戦争の体験談を語るわ
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91 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:22:57.79 ID:c1y0p92o
この日は、カリノヴィクから逃げてきてから大体二日ほど経った日で、92年の4月7日だった。
もし、フォーチャでもカリノヴィクと同じ事が起きていたら どうしようと思っていたけれど、実際には まだ何も起きていなくてさ。
とりあえず、皆安堵して、親戚や知人がいる人たちは その家に向かい、行き場のない人達はモスクへ向かったんだ。
以前ソニアやソニアパパと来た時は、街もかなり活気があって、人々が溢れていたのだけれど、この時は人が少なくて、多分 外に出ていなかったんだと思う。
それがとても印象的だった。
92 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:25:44.01 ID:c1y0p92o
俺達が向かったモスクはさ、前にソニア達と一緒に来たモスクだったんだ。
あの時は、まさかこんな形で再び来ることになるとは思わなかったけれど、安心した気がする。
これからどうしたらいいのかとか、父さんは無事なのかとか、色々と聞きたいことや不安は山積していたのだけれど、緊張や疲労から体力的に限界がきていた俺やソニア達は、着いてからすぐに寝てしまったんだ。
93 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:26:59.85 ID:c1y0p92o
たったの数日、二日ほどの出来事だったのに、ゆっくりと安心して建物の中で寝られるのが、とても久しぶりに感じた。
94 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:30:45.82 ID:c1y0p92o
目が覚めたときには、もう辺りは暗くなっていて、夜になっていたんだ。
かなり長時間、寝入ってしまっていたんだ。
起きたら何だかトイレに行きたくなってさ、俺は大人の人を呼んで一緒に行ってもらおうと思ったんだ。
早朝まで暗い山や森の中を歩いて来たというのに、トイレに一人で行くのが怖かったんだ。変だよね。
でも、周りを見渡してもモスクの中には大人が誰も居なかった。
あれ?おかしいな。もしかして夢なのかな?とか、まだ寝起きで頭がぼーっとしていた俺は思っていたんだ。
だけど、少ししてさ、外が騒がしいのに気づいた。
この日は、カリノヴィクから逃げてきてから大体二日ほど経った日で、92年の4月7日だった。
もし、フォーチャでもカリノヴィクと同じ事が起きていたら どうしようと思っていたけれど、実際には まだ何も起きていなくてさ。
とりあえず、皆安堵して、親戚や知人がいる人たちは その家に向かい、行き場のない人達はモスクへ向かったんだ。
以前ソニアやソニアパパと来た時は、街もかなり活気があって、人々が溢れていたのだけれど、この時は人が少なくて、多分 外に出ていなかったんだと思う。
それがとても印象的だった。
92 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:25:44.01 ID:c1y0p92o
俺達が向かったモスクはさ、前にソニア達と一緒に来たモスクだったんだ。
あの時は、まさかこんな形で再び来ることになるとは思わなかったけれど、安心した気がする。
これからどうしたらいいのかとか、父さんは無事なのかとか、色々と聞きたいことや不安は山積していたのだけれど、緊張や疲労から体力的に限界がきていた俺やソニア達は、着いてからすぐに寝てしまったんだ。
93 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:26:59.85 ID:c1y0p92o
たったの数日、二日ほどの出来事だったのに、ゆっくりと安心して建物の中で寝られるのが、とても久しぶりに感じた。
94 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:30:45.82 ID:c1y0p92o
目が覚めたときには、もう辺りは暗くなっていて、夜になっていたんだ。
かなり長時間、寝入ってしまっていたんだ。
起きたら何だかトイレに行きたくなってさ、俺は大人の人を呼んで一緒に行ってもらおうと思ったんだ。
早朝まで暗い山や森の中を歩いて来たというのに、トイレに一人で行くのが怖かったんだ。変だよね。
でも、周りを見渡してもモスクの中には大人が誰も居なかった。
あれ?おかしいな。もしかして夢なのかな?とか、まだ寝起きで頭がぼーっとしていた俺は思っていたんだ。
だけど、少ししてさ、外が騒がしいのに気づいた。
95 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:33:50.38 ID:c1y0p92o
どうしたんだろうと不思議に思って、モスクの外に出て周りを見渡したんだ。
そしたら、街中から人の悲鳴とかが聞こえてきてさ、時々、つい先日耳にしたのと同じような乾いた銃声の音が聞こえたんだ。
嘘だと思った。
やっと安心できると思ったのに、たった一日、いや一日も経たずに こんな事ってあんまりだと思って、自分の目を疑った。
96 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:37:33.30 ID:c1y0p92o
でも、何か目を擦っても、耳を叩いても、目に見える光景や音は変わらなかったんだ。
そして よく見るとさ、街の所々から火とか煙が上がっていて、信じたくなかったけれど、これが夢の世界の出来事なんかじゃなく、現実に起きている事だと受け入れるしかなかった。
そう考えたらさ、さっきまで何ともなかったのに、急に足の力が入らなくなってしまって、地べたにペタンと座って立てなくなったんだ。
心のどこかで、もう逃げ切れないんだな、ここで死ぬしかないんだなと感じた。
希望を持たなければ ここまでショックを受けなかったと思う。
だけど、フォーチャに着いて、もう大丈夫かもしれないと希望を持ってしまったんだ。
それをもがれるのは、まだこの時は耐えられるものではなかった。
97 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 22:42:54.88 ID:c1y0p92o
それから少しの間、その状態のまま座っていたと思う。
気づいたら、周りに一緒にここまで行動してきた大人達が居て、その人たちも同じように唖然とした表情で街を見つめていた。
恐らく、最初から近くにいたのかもしれないけれど、街の状態でショックを受けていた俺は、気づかなかったのかもしれない。
そのまま俺はまたじっと、燃える街を見ていたんだ。
そしたら、ソニアが起きてきて、俺の隣に来たんだ。
103 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:20:52.48 ID:c1y0p92o
「祐希ー、街綺麗だねー。わー赤い星がいっぱいだよー。」
といった感じの事を笑いながら言うんだ。
一瞬、俺はソニアが何を言っているのか理解できなくてさ、表情を見たら、何か笑っているけど、ぼーっとしていてさ、目の焦点が合わないような変な表情をしていた気がする。
おかしいって思って、何言ってるのか何度も聞いたんだ。
だけど、ソニアは笑って綺麗だね、しか言わないんだ。
物じゃないけどさ、ソニアが壊れちゃったと思った。
105 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:25:40.95 ID:c1y0p92o
俺は どうしたら良いのかわからなくて、ソニアの事も相まって少し混乱しちゃってさ。
もう考えるのは無駄かもだとか、諦めようとか、マイナスの事を考えたりしたんだ。
だけど、このまま諦めたらソニアやメルヴィナ、サニャはどうなるって思って、このままだとカミーユの行動が無駄になるって考えたんだ。
サニャ達を守るって誓ったのに、このままだと その誓いも破ることになってしまうって。
だから、3人を連れて街から逃げようとしてさ。
行くあてもないし、ましてやこの国の人間ではない自分には頼れる人もいない。
それでも、ここに留まっているよりは、マシな選択に思えたんだ。
106 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:28:50.22 ID:c1y0p92o
逃げるなら、今のうちしかないと考えた俺は、ソニアの腕を引っ張って、モスクの中に戻った。
そして まだ寝ていたメルヴィナやサニャを起こして、「ここは危ないから街の外に逃げよう。」と言ったんだ。
メルヴィナもサニャも、起こしたばかりだから少し寝ぼけて反応が薄かったけれど、外の音が聞こえたみたいでさ、
何が起きているの気づいたらしく、「うん。」と答えてくれた。
108 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:33:22.11 ID:c1y0p92o
だけど、遅かったんだよ。
余っていた食べ物とかを集めていたら、もうモスクの直ぐ近くにスルプスカの警察が来てしまったらしく、大人達が騒ぎ出したんだ。
大人達がスルツキだ警察だって叫んで、早く逃げなきゃって思ったんだ。
ソニアは警察だから大丈夫だよって笑っていたけれど、その警察がボシュニャチやフルヴァツキの市民を連行したり暴行したり、殺したり、レイプしたりしてるんだよ。
もう この街に正義の味方、少なくともボシュニャチを助けてくれる味方はいなかったんだ。
110 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:40:31.80 ID:c1y0p92o
そんな感じでモタモタしている内に、モスクの周りのは更に騒がしくなっていた。
外に居た大人たちは、慌てながらモスクの中へ逃げ込んできたり、他の場所に逃げようとしたみたいだった。
だけど、他の場所へ逃げようとした人に向けて、警察は銃を発砲したらしく、乾いた銃声が周りから聞こえて、外の悲鳴とかは少しずつ聞こえなくなった。
その状況を見ている内に、もうモスクは警察に囲まれていたんだ。
111 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:43:05.58 ID:c1y0p92o
モスクから逃げようにも、幼い俺達が走って警察から逃げ切れるはずもない。
最悪、カミーユのように俺が お取りになって、サニャやメルヴィナ、ソニアの3人だけでも逃がそうと思った。
もう9人の中で、男は俺しか居ない。俺しか3 人を守れる人間はいないって思ったんだ。
112 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:48:25.58 ID:c1y0p92o
でも、現実は そんな英雄的な行動を おいそれと取れるものじゃなかった。
少し間をあけて、警察たちが銃を手にしながらモスクの中に入ってきたんだ。
多くの人は、隅っこに下がったり、布を被ったり、伏せたりした。
だけど、そんな事をしても意味なんてないんだよね。彼らは俺達の様子を見に来たわけじゃないのだからさ。
警察官達は、大人の男だけじゃなく、隅っこで震えている子どもや女性、お年寄りの顔を一人ひとり確認していった。
俺達の所にも近づいてきて、俺は さっきまであんなに お取りになろうと考えていたのに、怖くて足も動かないし、声も出ないんだ。
本当に動かないんだ。動かそうと思っても、心が折れてしまっていたんだ。
113 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:52:47.44 ID:c1y0p92o
警察の人の顔は、暗くてよく見えなかったけれど、その時は とても怖い顔をしていたように見えた。
一通り、性別や年齢とかを確認し終えると、警察官は大人の男性や女性を無理やり引っ張って連れて行ってしまったんだ。
当然、男の人は暴れたけれど、外に引きずり出された後に銃声が聞こえて、その人の声はもう聞こえなくなっていた。
変な話だけど、この時ぐらいからだと思う。
人が殺されても、あまり感情とかが湧き上がらなくなってきていたんだ。
ああ、またかといった感覚に似ているけれどさ。
114 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/21(金) 23:55:20.66 ID:c1y0p92o
警察が去った後は、皆ぼーっとしながら、夜が明けるまで座っていたと思う。
赤ちゃんとかは泣いたりしていたけど、それをあやす母親は とても憔悴しきった顔をしていた。
もしかしたら夫があの時 連れて行かれたのかもしれない。
だけど、そんな事を聞けるような状況でもないし、正直に言えば、もうソニア達3人以外の事を考える余裕なんて俺にはなかった。
115 :祐希 ◆.0dKn/WD26 :2010/05/22(土) 00:00:48.52 ID:YjM.1pYo
それから数日経ったけれど、時々街中で銃声や悲鳴が聞こえるぐらいで、初日ほど騒々しい状況になることはなかった。
スルプスカやスルツキに忠誠を誓う印として、生き残ったボシュニャチの人々は家の前や屋根に白い布とかを掲げて、自分もスルツキの一員だといったような合図をしていた。
後で調べて、これが警察とかから指示されたものだと知ったよ。
この白い布や旗っていうのはさ、今考えてみれば、自分がボシュニャチですと公言しているようなものなんだよね。
この家や建物にはボシュニャチがいるぞ!って。
かといって、白い布を掲げなければ、殺されたり拷問されたりするんだ。
掲げても暴行やいやがらせを受けて、時には見せしめとして殺害されレイプされ、掲げなくても殺害・レイプ・暴行をされる。
自分が標的にならないように祈ることしか出来なかった。
>>次のページへ続く
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