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戦争の体験談を語るわ
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143 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 02:45:03.06 ID:kv3yaWMo
彼らと過ごした間、俺は色んなものを目にした。

俺の中で、この時スルツキの人々や軍、警察、民兵は絶対的な悪のような存在になっていたんだ。

そして、ボシュニャチは被害者だと。


だけど、違ったんだよ。

民兵の人たちはさ、スルツキの集落を襲って、食料を奪ったり、スルツキの大人や子どもを殺害したり、女性をレイプしたりしていたんだ。


俺は わからなくなっちゃったんだ。

何が正しくて、何が間違っているのかとか。

何が悪で、何が正義なのか。

あんなに被害を受けて、その苦しみを知っているはずの人たちが、同じ事を、相手の民族に、人々にするんだ。



145 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 02:52:02.43 ID:kv3yaWMo
俺は、何でそんなことをするの?やめようよって何度も言った。それは やっちゃいけないことだよって。

そういうと、決まって民兵の人は悲しそうな顔をしてさ、そんなのはわかっているんだって。

でもこうしないと、自分達の仲間が同じ目に合うって。

矛盾に気づいているのに、それをしなければいけない状況だったんだ。

ボシュニャチもスルツキも。


俺はこの時、まだ彼らの紛争の歴史も何も知らなかった。

前にも書いたと思うけれど、スルツキの人々も同じように、歴史上で何度も こういった虐殺の被害に合ってるんだ。

どちらも被害を受ける苦しみや怒り、恨みをしっているのに、それでも尚、お互いに そうしなければ、やられる状況になっていたんだ。



146 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 02:52:53.16 ID:kv3yaWMo
恨みや禍根は残されたまま、次の世代へと引き継がれて、また同じ悲劇を繰り返している。

それが この時の紛争だったんだ。



147 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 02:58:58.97 ID:kv3yaWMo
前に、国は3つの勢力に別れたって書いたよね。

ボシュニャチ、フルヴァツキ、スルツキの3勢力に。

ボシュニャチとフルヴァツキは最初は味方同士のような感じだったけれど、連携は取れていなくてさ、国内で、つまりヘルツェグ=ボスナではフルヴァツキの軍や人々によって、ボシュニャチやスルツキの人々が虐殺された。

一つの民族が、一方的に虐殺するのではなく、お互いに民族浄化の応報を繰り広げていたんだ。



148 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/23(日) 03:00:15.41 ID:2MTA.cIo
レイプする必要あんのかよ


149 名前:祐希 ◆.0dKn/WD26:2010/05/23(日) 03:04:20.53 ID:kv3yaWMo
>>148
レイプは単に性的欲求を満たす為の行為じゃないんだ。

敵対する、憎む民族の女性をレイプする、それは自分達の民族が、敵対する民族に勝利する、やっつけるといった優越感を示す行為でもあったんだ。

だから、女性は標的になったんだ。



150 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:06:17.03 ID:kv3yaWMo
9月に入ると、フルヴァツキとスルツキの二つの勢力が同盟を結んでさ、ボシュニャチは二つの民族から挟まれる状況になったんだ。

その理由は、フルヴァツキの人々も、自分たちによる、自分達の国が、このボスニア・ヘルツェゴビナの領内で欲しかったんだ。

そして、最初は共に戦ってもヘルツェグ=ボスナ内でスルツキの人々が一掃されて、領地の争いが減ったんだ。

フルヴァツキからすれば、次はボシュニャチだったんだ。



151 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:08:54.79 ID:kv3yaWMo
10月の中旬ぐらいだった。

ボシュニャチの勢力は、スルツキ・フルバツキの二つの勢力に挟まれ、絶望的な状況になっていた。

俺は そういった経緯は、日本に帰ってきてから知ることになったけど、この時、自分達が かなり追い詰められているというのは何となく認識していた。



152 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:11:16.14 ID:kv3yaWMo
俺とソニアが一緒に過ごしていた民兵達の部隊も、人数がどんどん減っていって、人手が不足していた。

この日も、殆どの人が離れた街に行ってしまって、拠点としていた洞窟には十数人しか残っていなかったんだ。



154 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:17:31.33 ID:kv3yaWMo
もう秋になって、辺りが暗くなる時間も早くなってきていた。

拠点に残っている大人はさ、殆どが負傷した人だったんだ。

だから、俺は暗くなる前にさ、水を汲んでくる必要があった。

この時、ソニアも一緒につれて行けば良かったんだよ・・・。

だけど、誰かが負傷した人を見てなきゃいけなくて、俺が水を汲んできて、その間ソニアが負傷した人を看ているってするしかなかったんだ。



157 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:22:41.74 ID:kv3yaWMo
水を汲む場所までは、山を下らなきゃいけなくて、子どもの足で往復4時間くらいかかるんだ。

水を汲んで洞窟の近くまで来た時には、もう辺りは暗くなっていた。

ソニアは ちゃんと看てるのかなって心配しながら、水汲んできたよって洞窟の中に入ったんだ。



158 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:25:58.77 ID:kv3yaWMo
だけどさ、洞窟の中に明かりが点いてないんだ。

もう外は暗くて、洞窟の中も真っ暗なのに、明かりが点いてないんだよ。

最初は おかしいなって思ったんだ。


だけど、ソニア疲れて寝ちゃったのかって。

ちゃんと看病しなきゃ駄目じゃないかって。

ソニアちゃんと看ててって言ったでしょって言いながら、スイッチを押したんだ。



160 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:29:20.82 ID:kv3yaWMo
だけど、明かりが点かないんだ。

何回押しても点かないんだ。


俺さ、民兵の人たちと過ごしている間、前のように本当に危険な目に合う事が殆どなかったんだ。

ソニアを守るって、だから どんな時でも俺はソニアから離れちゃ駄目だし、どんな時でも警戒して、気をつけてなきゃいけないんだ。

でも、馬鹿な俺は その大切なことも忘れて平和ぼけしてさ、それを怠ったんだ。

信じたくなかった。ただ電球が切れただけだと思いたかった。



161 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:33:33.70 ID:kv3yaWMo
確かめるのが怖かった。

誤解であってくれって、神様どうか誤解であってくださいって祈ったんだ。

だけど、洞窟の奥に進んでいくに連れて、真っ暗で何も見えなくても、嗅いだ覚えのある臭いがするんだ。

錯覚だって。

これは錯覚だって。

気のせいだって。

でも、うめき声とかも微かに聞こえてきて、何かが焼ける臭いもしてきてさ、気づいたら両手に抱えていた水の入れ物を落としていた。



162 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:34:34.01 ID:kv3yaWMo
ソニアの名前を何度も呼んだんだ。

ソニアソニアどこにいるのって。

隠れないで出てきてよって。

だけどソニア全然出てこないし返事しないんだ。



163 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:37:47.99 ID:kv3yaWMo
酷い話だけどさ、横で兵士の人がうぅって苦しそうに声を出していたんだ。

だけど、俺は それどころじゃなかったんだ。

必死に地面に這いつくばって、ソニアが居ないか手探りで探したんだ。

何人か、冷たくなった大人の死体とかに触れたけど、それに驚いたり気遣ってたりする余裕なんてなかったんだ。



164 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:40:48.10 ID:kv3yaWMo
どれくらい探してたのかわからない。

もう時間の感覚とかも よくわからなくなっていた。

気づいたら、洞窟の奥まで来ててさ。

壁に手を付きながら探していたら、小さな体に触れたんだ。


すぐにわかった。

夜になると、いつも一緒にくっ付きながら寝てたんだ。

すぐにソニアだってわかった。



165 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:41:49.77 ID:kv3yaWMo
頭が真っ白になって両手でソニアに触れたんだ。

でも、ソニアの体は温かかったんだ。



167 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:43:32.27 ID:kv3yaWMo
息もしていて、ソニアは生きていたんだ。

良かった。


何が起きたかわからないけど、ソニアは生きてる。良かったって。

ソニア大丈夫?って声をかけたら、小さい声でうん。って言ったんだ。



168 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:44:47.20 ID:kv3yaWMo
離れてごめんねって。

ソニアを追いて水汲みにいってごめんって言いながら、ソニアを抱き寄せたんだ。



170 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:50:41.56 ID:kv3yaWMo
そしたら、手に生暖かい液体がついてさ、最初は何かわからなかった。

でも臭いを嗅いだら、血ってすぐにわかったんだ。

慌ててソニア怪我してるの?ソニア大丈夫なの!?って聞いたんだ。

ソニアは また小さな声で、うん。って言ったんだ。

俺は急いで傷の手当しなくちゃって思って、洞窟の中は暗くてよく見えないから、ソニアを背負って外に出ることにしたんだ。

ソニアの体が いつもより軽く感じて、そしてソニアの体から垂れる血のピチャ、ピチャ、って音が、洞窟の中で響いていたんだ。

不安になった。

だけど、ソニアは返事をしているし、ちょっとした怪我なんだって、ちょっとした怪我だって、悪いことを考えないように必死に自分に言い聞かせたんだ。



171 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 03:53:48.55 ID:kv3yaWMo
洞窟の外に出た時は、もう外も真っ暗で、月が綺麗に輝いていたんだ。

俺はソニアを草の上に下ろしたんだ。

最初は見間違いかと思った。


だけど、何回目をこすってもさ、ソニアのお腹から血が一杯出てるんだ。



174 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 04:02:07.16 ID:kv3yaWMo
頭の中で理解できないような色んな感情とかが渦巻いてきたんだ。

だけど、血を止めなきゃって。

俺は上着を全部脱いで、ソニアの上着を捲ってさ、血を止めようとしたんだ。

そしたら、ソニアのお腹に大きな穴が何個も空いてて、そこから沢山の血が流れてたんだ。

俺ってば、分厚いコート着ててさ、背負ってるのに、こんなに血が出てるのに気づかなくて・・・

シャツでソニアのお腹を抑えたんだけど、全然血が止まらなくて、どうしようどうしよう、誰か来てよって泣きながらソニア大丈夫だよ大丈夫だよって何度も叫んだんだ。

でも血が止まらないんだ。

そしたら、ソニアが血を口から垂らしながら、うん。だいじょうぶ。って言ってさ。

しゃべっちゃ駄目って言ってるのに、小さな声で喋り続けるんだよ。

月が綺麗だねって。

どうして祐希泣いてるのって。



175 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 04:06:25.96 ID:kv3yaWMo
ソニアを心配させちゃ駄目だって思って、泣いてないよ。

だから喋らないでって言ったんだ。


だけどソニアは それでも話すのをやめなくて、声を出すたびに血が溢れてくるんだ。

混乱してて、慌てて、怖くて、正確には覚えてないんだ。

だけど、ソニアは昔の話をしだしてさ。



176 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 04:12:00.97 ID:kv3yaWMo
特別な日覚えてる?って。

俺すぐには思い出せなくて、何?って言ったんだ。

そしたら、祐希にお友達になってくれたお礼をした日って言うんだ。

俺は覚えてるよ。忘れるわけないじゃんって泣きながら答えたんだ。

そしたら、ソニアはちょっと笑いながら良かったって言って、あの時も綺麗な月だったねって。

俺は うまく言葉が出せなくて、うん、うん、って相槌しか打てなかったんだ。

それでもソニアは喋り続けて、ずっと一緒にいれなくて ごめんねって言うんだ。


ソニアはわかっていたんだ。

自分が大怪我して、もう助からないってわかってたんだ。

もう俺は何て言葉を返したらいいかわからなかった



178 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 04:14:38.92 ID:kv3yaWMo
ソニアは、もうお腹押さえなくていいって、その代わり手を握ってって言うんだ。

もうソニアは手に力が入らないみたいで、俺の手を握り返せないんだ。



179 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 04:17:22.14 ID:kv3yaWMo
手を握ってさ、目の前にいるのに、ソニアが言うんだ。

祐希、ちゃんと手にぎってる?そこにいる?って。


俺はちゃんと握ってるよ。

隣にいるよって答えたんだ。


そしたら、

そっか。良かったって言ってさ、

ごめんね、ありがとうって小さな声で言った後、

何も喋らなくなったんだ。



180 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 04:19:38.33 ID:kv3yaWMo
息はまだしてたんだ。

もし医者がいれば、医者じゃなくても大人が居ればソニアは助かるかもしれないんだ。


でも、俺は何も出来ないんだよ。

大切な子がソニア以外いなくなったり死んじゃったりして、もうソニアしかいないのに。

たった一人の大切な人なのに何も出来ないんだよ。


ソニアの息が少しずつ弱くなって、体が冷たくなっているのに、横でただ泣きながら見ているしか出来ないんだよ。



191 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/23(日) 04:42:58.37 ID:kv3yaWMo
俺は目の前で起きた現実を受け入れることが出来なかった。

やらなければいけない事は沢山あったんだ。

洞窟の中にはまだ生きている民兵の人がいたんだ。

でも俺はソニアの傍から離れる事が出来なかった。


この日まで、沢山の人に助けられて生き延びてきた。

沢山の人の、仲間の友達の犠牲の上で、生きてきたんだ。


なのに、何もお返しも出来ずに、逃げてばかりで、

まだ生きている民兵の人だけでも助けなきゃいけないのに、その人たちに助けられて、

今まで面倒をみてきてもらっていたのに、頭で理解してても何も行動できないんだ。



>>次のページへ続く
 
 


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