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イケメン同期に振り回された俺の人生について語る
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220 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:06:31.16 ID:s1RHru00.net
「・・・なんだよ、満足した?って・・・。」

「私は、あんたに交際報告をしなきゃいけない義務があるの?あんたは、私の恋愛の自由を許さない権利でも持ってるの?」

「そういうことを言ってるんじゃねーから。」

「最初からずっと言ってたよね。大地やりなおすつもりはないって。友達としてじゃないなら、もう会わないし、連絡もしないって。」

「そりゃそうだけど、でも・・・」

「"俺に気持ちがあるのがわかってるなら、お前が会うのを自重しろ"って言いたいのかな。」

「そういうわけじゃ・・・」

「大地、昔から少しも変わらないね。いつだって自分が自分がって、自分中心でしか考えられないよね。」



221 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:07:04.25 ID:s1RHru00.net
「私たちが付き合ってたとき、喧嘩したときのクリスマスだってそう。

疲れてるんだから寝坊したってしょうがないだろって、そういうことしか言わなかったよね。

私だって あのとき仕事に追われてて、すっごく疲れてたよ。でも、大地と会いたかった。

疲れてる大地の癒しになれたらいいなと思って、何しようか考えたり、プレゼント用意したり、そういう相手の気持ちを ちょっとだけでも考えようって思いやりを持とうともしないよね。

寝坊したことを怒ったわけじゃないのに、そこばかりにこだわって相手を責めてさ。

そのことに、いまこの歳になっても、気づいてないんだもんね。」


「・・・・・・。」


「自分の価値を落とすようなこと、やめたほうがいいと思うよ。」


頭にのぼった血が、ボタボタと音を立てて足元に落ちていく音が聞こえた。



222 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:07:45.10 ID:s1RHru00.net
早苗は決して声を荒げているわけではなかった。

俺が、ただ何も言い返せなかっただけだ。

自分はいま、怒られているんじゃない。憐れみの気持ちで見られているんだ。可哀想な男だと。可哀想な人間だと。このまま生きていくのですかと。

体中から血が抜けてしまったようだった。


「もう連絡してこないで。」

その言葉を残して、早苗は千円札をテーブルに叩きつけて去っていった。



223 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:11:52.29 ID:s1RHru00.net
何も考えられなかった。

街を行き交う人の中で、俺だけが白黒になってしまったようだった。

どうやって店を出たのか覚えていない。どうやって家に帰ってきたのかも覚えていない。

いつしか、自分の部屋のベッドにもたれかかりながらぼんやりと天井を見ていた。


早苗に憐れみの気持ちを持たれたこと。

高校のころ、部活のコーチと言い争ったこと。

健太郎が、ずっと前から俺のことを好きだったこと。

ブラック企業に勤めていたころ、上司と言い争ったこと。

俺の知らないところで、早苗に彼氏ができていたこと。

最後に、健太郎と別れたときのこと。


いろんなものが頭の中でごっちゃになって、何も考えられなかった。

深いヘドロのような黒い渦にズブズブと沈み込んでいくようだった。

何も考えられない。誰か、この暗闇から掬い上げて欲しい。



224 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:14:40.07 ID:s1RHru00.net
いつも、助けてくれたのは健太郎だった。

いつも、励ましてくれたのは健太郎だった。

俺は、あいつに何かしてあげられたことがあるんだろうか。

何も思い浮かばなかった。たった一つでも思い浮かばなかった。


『誰が何を好きになってもいいって、言われたの初めてだよ。ありがとう。』

『せっかくの旅行なのにって、言いたいのはこっちだよ…。』

『もう一度だけ、手を繋いでもいい?』

『それでも、大地が好きなんだよ・・・・・・。』


健太郎の言葉が、フラッシュバックする。

謝らなくちゃ。

謝らなくちゃ、健太郎に。

引き出しの奥にしまってあったものと、携帯だけをつかんで、俺は家を飛び出した。



225 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:17:43.13 ID:s1RHru00.net
健太郎に会いたい。会って謝りたい。

でも いまさら何て言って会ったらいいんだ。

答えが出せず、しばらく町をさまよっていた。


気が付いたら、知らない公園にたどり着いていた。

ベンチに倒れこむように座って、スマホを取り出した。

何十分もスマホを見つめながら、葛藤を繰り返し、力を振り絞ってLINEを送った。


「自分勝手だってわかってる。でも会いたいです。」


頼む、返ってきてくれ。

頼む、返ってきてくれ。

頼む、返ってきてくれ。


「いまどこにいるの?」

健太郎からの返信だった。



226 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:19:56.69 ID:s1RHru00.net
何時間、公園のベンチでうなだれていたかわからない。

いつしか、足音がだんだん近づいてきて、俺の隣に座る人がいた。

しばらくの沈黙の後、優しい声がした。

「かぜ引いちゃうよ。」

・・・健太郎だ。

健太郎、ごめんな。ごめんな。本当にごめんな。

言いたいことはたくさんあったはずなのに、何の言葉も出てこなかった。



227 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:22:22.29 ID:s1RHru00.net
「俺、情けないよ。」

やっと出てきた言葉だった。

「自分がこんなに情けないと思ったの初めてだよ。なんで俺、こんなにクズみたいな男なんだろう。」


『自分の価値を落とすようなこと、やめたほうがいいと思うよ。』

早苗の言葉が思い出されて、俺はギュッと目をつぶった。


「健太郎、ごめんな。本当にごめんな。こんな自分勝手で。

俺お前の気持ちに全然気づかなくて、ひどいことばっかして。

わかってたのに、健太郎の気持ちになろうとしなくて。

甘えてばっかりでごめんな。俺は健太郎に何もしてあげられないのに。

それでも、俺には健太郎がほんとに大切な親友なんだよ。」



228 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:24:11.73 ID:s1RHru00.net
俺が顔を伏せてうなだれたまま償いをしている間、健太郎は何も言わなかった。相槌さえ返ってこなかった。

謝りたい、そんな気持ちでいまここにいるけど、本当を言うと、救われたかった。慰められたかった。

ここにきて こんなわがまま許されないけど、もうだめになりそうなんだ。

(頼むから、何とか言ってくれよ。)

そんなすがる気持ちで顔をあげると、俺の感傷は宙に飛んでいった。

健太郎が、うつむいて唇を噛み締めながら、ぽたぽたと涙をこぼしていたからだ。



229 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/23(火) 01:26:14.03 ID:s1RHru00.net
信じられない。

信じられなかった。

健太郎が泣くなんて、考えられなかった。

MaxHeartの最終回を見たときも、プリキュア5の絶望回を見たときも、キュアピースの父の日回を見たときも、目を潤ませることさえしなかった健太郎が。

俺が泣いてるときも、いつも笑顔で支えてくれた健太郎が、泣いている。

健太郎が、泣いている・・・。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春, 純愛, 胸キュン,
 


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