千春が自らの手でローターを局部に当てた。
そして自らの手でそのスイッチを入れた。
その瞬間小さな機械音が聞こえて来た。
千春は苦悶に似た表情に変化した。
カメラはその全てをレンズに収めていた。
「あぁぁ・・高平さんも・・・早く・・早くして?・・ぁあ・・」
「わかった。イク時は言ってね。すごい興奮するね。かわいいよ千春ちゃん。」
高平の息遣いが聴こえてきた。画面が揺れ始めた。
千春の声がだんだんと大きくなってゆく。
千春が腰を上下しはじめる、こんな姿を見るのも初めてだった。
「あ・・いくぅ・・いきそう・・」
「ほら良ちゃんは?いつもみたいに謝りながらイって。」
「アァァァァァ・・!りょーちゃん!ごめんねりょーちゃん!アァァイクゥゥゥ!!」
カメラの前で千春が絶頂を迎えた。
ひとつ解ったことがある。
千春は私とのSEXで絶頂を迎えたことはない。
悲しいかな それを画面を通じて理解した。
そして千春とほぼ同時に私も絶頂に達した。
気がつくと涙が頬を伝っていた。
解っていたことだが、やはり辛かった。
ビデオの中はまさに”知らない世界”だった。
信じられない光景を目の当りにし、しばらく放心していた。
ビデオの中の千春は私の全く知らない千春だった。
まるで多重人格者のようだ。
しかし明らかに千春は高平とのSEXを楽しんでいた。
そしてなにより私と一緒にいる時より輝いて見えた。
ビデオの中の千春は高平の上に跨っていた。
そして自分の手でそれ挿入しはじめた。
高平が起き上がりそのまま座位の体制になる。
ベッドが激しく揺れる。
そして千春と高平は舌を絡ませあっていった。
私はビデオを停止した。
目の前で繰り広げられる映像をこれ以上見るのが耐えられなかった。
週末再び千春はやってくる。
いつも変わらぬ千春がやってくる。
自分で選んだ道だ。私は全てを見る事を選んだ。
全てを見た。そして確信した。
千春との”別れ”を決意した。
切ないねぇ・・・
切なさと興奮でマジでドキドキしてるよ・・・
金曜日、いつものように千春が泊まりに来た。
私の家には千春の私服がいくつも置いてある。
だから週末は会社帰りにそのまま私の自宅へ直行するが通例だ。
その日の夜、私は千春を抱くことはしなかった。
口には出さなかったが、千春が求めてきたのが解った。
私は欲情を抑え、千春に背を向け目を閉じた。
悲しいかな今の私は狸寝入りするのが精一杯の抵抗だった。
私の知る千春は ここでさらに求めてくるような女ではない。
それはビデオの中のもう一人の千春だ。