元嫁の不倫騒動後に俺が再婚した相手とは
俺の今の嫁は元嫁の浮気相手の婚約者。
良くある、サレ同士の結婚てやつだ。
俺と元嫁は同い年で、お互い違う高校だったが、いろいろあってから付き合いだした。
今の嫁は元嫁の幼馴染。だからお互い面識はあったし、元嫁の家に行った時もよく遊びに来てたから仲も良かった。
俺と元嫁は同じ大学に行き、卒業して1年後に結婚。
籍は付き合った記念日に入れたけど、俺の仕事の都合で式はちょっと先になってた。
そんな時期に今嫁から呼び出し。
何だと思って地元のファミレス行ったら元嫁が今嫁の婚約者と浮気してる、との衝撃通告。
当然、信じられないと言う俺に今嫁が小さな袋を差し出す。
中身は元嫁が知らない男と笑いながら腕組んでる写真が数枚、それとメールのやり取りや写メのデータが入っているというSDカード。
写真には2人でホテルに入って行くやつもあった。
俺はもう頭真っ白。
今嫁は、呆然とする俺に「俺ちゃん、ごめんね…」と泣きながら謝った。
いつからかは分からないけど、気がついたら俺も泣いてた。
それなりに客も入ってるファミレスで2人して泣いた。
今思い出すと格好悪いと笑えるが、あの時は人生で一番悲しい涙を流してたと思う。
元嫁と2人で籍を入れに行って、1ヶ月もたってない日の事だった。
今嫁と別れて死人のような足取りで家路についた。
籍入れてからは、元嫁のアパートに引っ越してたが(俺の家より嫁ん所の方が広い上に駅も近かった)、とても元嫁には会えないと思ったので仕方なく実家に帰った。(実家は会社のすぐ近く)
両親は何かあったのかと聞いて来たが、本当のこと話せる訳も無く、喧嘩して家に入れてもらえないからこっちに帰ってきたと適当な事言って誤魔化した。
その間、元嫁からメールが何通か来てたが読む気にもなれず電源も切った。
大学1年まで使ってた自分の部屋へ行き、何をする訳でもなくただボーッと座ってた。
そして再びあの写真を眺めた。
信じたくない。信じられない。
それでもその写真ははっきりと俺を裏切った元嫁の姿を写していた。
写真の笑顔は俺が何年も見続けてきた元嫁の顔と同じものだった。
それが無性にやるせない気持ちにさせ、俺は何もかもがどうでも良くなっていた。
すると、部屋に布団を抱えた妹が入ってきた。
俺の部屋にあったベッドは俺が一人暮らしする時に一緒に捨ててしまった為、来客用の布団をわざわざ持って来てくれたのだ。
妹は俺より2つ年下で、この時はまだ実家で暮らしてた。
「おにぃ布団持ってきたで」
「ありがとう」
「喧嘩したんやって?w」
「おう…」
「はよ謝って仲直りしいやw」
「おう…」
「…何泣いてんの」
俺24にもなって妹の前で泣いてたw
仲直り…無理そうなんだ妹よorz
「どうしたんよ」
「何でもない」
「連絡も無しに急に帰って来て、部屋で1人で泣いてて、何でもない訳ないやんか」
「………」
「おにぃどうしたん?元嫁さんと喧嘩しただけなん?」
いろいろ一方的に質問攻めに遭ったが俺は何も言えなかった。悔しくて、悲しくて、情けなくて。
俺は、妹に全部話した。
元嫁の浮気のこと。写真のこと。SDカードのこと。
本当に幸せになれると思ってたこと。本当に好きだったこと。
それが式を挙げる前に崩れてしまったこと。
泣きながら話した。
思春期過ぎてから妹の前で泣いたのは初めてだった。妹はずっとうんうん言いながら聞いてくれた。
一通り話し終えると沈黙が続いた。
すると突然妹は立ち上がり、部屋を出て行った。しかし、すぐに部屋に戻って来た。
妹の手には俺が以前買ってやったノートPCといくつかのアダプタが抱えられていた。
「おにぃ、とりあえずSD見てみよ」
コード類を繋ぎ、PCを起動させて中身を確認しようとする妹。
「ちょっと待って。やっぱり怖いわ…」
「でも確認はしなアカンやん」
「せやけど…」
全く駄目駄目な兄貴ですわ。
「じゃあウチが先に見るわ。おにぃはちょっとお風呂でも入ってきたら?顔ひどいでw」
「ん、じゃあそうさせてもらうわ」
妹を残し、自分の部屋を出て風呂場に向かった。両親はもう寝てるみたいだった。
俺は少し冷めた湯船につかりながらいろんな事を思い出した。
付き合い始めた時のこと。初めてデートした時のこと。初めて元嫁を抱いた時のこと。
大学受かって泣きながら喜んだこと。
プロポーズした時に泣いて喜んでくれたこと。
それらが思い出されては消えて行き、また思い出されては消えて行った。