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戦い
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もう1缶ビールを貰っていく。」


ビールを持って寝室に行き、何を見る訳でも無いのですがテレビを点け、余裕が有る振りをしてビールを飲んでいましたが、内心は妻が言い訳に来るのを、今か今かと待っていました。


本当に何も無かったのか気が気では有りませんでした。

私は、この様な人間では無かったはずです。

まだ怒りを素直に表していた頃は良かったのですが、こんな嫌味な事をする様になってしまいました。妻を虐める事が上手くなってしまいました。

しばらくして、エプロンを外した妻が入って来ましたが、私は、妻の方を見ずに、テレビを見ている振りを続けていると。


「あなた、お話が。今日私は課長と2人でメーカーへ行きました。でも本当に仕事だけで、他には何も有りません。疚しい事は何もしていません。本当です。」


「そうか。それならいいじゃないか。仕事なら仕方が無い。」


「嫌です。あなたはそう思っていない。」


「それなら聞くが、車の中ではどの様な話をした?」


「ほとんど仕事の話ばかりです。」


「そうか。お前の会社は楽しそうでいいな。笑いながら仕事の話が出来るんだ。俺に気付かないほど楽しそうに話せる仕事が有るんだ。

羨ましい。俺の所では喧嘩腰になる事は有っても、笑いながら出来る仕事は無いからな。」


「ごめんなさい。全て仕事の話だけでは無いです。でも本当に企画した商品の話がほとんどです。」


「分かった。それでいい。

仕事以外の話はしませんと、2人とも約束した様に思っていたが、あの時の事を未だに思っているのは、俺だけという事か。

他の約束も どうなっているのか分かった物じゃ無いな。」

「ごめんなさい。本当にメーカーへ行っただけです。信じて下さい。」


「だから、もういいと言っているだろ。

普通あんな事が有ったら、2人で出た時は、疚しく無くて俺の気持ちを理解していれば自分から話すだろ?

ところが、俺が話してようやく話し出した。俺が知らなければ、話す事は無かっただろ?

会社によって違うだろうが、俺の所では課長が部下と2人で出向く事はまず無い。

仕事の話と言いながら、以前関係の有った2人が楽しそうに話していた。

女は、身を乗り出すように運転席の方を向いたまま、夢中になっていて周囲には何も気が付かない。

そんな日に限って帰りが遅い。

“課長、こんな所を通ったらあの人に見つかります。”

“もう昼休みは終わった。こんな所にいるはずが無い。それに少しスリルが有るだろ。”

“それもそうですね。あの人は もうすっかり信用しているから、前を通っても、まさかと思って気が付かないかも。それよりも何処へ連れて行ってくれるの?”

“美鈴の1番好きな所”

“いやだー”

あの時、何かお前達の会話が聞こえたような気がした。

全て俺の被害妄想だ。もう分かった。もう信じるから、向こうに行ってくれ。テレビが聞こえん。」


こんな事なら仕事を辞めさせればいいのです。

本当に何も無かったのか知りたいのに素直に聞かず、妻を虐め、苦しめたくなります。

未だに裏切られた事を根に持ち、許し切れずにいます。もう許して仲良くしたいと思っていても出来ません。自分で自分の感情が抑え切れないのです。

テレビを見ている振りをしながら、神経は妻の方に行っていました。

妻は泣きながら部屋を出て行ったので、追いかけて問い詰めたかったのですが、それも出来ませんでした。

泣き止んで戻って来た妻は、私の方を怖い顔で睨みながら、服を脱ぎだしました。


「あなた、今日私が何かしてきたか、あなたを裏切ったか調べて下さい。」


妻のこの様な険しい顔を見た事は無い様な気がします。

妻は全て脱ぎ終わると、ベッドの上に寝て足を開きました。

私は、大きく開かれた足の間に座ると両手で摘んで妻を開き、またテレビの前に戻って。


「悪いな。俺はあいつと違って結婚してからお前しか知らない。

そういう事に詳しくないので、何をどうやって調べたら良いのかも分からない。

こんな俺を誤魔化す事ぐらいベテランのお前達なら容易い事だろ?」


妻は、泣き出し。


「私が悪かったです。今日の事もあなたに話すべきでした。

こうなったのも私があなたを裏切ったからです。全て私が悪いです。

でも、もう終わりにさせて下さい。

私には無理です。もう終わりにしたい。

離婚して下さい。お願いします。離婚したいです。」


私が1番恐れていた事を言わせてしまいました。妻が開き直る事を恐れていました。

妻を引き止めたい。このまま別れたくない。そう思っていても、口から出たのは。


「やっと本音が出たな。

今日あいつに抱かれて別れたくなったのか?

それとも、ずっとあいつと繋がっていて、離婚を切り出すチャンスを伺っていたのか?
早く別れて俺の所に来いと言われていたのか?

こんな事だろうと思っていた。

俺に抱かれていても、あいつの事を思って抱かれていただろ?

身体の動きが全てそうだった。

あいつに散々使われた身体を見る度に、どうして俺が あいつの使い古しを引き受けなければいけないのか、自分が嫌になっていた。

これで俺も楽になれる。離婚してやる。慰謝料もいらん。

その代わり、全て置いて出て行け。」


妻が服を抱えて部屋を出て行ってから、すぐに家を飛び出さないか心配で眠れません。

しばらくしてから、水を飲みに行く振りをして様子を見に行きましたが、泣き疲れてソファーで寝てしまっている妻を見て、少し安心した私も眠りにつきました。

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9月19日(金)

朝寝坊してしまい、慌ててキッチンへ行くと、朝食の用意がして有り、妻はいつも通りに洗い物をしていましたが、妻の出勤時間も迫っているにも関わらず、慌てた様子も無く、こちらを見ずに無言で黙々と洗っています。

私も妻に声を掛ける事無く、急いで食事を済ませて家を出ました。

やはり仕事に身が入らず、こんな事では、いけないと自分に言い聞かせ、早く仕事を済ませて 今日も定時に帰りたいと思っていましたが、休み前で そうもいかず、かえっていつもより遅い時間になってしまいました。


家に着くと鍵が閉まっていて家中真っ暗です。

それでも妻がいないかと探し回りましたがいません。

妻の兄嫁と両親は、あまり上手く行っているとは言えないので、実家に行ったとは考えられず、子供達には知られたく無いので、そこも考えられませんでしたが、妻が行っていないかとは聞かずに一応電話をしました。

しかし、何も変わった様子は無く、隠し事をしている様には感じません。

あと妻が急に転がり込める所は1ケ所しか思い浮かばず、悔しさで体が震えました。

これだけ心配でも変な意地を張っていて、携帯に電話する事が出来ません。

情けない事に酒に逃げてしまい、ウイスキーをがぶ飲みしている内に、服も代えずに眠ってしまいました。

夢の中で、妻が裸で変な椅子に固定され、やはり裸の野田とキスをしては、時々私を見ながら笑っています。

野田の物は、一升瓶ほどあり、妻はそれを楽々受け入れてしまいました。

ゆっくりと腰を前後させている野田の背中には、いつの間にか裸の美代子さんが抱き付いていて、3人とも笑いながら楽しそうです。

その夢で私は飛び起き、意地を捨てて携帯に電話しましたが、電源が切られおり繋がりません。

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9月20日(土)

結局あれから眠れずに、朝もう一度電話しましたが、やはり電源が切られたままです。

今頃、野田の腕の中にいるかと思うと居ても立ってもいられず、聞いていた野田のアパートに車を飛ばしましたが、まだ朝の7時だというのに留守です。

またあの様なホテルに泊まったのだと思い、悔しさが増しました。

10時まで3時間も車の中で帰りを待ったのですが、帰って来る様子は無く、もう一度妻の携帯に電話をすると、今度は呼び出すのですが出ずに切られてしまいました。

続けて電話すると、今度は、電源を切られていて繋がりません。

野田の携帯に電話する事も考えましたが、万が一、一緒ではない事を考えると、弱味を見せる様で出来ませんでした。

仕方なく、家に戻りましたが何もする気力が無く、また酒を飲んでベッドで眠ってしまい、目覚めると目の前に妻が俯いて立っています。

最初訳が分からずに、ぼんやりと妻を見ていましたが、次第に意識がはっきりしてくると状況を思い出し、悔しさが込み上げてきました。


時計を見ると、もう夜の7時です。

「どこに行っていた。あいつの所か?よく帰って来られたな?」


「違います。ごめんなさい。私・・・・・・・・・・。」


「私、何だ?あいつと会っていたんだろ?お前という奴は。」


立ち上がり、両手で突き飛ばすと、よろけてベッドに倒れ。


「違います。ホテルで1人考えていました。これからどうすれば良いのか考えていました。」


>>次のページへ続く
 
 


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