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私が初恋をつらぬいた話
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130 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:04:44.06 ID:+beSXCVE0
どうしようも無いもどかしさで、胸が一杯になっていた。

「…先生。」

「なんですか…?」

「……私は先生から離れません。」

何故だが気持ちが昂ぶって、私は思わず口に出していた。

「………私は先生が好きです。だから離れていったりなんてしません。」


先生は一瞬…本当に一瞬だけハッとした顔をした。

でも すぐにいつものニコニコ顔に戻って、大きくゆっくり、何かをかみ締めるように目を閉じる。


途端に後悔が襲ってきて、私は下を向いた。

自分でも、何でそんな事を この場で言ってしまったのかが解らなかった。

いやに早い心臓の鼓動のせいで、体が自然と震えだす。

時間を戻せるなら、自分を引っぱたいて止めてやりたかった。


131 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:07:18.45 ID:+beSXCVE0
微妙な空気が流れる。

私の目には いつの間にか、涙が溢れ出てきていた。

「……………僕は…ダメですよ。」

先生の穏やかな優しい声に、息が詰まった。

そう言った先生の、顔が見れない。


「……どうしてですか…?」

破れてしまいそうな喉の痛みを堪えながら、私はやっとで呟いた。

「……どうしても。」

「…答えに…なってません。」

「……僕の事を好きになったら、ダメです。」

泣き顔を見られないように、下を向いたまま聞き返した。

「…だからどうしてですか?」

先生の柔らかい溜め息が聞こえる。

「…どうしても、です。」




133 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:10:51.34 ID:LUqPOmqkP
>>131
>破れてしまいそうな喉の痛みを堪えながらあぁ、なんかすごい分かるわ…


132 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:09:33.19 ID:+beSXCVE0
喉の痛みが激しくなる。

言いたい事、聞きたい事、山ほどあるはずなのに、私はそれを言葉に出来なくて黙り込んだ。

近くにいる先生が、とても遠くに感じる。

思い切って顔を上げて、私は先生を見つめた。

何故だか、目をそらしてはいけない気がした。

「……嫌です。」

「……ダメです。絶対にダメです。」

「嫌です。…無理です。」

「ダメです。」

「どうしてですか…」

「…ダメだからです……」

「答えになってません…!」

先生の顔が、だんだん苦しそうになっていく。

「…やめてください…」

「どうしてですか…!」

「やめて…」

「嫌です!」

「やめてお願いだから…」


押し問答を繰り返していると、もう笑顔は消えていた。

それどころか少し怯えた様な瞳で、苦しそうに私を見ている。

その事に気がついて、よく解らない痛みが胸をはしる。

それでも私は、何かを振り払うように首を振り続けた。

「嫌です私は先生が好きです!先生だって知ってた筈です!私はずっと…っ」


その瞬間、体がグイっと引っ張られる。


ふわっと先生の匂いがする。

私は先生の腕の中に居た。


135 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:13:45.34 ID:+beSXCVE0
ドキっとして、一瞬だけ世界が静かになる。

「…お願いだから……」

グイグイと、それでも優しく締め付けてくる腕に応える様に、私は先生の背中に手を回した。

抱きしめられた温もりと、拒否されている切なさで、心と体が混乱する。

「…どうしてですか…ダメって言ったりこんなことしたり…」

何故だろう…涙が止まらない。

「……わからない……」

耳元で先生の、苦しそうに震えた声がした。

胸が切りつけられているように痛んだ。

「……………だって俺は昔から知っていて……小さい頃から知っていて……………」

初めて聞くその声に、胸が張り裂けそうになる。

「せんせい…?」

先生は私の声なんて聞こえていないかのように、苦しそうに何かを呟いていた。

「ねぇせんせぇ…」

私は泣きながら先生をギュッと抱きしめた。

「ダメなんだよこんなの絶対……ダメなんだよ…なのにどうして…」


そう言いながらも先生の腕は、ギュウギュウと私を締め付けてくる。

私はもう何も言えなくなり、ただひたすら先生に抱きついていた。


136 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:15:08.51 ID:Fv6goezV0
キュンを通り過ぎて胸が苦しいです



137 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:16:29.02 ID:+beSXCVE0
抱き合ったまま、長い長い時間が流れた。



私は少し冷静になってきていて、先生は もう何も呟いていなかった。

時折、溜め息の様な深呼吸をする声だけが聞こえてくる。

少しでも体が離れてしまったら先生が消えてしまうような気がして、私は胸に顔を埋めた。

「…渚さん。」

「…はい。」

いつものように穏やかな、先生の声がする。

「……もう一緒には居られません。」

胸がギュッと痛くなる。

でも、なんとなく予想通りだったその言葉に、私は黙って頷いた。

「…明日…家に帰ります。」

「…そうしなさい。」

今まで固く締め付けていた先生の腕が、私から離れた。

「…もう遅いです。寝ましょうか…。」

「…はい。」

先生の顔を見ない様に下を向いたまま、私は小さく頷いて、スーッと静かに寝室へと入っていった。


138 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:16:33.86 ID:ZOSge41I0
どうしてくれるんだ…目から汁が出てきた…


139 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:18:49.76 ID:+beSXCVE0
翌朝。

私は携帯で6時になったのを確認すると、やっとの事で体を起こし、自分の荷物をまとめ始めた。

結局、一睡も出来ていなかった。

少ない荷物をまとめ終え、服を着替える。

大きく一回深呼吸をしてから、私は扉をそーっと開けた。

ソファから少しだけはみ出している先生の頭が見えた。

物音を立てないように慎重に部屋から出ると、先生の方をチラッと見る。

うずくまる様に毛布を体に巻きつけて横になっている先生は、どうやら眠っているみたいだった。

何故だか少しホッとしつつ、静かに玄関に向かう。

靴を履いた私は小さな声で「お邪魔しました」と言うと、玄関の外にでた。

早朝の生温い風が、気持ち悪かった。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, これはすごい, 胸キュン,
 


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