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バイクで日本一周してる女の子と仲良くなった話
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48 :譲二兄貴:2011/12/26(月) 09:55:35.16 ID:DP/9YheF0
山に向けて暫く走ると単線の県道→舗装農道→砂利道、と順調に道路状況が変化していく。

砂利道を数キロ行くと もう山の麓だが、この林道は山頂までは ほとんどただの砂利道だ。

冬美には ああ言ったが、林道初体験の女子をガレ場だのゲロ系だのに連れて行くほど鬼じゃない。

山に入る少し手前の公園の駐車場で一旦バイクを止め、山を指差しながら注意事項などのアレコレを説明した。


俺『山頂というか峠までは ここから10キロくらい、そこまでは ただの砂利道だから走りやすいぞ』

冬美『そうですか・・・でも不安だなあ・・・転んだらどうしよ・・・・』

俺『こけねえ様に自分のペースで行けば良いんだよ、置いていったりしねえから心配スンナ』

冬美『はい・・・わかりました、じゃあお願いします!』

俺『おk、でもその前にちょっと練習だ、ここで8の字書いてみ、いや教習所のアレじゃなくてな、ちょっと見てれ。』


以前バイク屋主催のダート走行講習会に参加した事があり、その時に教えてもらった事をそのままやって見せた、つもり。

足を出してラクに曲がる方法と、スタンディングじは膝ではなく、くるぶしでバイクをホールドする事とか。

俺だってちゃんと出来ているわけじゃないだろうが、ダート初体験の冬美には一応教えて置かなければと思ったのだ。

あの時 少しだけ乗せて貰ったモトクロッサーの加速は凄かったなあ、金があったら俺も欲しいなあ、とその時ふと思う。


冬美『・・・・はい、・・・・はい、えっと、こうですか?』

俺『うんそうそう、まあ砂利道とことこ走るくらいなら それで大丈夫だろ、もう少し練習したら行って見るか』

冬美『はい!』


三十分近く その駐車場に居ただろうか、頃合を見て冬美を促し、いよいよ山道に向けて出発だ。



49 :譲二兄貴:2011/12/26(月) 09:56:40.58 ID:DP/9YheF0
砂利道の直線を一キロほど行くと、いよいよ山の麓から森の中に入っていく。

山菜取りの車がガンガン入ってくるような場所なので、ガレ場好きの俺は正直面白くないww

だが今日は自分ではなく冬美の為に ここに来たのだ、ホスト兼ガイドに徹しなければならない。

充分に抑えたペースで走りながらミラーで後ろを確認しつつ、前から車やバイクが来ないか、危険な箇所は無いか。

冬美も そんなに危なっかしい感じでもなく、とことこと走って付いて来る。

ゆるいカーブでも少々大げさに足を出したり、別に立たなくてもいいでしょ、て時に立ってるくらいはご愛嬌か。


数キロで森林限界を超え眺望が開ける、林道好き山好きには説明の必要はないだろう、正に絶景である。

久々の絶景にも気を取られず後ろに注意をはらって走り続ける、たまに止まって冬美に声をかけて様子を窺ったり。

その後も峠につくまでは特に問題なく走れた、三十分もかかっただろうか、ちょっとだけ広くなった山頂部分に無事到着した。


俺『はい、おつかれさん、無事山頂に到着ですwww、どーよ、楽しかったべ?』

冬美『いやー、もう、本当に楽しい!それにすんごい景色!、林道最高!、でも腕はパンパンっすwww』


冬美の林道デビューは とりあえず順調だった、ここまではね、でもこの後があまり良くなかったなあ。



50 :譲二兄貴:2011/12/26(月) 10:06:14.23 ID:DP/9YheF0
冬美が先に走るのは別に構わないが、上りと下りは走り方が違う、当たり前のハナシだが。

上りみたいにアクセルを開ければ当然オーバースピードだし、ビビッて開けなさ過ぎればコントロールし辛くなる。


俺『分かってるとは思うけどな、下りだぞ、大丈夫なんだな?』

冬美『はい、あの、大丈夫だと思います、何だか前に譲二さんが居ると、付いていかなきゃって焦っちゃいそうで・・・』

俺『・・・・・俺、ゆっくり走るよ?』

冬美『はいあの、それは頭では分かってるんですけど、やっぱりどうしても、ねえwww』

俺『まあ、それはそうだな、逆の立場なら俺もそう思うかも知れんしなー』

冬美『わがまま言ってスミマセン、じゃあ すんごく遅いと思いますけど、見守ってて下さい!』

俺『おk、じゃあ そろそろ行くか。』

冬美『はい!』


2人ともヘルメットをかぶりゴーグルを顔に合わせ、アイドリングが落ち着いた頃に冬美がゴーグル越しに視線を寄越してきた。

俺は視線を外さないように気をつけてコクンと頷き、冬美は それを見て頷き返してからクラッチを繋ぐ。

一呼吸遅れて俺も続き、なるべく視野を大きく、マクロ的に状況を見るように心がけて進む。


危険を感じるくらいおかしい走り方をしたり、何か異常を感じたら即座に前に出て注意を促せるように。


・・・・・・まあ、かなり神経を使って走っていたわけだ、これは前を走っていても同じ事だが。

上りより少々長い時間をかけて来た道を下り、何とかかんとか農道の砂利道部分まで戻ってこれた。

両側には大根やら何やらを作っている畑が続き、落ちれば死ぬ崖っぷちに比べれば何とも長閑な風景だ。

それまでは精々時速20〜30キロ程度しか出して居なかったのだが、長閑な風景で気が緩んだのだろう。

冬美は急にアクセルを開け始め、50キロ程度に巡航速度を上げてきた。


・・・・・こりゃ少しやばいかな、と思った時にはもう遅く、あっと言う間の出来事だった。



51 :譲二兄貴:2011/12/26(月) 10:08:19.63 ID:DP/9YheF0
農道をバイクで走る上で気を付けなければならない事の第一は、まず農作業の邪魔にならない事。農作業の為にある道なのだからそれは当然だ、


第二に気をつけなけらばならないのは、道に刻まれた轍。轍そのものはどうって事無いのだが、道の中央部分が車輪で削られずに残り、そこに生えた雑草が嵩を上げる。

結果的に細い道が2本ある様な状態になり、バイクで走るのにはあまり適さない形状だ。

山から出てすぐは あまり轍らしい轍ではないが、200メートルも走ると前述のような走りにくい状態になる。

けわしい山から出た開放感から迂闊にアクセルを開け過ぎた冬美は、あっと言う間にエグくなる轍に気付き、ビビッた。

冬美はビビリから急にアクセルを戻し、フロントブレーキを強くかけてしまったのだろう。

ゆるいカーブの途中でバハのコントロールを失った冬美は、なすすべなく道中央の出っ張り部分に突っ込んでいく。

バハはけつまづく様な感じで一回転して畑の横に転がって停まり、冬美はその横に背中から落ちて大の字になった。

俺はバイクを横に停めて冬美の側に駆け寄り跪き、大の字になった冬美に向かって大声で叫



52 :譲二兄貴:2011/12/26(月) 10:09:05.69 ID:DP/9YheF0
俺『大丈夫か!!!!!??』

冬美『・・・・・うーーーーーん・・・・やっちゃいましたね・・・・・・・すみません・・・・・・』

俺『どっか痛いところは!?、動けそうか!?』

冬美『・・・・はい、体は大丈夫みたいです、・・・・・起きます。』

俺『手を貸すから、気をつけてな・・・・、そーーーっと・・・・・』


大の字に寝転がった冬美の両肩と腰の辺りに手を回し、首に負担をかけないようにゆっくりと起こす。

上体を起こした冬美は慎重に首を振り、肩や手首を回して痛んでないかを自分で確かめた。

冬美『・・・・・大丈夫みたいです、・・・・立ちますね』

俺『その前にヘルメット脱げ、ああ待て、アゴ紐とゴーグル外してやるから・・・・痛くないか?』

冬美『・・・はい、大丈夫です・・・』


ゆっくりゆっくりとヘルメットを脱がしてやり、座っていた傍らに置いた。

一応肩を貸してやったが、冬美は しゃきっと立ち上がった。

どうやらケガは無いようだ、まずは一安心。

・・・・・よかった、本当に良かった。

これで冬美が大怪我でもしてしまっていたら、冬美の両親に何と詫びれば良かったのか。

やっぱり下りでも俺が先に走るべきだったのだ、明らかに俺の判断ミスだ。



62 :譲二兄貴:2011/12/26(月) 19:11:41.85 ID:DP/9YheF0
続きます

勢いよく立ち上がった冬美だが、なんだか視線が定まっていない。

失神したり意識が混乱している訳じゃないし、立ち居振る舞いからして大きな怪我などはしていない。

大丈夫だとは思うが、何だか頼りない感じだ。

冬美『いやーやっちゃいましたねwwww山降りてきて少し調子に乗っちゃってアクセル開けすぎてwww』

俺『いや、すまん、やっぱり俺が前でペース作るべきだった、申し訳ない・・・・』

冬美『いやそんな譲二さんの所為じゃないですよ私始めての林道でハイになっちゃって楽しくってwww』

俺『いや・・・・、俺がちゃんと先導してればお前は安定していた、こんな場所でこけなかったはずだ、すまん・・・』

冬美『いやでも連れて行ってってお願いしたのは私だし前を走らせてってお願いしたのも私だし あのその』

俺『・・・・・』


明らかにおかしい状態だった、俺にも覚えがあるから、何となーく分かった。

以前細い峠道でスリップしてコケた事があるのだが、その後の俺と今の冬美が そっくりなのだ。

その時の俺は連れに対し、狂ったように笑ってはしゃいでいた記憶がある。

怖かったのだと思う、昔の俺もその時の冬美も、大怪我したかも、死んだかも、そんな恐怖と必死に戦っている。

俺はまあ、見栄っ張りな男だから、黙って痩せ我慢してその場をやり過ごしたが、あの時の冬美はそう行かなかった。


冬美『・・・・・・・・・・・・、バイク、乗って帰れるかなあ・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』


そう呟いた冬美は見る見るうちに無口になり、顔が青ざめていく。すぐにガタガタ震え始め、自分の両肩を抱いて その場にうずくまってしまった。

俺は迷わなかった、しゃがみ込んだ冬美の両肩を鷲掴みにして無理やり立たせ、そのまま力一杯抱き締めた。

後ろ頭と腰の辺りに両手をまわし、振り回す様に引き寄せて、強く抱き締めた。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春, 胸キュン, すっきりした話,
 


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