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ギフテッドの彼女と付き合ってた話
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46 :名無しさん@おーぷん :2014/05/27(火)01:19:41 ID:MXx0ba1si
彼女と過ごす日は すべて楽しかった。

世間知らずもいいとこだったから、牛丼屋とか、ファミレスとか、ゲームセンターとか、ボーリングとか、この年齢じゃ当たり前に経験してることが彼女にとっては新鮮で、だからこそ自分も、楽しみを再発見出来たというか。

ゲーセンってこんな面白かったっけって びっくりした。

彼女のパニック症もだいぶ やわらいできたみたいで、カウンセラーの人にも自分じゃ治せない速度で治ってきてる、本当に感謝してるみたいなメールをもらったこともあった。


そんな中、事件が起こる。

三年生になってから生活が落ち着いてきた四月、まえまえから彼女が行きたがってたディズニーランドにつれてってあげることにした。

その時は もう彼女は大学を卒業してて働いていたけど、研究者っていう職業は びっくりするほど融通がきくらしく(そして給与がすごい)毎日のように会っては遊んでいた。

俺は というと、決して裕福じゃない家庭で、親父の会社が経営困難で破産して、奨学金を借りなきゃ通えない程度まで悪化していた。

親は働き始めてから仕送りすればいいと言っていたけど、国立に落ちて私立に入学した後ろめたさから、教科書とか生活用品とかをケチって仕送りしてた。

彼女とのデートもなるべく金のかからないTSUTAYAで借りたDVDを見るとかに切り替えて、外出することが減ってった。

だからこそディズニーは久々のお出かけで、俺も彼女も すごい楽しみにしてたんだ。



47 :名無しさん@おーぷん :2014/05/27(火)01:21:03 ID:MXx0ba1si
リサーチを重ねて人が もっとも少ない日を調べて、彼女がパニックにならないように最善をつくした。

人とのコミュニケーションがなければパニックを起こす可能性は低いけど、せっかくのディズニーだから楽しい思い出だけにしてあげたかった。

お金はチケットだけは俺が出して、園内は割り勘とあらかじめ決めておいた。

彼女は おごってもらうことをあんまり快く思ってないみたいだった(今までのデートは基本的に割り勘だった)けど、男は そういうもんだって言い聞かせて納得させた。


彼女のパニック症に関しては、ほんとにケースバイケースで俺も分からないことがたくさんあるけど、とりあえず頼れる人間がいれば大丈夫らしい。

それが親だったんだけど、常に親がついていくわけにもいかないから なんとか頑張ろうと思って俺がバイトしてる喫茶店にきたってわけ。

研究所には お父さんの友達で古くから彼女のことを知ってる人がいるから大丈夫らしい。

人ごみとかも極力避けたいけど その頼れる人といれば平気とのこと。

ちなみにその頼れる人のことを彼女は なぜか知らないけどコアと呼ぶ。




48 :名無しさん@おーぷん :2014/05/27(火)01:23:29 ID:MXx0ba1si
当日、彼女の実家に泊まらしてもらい、朝早くからでかけた。

「早起きは〜♪ 辛いけど〜♪ ディズニーが〜♪ 待っている〜♪」

機嫌のいい時のくせで、思っていることをすぐ歌にする。


久々の俺の運転で 死にそうになりながら やっとの思いでディズニーに着いた。

コンビニで事前に買っておいたチケットを彼女に渡す。


「普段なんも買ってあげられなくてごめん。今はこんくらいしかしてあげられないけど、仕事したらちゃんと俺が出すから」


ちょっとかっこよすぎたかな?


「貧乏だってことは気にしてない。その分私が出せばいいんだし。ディズニー代も返すよ」


俺がアホだったのかもしれない。

俺のほうがよっぽど子供だったのかもしれない。

期待してたのは、

「ありがとう!今日はほんとに楽しもうね!」

って目をうるわせて言う彼女の姿だった。


世間の女の子が持ってる感覚とはギャップがあるのは理解してたし、それも魅力だと思っていた。

だけど、バカにならない値段のチケットをサプライズで買っておいたのに、感動されることもなく、貧乏って切り捨てられたことに、俺は傷ついた。


金に関して敏感になってたし、デートが割り勘になってたのも俺は負い目に感じてた。それもあって、俺は もうどーしようもなかった。

彼女は一万円を差し出してた。

俺はボロボロと泣いてた。


「一万円が、そんなに嬉しいの?泣くほど?」


「ふざけんな!!!!!」



49 :名無しさん@おーぷん :2014/05/27(火)01:26:37 ID:MXx0ba1si
そっからの記憶はない。気がついたら家に1人で帰って寝てた。

たぶん彼女をおいて、1人で車で帰ってきたんだと思う。

起きたら五時くらいで、電話には彼女のお父さんから何十件という着信が残されてた。

今になってはパニック症の彼女を あんな人ごみに置き去りにするなんて とても恐ろしいことがよく出来たもんだと思う。

でも、俺は自分のプライドがギッタギタにされたことに怒ってたから、反省することはなく、電話を折り返さなかった。

日が変わるか変わらないかぐらいに彼女のお父さんからメールがきた。

ムスメはパニックになってもう少しで倒れるところだった、

私は仕事だったのに中断して千葉まで迎えに行かなくちゃいけなかった、

ムスメは治ってきてるとはいえパニック症なんだから気を使って欲しい、信用してたのに、失望した…


俺は返信しなかった。

ムスメが可愛いのはわかるけど、俺の気持ちはどーなるんだよ、傷つけられたこの気持ちは なんなんだよって思った。


お父さんすらウザくなった。

彼女から連絡がくることは無かった。それもツラかった。

本人の連絡じゃなくて、来るのは全部お父さんからだったから。

俺と彼女は、こうして終わりを迎えた。



その翌日の大学の講義でもらったプリントに ギフテッドはサイコパスでもあるのかなぁ。 みつを って書いたのを覚えてる。

彼女がいればいいと思ってたから、大学に友達は少なくて、俺は くっそつまんないキャンパスライフをたんたんとこなした。

講義にはフルで出席、成績もオールA、カテキョのバイトに本気を出して(自分なりの指導要項とかをまとめて塾長に出したらすげぇ引かれたけど そっから仕事増えた)、楽しみは映画だけの毎日を過ごした。

3年の終わりから なんとなく就活を始めて、4年の夏くらいまでは就活に夢中になれた。


成績も悪くなかったし、ゼミ長のコネで そこそこの会社に就職が決まった。

単位は足りていたので、ルームシェアしていた奴に別れを告げて実家に帰って半年ゆっくり過ごすことにした。




51 :名無しさん@おーぷん :2014/05/27(火)01:30:15 ID:MXx0ba1si
東京駅から新幹線に乗る。

1年経っても全く彼女のことが頭から離れなかった。


花火大会ではぐれて、子供みたいにワンワン泣いてるのを見つけた時、ほんとに守ってあげたいと思った。

研究所に寄付金を募るパーティーで なだたる著名人と彼女が顔見知りだった時、側にいるのが凡人の自分でいいのかと思って落ち込んだ。

店長が彼女の誕生日を店でやってくれた時、感情をあんまり表さない彼女が「君と出会えて本当によかった」と言ってくれた。

俺は、新幹線の中で、気づいたら大泣きしてた。


田舎では家族が暖かく迎えてくれた。

久々にあった地元の奴とか親戚と飯食ったり釣りしたり、ぼくなつみたいな日々を過ごした。

雪が ちらちらと降り始めた頃、ルームシェアしていた奴から電話がきた。


「そっちはどうよ?」


「やっぱ田舎の方がいいわ 落ち着くし お前はカリスマ美容師になれたのかよ?」


「ぼちぼちな それはそうと、今日、変な女が家に来たぞ お前に会いたいとかで」


「…え? どんな感じだった!?」


「なんかよくわかんない、自分の名前もカミカミだし、汗もすげえし、キモかったわ 心当たりあんの?」


そいつと彼女は面識がなかった。会わせる会わせる言ってタイミングが無かったのだ。

でも、間違いない。彼女だ。

何の用があったんだろう… 最終面接なんかよりもずっと胸がドキドキした。帰りたい。彼女に会いに行きたい。

でも、復縁なわけがない。そうだったらもっと早くから家に来たはずだ。

会ってどうする?何を話す? そもそもなんの為に来たんだ?

疑問符が止まらなかった。

どうしたらいいかも分からない。

俺は、店長に電話をした。共通の知人がそれしかいなかったからだ。



52 :名無しさん@おーぷん :2014/05/27(火)01:31:32 ID:MXx0ba1si
訪ねてきたらしい旨を伝えると、答えは意外だった。


「会わない方がいい。

彼女は天才で、やっぱり人と感性が違う。

付き合っていくなら当たり前だけど お前は人間性とか求めるだろ?自分の気持ちにこたえて欲しいって。

それが出来なかったら またお前は怒るかもしれないし、そもそもそれは彼女には無理なことなんだよ」


大人な意見だった。頭を殴られた気がした。


「ありがとうございます」


「いつでも店来いよ」


俺はやっとその一件で吹っ切れた気がした。

なんとなく、俺の方だけが向こうを忘れられないんじゃないかと思ってたけど、向こうも同じだったのだ。

それでいい。それで満足だ。

俺はふたたび田舎での生活に没頭した。




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:純愛, 青春, 胸キュン,
 


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