水遣り
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夫婦の過去20余年の暮らしがあります。共に笑いもし、泣きもしました。破産しても愚痴一つ言わず一緒に頑張ってくれました。
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明くる朝、6時に目が覚めました。
そのまま妻の居る家に向かいます。
6時半、家に着きます。
『洋子はまだ寝ているかも知れないな』
家には入らず、庭の花を眺めています。何やらクリスマスローズも元気がありません。
妻も暫く忘れていたのでしょうか。軒先にある水撒きで水をやります。
妻が自転車で帰ってきます。籠にはパン屋のレジ袋が入っています。
近所に朝早くから開いているパン屋さんがあるのです。出来立てのパンの香りが漂っています。私の腹の虫もグゥと鳴いています。
「貴方、水遣りして頂いているのですか」
「ああ、何にでも水遣りは必要だ」
これから妻を許せる日が来るのか、妻の痴態はいつ消えるのか?今の私には解りません。
解らないまま別れるより、解らなくとも一緒に暮らす事を選びました。
正しい選択であったどうかは、妻が答えてくれると思っています。
アパートを解約し、家での妻との暮らしが再開されました。
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この後、間をおかず松下さんが田舎での結婚を理由に会社をお辞めになりました。
喜ばしい事ですが、少し胸に痛いものが残ります。
小さな会社です、引継ぎが必要なものは殆どありませんが、松下さんはきちんと引継ぎノートを作ってくれました。
松下さんがお辞めになった後、妻は私の会社を手伝っています。
朝から晩まで一緒です。私の心配が一つ減りました。
松下さんは私たち夫婦の為に道を開けてくれたのだと思います。
ご結婚式には夫婦揃ってお祝いさせて下さい。どうぞ幸せなご結婚を。
只、松下さんからの結婚式の招待状はまだ届いていません。
私はまだ、しらふで妻を抱くことは出来ません、酒の力を借りています。酒で佐伯の幻影を消しているのです。
酒は最高の媚薬と申します。しらふで抱けるようになるまで酒の力を借りる事にしました。
先日、佐伯の会社の社長が、何がしかの金銭を持って我が家を訪れました。
甥が大変な不祥事を起こし申し訳ないと、ついてはこの事は口外しないで頂きたいと。
私たち夫婦の恥を何を好き好んで口外するでしょうか。
妻を抱く頻度はあれから増えました。妻の感じ方、妻の積極性は目を見張るものがあります。
しかし、妻の乱れ方を見て、佐伯の事を思い出してしまいます。
妻のこの体は佐伯が開発したのだ、佐伯の癖が妻の体に染み込んでいるのだと思うと、私のものが萎えてしまいます。
つい妻に辛く当たってしまいます、冷たい目で見てしまいます。
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