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私が初恋をつらぬいた話
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213 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:08:41.05 ID:XlpjaHk90
これなら掲示板に書く必要ないじゃん

話の幕間にスレ主との対話があってボロが出たりリアリティを感じたりするのに連投連投で全然読者との会話が無い


215 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:11:38.36 ID:+beSXCVE0
>>213
申し訳ありません。

私自身も会話を交えて投稿できればいいのですが、思ったより長くかかってしまっているので、急いで投稿しております。

皆さんの貴重なお時間を割いていただき、感謝の念で一杯です。

後もう少しで終わりますので、最後まで聞いていただけたら、幸いに思います。




218 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:14:48.52 ID:+beSXCVE0
はい、続けます。


家に帰りリビングに入ると、先生はフワーッと大きく背伸びをした。

「何だか大変な一日でしたね〜。あー疲れた。」

そう言いながら、ニコリと私を見る。

私はずっと気になっていた事を質問した。

「…手…どうしたんですか…?」

「ん?手?」

先生は自分の両手を広げて、不思議そうに眺めた。

「怪我しただけですよ。傷も深くないし、ほっときゃ直るでしょう。」

そう言うと、ハハっと恥ずかしそうに笑った。

「違います!そうじゃなくって…どうして怪我をしたのか聞いてるんです。」

私が少し強く言うと、先生は困ったように苦笑いしながら、ドカっとソファに腰を下ろした。

「いやぁ…お金を返した後 領収書くれって言ったら、じゃあコレを握れって小さいナイフの束みたいのを差し出されたんですよ。」

先生は楽しい思い出を語るように、ニコニコしながら話している。

「だから それをこう…ギュッと。そしたらいきなり引っこ抜くもんですから……まぁこんなもので済んで良かったですよ。」

先生が笑う。

私はニコニコしながら握ったであろうその時の先生を想像して、思わず顔をしかめた。

「大丈夫、大した事無いですから。心配しないで。」

明るく言う先生の声に、私の目から涙が溢れた。



219 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:15:28.24 ID:ZOSge41I0
俺はさっさと続き読みたいから他の対話無くても平気だよ

対話ばっかりで投下遅いほうがいやだわ


220 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:17:02.33 ID:+beSXCVE0
先生は音楽教師。手は商売道具のような物だ。

一歩間違ったら、先生は一生ピアノが弾けなくなっていたかもしれない。

それなのに先生は相変わらずニコニコして、気にも留めてる気配が無い。

「ごめんなさい…先生ごめんなさい…大事な手なのに…」

私は複雑な思いで胸が一杯になって、謝ることしか出来なかった。

立ったまま、泣きながら先生に謝り続ける。

「大丈夫ですって。……それに僕の方こそ、貴女に謝らないといけません。」

「…どうして…ですか?」

私がシャックリをしながら聞くと、先生は凄く神妙な面持ちで下を向いた。

「…貴女をお金で買うような事をしてしまいました。……もう二度としませんから…許してください。」

私は泣きながら、ブンブンと首を振った。

「…先生の…大事な…お金を……先生のお父さんが…遺してくれた…大事な……」

息が詰まって言葉にならない。

「いいんです。それは僕が勝手にやってしまったんですから。…お願いだから、泣き止んで、謝りますから…」

先生が段々と困った顔をしていく。

それでも益々涙は止まらなくなっていき、私は幼い子供のように わんわんと泣き続けた。




222 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:19:44.53 ID:+beSXCVE0
「あぁもう…泣き虫なんだから……」

先生は優しくそう言って立ち上がり、私をぎゅうっと抱きしめた。

「ごめんなさいぃ…」

抱きしめられると、もっと申し訳なくなってくる。

「だから大丈夫だってば。ほら、泣かないで。お願いだから。」

先生は困ったように笑う。それでも私の涙は止まらなかった。

「大切な人を守るためなら、手の1本や2本、どうって事ないじゃないですか。渚さんだって、そう思うでしょ?」


先生は ちょっと照れくさそうにそう言った。

私は その言葉で更に胸が苦しくなって、立っていられなくなった。

先生は「おっと…」と言いながら、私を支えるように一緒に座り込んだ。



223 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:22:19.07 ID:+beSXCVE0
あぁ先生が困ってる…泣き止まなきゃ……もう何で涙が止まってくれないの…

泣きながらも どこか冷静な頭の片隅で、私はずっとそんな事を考えていた。

「……ほら…こっち向いて。」

優しくそう言われて、嗚咽を堪えながら先生を見つめる。

先生は優しく微笑むと、フッと顔を近づけた。

先生の唇が、私の唇に軽く触れる。

私の頭は、途端に真っ白になった。

息をする事も忘れて、私は自然に目を閉じた。

先生の顔が、スーっと離れる。

私は思い出したように、そっと息を吐いた。

薄っすらと目を開けて、先生を見る。

「…泣き止んだ。」

先生は私と目が合うと、ニコッと微笑んだ。



「…せんせい…」

私がやっとで呟くと、先生は恥ずかしそうにクスっと笑った。

「その…先生って呼ぶの、そろそろやめにしませんか?」

私は少し困った顔をした。

少しだけ考えて、先生に小さな声で聞き返す。

「……じゃあ何て呼べばいいですか?」

先生もちょっと困った顔をしながら笑った。

暫らくぼーっと何処かを見て黙り込んでいたが、またフッと笑うと まっすぐ私を見つめた。

「んー………わからない…」

そう言いながら、ゆっくりと顔を近づけてくる。

私はまた、目を閉じた。



224 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:25:32.80 ID:+beSXCVE0
その日、私は初めて先生と一緒にベッドに横になった。

先生は やらしい事は一切せず、ただ向き合った私を抱きしめているだけだった。

安心感と暖かさで心は すごく安らいでいたのに、私はなかなか眠ることが出来ず「先生…」と小さく声をかけた。

「…なんですか?」

先生も起きていたようで、すぐに返事が返ってきた。

「先生と〇〇さんは…どういう知り合いなんですか?」

「このタイミングでそれを聞きますか。」

先生はプッ吹き出した。

「……あれは嘘です。」

驚いて先生を見上げる。

「まぁ…名前と何をしてる人か位は知っていましたけど。」

「何で嘘ついたんですか。」

私が少し怒った様に言うと、先生は苦笑いした。

「…まぁ、もういいじゃないですか。」

先生は困ったように笑いながらそう言うと、私をグッと抱き寄せた。

「でも…」

「いいからもう寝ましょ。これ以上このままで起きてたら僕、貴女に何するか解りませんよ?」

私は急に恥ずかしくなって、布団の中に顔を埋めた。

「…もうこれからは、貴女に怖い思いも、辛い思いも、絶対にさせませんから。」

先生は私の頭を、私が寝付くまで ずーっとずーっと優しく撫で続けていた。




>>次のページへ続く
 
 


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