戦争の体験談を語るわ
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80 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 00:55:07.36 ID:kv3yaWMo
俺達は三人だけで、道もわからないのに、進んだんだ。
メルヴィナがさ、もしかしたら、味方が来てスルツキの兵士をやっつけてるかもって言うんだ。
確かに、そうかもって。何かにすがりつかないと前に進めなかった。
だから、俺達は、音がする方に味方がいるって希望を持って、そっちに向かったんだ。
81 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 00:55:53.33 ID:kv3yaWMo
でも、それが間違いだった。
83 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 00:58:43.25 ID:kv3yaWMo
山と山の間に、少し開けたところがあって、俺達はそこに出たんだ。
あんなに体力が落ちてなければ、疲れていなければ、もっと冷静に考えられたのかもしれない。
だけど、この時の俺達は、子どもで そこまで思考能力もなかったし、そして疲れ果てていて、頭が回らなかったんだ。
84 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:02:47.31 ID:kv3yaWMo
開けた場所の半分くらいまで歩いた時だった。
横の道から、振動と共に何かが近づいてくる音がしたんだ。
もうさ、前の方からは爆発音とかがしてて、そんなの聞こえないはずなのに、聞き間違いだって思いたかったんだ。
だけど、爆発音の合間に、何かが向かってくる音がするんだ。
俺達は三人だけで、道もわからないのに、進んだんだ。
メルヴィナがさ、もしかしたら、味方が来てスルツキの兵士をやっつけてるかもって言うんだ。
確かに、そうかもって。何かにすがりつかないと前に進めなかった。
だから、俺達は、音がする方に味方がいるって希望を持って、そっちに向かったんだ。
81 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 00:55:53.33 ID:kv3yaWMo
でも、それが間違いだった。
83 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 00:58:43.25 ID:kv3yaWMo
山と山の間に、少し開けたところがあって、俺達はそこに出たんだ。
あんなに体力が落ちてなければ、疲れていなければ、もっと冷静に考えられたのかもしれない。
だけど、この時の俺達は、子どもで そこまで思考能力もなかったし、そして疲れ果てていて、頭が回らなかったんだ。
84 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:02:47.31 ID:kv3yaWMo
開けた場所の半分くらいまで歩いた時だった。
横の道から、振動と共に何かが近づいてくる音がしたんだ。
もうさ、前の方からは爆発音とかがしてて、そんなの聞こえないはずなのに、聞き間違いだって思いたかったんだ。
だけど、爆発音の合間に、何かが向かってくる音がするんだ。
85 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:04:56.98 ID:kv3yaWMo
味方かもしれない。
でも もしスルツキだったらどうしよう。
色々不安と期待があった。
俺は怖くて、迷って、そして その場で止まってたんだ。
そしたら、メルヴィナがとりあえず逃げなきゃって言ってさ、俺はソニアの手をつかみながら全力で前の森というか、山に向かって走ったんだ。
86 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:06:29.56 ID:kv3yaWMo
それで、何とか木のところまで来て、良かった。何とか隠れられたって。そう思ったんだ。
それで後ろを振り返ったら、メルヴィナがいないんだよ。
何でって思ったら、メルヴィナがさ、メルヴィナがこんな時にだよ。こんな時に限ってさ、転んじゃってるんだよ。
87 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:10:14.94 ID:kv3yaWMo
もう近づいてくる音も かなり大きくなっていて、振動もしてきていたんだ。
メルヴィナ早く立って こっちに来いって叫んだんだ。
だけど、メルヴィナは立たないんだ。いや、立てないんだよ。
3日間も、殆ど寝ないで飲まず食わずで歩いてきたんだ。
体力的にも精神的にも、限界なんてとっくに通り越してたんだよ。
88 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:15:11.60 ID:kv3yaWMo
俺は助けに行かなきゃって、もう見つかってもいい。
ここで俺がおとりになれば、もしかしたら二人は助かるかもしれないって。
それで飛び出してメルヴィナの所に走って駆け寄ったんだ。
でも、メルヴィナを起こそうとしても、メルヴィナは足に力が入らない、立てないって言うんだ。
だけど、こんな所で見捨てるなんて できるわけないじゃないか。
ここまで一緒に行きぬいてきたのに、もう三人だけになってしまったのに、見捨てるなんて出来るわけじゃないないか。
89 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:20:19.33 ID:kv3yaWMo
だから、メルヴィナを背負ったんだ。
だけどさ、情けないよ。全然前に進めないんだ。
この時、俺は8歳で、小学3年ぐらいだったんだ。
男女の差といっても、体格的にも、肉体的にもまだそこまで差がなかったんだ。
普段だったら、それでも何とか歩けたはずなんだ。
でも、この時の俺には そんな力なんて残っていなかったんだよ。
頼むから前に進んでくれって頭の中で思っても、全然前に進めないし、足のふんばりも効かないんだ。
もう、向かってくる音は かなり鮮明になっていて、金属音も混じっていたんだ。
俺とメルヴィナの姿が相手に見られるのも、時間の問題だった
90 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:22:24.82 ID:kv3yaWMo
俺はメルヴィナに大丈夫だから、俺が何とかするからって言ったんだ。
だけど、メルヴィナがさ。泣きながら、「もういいから、ソニアの所に行って隠れて」って言うんだ。
そんな事出来るわけないじゃないかって怒ったんだ。
だけど、メルヴィナは このままじゃ見つかるって。今ならまだ間に合うって。
今隠れれば、ソニアと俺は助かるって言うんだよ。
94 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:27:28.10 ID:kv3yaWMo
俺は嫌だ嫌だって言って、背負ったまま前に進もうとしたんだ。
そしたら、メルヴィナが暴れてさ、地面に落ちてしまったんだ。
すぐにまた背負おうとしたんだけど、メルヴィナがあばれて、背負えないんだよ。
何するんだって言ったらさ、お願いだから隠れて!って。
俺とメルヴィナが見つかったら、ソニアはどうなるって、
このままじゃ全員捕まっちゃうって叫ぶんだ
だから二人だけでも逃げてって泣きながら叫ぶんだ
俺は弱虫なんだよ。
俺はメルヴィナの所に留まっておくべきだったんだ。
それなのに、体が勝手にソニアの所に向かってるんだよ。
何やってるんだよ やめろって自分にいっても、体が勝手に逃げちゃうんだよ。
95 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:30:21.54 ID:kv3yaWMo
ソニアの所へ入る直前か、直後かわからない。
隠れて振り返ったら、戦車が向かってきていた。
メルヴィナは俺が隠れたのを確認したら、横になりながら体を動かして俺達の方向に背を向けたんだ。
96 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:32:16.05 ID:kv3yaWMo
頼むから味方でいてくれって、敵だとしたら、気づかないで そのまま通り過ぎてくれってそう祈った。
だけど、現実は全然幸運なんてないんだよ。思ったとおりにならないし、神様なんていなかったんだ。
戦車はメルヴィナの横で止まって、上からスルツキの軍服を着た兵士が出てきたんだ。
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/23(日) 01:33:07.21 ID:kCiiXcE0
外務省のHP見てた
>1992年4月、BHの独立を巡って民族間で紛争が勃発し、3年半以上にわたり各民族がBH全土で覇権を争って戦闘を繰り広げた結果、死者20万、難 民・避難民200万と言われる戦後欧州で最悪の紛争となった。
これか・・・
そんで
>日本は、1996年1月23日にボスニアを国家承認し、同年2月9日に外交関係を開設した。
っつーことは当時は日本大使館もなかったわけか。
98 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:39:47.15 ID:kv3yaWMo
ごめん。あんまり細かく書きたくない。ごめん。
降りてきた兵士はさ、メルヴィナの事を蹴ったんだ。
メルヴィナは濁った叫び声を一瞬だしてさ、生きているって確認した兵士は、笑いながら何かを言った。
そしたら もう一人、兵士が出てきて、暴れるメルヴィナを叩いて、服を脱がせて乱暴したんだ。
たった8歳の少女に乱暴したんだよ。
メルヴィナは泣き叫んでもおかしくないのに、自分の口を手で押さえて、叫ばないようにしてるんだよ。
99 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:42:09.12 ID:kv3yaWMo
俺らに助けを求めないように、俺らが見つからないようにしてるんだよ
自分が酷い目にあってるのに、怖くて痛くて辛いはずなのに、メルヴィナは自分よりも俺達を心配して、自分の口を押さえてるんだよ。
俺とソニアを助ける為に必死に耐えてたんだ
105 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 01:51:55.59 ID:kv3yaWMo
すぐに でも飛び出さなきゃいけない。助けなきゃいけない。
でも、それをしたらメルヴィナの行動は全て無駄になってしまう。
俺には決断できなかった。
何でこんな選択をしなきゃいけないんだって、山中の生活を通して、感情をあまり外に出せなくなっていたソニアや俺は泣きながら見ていることしか出来なかった。
これが戦争なんだって。
これが人間なんだって。
これが神様の作った世界なんだって。
神様なんて、残酷な悪魔だと思った。
俺は本当に無力で、何も出来ない弱虫で、本当は俺が あそこで殺されているべきなのに、俺はメルヴィナに代わって死ぬほどの勇気を持っていなかったんだ。
持っていたとしても、それは本当の勇気だとか決意じゃなかったんだ。
日本に居る頃は、自分は何でも出来る、やろうと思えば何でも出来る人間だと思っていた。
だけど、実際の俺は あまりに無力で何も出来ない弱虫だったんだ。
>>次のページへ続く
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