私が初恋をつらぬいた話
(6ページ目) 最初から読む >>
\ シェアする /
61 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:34:50.85 ID:+beSXCVE0
寝付いてどれくらいたったかわからない。
ただ、多分そんなに時間がたたないうちに、あの男は部屋にやってきた。
体を這い回る手の動きで目が覚める。
私はまた、猛烈な嫌悪感に襲われた。
そうか、今日もやっぱり母は居なかったんだな…
半ば考えるのを拒否し始めた頭で、ボーっとそんな事を考える。
母はお腹が大きいのにもかかわらず、相変わらず週に何日かはスナックにバイトに行っていた。
このまま私が我慢をすれば、とりあえず休めるのかな…
覚悟を決めかけたその時、男の手は私の服の中に滑り込んできた。
その瞬間、一瞬だけ先生の顔が頭をよぎる。
「いやあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
実際には こんな女らしい叫び声じゃなく、もっと獣に近いものだったかもしれない。
私は男を蹴るように突き飛ばした。
一瞬だけ男の体が離れる。
怒りと興奮で頭はクラクラする。
息を荒げたまま起き上がろうとすると、男はニヤっと笑ってまた私に襲い掛かった。
どのように体をジタバタさせたか解らない。
ただ、私の服を剥ぎ取ろうとする男の手を、必死で引き剥がそうとしていたのだけは覚えている。
ひたすら男の体を蹴り上げていた私の足が何発目かでようやくクリーンヒットし、男は小さく呻きながらかがみこんだ。
今しかない…!
私は机においてあったカバンを手にすると、一目散に家から飛び出した。
とにかく必死で走って、近所にあった当時はもう使われていない病院跡地に、身を隠した。
62 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:36:19.55 ID:+beSXCVE0
建物の影に隠れて息を整えると、とたんに虚しさが襲ってくる。
どうして私がこんな目に…
どうして私の親はあんななんだ…
どうして…どうして…
もう頭の中は、どうして?しか浮かんでこなかった。
一通りどうして問答をした後、ぼーっとした頭でカバンをまさぐり携帯電話を取る。
「せんせいたすけて」
私はほぼ無心で、堺先生にメールを送った。
メールを送った瞬間、涙が溢れてくる。
携帯を握り締めながら泣いていると、先生からの返事はすぐに返ってきた。
「どうしました?」
文字なのに話しかけられているような気がして、私はまた息が詰まった。
「もうやだ」
呼吸にならない呼吸のせいで、私はその一文しか送れなかった。
深呼吸を繰り返していると、またすぐ携帯が鳴る。
「090-・・・・・・」
本文には携帯番号らしき数字だけが綴られていた。
私は止め方のわからない深呼吸を繰り返しながら、その番号を押した。
ワンコールも鳴らないうちに、先生は電話に出た。
寝付いてどれくらいたったかわからない。
ただ、多分そんなに時間がたたないうちに、あの男は部屋にやってきた。
体を這い回る手の動きで目が覚める。
私はまた、猛烈な嫌悪感に襲われた。
そうか、今日もやっぱり母は居なかったんだな…
半ば考えるのを拒否し始めた頭で、ボーっとそんな事を考える。
母はお腹が大きいのにもかかわらず、相変わらず週に何日かはスナックにバイトに行っていた。
このまま私が我慢をすれば、とりあえず休めるのかな…
覚悟を決めかけたその時、男の手は私の服の中に滑り込んできた。
その瞬間、一瞬だけ先生の顔が頭をよぎる。
「いやあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
実際には こんな女らしい叫び声じゃなく、もっと獣に近いものだったかもしれない。
私は男を蹴るように突き飛ばした。
一瞬だけ男の体が離れる。
怒りと興奮で頭はクラクラする。
息を荒げたまま起き上がろうとすると、男はニヤっと笑ってまた私に襲い掛かった。
どのように体をジタバタさせたか解らない。
ただ、私の服を剥ぎ取ろうとする男の手を、必死で引き剥がそうとしていたのだけは覚えている。
ひたすら男の体を蹴り上げていた私の足が何発目かでようやくクリーンヒットし、男は小さく呻きながらかがみこんだ。
今しかない…!
私は机においてあったカバンを手にすると、一目散に家から飛び出した。
とにかく必死で走って、近所にあった当時はもう使われていない病院跡地に、身を隠した。
62 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:36:19.55 ID:+beSXCVE0
建物の影に隠れて息を整えると、とたんに虚しさが襲ってくる。
どうして私がこんな目に…
どうして私の親はあんななんだ…
どうして…どうして…
もう頭の中は、どうして?しか浮かんでこなかった。
一通りどうして問答をした後、ぼーっとした頭でカバンをまさぐり携帯電話を取る。
「せんせいたすけて」
私はほぼ無心で、堺先生にメールを送った。
メールを送った瞬間、涙が溢れてくる。
携帯を握り締めながら泣いていると、先生からの返事はすぐに返ってきた。
「どうしました?」
文字なのに話しかけられているような気がして、私はまた息が詰まった。
「もうやだ」
呼吸にならない呼吸のせいで、私はその一文しか送れなかった。
深呼吸を繰り返していると、またすぐ携帯が鳴る。
「090-・・・・・・」
本文には携帯番号らしき数字だけが綴られていた。
私は止め方のわからない深呼吸を繰り返しながら、その番号を押した。
ワンコールも鳴らないうちに、先生は電話に出た。
64 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:37:49.60 ID:+beSXCVE0
「もしもし!?」
受話器の向こうから、先生の声がする。
「せんせい…」
「どうしたの?なにがあったの?」
「せんせい…………」
涙が溢れて、上手く言葉がつなげない。
「わかった、落ち着いて……今家にいるの?」
「…家にいない…そとにいる」
「外ってどこ?一人で居るの?」
「〇〇病院の…所で……うん、ひとり」
「〇〇病院にいるのね?」
「…うん…」
「わかった、今から行くから絶対にそこで待ってて。いい?わかった?絶対に動かないでそこで待ってて!」
先生はそういうと電話を切った。
65 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:39:31.74 ID:+beSXCVE0
切れた電話を握りながら、深呼吸を繰り返す。
呼吸こそ乱れていたものの、涙は止まり、私はその場に座り込んだまま ぼーっとしていた。
風や草の音に耳を傾け、何も考えられずに座っていると、車の音が徐々に近づいてくる。
近くで停まったな…と思っていると、また携帯が鳴った。
「もしもし?今〇〇病院に着いたんだけど、どこにいるの?」
先生の声だ。
「…病院の影にいます」
「影…?……今、僕が見える?」
身を乗り出して病院の正面入り口辺りを見ると、堺先生がキョロキョロしながら立っていた。
「…見えます」
「よかった。じゃあこっちに出てこれるかな?」
私は携帯を耳に当てながら一生懸命立ち上がると、フラフラしながら先生の方に歩いていった。
私に気が付いた先生が、凄く驚いているのがわかった。
家から一目散に逃げた私の恰好は、引っ張られてヨレヨレになり所々破れたTシャツに、砂だらけになった短パン。
その上裸足で頭はボサボサ。
薄明かりの下の私は、幽霊の様だったことだろう。
先生はヨロヨロ歩く私に駆け寄ると、さっと肩を支えた。
そして次の瞬間、フワッとした感覚があったと思うと、私は先生に俗にいうお姫様抱っこをされていた。
先生は、完全に脱力した状態の私を器用に車の後部座席に乗せると、
「狭いけど、ちょっとだけ我慢してね」
と、車を走らせた。
泣き疲れたからか、それとも先生に会えた安心感からか、私は横になりながらウトウトしていた。
66 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:41:15.31 ID:+beSXCVE0
「渚さん、起きてる?」
声をかけられて、小さくハイと返事をする。
気がついたら車は停まっていた。
「ちょっと待っててね。」
そう言って先生は車から降りた。
ここはどこなんだろう…
横になったままボーっと考えていると、先生が後部座席のドアを開けた。
「起き上がれる?」
小さく頷いて起き上がった私の体を少しだけ引っ張ると、先生はヨイショっと言い、また私を抱っこした。
乱暴に体でドアを閉める音がする。
見慣れない場所に目を凝らすと、目の前に小さなマンションが見えた。
どうやらココは、このマンションの駐車場だったらしい。
先生は一階の一室の扉を空け、私を玄関に座らせると、玄関の鍵をそーっと閉めた。
「…鍵…」
先生がボソッと呟いたのが聞こえて、私は首をかしげた。
「…家の鍵閉めないで、出てっちゃってたみたい…」
先生が恥ずかしそうに頭をポリポリかいたのを見て、私はようやく少しだけ笑った。
67 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:42:30.54 ID:L9GcuA1Wi
先生かっこよすぎる
68 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:43:01.30 ID:+beSXCVE0
「あ…ちょ、ちょっと待ってね。」
先生は一瞬だけ私をじっと見ると、何か焦ったようにそう言って、奥の部屋にバタバタと入っていった。
しばらくガタガタと物音がしていたかと思うと、手に何枚かの服を持って戻ってきた。
玄関横の引き戸を開ける。
「サイズ合わないと思うけど…とりあえず着替えておいで。」
そう言われて初めて、私は自分の恰好が凄い事になっているのに気がついた。
ボロボロになったTシャツから、お腹やブラジャーが覗いている。
私は恥ずかしくなって、慌てて腕で上半身を隠した。
「あぁ!ごめんなさい!俺、あっちにいますから!」
先生は また慌てて奥の部屋に引っ込んで行った。
あれ?先生今、俺って言った?
少し驚きつつ、ヨロヨロしながら立ち上がると、私は開けられた引き戸の中に移動した。
物が異常に少ない、綺麗に整頓された洗面脱衣所だった。
先生に渡された服に着替える。
少し大きな長袖のTシャツに、少し長めのハーフパンツ。
何か少し不思議な気分になりながら、今まで来ていた洋服を畳むと、私は先生に声をかけた。
「あの…先生。」
廊下の奥、部屋を仕切る扉の向こうから、先生はハイと返事をした。
「足と…できれば、顔を洗いたいです…。」
「あぁ!そうですよね!…そっちに行っても大丈夫ですか?」
私がハイと返事を返すと、先生はそーっと扉を開けて入って来た。
何だか ちょっと気まずそうに私の横をすり抜けると、タオルタオル…と小さく呟きながら洗面所の棚をあさる。
「一枚で足りますか?」
「はい?」
「タオル…」
「あぁ、はい大丈夫です、足ります。」
私が慌ててうなずくと、先生はニコッと笑って今度は浴室の扉をあける。
蛇口を捻ってしばらく手を流水にさらし、ウンっと小さくうなずくと、
「どうぞ」
と言って、廊下に戻った。
>>次のページへ続く
\ シェアする /
関連記事
easterEgg記事特集ページ
