戦い
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美鈴さんが言うまで、私から聞いた事は黙っていてくれ。頼む。
それにしても美鈴さんは何を考えて・・・・・。
要らぬ事を電話してしまった。失礼する。」
最初の話は、また私と妻を険悪にさせる為の、嫌がらせだと思っていましたが、流石に葬儀の話はショックだったので、妻に電話すると。
「えっ、私聞いていません。本当です。聞いていたら あなたに話します。
その様な場所に私が出る事は考えられませんが、その事が本当なら断ります。
こちらからまた電話します。」
10分ほどして、妻から電話が有りました。
「あなた・・・・私は葬儀に行かなくてもいいそうです。・・・・・・心配掛けてごめんなさい。課長と2人で行く事はありません。」
「あの男に電話して確認を取ったのだろ?あいつは何と言っていた?」
「いいえ・・・・別に・・・・・・自分の勘違いだったと・・・・・・。」
「俺に隠し事は、しないと言ったのは嘘だったのか?何を隠している?あいつは何を言った?」
「私は、あなたを信じています。私を信じて。あなたを信じていますから。・・・・・
課長はあなたから電話が掛かって来たと言いました。
最近また思い出しては遣り切れない思いでいるから、今度の土曜日の昼過ぎに こちらに来て謝れと言われ、
今度の土曜は取引先の葬儀に、部下と出なければ駄目なので、日曜にして欲しい、気が収まるならまた殴ってもいいと言うと、急に怒り出して、
その部下と言うのは妻の事か?妻と行く気だな?本当に葬儀に行くのか?違う所に2人で行くのと違うのか?
と訳の分からない事を言い出したので、怖くなって電話を切ったと言われました。
あなたが そう成ったのも全て自分のせいだと。取り返しの付かない事をしてしまったと。
お金はいくら掛かってもいいから、良い医者に看てもらって欲しいと言っていました。
その様な事は信じていませんから。あなたがどうなっても信じていますから。あなただけを信じていますから。あなたがどうなっても、あなたを愛していますから。」
「俺がどうなってもと言う事は、俺がどうかしていると言う意味か?俺が変になったと思っているのか?
電話は、あいつから掛かって来たんだ。通話記録を取れば分かる。
お前は俺が医者に行った方がいいと思っているのか?
何も信用していないじゃないか。もういい、勝手にしろ。」
私の今までの言動や行動から、妻が疑心暗鬼になるのは分かります。しかし野田の事を信用するのだけは許せませんでした。
また、ここで怒れば、野田の作戦に乗ってしまう事も分かっていましたが、それでも怒りは隠せませんでした。
発覚当初は、野田を殺してもいいと、真剣に思っていましたが、野田と違い守る者がある私には出来ません。
妻が野田だけを好きで私と別れたいと言えば別ですが、私の事が好きで、野田とは勘違いだったのでもう終わったと言われれば、真意はともかく、犯罪になる復讐も戸惑ってしまいます。
そうかと言って、逆に野田から攻められている今の状態では、妻との事を考える余裕も無くなり、このままでは私が おかしく成りそうです。
いえ、既に少しおかしく成っているのかも知れません。
野田の目的は、私と妻が元の夫婦に戻るのが嫌で、揉めさせて離婚させ、妻を自分の物にしたいのだと推測出来ますが、それだけでは無いような気がします。
それ以外にも、何か凄く満たされない物がある様に感じました。
思い当たるのは、別れた奥さんの事です。
野田が自分と同じ思いだから、私の心境が分かるのだとしたら、逆に私は今妻と別れても未練が残るので、別れてさっぱりした様に言っていますが、野田も まだ別れた奥さんに、未練があるに違い有りません。
今度の休みは家に帰り、野田の別れた奥さんに会ってみようと思います。
--------------------
7月18日(金)
仕事が長引き、家に着いたのは、かなり遅い時間でしたが、妻は いつもどおり起きて待っていました。
私は、着いてから一言も話さず、お風呂に入りに行こうとした時、妻が。
「あなた・・・・・ごめんなさい。明日・・・・急に・・・私が葬儀に行く事に・・・・・・・。」
「やはりそうか。本当は前から言われていたのと違うのか?誰と行く?あいつか?」
「はい・・・課長と・・・・。でも本当に今日言われたのです。もう一人の人が急に都合が悪くなったから、先方と面識の有る私に行って欲しいと部長から言われました。」
「上手い事を言うな。今回俺が帰る事にしたが、本当ならお前が来る事になっていた。
だから俺には違う理由を言って、俺の所へは来ないつもりだったのだろ?
最初から あいつと2人で行くつもりだったんだろ?
また俺を騙していたと言う訳か。」
「本当です。この間は知らなかったし、課長に電話したら 私とでは無いと言われました。本当です。信じて下さい。」
私は何が本当なのか、分からなくなってしまいました。
「信じろと言われても、その様な偶然があるのか?
仮にお前の話が本当だとしても、どうして断らなかった?
あいつと2人で行きたかったのか?俺が嫌な事は知っているだろ?」
「部長から先に、明日は何か大事な予定でもあるのか?と聞かれ、特に無いと言ってしまいました。その後、葬儀に行ってくれと頼まれて、断れませんでした。」
「そうか。お前は俺が帰ってきて、一緒にいるのが大事な事だとは思っていないんだ。
昔ならいいが、お前が俺を裏切り、未だに俺を苦しめている今、一緒にいる事が大事だとは思わないのか?本当は、俺といると息が詰まるのか?
別れたいなら そう言え。子供達に知られたくないし、今の生活は捨てたくないが、好きなのは野田ですと言え。
お金はいくら掛かってもいいから、良い医者に看てもらって欲しいと言っていました。
その様な事は信じていませんから。あなたがどうなっても信じていますから。あなただけを信じていますから。あなたがどうなっても、あなたを愛していますから。」
「俺がどうなってもと言う事は、俺がどうかしていると言う意味か?俺が変になったと思っているのか?
電話は、あいつから掛かって来たんだ。通話記録を取れば分かる。
お前は俺が医者に行った方がいいと思っているのか?
何も信用していないじゃないか。もういい、勝手にしろ。」
私の今までの言動や行動から、妻が疑心暗鬼になるのは分かります。しかし野田の事を信用するのだけは許せませんでした。
また、ここで怒れば、野田の作戦に乗ってしまう事も分かっていましたが、それでも怒りは隠せませんでした。
発覚当初は、野田を殺してもいいと、真剣に思っていましたが、野田と違い守る者がある私には出来ません。
妻が野田だけを好きで私と別れたいと言えば別ですが、私の事が好きで、野田とは勘違いだったのでもう終わったと言われれば、真意はともかく、犯罪になる復讐も戸惑ってしまいます。
そうかと言って、逆に野田から攻められている今の状態では、妻との事を考える余裕も無くなり、このままでは私が おかしく成りそうです。
いえ、既に少しおかしく成っているのかも知れません。
野田の目的は、私と妻が元の夫婦に戻るのが嫌で、揉めさせて離婚させ、妻を自分の物にしたいのだと推測出来ますが、それだけでは無いような気がします。
それ以外にも、何か凄く満たされない物がある様に感じました。
思い当たるのは、別れた奥さんの事です。
野田が自分と同じ思いだから、私の心境が分かるのだとしたら、逆に私は今妻と別れても未練が残るので、別れてさっぱりした様に言っていますが、野田も まだ別れた奥さんに、未練があるに違い有りません。
今度の休みは家に帰り、野田の別れた奥さんに会ってみようと思います。
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7月18日(金)
仕事が長引き、家に着いたのは、かなり遅い時間でしたが、妻は いつもどおり起きて待っていました。
私は、着いてから一言も話さず、お風呂に入りに行こうとした時、妻が。
「あなた・・・・・ごめんなさい。明日・・・・急に・・・私が葬儀に行く事に・・・・・・・。」
「やはりそうか。本当は前から言われていたのと違うのか?誰と行く?あいつか?」
「はい・・・課長と・・・・。でも本当に今日言われたのです。もう一人の人が急に都合が悪くなったから、先方と面識の有る私に行って欲しいと部長から言われました。」
「上手い事を言うな。今回俺が帰る事にしたが、本当ならお前が来る事になっていた。
だから俺には違う理由を言って、俺の所へは来ないつもりだったのだろ?
最初から あいつと2人で行くつもりだったんだろ?
また俺を騙していたと言う訳か。」
「本当です。この間は知らなかったし、課長に電話したら 私とでは無いと言われました。本当です。信じて下さい。」
私は何が本当なのか、分からなくなってしまいました。
「信じろと言われても、その様な偶然があるのか?
仮にお前の話が本当だとしても、どうして断らなかった?
あいつと2人で行きたかったのか?俺が嫌な事は知っているだろ?」
「部長から先に、明日は何か大事な予定でもあるのか?と聞かれ、特に無いと言ってしまいました。その後、葬儀に行ってくれと頼まれて、断れませんでした。」
「そうか。お前は俺が帰ってきて、一緒にいるのが大事な事だとは思っていないんだ。
昔ならいいが、お前が俺を裏切り、未だに俺を苦しめている今、一緒にいる事が大事だとは思わないのか?本当は、俺といると息が詰まるのか?
別れたいなら そう言え。子供達に知られたくないし、今の生活は捨てたくないが、好きなのは野田ですと言え。
明日は2人で楽しんでこい。明日行けば俺達は終わりだ。その覚悟で行って来い。」
「ごめんなさい。行きません。
私は今の仕事が好きです。
あなたとの関係をどうしたら良いのか分からず、どうやって償えば、少しでもあなたが楽になれるのか分からずに、悩んでいました。
その事から逃げられるのは仕事をしている時だけでした。少しでも仕事で不利になる事はしたくなかった。
私が悪いのに勝手だと分かっています。
あなたはもっと悩んでいるのも分かっています。ごめんなさい。
言い訳になりますが、明日は別々に行くつもりでした。課長は車で迎えに来ると言いましたが 断りました。本当です。」
「だから?別々に行っても どこかで落ち合えばいい事だ。本当に葬儀が有るのかも疑わしいな。
何を言われても駄目だ。
第一俺は、お前の事を全く信用していない。
信用出来ない事をしたからな。
明日行っても良いが、帰りに離婚届を貰って来てくれ。
風呂はやめた。もう寝る。」
妻を虐める為に酷く言いましたが、信用出来ない思いは本心でした。
お互いに これだけ信用出来なければ、もう夫婦としては終わっているのかも知れません。
--------------------
7月19日(土)
朝早く起きて居間へ行くと、妻は電話を掛けようとしていました。
「どこに電話する?俺が寝ている間に、あいつと口裏合わせをしようと思ったのか?」
「違います。今日の事を断ろうと思って・・・・・・・・。」
私は、昨夜 あの後考えていた事が有り、今日の事を断らずに、迎えに来てもらうように電話しろと言いました。
また野田と何かあると思った妻は、躊躇していましたが、強引にそう電話させてから。
「どうだった?あいつは喜んでいただろ?」
「・・・・・はい・・・・・・どうして?私は課長と行くのですか?」
「行きたいのか?
ところが違う。あいつは、俺が帰ってきているのは知らないだろ?
あいつが来たら、俺は隣の部屋に隠れて聞いているから、俺の言うとおりにしろ。」
出来ないと泣きなりながら断る妻を、離婚で脅し無理やり承諾させました。
10時にチャイムが鳴り、妻が上がるように勧めると。
「おい、美鈴・・・いや、美鈴さん。
着替えてないのか?
向こうで食事をしようと思っていたので、時間に余裕はあるが早く着替えてくれ。どうした?」
「課長は私と行く事になるのを、前から知っていたのですか?課長が部長に頼んだのですか?」
「いや違う。一緒に行くはずの奴が、急に親戚で不幸が出来たから、美鈴さんに お願いする事に昨日決まった。
本当だ。ただ部長に、美鈴さんにして欲しいと進言したのは私だ。
でもこれは仕事上の事だ。他に意図は無い。
先方に面識のある美鈴さんが適任だと思った。
それより、2人でいる時は課長はやめてくれ。
>>次のページへ続く
「ごめんなさい。行きません。
私は今の仕事が好きです。
あなたとの関係をどうしたら良いのか分からず、どうやって償えば、少しでもあなたが楽になれるのか分からずに、悩んでいました。
その事から逃げられるのは仕事をしている時だけでした。少しでも仕事で不利になる事はしたくなかった。
私が悪いのに勝手だと分かっています。
あなたはもっと悩んでいるのも分かっています。ごめんなさい。
言い訳になりますが、明日は別々に行くつもりでした。課長は車で迎えに来ると言いましたが 断りました。本当です。」
「だから?別々に行っても どこかで落ち合えばいい事だ。本当に葬儀が有るのかも疑わしいな。
何を言われても駄目だ。
第一俺は、お前の事を全く信用していない。
信用出来ない事をしたからな。
明日行っても良いが、帰りに離婚届を貰って来てくれ。
風呂はやめた。もう寝る。」
妻を虐める為に酷く言いましたが、信用出来ない思いは本心でした。
お互いに これだけ信用出来なければ、もう夫婦としては終わっているのかも知れません。
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7月19日(土)
朝早く起きて居間へ行くと、妻は電話を掛けようとしていました。
「どこに電話する?俺が寝ている間に、あいつと口裏合わせをしようと思ったのか?」
「違います。今日の事を断ろうと思って・・・・・・・・。」
私は、昨夜 あの後考えていた事が有り、今日の事を断らずに、迎えに来てもらうように電話しろと言いました。
また野田と何かあると思った妻は、躊躇していましたが、強引にそう電話させてから。
「どうだった?あいつは喜んでいただろ?」
「・・・・・はい・・・・・・どうして?私は課長と行くのですか?」
「行きたいのか?
ところが違う。あいつは、俺が帰ってきているのは知らないだろ?
あいつが来たら、俺は隣の部屋に隠れて聞いているから、俺の言うとおりにしろ。」
出来ないと泣きなりながら断る妻を、離婚で脅し無理やり承諾させました。
10時にチャイムが鳴り、妻が上がるように勧めると。
「おい、美鈴・・・いや、美鈴さん。
着替えてないのか?
向こうで食事をしようと思っていたので、時間に余裕はあるが早く着替えてくれ。どうした?」
「課長は私と行く事になるのを、前から知っていたのですか?課長が部長に頼んだのですか?」
「いや違う。一緒に行くはずの奴が、急に親戚で不幸が出来たから、美鈴さんに お願いする事に昨日決まった。
本当だ。ただ部長に、美鈴さんにして欲しいと進言したのは私だ。
でもこれは仕事上の事だ。他に意図は無い。
先方に面識のある美鈴さんが適任だと思った。
それより、2人でいる時は課長はやめてくれ。
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