話し始めたようだ。

と言っても上の空の俺には内容なんて記憶に残っていない。



一通り話し終えた様でまた「ゴメンなさい」と繰り返す。

さすがに鬱陶しくなって「後で居間にいくから」と嫁を出て行かせたが風呂から出た俺は誰に告げることもなく外出して車で一夜を過ごした。

嫁は晩のウチにマンションに帰ったようだった。

尋常ではない事を悟った両親は、出勤の準備の為に翌朝帰宅した俺を問いただしたが「帰ったら話すから」とだけ伝えて家を出た。





36 :32:2005/09/10(土) 01:37:48
嫁から何度もメールや電話があったが全て無視した。

留守電メッセージには謝罪と帰ってきて欲しいとの言葉が泣き声とともに入っていた。

全て消去した。



嫁と付き合い始めた頃に交わした会話の中にこんなのがある。

浮気したらどうする?

嫁は泣いて暴れる、と言ったが俺は「怒りはしないだろう。ただ冷めると思う」

「寂しい人ね」

と嫁。

その言葉の通り俺は既に冷めきっていた。





37 :32:2005/09/10(土) 01:38:51
その週末、嫁と嫁の両親が実家を訪ねてきた。

既に嫁から話を聞いていたらしく、客間に上がるなり嫁の両親が手をついて平謝りに謝った。

嫁も涙目でそれに続く。

俺の両親も「もう許してやりなさい」と俺を促す。



俺の意思は固まっていたがいきなり離婚を切り出すのも相手の両親に申し訳なく、1時間ほど会話を交わしたが最終的に俺の離婚の意思が固い事を告げた。

息子についても俺が引き取る様子を全く見せない事に嫁が「本当にいいの?」と問う。

「僕の子かどうかわからないからね。」

周囲は言葉を詰まらせた。





38 :32:2005/09/10(土) 01:40:03
俺なりに愛情は注いできたつもりだった。

暇があれば遊び相手になり、箸の扱い、近所の人にも率先して挨拶出来るようにもしつけた。

最近ではキャッチボールが一番のお気に入りになっていた。

あっさりあんな事が言えたのは今から思えば驚きだ。

俺の言葉を両親はたしなめたが俺は全く意に介さなかった。



愕然とした表情の嫁に俺は、

「あの日まで僕の子である事に何の疑いも持ってなかった。

君がした事の意味がわかった?

君がした事が僕の気持ちにどんな変化をもたらしたかわかった?」

「君」

「僕」

等と二人の会話で使った事がない言葉がその時は自然と口から出た。

嫁は嗚咽をもらし顔を伏せた。





39 :32:2005/09/10(土) 01:42:14
正式に離婚した後も嫁と息子は暫くそれまでの部屋に住んでいた。

しかし仕事も手につかず、食事も息子に食べさせるのが精一杯で嫁自身は喉に通らず、次第に体を壊し会社も退職し実家に引き上げ、入院したと義父に聞いた。



嫁には兄弟が無く、それだけに息子が出来たと義父は結婚を喜んでくれていた。

孫もとても可愛がってくれた。

仕事中にも「○○を買って来たから晩飯一緒に食べよう」とよく携帯に入った。

と言っても仕事で帰りが遅い俺は待っていた嫁と二人で食べる事が殆ど。

俺より先に嫁と来ていた息子とさっさと食事を済ませ、風呂に入れ、居間で目尻をさげっぱなしで息子と遊んでくれているのを、嫁とともに笑ってみていた。

義父には本当に感謝していた。





40 :32:2005/09/10(土) 01:44:11
そんな事だから暫くは、頻度が当然減ったとはいえ義父からの電話には以前と同様に応えていた。

時折義母も電話に出た。

電話の度に二人が発する謝罪の言葉に「もういいですから」

と返す。

だが段々義父の声に元気がなくなっていくのがわかった。

陽気だった義父の声から全く覇気が失せていた事が辛かった。

「もう電話しないで下さい。義父さんの声聞くのが辛いです」

「そうだな、悪かった。これで最後にする。○○君、本当に申し訳ない事をした」

「すみません、義父さん。本当にすみません」

電話越しとはいえ義父の前で初めて泣いた。



嫁に対しては何の思いも無い。もう冷め切っていたのだ。

でも嫁のご両親がやつれていく様子が俺には辛かった。

嫁の家族が引っ越したらしいと聞いたのは去年の事。

今どうしているのか全く知らない。

俺なりの仕返しだったかな。

長文駄文失礼しました。







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