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戦争の体験談を語るわ
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235 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:02:29.33 ID:kv3yaWMo
この歌はさ、今の戦争の世界が素晴らしいって言ってるんじゃないんだ。


きっと、世界は素晴らしくなるんだ。

そう皆が願い、思えば、素晴らしい世界になるんだって意味なんだ。

愛でね。


皆、好きで殺してるわけじゃないんだ。

そうしないと自分達の仲間が子どもが殺されてしまうからなんだ。

そして、相手も同じなんだ。


それをお互いにわかっているんだよ。

わかっているのに、止められないんだ。


泣きながら歌ってるんだ。

ボシュニャチやフルヴァツキを殺した民兵たちが泣きながらさ。

彼らは好きで殺してるわけじゃないんだ。

そして それが許されない行為だと知っているんだ。

知っていながら、どうすることも出来ないんだ。

お互いにね・・・。



236 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:02:50.94 ID:kv3yaWMo
この時、英語が理解できていれば、彼らに何か言えたかも知れない。

でも、当時の俺には何の歌かわからなかったんだ。

悲しい歌なのかと思った。

平和を願う歌とは知らなかったんだ。



238 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:05:28.27 ID:kv3yaWMo
その後、俺はサラエヴォまで連れて行かれてさ、解放される時に手紙を貰ったんだ。

その手紙の内容は、ちょっと長いから要約するけど、


人生は不公平だ。

一生平穏に暮らす者もいれば、

一生紛争や貧困に喘ぐ者もいる。


だけど、人生には、神様が皆にチャンスをくれるんだ。

学校やお父さん、お母さん、大人や友人、彼らは何度でも君にチャンスを与えるんだ。

それを活かすかどうかは、君次第なんだよ。


小さな贈りものになるけれど、私は君に生きるチャンスを与えよう。

強く優しく、そして誠実に人生を全うしなさい。

そして、素晴らしい世界を作りなさい。

子どもが笑いながら育つ世界を。

君達子どもに託そう。

素晴らしい世界を。


こんな感じの内容なんだ。



241 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:09:06.13 ID:kv3yaWMo
その後、1995年1月から 4ヶ月の停戦が結ばれ、俺は首都で再会した父と共に、オーストリアに向かい、後に日本に帰ってきた。

結局、この一連のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が終結するのは、俺達がこの国から脱出した10ヶ月後の事だった。

1995年7月、安全地帯となっていたスレブレニツァが包囲され占領されたんだ。

多くのボシュニャチが処刑、強姦、拷問され、生き残った中から一部の女性は解放されたけれど、男性は殆どが順次処刑されていった。

殺されたのは、大人、子ども、男女、老若女男問わず虐殺されたんだ。

犠牲者は、8000人を超えていて、未だに身元がわからない人も多く居る。

もし、サラエヴォから脱出できなければ、僕らはそこにいたかもしれない。



243 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:10:47.35 ID:kv3yaWMo
良い人もいれば、悪い人もいる。

スルツキが憎い。

憎いけど、全てのスルツキが悪というわけじゃない。


どうしたらいいんだ。

どうやって生きていけばいいんだ。

平穏な日々に戻ってからも、それを悩んでいた。


そして、いつの間にかドラガンに責任を押し付け、うらんで、生きていくようになった。

それも間違いだった。

前に書いたとおり、彼は裏切ってなんか居なかった。


Facebookで彼の弟を見つけ、コンタクトを送ったら、俺達がカリノヴィクで襲われた日に、彼は殺されていた。

俺達を庇おうとして。


俺達を庇ってくれた仲間を裏切り者として、15年以上も憎んできた、

「ずっと仲間だ」って約束したじゃないか、

それなのに、その言葉を忘れて、俺が彼を裏切っていたんだ。



244 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:13:46.61 ID:kv3yaWMo
今までの人生が全て崩れるような感覚に陥って、俺は もう生きていけないと思った。

罪悪感だけじゃない。

俺には荷が重過ぎるんだよ。

気づいたら、会社に退職願を出していた。


丁度さ、いい機会だったんだ。

ドラガンの弟から、サニャとかの家族の現住所も教えてもらえてさ。

サニャとカミーユの家族は、全員ではないけれど、生きていたんだ。


だから、まずはドラガンのお墓で謝って、

そしてドラガンの家族に謝罪して、

そして感謝を述べて。


それでさ、その後は、

カミーユの家族に会いに行って、

サニャの家族に、

サニャの遺品を渡してさ。


全てを終わらせようと思ったんだ。



245 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:14:30.51 ID:kv3yaWMo
ただ、ボシュニャチの人との約束の一つ、話を広めるというのは俺には出来なかった。

そして、もう時間もなかった。

だから、こうして色々考えた末、vipにスレをたてて、今に至るんだ。



247 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:16:47.32 ID:kv3yaWMo
もし何かを感じてくれれば、それでいい。

欲ではあるけれど、俺自身、彼らが何を伝えようとしていたか、そして俺が何を伝えればいいか

考えて、それを少しでも感じ取ってくれれば、なお嬉しい。



248 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:17:54.41 ID:kv3yaWMo
大切なのは、素晴らしい世界を願い、それを伝えて、実現に近づけていくことなんだと思う。

文章を書くのが苦手な俺には、俺の気持ちだとか、どんな事が起きたかを上手くは伝え切れなかったと思う。

だけど、もし、読んでくれた中で、何か感じるものがあったとしたら、バルカン半島、ボスニアのことにも少し目を向けてくれると嬉しい。

日本だからこそ出来る事があると思う。


断罪するだけではなく、罪を犯してしまった民族にも、救済の手を、救いの手を差し伸べて欲しいんだ。

それは偽善かもしれない。

それは意味がないことかもしれない。


だけど、今ある禍根を…もしだよ。

もし取り除くことが出来れば、いつか素晴らしい世界になるんじゃないかな。

僕はそう思うんだ。



249 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 06:21:14.42 ID:kv3yaWMo
彼らが歌ってくれた歌に、そのヒントがあるような気がしたんだ。

”この子たちは皆、僕が知らない世界も目にしていくんだろう”

彼らが知らない世界、それは、民族融和かもしれない。

でも、それは簡単なことじゃないんだ。


恨みや禍根は、今現在一時的に裁きによって蓋をすることが出来たかもしれない。

だけど、それが消えたわけじゃないんだ。


行いが間違っていても、全ての民族に正義や大義名分があったんだ。

一方的に絶対悪にして断罪しても、その恨みや禍根は蓋で隠されているだけで、子どもたちに継承されていくんだ。



>>次のページへ続く
 
 


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