何が本当に大事で何が俺に必要か。大事な人が側に居てくれる事がどれほど大切な事か、その時の俺は何も解ってはいなかった。
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215 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/06/30(木) 19:14:50 ID:H48zS4G/
だがいくら粗筋(企画書)があると言っても、俺はDQN工業卒の筋肉馬鹿に過ぎない。本を読むのは大好きだが、読むのと書くのは大違い(当たり前だ)。
何行も書かない内に机の前には、見かけだけは明治の文豪の様に頭を抱える筋肉馬鹿。実に大変な事を引き受けてしまったと、今更ながらに愕然としてしまっていた。
だが それでも俺には引き受けた責任がある、何回も何十回も書き直しをして一応の形を整えた。
まずはその原稿を、編集やその世界の仲間に見せて意見を聞いてみた。きつい意見も多かったが、手直しを繰り返す内に何とか見れるようになって来た。
ちなみに一番意見がキツかったのは彼女だったのだがw、原稿に編集長のOKが出た時に一番喜んでくれたのも彼女だった。
その後に記事用の写真撮影があり、さらに その一ヵ月後に雑誌が発売された。
つづく
218 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/06/30(木) 20:59:43 ID:H48zS4G/
そしてついにXディがやってきたw
発売日にはわざわざ仕事を休んで朝から彼女と二人で開店前に本屋に並び、二人で二冊ずつ買って帰った。
俺なりに魂を削った原稿に十数枚の写真、なんとビックリ俺の記事は巻頭特集のトップを飾っていた!
部屋に帰り彼女と二人で並んで奇声を発しながら、雑誌のページをめくっていく。
他の執筆者はみな満面の笑顔の写真だが、俺だけ試合前の前田日明ばりの鋭い顔で写っていた。
俺『うわあ・・・なんて顔で写ってんだよ俺、やっぱ歯を見せて笑えば良かったかなあ?』
彼女『そんな事ないよ!、いい年こいた男のくせにヘラヘラしてる他の連中よりよっぽどいいよ!・・・いい男だね!(はぁと)』
俺『やっぱりそうか、そうだよな!』
彼女『よく頑張ったね、お疲れさま・・・惚れ直しちゃったw』
その日の晩は彼女が洒落た居酒屋に予約を入れてくれていた、二人で祝杯をあげて飲んで飲んで飲みまくった。
実にいい酒だった、普段あまり飲まない彼女もたくさん飲んでいる。
その結果 彼女はきっかり3時間後に酔い潰れた、小さい体をおぶって歩いて部屋に戻る。
その姿を見た通りすがりの連中は、眉を潜めたりくすくす笑ったりしていたが俺は何も気にしない。
今俺が感じている達成感や満足感は、絶対に他人には分からない。それを分け合えるのは、今俺の背中にいる泥酔女だけだ。
部屋に帰ってベッドに寝かせ、となりに潜り込む。
俺『みんなおまえのおかげだ、ありがとう・・・』
彼女『ゔェえ゙ぇ・・・ZZZzz』
最高の一日だった。
つづく
220 :774RR:2005/06/30(木) 21:09:51 ID:4+z8wquP
なぜか心が温まったw
だがいくら粗筋(企画書)があると言っても、俺はDQN工業卒の筋肉馬鹿に過ぎない。本を読むのは大好きだが、読むのと書くのは大違い(当たり前だ)。
何行も書かない内に机の前には、見かけだけは明治の文豪の様に頭を抱える筋肉馬鹿。実に大変な事を引き受けてしまったと、今更ながらに愕然としてしまっていた。
だが それでも俺には引き受けた責任がある、何回も何十回も書き直しをして一応の形を整えた。
まずはその原稿を、編集やその世界の仲間に見せて意見を聞いてみた。きつい意見も多かったが、手直しを繰り返す内に何とか見れるようになって来た。
ちなみに一番意見がキツかったのは彼女だったのだがw、原稿に編集長のOKが出た時に一番喜んでくれたのも彼女だった。
その後に記事用の写真撮影があり、さらに その一ヵ月後に雑誌が発売された。
つづく
218 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/06/30(木) 20:59:43 ID:H48zS4G/
そしてついにXディがやってきたw
発売日にはわざわざ仕事を休んで朝から彼女と二人で開店前に本屋に並び、二人で二冊ずつ買って帰った。
俺なりに魂を削った原稿に十数枚の写真、なんとビックリ俺の記事は巻頭特集のトップを飾っていた!
部屋に帰り彼女と二人で並んで奇声を発しながら、雑誌のページをめくっていく。
他の執筆者はみな満面の笑顔の写真だが、俺だけ試合前の前田日明ばりの鋭い顔で写っていた。
俺『うわあ・・・なんて顔で写ってんだよ俺、やっぱ歯を見せて笑えば良かったかなあ?』
彼女『そんな事ないよ!、いい年こいた男のくせにヘラヘラしてる他の連中よりよっぽどいいよ!・・・いい男だね!(はぁと)』
俺『やっぱりそうか、そうだよな!』
彼女『よく頑張ったね、お疲れさま・・・惚れ直しちゃったw』
その日の晩は彼女が洒落た居酒屋に予約を入れてくれていた、二人で祝杯をあげて飲んで飲んで飲みまくった。
実にいい酒だった、普段あまり飲まない彼女もたくさん飲んでいる。
その結果 彼女はきっかり3時間後に酔い潰れた、小さい体をおぶって歩いて部屋に戻る。
その姿を見た通りすがりの連中は、眉を潜めたりくすくす笑ったりしていたが俺は何も気にしない。
今俺が感じている達成感や満足感は、絶対に他人には分からない。それを分け合えるのは、今俺の背中にいる泥酔女だけだ。
部屋に帰ってベッドに寝かせ、となりに潜り込む。
俺『みんなおまえのおかげだ、ありがとう・・・』
彼女『ゔェえ゙ぇ・・・ZZZzz』
最高の一日だった。
つづく
220 :774RR:2005/06/30(木) 21:09:51 ID:4+z8wquP
なぜか心が温まったw
222 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/06/30(木) 21:50:10 ID:H48zS4G/
皆さん支援ありがとうございます、今日はここまでです。
次はまたなるべく近いうちに、おやすみなさい。
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733 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/07/24(日) 10:38:39 ID:He8l8Mhe
俺の記事の評判は上々だった、雑誌発売と同時にその世界の友人たちから ひっきりなしにGJ!のメールが届いていた。
フィールドに行けば知らない人に声を掛けられたり、一緒に写真に写ってくれと言われたりする様にもなった。
中には初対面の用具メーカーの人から用具サポートの話しまであった、舞い上がった俺は当然の様に二つ返事で話しを受ける事にした。
そして長年愛用した道具を物置に仕舞い込み、誰もが欲しがる最新のウェアとギアを身に纏ってフィールドに出る様になった。
そして俺はこの頃から、この世界の仕事で食って行く事を真剣に考え始めていた。
今考えれば、只の勘違い大馬鹿野郎だ。スター気取りとまでは言わないが、当時の俺は有頂天だった。
だがそっち方面に力を入れるようになると、愛車の2stオフにまたがる時間は殆どなくなる。
たまにはツーリングに行きたいなと彼女と話しつつも、いつしか愛車はチェーンから赤錆が吹く程の間放置されてしまっていた。
その後も俺には毎月のように記事の依頼があり、日々の会社勤めと原稿の締切に追われ超多忙な日々を過ごしていた。
それでも毎日楽しそうにしている俺に、彼女は何度も笑顔で頑張ってねと言ってくれていた。
彼女は何時でも俺の事を思いやってくれていた。
つづく
735 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/07/24(日) 12:51:50 ID:He8l8Mhe
十六歳で初めて原スクにまたがった俺、それ以来初めてとなるバイクに乗らない夏を迎えていた。
彼女はそんな俺に痺れを切らし、仕方なしにまた一人でツーリングに出掛けるようになっていた。
そんな夏のある日の事、彼女は俺に一冊のタウン誌を開いて俺に聞いてきた。
彼女『ねぇ、ちょっとこれ見てくれる?』
俺『何だこれ?・・・女性限定のツーリングクラブ設立に伴いメンバー募集中、現在のメンバー三名・・・入りたいのか?』
彼女『うん・・・だって熊男さん忙しくてなかなかバイクに乗れないし、あたし一人だとトラブルが有った時大変だし。』
俺『確かにそれはそうだな・・・う〜んわかった!楽しんできな!』
彼女『ありがと!、女の子だけだから安心してね!』
こうして彼女はツーリングクラブなるものに入ることになり、毎週の様にクラブの仲間と走りに行く様になった。
俺はと言うとメーカーから用具をサポートされている関係から、イベントの手伝いやら発売前の用具のテストなどにも駆り出されるようになっていた。
あまりの忙しさに いつしか彼女と合う時間も回数も減ってきていたのだが、その時の俺は そんなに寂しいとも思っていなかった。
そして秋がくる頃には10日以上も連絡を取らない期間がある様になった、それでもまだ俺は呑気に構えていた。
俺も彼女も充実した日々を送っていて、ちょっとお互い忙しくてすれ違っているだけだと思っていた。・・・いや違う、思い込もうとしていた。
それからの短い二ヵ月程の秋の間、週イチ程度で連絡は取っていたものの俺と彼女はまったく会っていなかった。
そしてその年も釣瓶が落ちきり冬が来た頃、ある週の頭の晩に彼女から一通のメールが俺の携帯に届いた。
つづく
739 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/07/24(日) 17:27:58 ID:He8l8Mhe
題名には『大事なお話です。』、とあった。
急に改まってなんだろう?、とにかく読んでみない事には始まらない、・・・内容は確かこうだった。
『こんばんは熊男さん、しばらく会ってないけど元気ですか?あたししばらく考えてたことがあるので、その事を伝えたいと思います。』
『最近ずっと会えてないよね、熊男さんは寂しくないのかな?あたしはずっと寂しかったよ、でも熊男さんが充実してるのは あたしも嬉しかったから我慢できてたわ』
『でもあたし考えたのね、熊男さんが雑誌とかの仕事を続ける限りは ずっとこうなんだなって。あたし今はまだ我慢できてるわ、でもこんな寂しいのがずっと続くかと思うと・・・。』
『あたし、もうこれ以上寂しいのは嫌だなあ。とにかく一度会ってきちんと話し合いたいと思います、今週の土曜日の晩うちに来て下さい。』
突然の長文メール、いくら鈍い俺でも彼女が何を言いたいかは察することが出来た。
すぐに電話したのだが、電源が切られていているらしく通じない。メールを送ってもみたが、待てど暮らせど返事が来ない。
どうやら電話で済ます気は無い様だった、だがすぐアパートに直接行こうと思えば行けた。
しかし俺は行かなかった、例によって原稿の締切が迫っていて身動きが取れない状態だったからだ。
つづく
740 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/07/24(日) 17:39:49 ID:He8l8Mhe
俺みたいな素人にでも書ける様な原稿なんて、すぐに放り出せば良かった。
つまらない名誉欲や自己満足も、金さえ出せば誰にでも買える最新のギアやウェアなんぞ全て捨てても構わなかったのに。
すぐに体一つで彼女の所に行って ごめんなさいと言えば良かった、そして強く抱き締めればそれで全て解決していたかも知れないのに。
余計なものばかり背負っていっぱいいっぱいだった俺には、何が本当に大事で何が俺に必要か。
大事な人が側に居てくれると言うこと、大事な人の側に居てあげられるという事。
それらがどれほど大切な事か、その時の俺は何も解ってはいなかった。
そして馬鹿な俺の無駄な時間はその週も淡々と流れて行く、そしてついに土曜日の夕方がやってきた。
つづく
741 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/07/24(日) 19:42:32 ID:He8l8Mhe
土曜日の夕方から車を走らせる、彼女の部屋に通じるこの道もずいぶん久しぶりだ。国道のバイパスから県道に降りて、商店街方面に向う小道に右折する。
24時間営業スーパーの駐車場に車を停め、そこから五分程歩くと部屋に着く。チャイムを鳴らすと彼女が出てきた、彼女『・・・いらっしゃい、どうぞ入って。』。
彼女の表情は硬く青白い、笑顔は無かった。俺は無言で部屋に上がり、あぐらをかいてテーブルの前に座った。
彼女もπの字状に膝を崩して座り込み、テーブルを挟んで二人が向かい合う形になった。先に口を開いたのは彼女、ぎくしゃくと口が開き始める。
彼女『久しぶりね、少し痩せたんじゃない?』
俺『そうかもな、ここんとこずっと寝不足だったし』
彼女『やっぱりあれ?雑誌の仕事で・・。』
俺『ああ、毎月大変だよ。』
彼女『そっかあ・・・熊男さんはあたしと居るよりそっちの方ががいいみたいね』
俺『いや、それとこれとは別の話で・・』
彼女『ううん気を遣わなくていいよ・・・、でももうこれ以上寂しいのはあたし嫌だなあ。』
俺『・・・・・』
彼女『今日来てもらったのはね、相談ていうか・・・ずっと考えてたことがあったの』
俺『・・・どんな事?』
彼女『あたし・・・東京に帰ろうかと思ってるの』
つづく
744 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/07/24(日) 21:12:45 ID:He8l8Mhe
俺は驚かなかった、彼女が別れを切り出すために俺を部屋に呼んだことくらいは察していたからだ。
それから彼女は自分がとても寂しがり屋で、これ以上俺に会えないことが耐え切れなくなりそうだと言った。
会えないくらいなら一人のほうがまだいい、東京に帰って何もかもやり直したい気持ちがあると俺にはっきり言った。
・・・この時が本当に最後のチャンスだった、今考えればやり方はいくらでもあったんだと思う。会社勤め+雑誌の仕事と彼女との付き合い、いくらでも両立出来たはずだ。
二人で都合のいい場所に別の部屋を借りても良かった、思い切ってウチに嫁に来てくれと言えば来てくれただろう。
二人で力を合わせられれば、どんな事でも乗り越えられたんだろうなと思う・・・。
俺だって彼女と別れたくはなかった、だがその世界で生きていくつもりでいた当時の馬鹿な俺。
もう雑誌の連載とスポンサーの事で頭がいっぱいいっぱい、何よりも大事な彼女を想う気持ちは心の隅に追いやられていた。
そして数時間にわたる話し合いの結果、俺たちの関係は今日この場で終わりにする事になる。
その冬最初の大雪になる夜、ふたりが出会ってから二年と二ヵ月の時が過ぎ去っていた。
つづく
746 :熊男 ◆45HBJQcJTY :2005/07/24(日) 22:14:08 ID:He8l8Mhe
話が済んだ後の彼女は、小さい顔にかすかな笑みを浮かべていた。
彼女『じゃあ・・・お別れね』
俺『ああ・・・・』
彼女は部屋の隅から一抱え位の段ボール箱を持ってきて俺の前に置いた、中を見ると俺が持ってきていた本、CD、着替え等が整然と納められている。
俺はそれを見た時、頭の真ん中から出た何かが背筋を通じて体中を急激に冷やしていくのを感じていた。
それは俺が初めて感じるリアルな別れの感触だったと思う、どうしたらいいか解らず黙って彼女を見つめていた。
彼女『名残は惜しいけどね・・・もう行かなきゃダメだよ熊男さん・・・』
俺『・・・。』
彼女『お願いだから・・・まだあたしが笑っていられるうちに出ていって・・・』
それでも俺はその場から動けないでいた、この部屋から出たら彼女と会うことはもう二度と無いだろう。その圧倒的な事実、それに打ちのめされていた。
彼女『・・・ぅうゎ・・ああああああ゙あ゙あ゙あ゙ーん!』
ついに堪え切れなくなった彼女は、いきなり大粒の涙を流して大きな声で泣き始めた。
彼女『だから゙ぁ゙・・早く出てい゙ってって行ったのに゙ぃーー!あなたにだけは絶対にこんな顔見せたくなかったのにーー!!熊男のバカーーー!!』
その時の俺は彼女のその姿に、すっかり気負されてしまっていた。無力な俺は無言で段ボール箱を抱え、靴を履いてドアを開ける。
最後に部屋のまん中で泣きじゃくる彼女にサヨナラと声をかけ、外に出て静かにドアを閉めた。
中からバタバタとドアに向かう小走りの足音が聞こえ、ガチャリと鍵を掛ける重苦しい音がした。聞き慣れていたはずのその音は、俺の中の何かをグサリと突き刺した。
その後このドアが俺の為に開く事はもう二度と無く、その音が終わりの日の終わりを告げる合図だった。
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