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私が初恋をつらぬいた話
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52 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:26:00.05 ID:+beSXCVE0
夕飯の時。

母から呼ばれてリビングに行くと、母の言っていた〇〇さんという人は、もう食卓についていた。

いつの間にか眠っていたらしい私は、その男が家に来たこともまったく気がついていなかったのだ。

「なぎ〜、この人が〇〇さん♪かっこいいパパが出来てよかったね〜♪」

母は目の中にハートマークを浮かべながら、一度も私を見ることなくそう言った。

お世辞にもかっこいいとは言えない23.4位の、やたらとガタイのいい…今風にいうと明らかにDQNな男は、私を上から下までギロリとした目つきでゆっくり眺めると、

「…………よろしく。」

と、無愛想に挨拶をした。


「………」

私は無言で頷いた。

地獄のような日々が始まった瞬間だった。


54 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:27:26.30 ID:L9GcuA1Wi
え、やめてよ

地獄ってえええええ




55 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:28:09.32 ID:LUqPOmqkP
(´;ω;`)思春期なのに…


56 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:28:16.99 ID:+beSXCVE0
母は18歳で未婚のまま私を産み、今まで水商売で家計を支えてきた。

支えてきた…とはいいつつも、

家は母の父母から相続した古いながらも一軒家だったので、実質かかっているお金は大したことは無かったらしい。

私が中学生になった頃には、週に1.2回帰ってきて、当面の生活費を無造作にテーブルに置いては また出て行く…という生活を送っていた。

どうせ男のところにでも行っているのだろう…薄々はそう感じていたが、まさか急に再婚などと言われるとは思ってもいなかった。



男を紹介された次の日。

男が日中仕事に出かけたのを見計らうと、私は籍を入れるつもりなら構わないが、男と養子縁組をすることだけは絶対に嫌だと母に抗議をした。

名字が変わるのが嫌だった訳じゃなく、ただ単純にあの薄気味悪い男の名字を名乗る事も、戸籍に入る事も嫌だったからだ。

私が一気にまくし立てると、母はニヤニヤしながらあっそう?じゃあそうするわ♪とだけ言った。


家庭環境は変わったが、それからも先生とは何も変わらずに、普通にメールをしていた。

もっと早く相談していれば良かったのだが、その当時の私は自分の汚い家庭環境を見られるのが何よりも嫌で、何も変わりない素振りをしていたのだった。


58 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:30:17.30 ID:+beSXCVE0
男が一緒に暮らすようになって数ヵ月後。

早いもので もう春休みに入っていた。

母はどこかに出かけ、私はバイトが休み。男も休みだったみたいで、朝からずーっと家に居た。


いつもは朝起きるとリビングに行き、軽く朝食を摂りながらテレビを見たりして過ごすのだが、その日は朝から男が家に居た為、私はずっと部屋に閉じこもっていた。

その日に限って友達がつかまらず、部屋で何もする事もなくボーっとしていると、不思議と睡魔が襲ってくる。

ベットにつっぷしていると、私はいつの間にか寝入ってしまっていた。



眠ってからどれ位か経った時、私は体に感じる違和感で薄っすらと目を覚ました。

「…?」

…誰かが私の体を撫で回している。

恐怖と混乱が、私を襲った。

「ハァ…ハァハァ…」

気味の悪い息遣いだけが、かすかに聞こえてくる。

瞬間、あの男が私の背面を触れるか触れないか位の手付きで弄っているのだ、と気がついた。


恐怖と気持ち悪さで、すぐにでもその場を飛び出したかった。

しかし、当時の私は何故か、寝たふりをしなきゃいけない!と咄嗟に思い込んだ。

ただ漠然と、起きてるとわかったら大変な事になる…そういう考えしか浮かんでこなかったのだ。

嫌悪感を必死に堪え、ひたすら寝たフリをしてやり過ごす。

あまりの吐き気に限界を迎えた頃、玄関から母が帰ってきた声がした。

すると、男の手は一瞬ビクっとし、物音を立てないように静かに部屋から出て行った。


私は例え様のない感情を抑えることができず、必死に声を押し殺して泣いた。




59 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:32:40.09 ID:+beSXCVE0
高校3年が始まる。

私はあの事件があって以来、夜家で眠ることが無くなっていた。

正確には、家で一夜を過ごすという事が出来なくなっていた。


学校やバイト、友達との約束が終わると、お風呂と必要最低限の荷物だけを取りに帰って、夜間は体を休められそうな場所を見つけてはジッと座って朝まで過ごした。

友人達の家にも泊めてもらった事もあったが、やはり迷惑になる事を考えると、次もまた甘えるということは出来なかった。

余りにも田舎だったため、夜9時を過ぎた頃には外に人出は無くなり、おまわりさんが見回りをするということも無かった。

私は噂にならないように必死に身を潜めて、毎日ジッと耐え続けた。


先生との毎日続けていたメールも、いつのまにか2.3日に一回返事を返す位になってしまっていた。

心がボロボロになっていくウチに、何故か先生に迷惑がかかるような気がして、不本意に返事を減らしていたのだった。

表向きには何事もなく過ごし、一歩裏に帰ると そんな生活を送っているという心労は、並大抵のものじゃなかった。


そんな生活をひと月ほど送ったある日、それでも体力には限界がやってくる。

その日のバイトを終えた午後8時頃。

いつものようにネグラを探していると、クラクラと立ちくらみがする。気合を入れて歩こうとはするのだが、体にまったく力が入らない。

私は限界を感じ、半ば無意識に家に帰ると、即自室のベッドに潜り込んだ。


61 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:34:50.85 ID:+beSXCVE0
寝付いてどれくらいたったかわからない。

ただ、多分そんなに時間がたたないうちに、あの男は部屋にやってきた。

体を這い回る手の動きで目が覚める。

私はまた、猛烈な嫌悪感に襲われた。


そうか、今日もやっぱり母は居なかったんだな…

半ば考えるのを拒否し始めた頭で、ボーっとそんな事を考える。

母はお腹が大きいのにもかかわらず、相変わらず週に何日かはスナックにバイトに行っていた。


このまま私が我慢をすれば、とりあえず休めるのかな…

覚悟を決めかけたその時、男の手は私の服の中に滑り込んできた。


その瞬間、一瞬だけ先生の顔が頭をよぎる。

「いやあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

実際には こんな女らしい叫び声じゃなく、もっと獣に近いものだったかもしれない。

私は男を蹴るように突き飛ばした。

一瞬だけ男の体が離れる。

怒りと興奮で頭はクラクラする。


息を荒げたまま起き上がろうとすると、男はニヤっと笑ってまた私に襲い掛かった。

どのように体をジタバタさせたか解らない。

ただ、私の服を剥ぎ取ろうとする男の手を、必死で引き剥がそうとしていたのだけは覚えている。

ひたすら男の体を蹴り上げていた私の足が何発目かでようやくクリーンヒットし、男は小さく呻きながらかがみこんだ。

今しかない…!

私は机においてあったカバンを手にすると、一目散に家から飛び出した。

とにかく必死で走って、近所にあった当時はもう使われていない病院跡地に、身を隠した。


62 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:36:19.55 ID:+beSXCVE0
建物の影に隠れて息を整えると、とたんに虚しさが襲ってくる。

どうして私がこんな目に…

どうして私の親はあんななんだ…

どうして…どうして…

もう頭の中は、どうして?しか浮かんでこなかった。



一通りどうして問答をした後、ぼーっとした頭でカバンをまさぐり携帯電話を取る。

「せんせいたすけて」

私はほぼ無心で、堺先生にメールを送った。

メールを送った瞬間、涙が溢れてくる。

携帯を握り締めながら泣いていると、先生からの返事はすぐに返ってきた。

「どうしました?」

文字なのに話しかけられているような気がして、私はまた息が詰まった。

「もうやだ」

呼吸にならない呼吸のせいで、私はその一文しか送れなかった。

深呼吸を繰り返していると、またすぐ携帯が鳴る。

「090-・・・・・・」

本文には携帯番号らしき数字だけが綴られていた。

私は止め方のわからない深呼吸を繰り返しながら、その番号を押した。


ワンコールも鳴らないうちに、先生は電話に出た。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, これはすごい, 胸キュン,
 


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