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76 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 18:46:41.49 ID:4lzSEILTH.net
井上陽水の少年時代をBGMに読みたいと思います。続き楽しみにしています。
79 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:26:09.76 ID:mR9MWEUH0.net
さっきまでは、会って2日目だということを感じさせない程に会話が盛り上がっていた。
だが、絵を描き始めると会話が少なくなる。
集中して絵を描くことに慣れてない俺も、やっぱり昨日みたいに集中してしまう。
お互いの絵が完成するまでに会話はなかった。
80 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:26:42.30 ID:mR9MWEUH0.net
俺「やっぱり負けたかぁ、俺だって絵には自信あるんだけどな」
美凪「私も自信あるよ〜!だって小さい頃からずっと絵を描いてるからね」
俺「やっぱりそうだと思った。そうじゃないとここまでの絵は描けないよ」
81 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:27:50.06 ID:mR9MWEUH0.net
俺と違って美凪は本当に絵が大好きなんだろう。
2回しか会っていないが、美凪は本当に楽しそうに絵を描いているのが伝わる。
美凪「私が小さい頃に、お母さんがこのイーゼルと筆をくれたんだ〜。それからずっと絵を描き続けてたの」
俺「俺が勝てないわけだwww」
笑っていたが内心はかなり悔しかった。地元に帰るまで、この合宿中に美凪に絶対勝ちたいなとも思った。
井上陽水の少年時代をBGMに読みたいと思います。続き楽しみにしています。
79 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:26:09.76 ID:mR9MWEUH0.net
さっきまでは、会って2日目だということを感じさせない程に会話が盛り上がっていた。
だが、絵を描き始めると会話が少なくなる。
集中して絵を描くことに慣れてない俺も、やっぱり昨日みたいに集中してしまう。
お互いの絵が完成するまでに会話はなかった。
80 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:26:42.30 ID:mR9MWEUH0.net
俺「やっぱり負けたかぁ、俺だって絵には自信あるんだけどな」
美凪「私も自信あるよ〜!だって小さい頃からずっと絵を描いてるからね」
俺「やっぱりそうだと思った。そうじゃないとここまでの絵は描けないよ」
81 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:27:50.06 ID:mR9MWEUH0.net
俺と違って美凪は本当に絵が大好きなんだろう。
2回しか会っていないが、美凪は本当に楽しそうに絵を描いているのが伝わる。
美凪「私が小さい頃に、お母さんがこのイーゼルと筆をくれたんだ〜。それからずっと絵を描き続けてたの」
俺「俺が勝てないわけだwww」
笑っていたが内心はかなり悔しかった。地元に帰るまで、この合宿中に美凪に絶対勝ちたいなとも思った。
82 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:28:40.92 ID:mR9MWEUH0.net
美凪「イッチ、絵を描くことって楽しいでしょ?」
83 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:30:25.43 ID:mR9MWEUH0.net
という美凪の一言に、俺はビクッとした。
昨日までならそんなことねぇよと簡単に答えられたと思う。だが、今は何も答えられない。
たった2回の勝負で美凪は、俺に絵を描くことの楽しさを教えてくれていたのかもしれない。
俺は楽しくないだなんて答えられなかった。
なんで返答したかも覚えてない。
それほど曖昧な返事をしていたと思う。
84 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:34:02.88 ID:mR9MWEUH0.net
俺は負けた悔しさと、絵を描くことの楽しさについて曖昧な返事しか出来なかった恥ずかしさで少しムスッとしながら、再び筆を持った。
美凪は筆をしまい、本を取り出しページをめくった。絵を描いていたかと思えば次は読書か、不思議な子だなと思った。
85 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:35:19.26 ID:mR9MWEUH0.net
美凪「イッチは読書する人?」
俺「それなりにはするよ。好きな作家は?」
美凪「坂口安吾!大好きなの!」
急に大声出すからビビった。それほど好きなのか。渋いしほんとに不思議な子だな。
美凪の手には、坂口安吾の「白痴」が握られていた。読んだことはあるが内容は覚えていない。
86 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:39:10.82 ID:mR9MWEUH0.net
俺「『白痴』は前に読んだことあったっけなぁ」
美凪「ほんとに!?あの独特な作風とか癖になるんだよね〜。昔から好きでさ」
俺「俺もそこまで読んだことはないけどねwww 昔の作家だったら推理小説が好きだから、江戸川乱歩とかが好きかな。」
87 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:39:53.78 ID:mR9MWEUH0.net
美凪はバッグから次々と昔の文豪たちの名作を取り出して見せた。中には推理小説も沢山あった。
アーサー・コナン・ドイルや東野圭吾の作品まで。かなりの数の本を持ち歩いてるんだなと感心した。
美凪が好きな物を語っていると、本当に好きなんだろうなって俺にまで伝わってくる。プレゼンの才能とかあるんじゃないか?
88 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:40:34.92 ID:mR9MWEUH0.net
俺もそれなりの読書好きだったので、話は更に盛り上がった。
坂口安吾が!三島由紀夫が!と熱く語る美凪を見るのは微笑ましかった。
昔の文豪のような丸メガネをかけさせたら似合うんだろうなと思ってみたり。
89 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:40:54.93 ID:mR9MWEUH0.net
そして、昨日は分からなかったが、今日になって美凪の個性の強さがよく分かった。
本を急に閉じたかと思えばルービックキューブをやり始めるし、急に携帯電話で写真をパシャリと撮り始める。
昨日よりもお互いに心を開いていたのもあったが、もはやシュールな光景だった。
90 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:42:00.37 ID:mR9MWEUH0.net
一番記憶に残っているのは、美凪が大きなヘッドホンで聴いていた、尾崎豊の「シェリー」だった。
俺も尾崎豊のファンで、「シェリー」もお気に入りの曲だった。
そして、やっぱり美凪のヘッドホンは筆やイーゼルと同じく、年季が入りつつも立派なものだった。
掘り出し物とかレトロな物が好きなマニアとかは羨ましく思うんじゃないだろうか。
俺「尾崎豊好きなの?俺もよく聴くよ」
美凪「ほんとに!!私もすごく好きで!イッチと趣味が近いのかなwww?」
美凪「私、歌も上手いんだよー!」
とか言って歌ってくれた。
91 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:43:43.77 ID:mR9MWEUH0.net
シェリー、いつになれば俺は這い上がれるだろう。
シェリー、どこに行けば俺はたどりつけるだろう。
切ない曲調なのに美凪は楽しそうに歌っていた。
ぶっちゃけ美凪は、そこまで歌は上手くなかったんだが、俺も ついついのっちゃって歌ってみたりした。
「傷つけた人々へ」 「Forget‐me‐not」 「街路樹」 …………とか色んな話をしたのを覚えてる。
92 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:46:58.10 ID:mR9MWEUH0.net
美凪「あー!全部好き!趣味が近いのかな!」
とか、やっぱりはしゃいで笑ってる。
この頃の女子高生って、西野カナとかback numberとかが好きって思ってた。だからやっぱり渋いな、と思った。
93 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:47:50.13 ID:mR9MWEUH0.net
初対面の時に感じた落ち着いたイメージはもうどっかに飛んでって、元気で素直で不思議な子ってイメージになっていた。
美凪は普段、「え〜」 「そうだよ〜」 みたいにやんわりと語尾を伸ばすように喋るまったり系。
でも好きなことになると大声ではしゃぐ。
不思議と心地いい声で、話していて楽しい。
それからも話したり、ふと立ち上がって東屋の周りをグルグルし始めたり、シュールな行動は目立ったが、筆を握ると真面目な顔に。
俺はそんな美凪に確かな魅力を感じていた。
94 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:48:41.31 ID:mR9MWEUH0.net
長い間、携帯を見たり、ボーッとしたり、美凪と話してみたりしていた。
だけど、美凪が筆を持つとつられて俺も筆を持つ。
俺は美凪の絵を一枚描いた。筆を持ち集中する美凪の顔はとても綺麗だったから。
なんだろうか、可愛いとかタイプとか(それもそうなのだが)とは少し違う
説明がしにくいのだが、そんな綺麗さがあった。
95 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:49:47.36 ID:mR9MWEUH0.net
たまに絵を描いて、たまに話す。
時間が過ぎるのも忘れるような不思議で安心する時間だったから、すぐに空が暗くなってきた。
耳からは外していたが、美凪のヘッドフォンからは相変わらず、尾崎豊の「シェリー」が流れていた。
96 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:50:47.36 ID:AKdGRNNO0.net
真剣に物事に打ち込んでいる人は美しいって教授が言ってたな
97 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 19:52:14.15 ID:mR9MWEUH0.net
美凪「イッチ、この峠道の上の民宿でしょ?」
と、更に空が暗くなってきた頃に美凪が話し出した。
近くの民家からも、昨日樋口と聴いたような風鈴の音は聞こえない。
だが、代わりにヒグラシが鳴いている。
俺「そこくらいしか民宿無さそうだからねwww」
美凪「私、民宿のおばさんによくお世話になってるの。よろしく伝えといてよ〜!」
俺「そうなのか、おばさん優しいもんな、伝えとくぞ」
美凪「ありがと〜!イッチ、今日はそろそろ帰るでしょ?」
俺「毎日遅刻する訳にはいかんしなwww」
あぁ、今日は俺らしくないくらい絵描いたな。また褒められそうだな、なんで考えながら道具を片付け始める。
ふと見た制服の袖が、今日も汚れていた。
>>次のページへ続く
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