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先生を好きになった話
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58 :名も無き被検体774号+:2021/12/21(火) 12:51:18.50 ID:HXEO5afsa.net
中には数種類のチョコレートがたくさん入っていた。

R先生「美味しそう!一緒に食べよーw」

先生はホワイトチョコを俺に食べさせてくれた。ここで もう一つサプライズを考えていた。

俺「Rちゃん待って、食べさせてあげる」

そう言って俺はゆっくりだが手を動かし端にあるチョコレートを摘んだ。先生は驚いた顔で手で口を覆い、瞳を潤ませていた。


R先生「手が動いてる…」

俺「サプライズだよ。Rちゃんにも一回やられているからねw」


先生の口にゆっくりと手を伸ばし口に入れてあげた。食べながら静かに流し始めた先生は、俺にはにかみながらも「美味しい」と笑顔を見せた。

しかし何かを思い出したかのようにはっとした表情を見せ、俺にまた顔を向けた。

R先生「手が動くならLINE返せw 何日無視されてると思ってるのw」

俺「返しちゃうと今日のこれができないよw」

R先生「あーあ、黙ってたんだ。喧嘩だ喧嘩」

俺「バカだwwww」

R先生「wwww」

その日は比較的ゆっくり話が出来て、昼過ぎから夕方まで話していた。


R先生「話しすぎたw もうそろそろ帰るね」

俺「うん、Rちゃんありがとう。またね」

R先生「…」

先生はドアに向かっていたが、突然こっちにまた戻ってきて俺を強く抱きしめた。

心臓が破裂するかと思うくらい緊張した。静まり返った病室で、先生の心臓の音も伝わってきそうな緊張感だった。

俺を話すと先生は涙を流しながら「またね」と手を振って笑顔を見せ、病室を後にした。俺はしばらく放心状態だった。



59 :名も無き被検体774号+:2021/12/21(火) 13:03:39.08 ID:HXEO5afsa.net
抱きしめられた時は「え?なに?」と思うと同時に静かな病室が異空間のように感じた。

抱きしめ返すことはできなかったが、確かに先生の感触は残っていた。

看護師が入ってくるまで俺はドアを見つめたまま病室の時計の秒針の音だけが耳を通り抜けていた。



落ち着きを取り戻した俺は先生に内緒で この日の夜から もう一つサプライズを計画し始めた。

看護師に手伝ってもらい、車椅子に乗り自分で漕ぐ練習を始めた。

離任式に突然登場しようというものだった。他の先生方の協力も必要になる。俺は学校に電話して計画の提案をした。

両親にも伝え、全面協力のもと、俺の計画は着々と進んでいった。

あと2週間で車椅子を漕げるように回復しないといけない。長い日は1日5時間以上練習した。

そして当日までに何とか間に合った俺は夕方前に病院を出た。

少し日が落ちわずかに薄暗い夜、久しぶりの外の空気だが、それも どうでもよくなるほど高揚感でいっぱいだった。

冬の風、初めて心地よく感じ、寒さなど身に染みることはなく意気込んで出発した。





60 :名も無き被検体774号+:2021/12/21(火) 13:26:25.93 ID:HXEO5afsa.net
学校に着くと教頭先生が迎えてくれた。

怪我の心配もしてくれつつ、待機場所に指定してある事務室に連れて行ってもらった。

式が始まる直前に入室して驚かせようという算段だった。

先生や生徒が着席し、今始まろうとしているとき、静かにドアを開けた。

漫画やアニメの主人公の登場シーンはこんな感じなんだろうか。そう思えるほど会場が静まり返り、俺に視線が集まった。

車椅子を漕いで自分の席に行き、何事もなかったようにそのまま参加しようとした。

生徒や先生たち笑顔、R先生だけキョトンとしており先生は全てを察した。


R先生「俺くんやりやがったなw」

マイクで俺にそう告げると俺は笑顔で手を振ってやった。

いつも強気な先生、挨拶を淡々と済ませ、みんなからの拍手を受けながら自分の席に戻った。

視線はすぐに俺の元へ。目を見開いて威嚇してきたw 後でやられると感じたがそれも幸せだった。

先生と会うのは今日が最後かもしれない。俺は最高の1日にしようと心に決めてきた。もちろん先生にとっても。

退場前に車椅子の後ろのポケットからスズランの花束を取り出し先生に手渡した。

初めて教官室でやられたように頭を雑に撫で回された。目には少し涙が見えた気がする。


式が終わると俺は早く病院に戻らないといけなかったため、早めに撤退した。先生とは話すことなく お別れになった。

寂しいようだが自分なりにはこれでよかったのだ。踏ん切りがつくかはわからない。でも確かに俺は先生を好きになってよかった。そう思えた。


病院への道中自然と涙が溢れた。この涙の意味は自分でもわからないが、嫌なものではなかった気がする。

窓から見える暗い夜道を眺めながら気づくと眠りに落ちていた。



61 :名も無き被検体774号+:2021/12/21(火) 13:34:18.13 ID:HXEO5afsa.net
病院に到着し、病室に戻ると一気に現実を突きつけられた気がした。


先生のために一生懸命頑張ったリハビリも、もうあとはただの自分のため。

燃え尽き症候群というのだろうか、虚無感は大きかった。


看護師に着替えを手伝ってもらいながら今日のことを話した。


俺「無事成功しました」

看護師「よかったね!先生喜んでくれた?」

俺「たぶん喜んでくれたと勝手に思ってます」

看護師「話してこなかったの?」

俺「外出許可の時間ギリギリだったので」

看護師「そんなの律儀に守るなよ〜w告白してないの??」

俺「するわけないじゃないですかw」

看護師「学校変わるなら生徒と教師じゃないんだし言えばよかったのに!」

俺「先生は俺のことそういう目で見てませんから」

看護師「意気地なしwナースステーションでの話盛り上がらないよ〜」

俺「知りませんよw」


確かに今考えてみれば玉砕覚悟で言ってもよかったかもしれないと思った。

ダメだったら諦めもついただろう。

しかし言葉にすることで先生と本当に離れてしまうことを恐れて行動できなかったのだ。

看護師の言う通り意気地なしのヘタレだったのだ。





63 :名も無き被検体774号+:2021/12/21(火) 13:41:58.04 ID:HXEO5afsa.net
翌日の朝、俺は携帯を見ずに寝てしまったため朝確認した。

すると先生からLINEが来ていた


「Aくん粋なことするじゃないかw てかまた黙ってあんなことして。喧嘩だw

花束ありがとう。大事にするよ。

またお見舞い行きたいから まだ退院しないでねw これからもお互い頑張ろう!」


俺はもう先生には会えないのかもしれないと思うとこのLINEを見て涙が溢れた。

それを見て看護師がLINEを覗き見しようとしてきたから阻止した。


あの日常が無くなっても穴ができないくらい毎日頑張ろうと意気込んだ。

それから3ヶ月のリハビリの末、俺は退院できることになった。


先生とはLINEはしていたが、見舞いに来ることはなかった。




65 :名も無き被検体774号+:2021/12/21(火) 13:49:49.30 ID:HXEO5afsa.net
先生は新しい学校で忙しい日を送っているようだった。

LINEが返ってくる頻度も次第に少なくなり、俺もテニスができるように回復するためリハビリと通院をしていた。


ある日会うチャンスができた。

俺のテニスの試合の会場と先生が顧問をしている部活の試合会場が一緒だった。

復帰戦で気合が入っていたが、俄然やる気が出た。

先生からもLINEが来た


R先生「Aくん明日こっちに試合に来てるんだよね!」

俺「そうだよ。復帰戦だから頑張るよ」

R先生「わたしたち午前で終わりだから昼から応援しに行く!」

俺「昼まで残れるかなw 頑張るね」


これで予選落ちすることは許されなくなった。

それにその試合には強豪大学のコーチが視察に来ると言う話を聞いていた。

緊張で夜はほとんど眠れなかった。




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:純愛, 青春, 胸キュン,
 


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