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バイクで日本一周してる女の子と仲良くなった話
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169 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:14:33.46 ID:DK1TNxo90
その次の日の晩、軽く残業して帰ってきて、晩飯を食って、2人で床に着いた後の事だった。
電気を消して もうお休みと言ってから、五分くらいだっただろうか。冬美がもぞもぞと動いき、小さな声で話しかけてきた。
冬美『・・・・ねえ、譲二さん、まだ起きてる?』
俺『ん、ああ、まだ起きてるぞ、・・・・どうした?』
冬美『・・・・あのね、私ここに来て、今週末で半月になるんです。』
俺『ああ、そうだな、そう言えばそうだな・・・・』
冬美『それでね、譲二さんは楽しいし、お姉さんは優しいし、旦那さんも甥っ子君もみんな・・・・』
俺『・・・・・みんな・・・・それで?』
冬美『・・・・・みんな、いい人たちで・・・・あたし・・・・一生忘れないと思います。』
俺『・・・・・・そうか、ありがとな』
冬美『・・・・今週末の日曜の朝、出発しようと思います、バハも調子よくなって戻ってきたし・・・』
俺『・・・・そうか、あっという間だったな・・・・』
冬美『あたしね、ここにこれ以上居るとね、もうウチに帰れなくなっちゃうと思うの』
俺『・・・・・・・・・』
冬美『この先あたしがどうするか、まだわからないけど、それでも一度はウチに帰らなきゃ・・・・』
俺『そうだな・・・・お母さんも心配して待ってるだろうしな・・・、・・・・・。』
その時 俺はお母さんの後に『お兄ちゃんも』と、付け加える事が出来なかった。
全く未熟モンだったなとは思うが、それまでの夏の北海道での出会いと、秋の再会って経緯。まだまだ若造であった二十代半ばの当時を考えると、ま、仕方なかったかなとも思う。
冬美『ねえ譲二さん、あたし、最後に譲二さんと一緒に走りたいな、途中まで見送ってくれます?』
俺『ああ、もちろん、とっておきのいい道を案内してやるよ、楽しみにしてな・・・・』
そして次の日曜には間違いなく冬美との別れがやってくる、うつ伏せで寝ながら声で笑って顔と心で泣いて。
その割にはあっさりと眠って朝までぐっすりだった、ある意味で安心してしまったって事だったのかなあ。
170 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:16:39.96 ID:DK1TNxo90
・・・・そして もうあっという間にお別れの朝になる、お互いの身支度はもう出来ていて、後はもう出発するだけだ。
日本一周分の荷物は頑丈なバハの頑丈なキャリアにがっちり固定され、元の過積載旅人仕様に戻っていた。
もう十月も半ばを過ぎて、ここは東北の地方都市、2人の服装はすっかり冬仕様だ。
見送りは姉一家全員とぬこ一匹、姉はアレをもっていけ、これを食べなさいと色々と持ってきていた。
でも大量のジャガイモとか一升瓶の地酒とかよwwww、バイクなんだから無理だってwww
冬美は苦笑しながらも何度も礼を言って、お昼ゴハンにと作ってきたオムスビだけを受け取ってサイドバッグに入れた。
姉ちゃんは冬美の手を握って何度も何度も、気をつけて気を付けてと繰り返していた。
甥っ子は姉旦那に抱っこされて今にも泣きそうな顔だ、毎日のように冬美に遊んでもらっていたからな・・・。
・・この場面を詳しく書いてると大菩薩グイン峠サーガになるので この辺で、俺はドジェベルに跨り、九時きっかりに冬美を促して出発した。
その次の日の晩、軽く残業して帰ってきて、晩飯を食って、2人で床に着いた後の事だった。
電気を消して もうお休みと言ってから、五分くらいだっただろうか。冬美がもぞもぞと動いき、小さな声で話しかけてきた。
冬美『・・・・ねえ、譲二さん、まだ起きてる?』
俺『ん、ああ、まだ起きてるぞ、・・・・どうした?』
冬美『・・・・あのね、私ここに来て、今週末で半月になるんです。』
俺『ああ、そうだな、そう言えばそうだな・・・・』
冬美『それでね、譲二さんは楽しいし、お姉さんは優しいし、旦那さんも甥っ子君もみんな・・・・』
俺『・・・・・みんな・・・・それで?』
冬美『・・・・・みんな、いい人たちで・・・・あたし・・・・一生忘れないと思います。』
俺『・・・・・・そうか、ありがとな』
冬美『・・・・今週末の日曜の朝、出発しようと思います、バハも調子よくなって戻ってきたし・・・』
俺『・・・・そうか、あっという間だったな・・・・』
冬美『あたしね、ここにこれ以上居るとね、もうウチに帰れなくなっちゃうと思うの』
俺『・・・・・・・・・』
冬美『この先あたしがどうするか、まだわからないけど、それでも一度はウチに帰らなきゃ・・・・』
俺『そうだな・・・・お母さんも心配して待ってるだろうしな・・・、・・・・・。』
その時 俺はお母さんの後に『お兄ちゃんも』と、付け加える事が出来なかった。
全く未熟モンだったなとは思うが、それまでの夏の北海道での出会いと、秋の再会って経緯。まだまだ若造であった二十代半ばの当時を考えると、ま、仕方なかったかなとも思う。
冬美『ねえ譲二さん、あたし、最後に譲二さんと一緒に走りたいな、途中まで見送ってくれます?』
俺『ああ、もちろん、とっておきのいい道を案内してやるよ、楽しみにしてな・・・・』
そして次の日曜には間違いなく冬美との別れがやってくる、うつ伏せで寝ながら声で笑って顔と心で泣いて。
その割にはあっさりと眠って朝までぐっすりだった、ある意味で安心してしまったって事だったのかなあ。
170 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:16:39.96 ID:DK1TNxo90
・・・・そして もうあっという間にお別れの朝になる、お互いの身支度はもう出来ていて、後はもう出発するだけだ。
日本一周分の荷物は頑丈なバハの頑丈なキャリアにがっちり固定され、元の過積載旅人仕様に戻っていた。
もう十月も半ばを過ぎて、ここは東北の地方都市、2人の服装はすっかり冬仕様だ。
見送りは姉一家全員とぬこ一匹、姉はアレをもっていけ、これを食べなさいと色々と持ってきていた。
でも大量のジャガイモとか一升瓶の地酒とかよwwww、バイクなんだから無理だってwww
冬美は苦笑しながらも何度も礼を言って、お昼ゴハンにと作ってきたオムスビだけを受け取ってサイドバッグに入れた。
姉ちゃんは冬美の手を握って何度も何度も、気をつけて気を付けてと繰り返していた。
甥っ子は姉旦那に抱っこされて今にも泣きそうな顔だ、毎日のように冬美に遊んでもらっていたからな・・・。
・・この場面を詳しく書いてると大菩薩グイン峠サーガになるので この辺で、俺はドジェベルに跨り、九時きっかりに冬美を促して出発した。
171 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:17:49.24 ID:DK1TNxo90
俺が目で合図すると冬美が軽く頷く、俺から一呼吸遅らせて淡々と着いてくる冬美。
お互いを知り尽くして息が合った長年の連れのように、片時もミラーの中から離れず離さず。
一旦 国道に出てからバイパスに入り、交通量が少なく走りやすい広域農道にバイクを進める。
みんなが大好きなツーリングマップルには、まあ、載らないでしょって、しょぼい道だけど。
それでも長年走りまくって知り尽くした地元だ、カーブの向こうの田園風景とか、真っ盛りの紅葉とか。
後ろを走る冬美の為に心を込めて、前を走る俺の姿と一緒に思い出になってくれと願いながら。
道路の真ん中に突然現れる図々しいカモシカに興奮したり、道端の湧き水の綺麗さに感動したり。
そんな風にして少しずつバイクは俺の家を離れて行き、その代りに冬美の故郷に近づいていった。
特に観光なんかはしなかったし、名物の美味い物も食わなかった、そんな事より少しでも一緒に走って居たかった。
172 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:19:03.65 ID:DK1TNxo90
山の中を縫うように走り日本海が見えてきた、時間は昼の一時過ぎくらいだった。
昼食のお握りを食べる為に、季節外れの海水浴場に入り込む。
もちろん海水浴客は居ないが、波が有ったので数人のサーファー達が海に出ている。
連中のハイエースやピックアップから暫らく離した位置にバイクを止め、護岸のコンクリの上に並んで腰掛けた。
ここに来る前に寄ったコンビニで買った熱いお茶を取り出し、姉ちゃんのおにぎりを2人で分けて食べた。
大き目のおにぎりが6個もあったので、2人で2個ずつ食べて、残り2個は冬美がバッグに仕舞い込んだ。
俺はバッグから愛用のテルモスを取り出し、今まで何度もそうしたように冬美とコーヒーを飲んだ。
俺はテルモスの蓋で、冬美はコールマンのステンレスマグで、並んで海を見ながらコーヒーを啜った。
173 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:20:04.87 ID:DK1TNxo90
冬美『寒いのに、よく頑張りますね・・・・』
俺『ん?何が?』
冬美『いや、あの、サーフィンやってる人たち』
俺『ああ、アレって結構寒くないらしいぞ、海に入ってる分には、厚手のウェットスーツ着てるから』
冬美『ふーん・・・・でも凄いですよね、いくら暖かくっても、海ですよwww』
俺『そうだな、でも寒そうだけど楽しそうだよな・・・・』
冬美『帰ったらやってみようかなあ・・・・、地元の友達でやってる子多いんですよ。』
俺『そうだな、九州なら ここよりは暖かいだろうしな、何でもやってみればいいよ』
冬美『そうですね、何でもやってみなくちゃ、・・・でもその前に・・・』
俺『・・・・その前に?』
冬美『うちに、帰らなきゃ・・・・』
俺『そうか・・・・・・そうだな。』
冬美『もう、真っ直ぐウチに帰りますよ、最短距離で、昼は走って、都合が合えば夜はフェリーで距離稼いで。』
俺『え・・・折角の日本一周なのに、勿体無くないか?、時間だって、まだあるんだろう?』
冬美『そうなんですけどね・・・・・、もう、この旅って、終わったような気がしてるんですよ』
俺『・・・・・・・・・?』
冬美『北海道で譲二さんと会えて、ここで一緒に居られて、色々話できて、もう、それだけでお腹いっぱい。』
俺『・・・・そうか、・・・・・俺も、楽しかった、有難う、冬美。』
冬美『・・・・有難う、譲二さん・・・・・』
174 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:21:06.12 ID:DK1TNxo90
それから暫らくの間 とりとめの無い会話を交わし、気が付いたら午後三時になろうとしていた。
冬美の今晩の宿は昨日の夜マップルで見つけた星印、100キロほど先にある町の健康ランドだ。
秋の日の入りと気温を考えると、もういい加減に出ないとまずい時間だ・・・・。
冬美『・・・もう、行かなきゃ・・・・・』
俺『ああ、日が落ちてから走ってたら寒さで死ぬからな、・・・気をつけてな・・・・』
冬美『はい、譲二さんも安全運転で、元気で居てくださいね・・・・』
俺『ああ、・・・・じゃあ行くか?』
冬美『・・・・はい、でも、その前に・・・・ちょっと譲二さんのヘルメット見せてもらえますか?』
俺『・・・・・・いいけど、何だ・・・・?』
冬美『ちょっと待ってくださいね、・・・イイ事思いついたんですwww』
偶然だが同じメーカーの同じモデルのオフメット、違うのは帽体のサイズだけだ。
冬美は慣れた手つきでまずは自分のメットのバイザーを取り外し、次に俺のメットからもバイザーを取り外す。
ふたつ取り外して両手にとって見比べてから、今度は俺のメットに自分のバイザーを取り付け始めた。
俺は ここで冬美が何をしているのかやっと気付いた、なんとお互いのヘルメットのバイザーを交換しようと言うのだ。
だが俺のは最初から着いてる純正、冬美のは明らかに後付の高価な銀メッキバイザーだ。
175 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:22:03.62 ID:DK1TNxo90
冬美『・・・・これで、よしっとwww、バイザー交換終了っす!』
俺『いや別に構わんけどな、お前のそれって、後付の奴だろ、いいのか?』
冬美『え?、そうなんですか?、友達の彼氏からバイク買った時、おまけに貰っただけなんですけど』
俺『買えば五千円くらいはするよ、それにメットに貼ってるステッカーキットだって大した値段だぞ』
冬美『え・・・・コレも後付なんですか?、最初からこんなで売ってると思ってました。』
冬美のメット全体にセンスよく貼られている、火の玉の様な模様のステッカー。
どうも冬美の友達の彼氏とやらはナカナカにいいセンスをしている様で、黒地のメットに赤の火の玉がとても良く映えている。
明らかにトロイリーデザインズの本物で、それもキットで五千円位はするであろう高級品だ。
冬美『そんな高級品だったんですか・・・・・・・、でもコレ・・・・・譲二さんに付けてもらいたいんです。』
俺『・・・・・うん、分かった、有難う、大事にするよ。』
冬美『はい、あたしも、大事にしますね・・・・・』
176 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:28:57.80 ID:DK1TNxo90
ここでもう、本当に出発するしかやることがなくなった・・・・・。
2台並んだバイクの間に立ち、お互いの愛車を背にした格好で向かい合う。
キーを差し込んで、・・・・チョークを引いてセルを回して・・・・・。
その簡単な動作が、どうしても出来なかった。
どちらからとも無く、にじり寄り、・・・・抱き合った。
俺は遂に我慢できずに泣いていた、冬美も泣いていた・・・・・。
強く抱き締めあい、むしゃぶりつく様にキスをした。
サーファー達から丸見えの位置だったが、そんな事は一切気にしなかった、気付かなかった・・・。
涙だか鼻水だか唾液だか、しょっぱいんだか甘いんだか舌何だか唇何だか。もう何でも良かった、汚いとか恥ずかしいとか、一切感じなかった。
そうしていたのは五分くらいだったと思う、やはりどちらからともなく体を離し、最後の指先が離れた。
真っ赤になった目をこすり、じゃくり上げてごまかして。
ゆっくりと、でもしっかりとした動作でヘルメットを被り、ゴーグルをあわせ、アゴ紐をしっかりと締め、グローブを身に付ける。
バイクに跨り、チョークを引き、エンジンをかけ、お互いが帰る家に向かって。
海水浴場に繋がる砂まみれの小道を2速で登り、国道の前の赤信号で並んで停まる。
信号が青になり、俺たちは見つめ合って、最後にゴーグル越しに、にっこりと笑いあう。
同時に2人の最後のクラッチを繋ぎ、俺は左に、冬美は右に。俺は北に、冬美は南に。
お互いのバイクが走る速度と、同じだけの勢いで俺たちの距離は遠ざかり、そしてもう、二度と会うことはないのだろう。
夏のニセコのあの日、あのテントの横から始まった俺の旅が、この時本当に終わった。
生涯忘れる事のない女との、もう二度とない最高の旅だった。
おわり
>>次のページへ続く
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