ひとりで読めない山の怖い話いろいろ
(6ページ目) 最初から読む >>
\ シェアする /
160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:16:50.57 ID:DVIBnR9G0
ある年の冬、大学は違うが山で知り合って以来、俺と仲の良かった大久保という、H大学の山岳部に属していた男が、同じ山岳部の村越という男と厳冬期のM沢岳を狙って上高地に入ったんだ。
天気図と睨めっこした甲斐があったらしく、一月の北アルプスにしては珍しいほどの青空が広がっていたそうだ。
大久保達は、ヘッデンで足元を照らしながら、あの薄暗くて急勾配の釜トンネルを抜けて、帝国ホテルの脇を通って河童橋を越えた。
当時は、帝国ホテルの前が雪崩の巣になっていて、彼らが通過した時も大きなデブリが張り出していて、通過するのにだいぶ苦労をしたらしい。
河童橋から、梓川沿いに入ってM平のテント場についたのが、午後の三時頃だったそうだ。
この日の行動は、最初からM平までと決めていたから、時間的にもちょうど良かった。
担いできた日本酒で体を温めてから、早めに夕食を作って夕方六時には、もうのんびりとテントの中でくつろいでいたらしい。
一月だからな。午後六時の上高地といえば、もう暗闇の世界だ。
その時、村越が、テントの中でごそごそし始めたと思ったら、ヘッデンを持ってテントのジッパーを下げて外に出ると、トイレに行ってくると言って、林の中に入っていった。
大久保は、「酒の飲みすぎだよ」などと相棒の悪口を言いながらタバコをふかしていたそうだ。
ところがしばらくして、その村越が血相を変えて、雪の上を走ってテントに戻ってきた。
何ごとかと思って大久保が村越をテントの中に招き入れると、彼は真っ青な顔でこう言ったんだ。
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:18:42.65 ID:DVIBnR9G0
「首がない!」
こいつ何を酔っ払っているんだと大久保は思ったそうだ。
もともと村越はそんなに酒が強い方じゃなかったらしいしな。
ところが村越は、唇を震わせて話を続ける。
「用を済ませた後、トイレから出て入口の鏡を何気なく見たら、俺の首から上がないんだよ! 」
「いったいお前は何を言っているんだ? おまえの首はちゃんとついているぞ。暗い中で見間違えたんだよ。飲みすぎだよ」
「俺だってそう思ったさ。でも、何度見直しても鏡に、俺の首から上が映らないんだよ! 」
「見間違いだって。気味の悪いこと言ってないで、いいから飲んで寝ちまえよ! 」
そう言って、大久保は村越のコッヘルに日本酒を注いで無理やり飲ませたそうだ。
とにかく早く寝かしつけちまおうと思ったんだな。
村越もそのうち落ち着いてきて、「そう言われてみれば、見間違いだったのかなあ」なんて言いながら、あくびをし始めた。
その話は、それでしまいになって、その日はふたりとも高鼾で寝たそうだ。
翌朝は目がまぶしいほどの快晴だったそうだ。
膝上を越すラッセルに苦しんだが、それでも快調にJ岳を越え、そのままN岳までの縦走路に入ったのが午前十一時だというから相当なペースだな。
どこまでも清んだ青空が、真っ白な縦走路を際立たせて、快適な山行になった。
運が良いことにほとんど風もない。
このペースで行けば、あと一時間もすればN岳を越せるだろうと、大久保が前を行く村越に目をやった時信じられないことが起こったんだ。
ある年の冬、大学は違うが山で知り合って以来、俺と仲の良かった大久保という、H大学の山岳部に属していた男が、同じ山岳部の村越という男と厳冬期のM沢岳を狙って上高地に入ったんだ。
天気図と睨めっこした甲斐があったらしく、一月の北アルプスにしては珍しいほどの青空が広がっていたそうだ。
大久保達は、ヘッデンで足元を照らしながら、あの薄暗くて急勾配の釜トンネルを抜けて、帝国ホテルの脇を通って河童橋を越えた。
当時は、帝国ホテルの前が雪崩の巣になっていて、彼らが通過した時も大きなデブリが張り出していて、通過するのにだいぶ苦労をしたらしい。
河童橋から、梓川沿いに入ってM平のテント場についたのが、午後の三時頃だったそうだ。
この日の行動は、最初からM平までと決めていたから、時間的にもちょうど良かった。
担いできた日本酒で体を温めてから、早めに夕食を作って夕方六時には、もうのんびりとテントの中でくつろいでいたらしい。
一月だからな。午後六時の上高地といえば、もう暗闇の世界だ。
その時、村越が、テントの中でごそごそし始めたと思ったら、ヘッデンを持ってテントのジッパーを下げて外に出ると、トイレに行ってくると言って、林の中に入っていった。
大久保は、「酒の飲みすぎだよ」などと相棒の悪口を言いながらタバコをふかしていたそうだ。
ところがしばらくして、その村越が血相を変えて、雪の上を走ってテントに戻ってきた。
何ごとかと思って大久保が村越をテントの中に招き入れると、彼は真っ青な顔でこう言ったんだ。
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:18:42.65 ID:DVIBnR9G0
「首がない!」
こいつ何を酔っ払っているんだと大久保は思ったそうだ。
もともと村越はそんなに酒が強い方じゃなかったらしいしな。
ところが村越は、唇を震わせて話を続ける。
「用を済ませた後、トイレから出て入口の鏡を何気なく見たら、俺の首から上がないんだよ! 」
「いったいお前は何を言っているんだ? おまえの首はちゃんとついているぞ。暗い中で見間違えたんだよ。飲みすぎだよ」
「俺だってそう思ったさ。でも、何度見直しても鏡に、俺の首から上が映らないんだよ! 」
「見間違いだって。気味の悪いこと言ってないで、いいから飲んで寝ちまえよ! 」
そう言って、大久保は村越のコッヘルに日本酒を注いで無理やり飲ませたそうだ。
とにかく早く寝かしつけちまおうと思ったんだな。
村越もそのうち落ち着いてきて、「そう言われてみれば、見間違いだったのかなあ」なんて言いながら、あくびをし始めた。
その話は、それでしまいになって、その日はふたりとも高鼾で寝たそうだ。
翌朝は目がまぶしいほどの快晴だったそうだ。
膝上を越すラッセルに苦しんだが、それでも快調にJ岳を越え、そのままN岳までの縦走路に入ったのが午前十一時だというから相当なペースだな。
どこまでも清んだ青空が、真っ白な縦走路を際立たせて、快適な山行になった。
運が良いことにほとんど風もない。
このペースで行けば、あと一時間もすればN岳を越せるだろうと、大久保が前を行く村越に目をやった時信じられないことが起こったんだ。
162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:21:27.78 ID:DVIBnR9G0
それまで快調なペースでトップを行っていた村越が、細い馬の背でいきなり稜線を外れると、東側の斜面の方にふらふらとよろめいたんだ。
そっちには雪庇が張り出している! 危ない! 声を掛ける間もなかったそうだ。
村越は張り出していた雪庇を踏み抜き「あっ! 」という声とともに東側の雪壁に落ちていったそうだ。
窮屈な体勢で村越が落ちた雪壁を覗き込んだが、彼の姿はまったく見えない。
しかし、険悪な白い垂壁の状態からみても、村越が絶望的な状況であることはすぐにわかった。
とにかく大久保は、すぐに無線で警察に連絡を取り、事故の状況を伝えた。
天候が良かったため、救助隊のヘリコプターがすぐに飛んで、奇跡的ともいえる早さで、村越は稜線から二百メートル下の、岩が突き出た雪壁の途中で発見された。
何度か岩に打ち付けられて、壁から突き出した木に絡まって止まっていたそうだ。もちろんすでに絶命していた。
しかしそれだけじゃない。
村越の遺体は、もっと悲惨なことになっていたんだよ。
岩に打ちつけられながら滑落した割には、村越の体はそれほど痛んでいなかったそうだ。
ただ一箇所を除いてね。そう。ただ一箇所。
雪の断崖を二百メートル滑落し、木に絡んで息絶えた村越の体には、首から上がなかったんだよ…。
164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:23:49.80 ID:DVIBnR9G0
その事故の後、M平の鏡の噂は一気に広まった。
しかし、何時の世にも豪気な奴はいるものだ。俺の当時の山仲間に神代という男がいてな。
M平の鏡の噂を聞いてこう言ったんだ。
「そいつは便利な鏡じゃないか。だってそうだろう。出発前にその鏡を覗いて、自分の首から上が映らなかったらそれは警告と思って、山を下りればいいだからな。逆にちゃんと姿が映れば山行は、予定通り完遂されるってわけさ」
その年の冬、神代は沢渡辺りに車をデポして、ひとり上高地に入った。
M岳を狙ったそうだ。
ところが翌日、神代はきびすを返して上高地を下りたんだ。
M岳に向かわずにね。
恐らく奴はM平のトイレの鏡を見たんじゃないかって、後々噂になったよ。
なぜ、本人に確認しなかったのかって?確認しようがなかったんだよ。
神代は死んでしまったんだ。
沢渡まで下り、デポしておいた車でS温泉に向かう林道で車ごと谷に落ちて、あっけなく死んでしまった。
そして、車から放り出された形で、谷底から発見された神代の遺体には、やはり首から上がなかったんだよ…。
「先輩から聞いた話はこれで終わりだ」
私は、すっかり静かになってしまった仲間の顔をひとしきり見渡してから、タバコに火を点けた。
「先輩はM平の鏡を見てしまったのかなあ」
杉本が車窓から、夕焼けに包まれ始めた南アルプスの峰々を眺めながらぽつりと言った。
「わからん。でもあれだけ、俺に見るなと言っていたんだからな」
私は、杉本の視線を追うように、山頂部を赤く染まる南アルプスに目を移した。
やがて春が過ぎ、北アルプスの沢が雪解けの清水でいっそう冷たくなった時期になっても先輩の姿は発見されなかった。
今となっては、北アルプスに眠る先輩の体に、首から上がしっかりついていることを願うのみである。
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:28:54.17 ID:CVKn8iDV0
乙
話の流れ見てれば そんな鏡占い感覚で見に行くとかバカスとか思うけど、実際目の前にそのトイレがあったら怖いもの見たさで覗いちゃうかもしれないから怖い
168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:52:08.22 ID:A8ajvC3fO
山の天気はかわりやすいもので、今晴れていたと思ったら次に外にでると雪が積もったりとめまぐるしい。
車も通れないので、麓に置いて、徒歩で帰る。
そんな所に家があったので、よく、道に迷った客がやってきた。
生々しい話だが、送り出した客がそのまま行方不明になったりもしたので、最近はホテルのフロントのように名前を記入してもらうようにもなった。
その日もいきなり雷が鳴り出してから30分たっただろうか?が戸を叩いた。
今日は25〜30代の男5人のグループで、オレンジ色のジャケットをきた男が疲労憔悴した4人を抱えるように滑り込んできた。
玄関で名前を記入してもらい、事前に沸かしてあった風呂へ促し、でてくると元気になったようで、粗末ながら手作りの料理でもてなし、酒をのみながらいい年した男がまるで修学旅行のように笑いあった。
169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 20:56:42.46 ID:A8ajvC3fO
気づくと朝で、やはり、昨日の雷が嘘のように木々から木漏れ日が降り注いでいた。
それから朝食を用意して客を起こすと不思議そうにみている。
酒で記憶を忘れたのか?と思ったが、どうやらそうではなく、なぜ5人分用意するのか?ということだった。
曰わく、「昨夜は主が召し上がるものと思っていましたが別個に用意しているし、不思議でならない」と。
しかし、確かに夜は5人いたのだが、彼らの言うように今みると自分を含めない限り5人ではない。
記憶をたどるとオレンジ色のジャケットをきて先頭にたって入ってきた男がいない。
訝しく思って、その人の特徴をいい、記入してもらった名前をみせると4人は驚き顔を見合わせ、それから各々で嬉しいとも寂しいとも言えない顔をした。
聞くと3年前に登山先で雷にうたれ、亡くなった共通の友人だったようだ。
実はぬかるみで前に進めない状態だった彼らがここにたどり着いたときも雷が木を倒し丸太橋のようなようになりぬかるみがなくなった先に我が家をみつけたらしい
まるで雷と同化して降りてきたのだろうか?
定かではないが、見えていたかのようにあなた方5人は、楽しそうに飲み交わし語り合っていた事を伝えた。
171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/08(火) 21:04:03.27 ID:DVIBnR9G0
友人の話
彼は来週にせまった山登りのために、自宅で準備をしていた。
妻は毎度の彼の行楽に、少々あきれていたようにみえたが、一緒に荷造りを手伝ってくれたそうだ。
登山二日目、彼は水にあたったのか、ひどい下痢に見舞われた。
脱水になり疲労困憊。
救急セットの中に何か使えるものはないかとあさっていると、入れた覚えのない整腸剤が入っている。
服用するといくぶん楽になり、歩きだす事ができた。
家に帰って、妻にその事をいうと、自分が入れたと言う。
「なんとなく、必要になる気がしたの」
彼の細君は、たびたびその妙な勘の冴えを発揮し、家にいながら彼の窮地を何度も助けているそうだ。
>>次のページへ続く
\ シェアする /
関連記事
easterEgg記事特集ページ
