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水遣り
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家に戻り妻に事の顛末を話します。
「良かったな。お前を500万で買ってくれるそうだ」
最後には こんな言葉しか出てこないのです。
「500万入ったら、全てお前にくれてやるから、出て行ってくれ」
「いやっ、出て行きたくない。そんなお金なんか欲しくない」
「お前の体で稼いだ金だ。一回あたり10万だ。高級売春婦でも稼げないぞ」
「・・・・・」
「それから、携帯の事で言っておこう。お前たちの携帯にはテレビ電話の録画保存の機能はついていない。お前は取説を見なかったのか」
「見ました。でも他に方法があるかも知れないと思うと」
「抱かれる言い訳を自分で作ったわけだ」
「違います」
「何故、携帯を壊した」
「私の携帯にも残っているかも知れないと思いました」
「兎に角そう言うものはなかった。残念だな。お前が善がるところを俺も見たかったよ」
妻をいたぶる言葉しか出てこないのです。妻が出て行く事はない、そう思っています。私は卑怯な男です。
妻と今後どうするのか、考えていてもそんな話は出来そうにありません。
妻の顔を見ればいたぶり手を上げてしまう。このままでは二人共壊れてしまう。
私は決心をします。短期滞在型のアパートを借りる事にします。
市役所からは離婚届けの用紙を貰ってきます。
「洋子、俺はアパートを借りた。暫くそこで暮らす」
「いや、行かないで下さい。一緒に居て下さい」
「それから、これは離婚届けの用紙だ。俺の名前はまだ書いていないが、お前が書いたら俺も書く」
本当に卑怯な男です。
こんな大事な事まで、弱い妻に預けてしまうのです、自分で結論を出せないのです。
”許してください、出て行きたくない。貴方を愛している”
と何度も何度も言わせたいのです。
泣いている妻の声を背中にして、その日の内に身の回りのものを纏めアパート暮らしが始まります。
一人になった妻が何をしているのか、気にならないわけがありません。気にしていても家を覗く事も出来ません。
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同日、山岡さんと会います。
「宮下さん、その後どうだね?」
先ず、佐伯との事を話します。2通の書類を見せます。
「君らしいな。それで金はいつ用意させるんだね?」
「妻と決着をつけてからです」
「うーん、そうか。佐伯の金はなくなるぞ」
会社として佐伯の処遇が決定したのです。
「奥さんとは どうするんだね?」
アパートを借り、私がそこで仮暮らしをしている事を伝えます。
「良くないな。今が一番大事な時じゃないかね。別れるつもりなら、それでもいいんだろうが」
「それを決める為に別居したのです。一緒に居たのでは自分の気持ちが見えてきません」
「それで決まったのかね」
「いいえ」
「一緒に居て、罵ってでも解る事もあるのではないかね」
自分の行動を他人に決めてもらおうとは思っていません。しかし、所長の言う事は いちいち理にかなっています。
その後、所長から聞いた佐伯の処遇は私の想像を遥かに超えたものです。
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社長は、出来るだけ穏便にすませようと思っていたらしいのです。
ところが回りが反対します。
血が繋がっているから、それだけ穏便にすませるのかと。
回りから出た意見は取引先から供与された金は全額返還、即時解雇、勿論専務の妹との結婚はなくなります。
穏便な処置に一番反対したのは専務です。自分の妹と将来の会社を佐伯に託そうとしたのです。それだけ怒りが大きいのでしょう。
妻の顔を見ればいたぶり手を上げてしまう。このままでは二人共壊れてしまう。
私は決心をします。短期滞在型のアパートを借りる事にします。
市役所からは離婚届けの用紙を貰ってきます。
「洋子、俺はアパートを借りた。暫くそこで暮らす」
「いや、行かないで下さい。一緒に居て下さい」
「それから、これは離婚届けの用紙だ。俺の名前はまだ書いていないが、お前が書いたら俺も書く」
本当に卑怯な男です。
こんな大事な事まで、弱い妻に預けてしまうのです、自分で結論を出せないのです。
”許してください、出て行きたくない。貴方を愛している”
と何度も何度も言わせたいのです。
泣いている妻の声を背中にして、その日の内に身の回りのものを纏めアパート暮らしが始まります。
一人になった妻が何をしているのか、気にならないわけがありません。気にしていても家を覗く事も出来ません。
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同日、山岡さんと会います。
「宮下さん、その後どうだね?」
先ず、佐伯との事を話します。2通の書類を見せます。
「君らしいな。それで金はいつ用意させるんだね?」
「妻と決着をつけてからです」
「うーん、そうか。佐伯の金はなくなるぞ」
会社として佐伯の処遇が決定したのです。
「奥さんとは どうするんだね?」
アパートを借り、私がそこで仮暮らしをしている事を伝えます。
「良くないな。今が一番大事な時じゃないかね。別れるつもりなら、それでもいいんだろうが」
「それを決める為に別居したのです。一緒に居たのでは自分の気持ちが見えてきません」
「それで決まったのかね」
「いいえ」
「一緒に居て、罵ってでも解る事もあるのではないかね」
自分の行動を他人に決めてもらおうとは思っていません。しかし、所長の言う事は いちいち理にかなっています。
その後、所長から聞いた佐伯の処遇は私の想像を遥かに超えたものです。
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社長は、出来るだけ穏便にすませようと思っていたらしいのです。
ところが回りが反対します。
血が繋がっているから、それだけ穏便にすませるのかと。
回りから出た意見は取引先から供与された金は全額返還、即時解雇、勿論専務の妹との結婚はなくなります。
穏便な処置に一番反対したのは専務です。自分の妹と将来の会社を佐伯に託そうとしたのです。それだけ怒りが大きいのでしょう。
結局、落ち着いた処置は、佐伯の住んでいるマンションを処分し会社に入金する。
佐伯の預金は掴みようがありません。預金は手をつけない事になります。
即時解雇したのでは今後 佐伯の生きていく術がなくなるだろうと、大阪の関連会社に職を与えます。
肩書きの無い平社員です。
それが嫌なら勝手にしろと言う事です。
マンションが売れ次第、この処置が実行されるようです。それまでに大阪に行くのかどうか決めろと言う事です。
この処置が私と妻にどう言う影響を与えるのかアパートに帰り考えています。
『奴は金がなくなる。一番の打撃は今、金を払わせる事だ』
『金が無くなれば、妻にもう連絡を取る事もないだろう』
『専務の妹とは結婚出来なくなってしまった。その上に金もなくなる』
『奴は自棄になるかも知れない』
自棄になった佐伯は妻にまた手を出してくるかも知れない、そんな思いが頭をかすめます。
まさか妻が受ける事はないだろう、妻が拒否すればすむ事だ。
結論を出します。
「佐伯、明日金を取りに行く。用意しておけ、5時半に行くからな」
「解った」
佐伯はすんなり答えます。佐伯は会社から自分の処置を聞いている筈です。
不思議な気持ちで その答えを聞いたのです。
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明くる日、佐伯のマンションに行きますと、銀行の紙袋がテーブルの上に置かれています。
「あんたも俺の処置を聞いただろう。200万しか用意できない、残りの300万はこのマンションが売れてからだ」
「預金は手をつけられなかった筈だ。それにマンションの代金は全額会社に取られるだろう」
「会社も慰謝料の件は了承してくれた。マンションの代金から払っていいと、会社も経理も了解してくれた」
冗談ではありません。これでは佐伯と会社がいい子になってしまいます。
この時間なら、まだ会社に人が残っていると思い、電話をします。
受付が出て、経理に繋いでもらいます。
「宮下と申しますが、経理部長をお願いします」
「どう言うご用件でしょうか?部長は もう帰宅させて頂きました」
「慰謝料の300万、佐伯のマンションの代金から払って頂く必要はありません」
「何の事を言われているのか、解りかねますが」
電話に出た職員の方には あずかり知らぬ事でしょう。
「とにかく経理部長にでも、役員の方にでも、そうお伝え下さい」
「ちょっとお待ち下さい」
その職員の返事を待たず電話を置きます。
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佐伯は、私の行動に唖然としています。
「佐伯、そう言う事だ。お前の会社からのお情けは要らない」
「しかし、俺には払える金がない。あんたも知っている通り大阪の平社員か、さもなくば職なしだ」
「俺の知った事ではない。お前から払ってもらう」
私は公正証書のコピーに200万本日受領した旨を書き、押印して佐伯に投げつけます。
「お前が何処で働こうとも追いかけて行く。給料から天引きにしてでもな」
「解ったよ。好きなようにするんだな。俺にはもう失うものは何もない」
>>次のページへ続く
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