逆転
(13ページ目) 最初から読む >>
\ シェアする /
何年も関係の続いた男をすぐに忘れるなんて出来ないだろう。
だけどな、俺に許して貰いたいと思うなら全て忘れてからにしてくれ。幾らなんでも失礼だ。
さあ話しはその位でいいだろう。俺は寝るから出て行ってくれないか」
一旦、躊躇した妻は大胆な行動に出ます。
私の前で服を脱ぎ始めたのです。
その下からは このところ見る機会のなかった若い時のような張りは、失っても充分に白く綺麗な裸体が現れました。私には見せないで、あの男に見せていた汚れた裸体が。
「言い訳が通じなかったら今度は色仕掛けか?」
そんな言葉を妻に投げ掛けましたが、あの男にどんな事をし、どんな事をされたのか興味が湧きます。男って生き物も どう仕様もないなぁ。
妻の身体から視線を外せないでいるのを、いい事に、ベッドの中に入ろうとします。
私とて男ですから暫らくぶりの妻の身体に息子が反応してしまうのは しょうがない事でしょう。
寝取られ趣味はないつもりですが、あの男にどう抱かれたのか、また妻は、それをどう受けて立ったのか興味が湧くのです。
そんな気持ちが前面に立ち1度は その気になった私でしたが、此処で負けては妻の思い通りですから精一杯の抵抗をしましょう。
「止めてくれないか。俺にそのつもりはないよ。
他の男に触りまくられたお前の身体をどうして俺が抱ける?
たとえ何回洗ったとしても全てが洗い落とされる訳じゃない。そんなの真っ平御免だ。
まして気持ちは あいつに残して来ているだろう?
嫌々抱かれるのは止せ。俺もお前も虚しくなるだけだろう。・・・
そんなお前を抱くくらいなら、愛もなく客に身体を預ける風俗の女の方がまだましだ。
頼むから此処から出て行ってくれないか。まだ話があるなら後で聞こう」
「・・・気持ちを残して来てるなんて・・・」
妻が悲しそうな表情を浮かべました。服をはおり出て行く後姿も寂しげでした。
今の行動は何を訴えようとしてなのだろう?
男を思い、私を思い・・・・あんなに悲しそうなのは何故なのでしょう?
どうしてこんな夫婦になってしまったのだろうか・・・
気の強い妻に嫌気がさして、私は離婚願望に取り付かれていました。
人間なんて欠点を挙げればキリがないでしょう。特に私はその典型です。
言い訳をさせてもらえば、夫婦生活は毎日の続くものだけに、ボディブローのようにダメージが蓄積してしまいました。毎日、毎日積もっていったのです。
自分の中の限界を超えた時に妻への拒絶反応が芽生えていました。
もっと戦えばよかったのです。たいして器を持った男ではないのですから。それを拒否し逃げて来た結果がこれです。
妻の容姿は連れて歩いても自慢の出来るものです。
あのきつい性格も私が もっと愛情を注いでやれば何とかなったのかも知れません。そうしたなら、誰もが羨む夫婦になれたのかも・・・・
もっと私に甲斐性が有れば、等と考えているうちに窓の外が明るくなって来ています。浅い眠りについて間もなく妻の声で目が覚めました。
--------------------
「貴方、起きる時間ですよ」
睡眠不足のボーーとした頭で洗面台に向かうと、妻は もう身支度が終っていました。
「何処かへ出かけるの?」
「会社に行きます。まだ引継ぎも残っていますし」
当たり前に答える、その言葉にカチンときました。
「正気か?どの面下げて会社に行くんだ?
常識で考えてみろ。お前が言った事は嘘か?
行くなら行ったらいいさ。その代わり、もう帰る家はないと思え」
妻の言い分が、男に逢いたいと聞こえてしまうのです。それはそれでいいのですが、何かコケにされているようで腹が立ちます。
「・・・・・・・」
私達夫婦の会話を子供達も聞いています。
頭が呆けているので そこまで気が回らなかった。
長女は素知らぬ顔をしていますが、次女の方は心配そうに妻を見ていました。
妻と気の合うこの子には妻が哀れに映るのでしょう。可哀想な事をしてしまいました。
そんな日は、仕事にも気が乗らないのでした。
その夜帰宅すると妻が出向かいに来ます。
「今日、会社には行きませんでした。私も貴方の気持ちをもっと考えればよかったと反省してる。もう行かない。無神経でごめんなさい」
無言で居間に入ると、次女が夕食の仕度をしています。
「お父さんお帰りなさい。今お母さんとご飯の用意をしていたの。お父さんの好きなもの作るから もう一寸待ってて」
どうやら妻は次女の機嫌を取った模様です。
この子は、母親っ子で、どちらかと言えば妻の見方でした。
長女は妻の性格を受け継いでいますが、次女は私の分身です。要するに甘えっ子なのです。
何とか私達の仲を取り持とうと考えているのかと思われます。これは強敵出現です。
居間に戻った妻は、次女と楽しそうに夕食の準備を再開し始めました。その姿は何事もなかった、幸せな風景です。
食事時間も長女は降りて来ませんでしたが3人で普通にするのでした。
私は妻とは会話しませんが、次女が何とか話題を共有しようと明るく振舞います。その姿がいじらしく、私は迷惑とも思いましたが合わさずにはいられませんでした。
そんな時間も何とか乗り切りましたが、食事後も私達を話しに巻き込みます。
今の行動は何を訴えようとしてなのだろう?
男を思い、私を思い・・・・あんなに悲しそうなのは何故なのでしょう?
どうしてこんな夫婦になってしまったのだろうか・・・
気の強い妻に嫌気がさして、私は離婚願望に取り付かれていました。
人間なんて欠点を挙げればキリがないでしょう。特に私はその典型です。
言い訳をさせてもらえば、夫婦生活は毎日の続くものだけに、ボディブローのようにダメージが蓄積してしまいました。毎日、毎日積もっていったのです。
自分の中の限界を超えた時に妻への拒絶反応が芽生えていました。
もっと戦えばよかったのです。たいして器を持った男ではないのですから。それを拒否し逃げて来た結果がこれです。
妻の容姿は連れて歩いても自慢の出来るものです。
あのきつい性格も私が もっと愛情を注いでやれば何とかなったのかも知れません。そうしたなら、誰もが羨む夫婦になれたのかも・・・・
もっと私に甲斐性が有れば、等と考えているうちに窓の外が明るくなって来ています。浅い眠りについて間もなく妻の声で目が覚めました。
--------------------
「貴方、起きる時間ですよ」
睡眠不足のボーーとした頭で洗面台に向かうと、妻は もう身支度が終っていました。
「何処かへ出かけるの?」
「会社に行きます。まだ引継ぎも残っていますし」
当たり前に答える、その言葉にカチンときました。
「正気か?どの面下げて会社に行くんだ?
常識で考えてみろ。お前が言った事は嘘か?
行くなら行ったらいいさ。その代わり、もう帰る家はないと思え」
妻の言い分が、男に逢いたいと聞こえてしまうのです。それはそれでいいのですが、何かコケにされているようで腹が立ちます。
「・・・・・・・」
私達夫婦の会話を子供達も聞いています。
頭が呆けているので そこまで気が回らなかった。
長女は素知らぬ顔をしていますが、次女の方は心配そうに妻を見ていました。
妻と気の合うこの子には妻が哀れに映るのでしょう。可哀想な事をしてしまいました。
そんな日は、仕事にも気が乗らないのでした。
その夜帰宅すると妻が出向かいに来ます。
「今日、会社には行きませんでした。私も貴方の気持ちをもっと考えればよかったと反省してる。もう行かない。無神経でごめんなさい」
無言で居間に入ると、次女が夕食の仕度をしています。
「お父さんお帰りなさい。今お母さんとご飯の用意をしていたの。お父さんの好きなもの作るから もう一寸待ってて」
どうやら妻は次女の機嫌を取った模様です。
この子は、母親っ子で、どちらかと言えば妻の見方でした。
長女は妻の性格を受け継いでいますが、次女は私の分身です。要するに甘えっ子なのです。
何とか私達の仲を取り持とうと考えているのかと思われます。これは強敵出現です。
居間に戻った妻は、次女と楽しそうに夕食の準備を再開し始めました。その姿は何事もなかった、幸せな風景です。
食事時間も長女は降りて来ませんでしたが3人で普通にするのでした。
私は妻とは会話しませんが、次女が何とか話題を共有しようと明るく振舞います。その姿がいじらしく、私は迷惑とも思いましたが合わさずにはいられませんでした。
そんな時間も何とか乗り切りましたが、食事後も私達を話しに巻き込みます。
夜も更け やっとそんな時間から開放し、自分の部屋に戻ろうとする娘が振り返り私に声を掛けました。
「お父さん、私やっぱり・・・・」
そう言い掛けて言葉を飲み込みます。大きな瞳に涙が溜まっているように見えたのは気のせいでしょうか。
その後の言葉が出ないまま、部屋に戻ろうとする次女を複雑な気持ちで見送るしかありません。
「あの子は貴方に何度も謝れって・・・・
謝って許してもらえって・・・・
私のした事は皆を傷つけた・・・
本当にごめんなさい。
貴方・・・許して・・・許して貴方・・・・」
妻は私の前で深々と頭を下げ涙ぐみます。
「・・・・駄目だな。俺の許せる範疇を越えてる。
嘘をついて何か高価な買い物をしたのとは訳が違う。
子供達には悪いが、あの子らには これからの人生がある。
何時かは、この家を出て行く時が来るが、俺達はその後どうする。
俺は我慢できるとは思えない」
もしも妻を愛していたとしても、私は不倫を働いた女を許せないでしょう。
まして離婚願望の強い私には考える余地もありません。それにしても、あの子の気持ちを考えると・・・・
「そんな事言わないでもう少し考えて・・・・私に時間を下さい・・・」
妻が食い下がります。
私は妻に意地の悪い仕打ちを仕掛けました。
「お前、あいつは会社で降格位で済むと言ってたな。それは都合がよすぎる。
それも一時的な降格だろう?そんなに世の中甘くはないよ。
社会的制裁がどう言うものか教えなければならないな。
まずは、あいつの家庭からはじめようか。
あいつの家の電話番号を教えろ。奥さんにちゃんと話をしよう。
奥さんに罪はないが、知っておいた方が今後の為だろう。可哀想だが仕方がないさ」
「それは止めて。それは堪忍して。奥さんには何の罪もないの」
相手の奥さんに自分達のした事が分かるのが怖いのか、それとも男を気遣っているのか分かりませんが、それでは妻も甘いでしょう。
男に気持ちを残しているのだとしても、私には関係がないと思っていました。
でも私にも意地はあるのです。
「あいつを庇うのか?庇っているんなら、あいつにまだ気があるんだな。まあいいさ。
お前が教えなくても俺は知っているんだよ。
どんな態度を取るか試しただけだ」
立ち上がり電話に近づくと妻がその前に立ちふさがります。
「辛い思いをするのは私達だけでいいじゃない。関係のない人まで巻き込まないで!あの人の家庭を壊さないで!」
必死の形相でまた無神経な言葉を口にしました。
「大丈夫か?頭が可笑しくなっていないか?
関係のない人じゃないだろう。充分に関係者だ。
>>次のページへ続く
\ シェアする /
関連記事
easterEgg記事特集ページ
