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中学時代の仲間でかけがえのない人が出来た話
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861 :846ことチンカス:05/03/02 23:41:23 ID:f7wzm87F
書かせてもらいます。
結構前の話。
俺の住んでるところは、田舎で遊ぶところが皆無。
だから、バイクでツーリングしたり、車でドライブくらいが楽しみ。中学時代の友人4人で、土曜の夜は集合してバイクの話をしたり、世間話を楽しんでいた。
土曜の夕方あたりになると決まって電話がかかってくる「ねぇ、今晩あたりあつまる?」と、毎週土曜に電話をかけてくるのは直美(仮)ちゃんだ。
「仕事終わるの7時くらいだから7時10分頃いつもの場所でいい?」と、答えるのが毎週土曜日のデフォであった。
仕事が終わり時計を見ると既に、時間は7時ちょうどだった。気軽時間が無かったからツナギのまま、バイクに乗って出かけた。
いつもの場所は、人気の無い緩やかな峠道の中腹にあるトイレと駐車場があるだけで何もない。
いつもの場所に着くと、いつものメンバーがもう集まっていた。
そこで、適当にいろいろな話をしてると、高志(仮)が話を振ってきた。「お前、またツナギかよ。たまにはちゃんと着替えて来いよ」と言われた。
最近は忙しくて、会うときはいつもツナギだった。ミカちゃん(仮)が何か鼻をつまんでいた。
「何か臭くない?」と言われハッとした。今日は、土に肥(堆肥、牛のウンコとかワラとか)を混ぜていたんだ・・・。風呂に入ってくれば良かった。と、思ったが遅かった。
「女の子も来てるんだから、ちゃんとシャワーくらい浴びてきなよw」と直美ちゃんが、腹を抱えて笑っていた。
みんなに笑われて恥ずかしかったけど、この雰囲気がとても好きだった。
「いや、しかし農業って大変だな。ウンコ混ぜたりすんのか」と、高志が言った。
862 :846ことチンカス:05/03/02 23:42:00 ID:f7wzm87F
ウンコは作物にとっては重要な要素なんだ。これだけはいくら臭くてもはずせない!」と、ウンコ論に花が咲いた。
「でも、農業ってお前に似合うよな」と、高志に言われた。
「その理由は??」と、聞いたのはミカちゃんだった。
「だって何かこう顔が、農業してますって感じだろう?むさ苦しいというか・・・」
あははは、と笑い声が響く。
「確かになぁwでも、農業やっててバイクに乗ってるのも何か変な感じだよなぁw」と、言われた。
段々と気分が悪くなってきた。怒りがこみ上げてくると言うよりは、悲しみに近かった。
「トラクターに乗ってる方が似合うぞ!w」と、高志に肩を叩かれた。ハハと笑ってなんとか耐えた。
「今年のボーナス幾らかなぁ?」久志が言った。
俺はボーナスとかそう言うのは無いから、黙って話を聞いてると
「お前、ボーナスは無いんだよな?ローンとかどうしてる?」と聞かれた。
ローンは売上の中から諸経費を引いた分から払ってる、と普通に答えた。
「大変だな、自営業は。確実な収入が無いから」
高志が半ばにやけた顔で言ってきた。
更に、「普通に就職しろよ。その方が楽だぞ!休みの日に働かなくてもいいし。農業なんて流行らないぞ」と言われ、居たたまれなくなった。
「俺は好きでやってるからいいんだ」と、一言だけ言ってその日は帰ってしまった。
863 :846ことチンカス:05/03/02 23:53:31 ID:f7wzm87F
確かに農業は好きだからやってる。
サボテンや多肉植物とか鉢植えの花が好きだったし、親父の影響もあって花を作っている。
本当に好きでやっている事や、好きな物を小馬鹿にされたことが、今まで無かったから本当にショックだった。
高志にしてみれば、ただの笑い話だったのだろうが、俺は深刻だった。
確かに給料とかボーナスという物は存在しない。自分で借金して、作って売って初めて現金が入り、借金を返して、自分の生活費に充てる。
そういったやり繰りをしながら生活するのが、本当に好きだったのに・・・。
その日のショックで次の日、仕事を休んでしまった。
その次の日も休んでしまった。
農業にとって、ずる休みをすると言うことはもの凄く痛いことだ。
それにも関わらず、バイクだけには乗っていた。バイクだけが唯一の拠り所みたいになっていた。
その間、仕事はパートで来てもらっているジンさんという男の人がやっていてくれた。
明日は、しっかり仕事をしようと思い、その日は早めに床に入った。
やっと寝付いた頃に、携帯電話が鳴った。
「元気?ちゃんと食べてる?」と、少し暗めだったのを覚えている。
直美ちゃんだった。あんな帰り方をしたものだから、何を喋っていいのか分からず、ただ「うん」と、なるべく元気そうに答えた。
2002年の話です。正確に覚えてる部分だけです。
ちょっと風呂入ってきます。
869 :846ことチンカス:05/03/03 01:10:53 ID:oZfvFjGr
つづき
話に行き詰まってると、「この前の事気にしてる?」と、聞かれた。
「少し。あんまりそう言うこと言われたこと無かったから・・・」と、答えると
直美ちゃんは、「だよね、誰だって自分の信じてることとかバカにされたら嫌だよね」と、暗い調子でそう言った。
心配して、あえて明るい声で喋る自分がいた
「でも直美が言った訳じゃないんだし、あまり気にする必要はないよ」と、泣き出しそうなところを精一杯の明るさを出して話した。
「でもあの時、止めなかった私たちも悪いよ。ごめんね、あの時何も言ってあげられなくて」
かなり悲痛な声だったと思う。
とにかく、その日はそれで終りにして俺は寝た。
農業は早起きで、いつも4時には起きる。取り合えず、仕事場に行った。
車庫には いつも通りに自分のバイクが置いてある。
色々な憂さを晴らすために、無茶な乗り方をしたせいか、ずいぶん汚れていた。
昼休みに洗おうと思い、仕事を始めた。温室の天窓を開けて換気する。
灌水装置のスイッチを入れて水をかける、ウンコの山を崩して十分に空気を吸わせる。
堆肥の山を見ると、この前の話がよぎった。泣きそうになったが、グッとこらえた。
「なんて情けない男なんだろうな・・・」
そんな思いで仕事をしていると、あっという間に昼になった。
昼食を早めに終えて、バイクを洗った。
アスファルトの粉や泥、傷がかなり目立って汚くなっていた。
汚いのは自分も同じなので、不思議とバイクにも親近感が湧く。ウンコまみれ泥まみれ埃まみれ、ウンコは当てはまらないけど似たようなもの。
870 :846ことチンカス:05/03/03 01:11:28 ID:oZfvFjGr
7時半頃、日報を書いているとき、電話が鳴った。
「私。今晩暇?」
と、聞かれて いつもの癖で大丈夫だ、と答えてしまう。直美ちゃんからだった。
「あのね、ちょっと話しない?あまり時間取らせないから」と、夜に電話したときは違って明るい声だった。
すぐに、仕事場のシャワーで体を入念に洗って、よそ行きの服に着替えた。何度も、体の臭いをかいでは制汗スプレーを吹きかけた。
バイクに乗って、走り出したとき自分の首筋から匂う、柑橘系の香りが匂った。
「これなら大丈夫だ」心の中で密かに思った。
いつもの場所に行くと、直美ちゃんがベンチにポツンと座っていた。
「この前の事なんだけど・・・」
いきなり言われてびっくりした。
「みんなで話して、あんたに何かお詫びしたいって話になったんだけど」
なぜだか、体の力が抜けていったのを今でもはっきりと覚えている。
きっと、あの時の怒って帰ったことで、みんなを不愉快にさせたと思っていたからだと思う。
「お詫びなんていいよ。黙って帰った俺が悪いんだから、冗談が分からなかった俺が悪いよ」と笑って答えると、直美ちゃんも安心したようだった。
「仕事の話聞かせてよ」と、言われた。
機嫌取りかな?と思ったけど、気遣ってくれる直美ちゃんに感謝しつつ、仕事の話した。
その日は二人とも笑顔で別れた。
873 :846ことチンカス:05/03/03 01:32:38 ID:oZfvFjGr
ぼーっと、仕事場でジュースを飲みながら本を読んでいると、直美ちゃんの顔が思い浮かんだ。
「気遣ってくれてるんだなぁ、有り難いなぁ」と思い、しみじみとしていた。
ふと思い立って、近場をバイクでゆっくり走ってみた。峠をぐるっと回り、ゆっくりと下っていると、向こう側のコーナーから勢いよくバイクが飛び出してきた。
すれ違いざま、そのバイクを見ると どこかで見覚えがあった。ドゥカティだった。
いつもなら すぐに追いかけて、追いかけっこになるのだがその日は、あまり会いたくなくて そのまま下った。
決して仲が悪くなった訳では無いのだが・・・。
少し下ると後ろから、バイクがやってきた。走ってる隣に来て、「止まれ!」と目で合図してきた。ドゥカティだった。
止まると、高志が近づいてきた。
「この前は本当に悪かった!でも、本心で言った訳じゃない。冗談で言ったんだ。でも、お前は本気だったんよな、そんなお前に気付いてやれなくて申し訳ない」
そう言うと、ヘルメットを付けたまま腰を90°に曲げて頭を下げた。
彼がここまで頭を下げるのを見たのは、かなり衝撃的だった。いつもは ちゃらちゃらしてて、お調子者だったから余計だった。
「いや、そんなに謝らなくてもいいって。俺もちゃんと分かってるから」と、言いつつも涙があふれている自分がいた。
ただ単に嬉しくて、それでいて、安心してだったと思う。
それから、また普通に会う約束をして その日は帰った。
帰りは、少し飛ばして帰れたと思う。あまりバイクは上手に乗れる訳ではないけど、綺麗なラインを描けたと思った。
つづく
た、明日書きます。明日も早いので寝ます。おやすみなさい。
>>次のページへ続く
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