私が初恋をつらぬいた話
(18ページ目) 最初から読む >>
\ シェアする /
192 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:38:04.53 ID:+beSXCVE0
「嫌です。」
先生はニコニコしながらキッパリとそう答える。
母の顔はまた一瞬で般若のようになった。
「テメェには関係ねーだろ!さっさと帰れ!!!」
「ありますよ。さっき言ったでしょう?お嬢さんを戴きに来ましたって。」
先生は わざとらしく、ヤレヤレ…といった感じで笑いながら返事を返す。
そんな様子に、母の怒りはますます上っていくみたいだった。
「渚をもらうだぁ?」
「はい。ですからお嬢さんをお手元から離して頂きたいんです。」
先生はニコニコしている。
母は睨むように私と先生を交互に見ている。
私は母と目を合わすのが怖くて、視線をそらした。
「人の男寝取るような、こんな糞女が欲しい…ねぇ?」
母が馬鹿にしたように、嫌味ったらしく言った。
「あんたさ、私が今なんでこんなになってるか解ってんの???」
先生が首をかしげる。
「コイツが私の旦那を寝取ったんだよ。自分の父親になった奴を…汚らしいこの糞女が。」
「…それで?」
先生がキョトンとした感じに聞き返すので、母がまた段々とイライラしていくのがわかる。
私は居なくなった男の事を思い出し、吐き気と嫌悪感でたまらずに下を向いた。
違う!寝取ってなんかいない!私はあんたの男に襲われたんだ!
そう思っても、何故だか口に出せない。
私はただ下を向いて、じっと堪えている事しか出来なかった。
193 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:40:33.65 ID:+beSXCVE0
母がいやらしい声でマッタリと話し続ける。
「やっと人生やり直せると思ったらコイツに全部ぶち壊されたんだよ。コイツのせいで…」
下を向いていても、母が私を睨みつけているのがわかる。
好き放題言われて悔しいのに、訳のわからない喉の痛みが邪魔をして声が出せない。
「私は全部失ったんだ。コイツのせいなんだから、これから償っていくのは当然だろ?」
「償い…ですか。」
「そうだよ。たんまり稼いで楽させてもらわなきゃ、ねぇ?渚。」
甘ったるい声で名前を呼ばれて、私はビクっとした。
「大事な大事なお母さんだもんねぇ?自分のせいでお母さんこんなになっちゃったんだもんねぇ?」
語尾が段々と、いつもの母に戻っていく。
頭にガンガンと響いてくるその声に、私はまた考えるのが嫌になって来る。頷かなきゃいけない……だんだんとそう思えてくる。
「なぎはお母さんが可哀相だねぇ?お母さんを幸せにしてあげなきゃいけないよねぇ?」
母の声が本格的に猫撫で声になった時、先生はハァっと大きく溜め息をついた。
「…話は以上ですか?」
先ほどまでとは別人の様な、先生の冷たい声がした。
「嫌です。」
先生はニコニコしながらキッパリとそう答える。
母の顔はまた一瞬で般若のようになった。
「テメェには関係ねーだろ!さっさと帰れ!!!」
「ありますよ。さっき言ったでしょう?お嬢さんを戴きに来ましたって。」
先生は わざとらしく、ヤレヤレ…といった感じで笑いながら返事を返す。
そんな様子に、母の怒りはますます上っていくみたいだった。
「渚をもらうだぁ?」
「はい。ですからお嬢さんをお手元から離して頂きたいんです。」
先生はニコニコしている。
母は睨むように私と先生を交互に見ている。
私は母と目を合わすのが怖くて、視線をそらした。
「人の男寝取るような、こんな糞女が欲しい…ねぇ?」
母が馬鹿にしたように、嫌味ったらしく言った。
「あんたさ、私が今なんでこんなになってるか解ってんの???」
先生が首をかしげる。
「コイツが私の旦那を寝取ったんだよ。自分の父親になった奴を…汚らしいこの糞女が。」
「…それで?」
先生がキョトンとした感じに聞き返すので、母がまた段々とイライラしていくのがわかる。
私は居なくなった男の事を思い出し、吐き気と嫌悪感でたまらずに下を向いた。
違う!寝取ってなんかいない!私はあんたの男に襲われたんだ!
そう思っても、何故だか口に出せない。
私はただ下を向いて、じっと堪えている事しか出来なかった。
193 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:40:33.65 ID:+beSXCVE0
母がいやらしい声でマッタリと話し続ける。
「やっと人生やり直せると思ったらコイツに全部ぶち壊されたんだよ。コイツのせいで…」
下を向いていても、母が私を睨みつけているのがわかる。
好き放題言われて悔しいのに、訳のわからない喉の痛みが邪魔をして声が出せない。
「私は全部失ったんだ。コイツのせいなんだから、これから償っていくのは当然だろ?」
「償い…ですか。」
「そうだよ。たんまり稼いで楽させてもらわなきゃ、ねぇ?渚。」
甘ったるい声で名前を呼ばれて、私はビクっとした。
「大事な大事なお母さんだもんねぇ?自分のせいでお母さんこんなになっちゃったんだもんねぇ?」
語尾が段々と、いつもの母に戻っていく。
頭にガンガンと響いてくるその声に、私はまた考えるのが嫌になって来る。頷かなきゃいけない……だんだんとそう思えてくる。
「なぎはお母さんが可哀相だねぇ?お母さんを幸せにしてあげなきゃいけないよねぇ?」
母の声が本格的に猫撫で声になった時、先生はハァっと大きく溜め息をついた。
「…話は以上ですか?」
先ほどまでとは別人の様な、先生の冷たい声がした。
197 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:43:28.66 ID:+beSXCVE0
その声が凄く怖くて、私は そっと先生を見た。
先生はゾッとするような薄ら笑いで、母を見つめている。
「はぁ?」
「話は以上ですか?このまま不幸自慢をされ続けても困りますので。」
先生が鼻で笑う。
母はまた、般若のような顔に戻っていった。
「不幸自慢…?」
「ええ、そうですよ。聞いていたら全部自業自得じゃないですか。お嬢さんはアナタのせいで、もっと辛い思いをしていますよ。」
「はあああああああ!?」
「結局のところ、アナタは金づるが欲しいんですね。何だかんだ色々言っていますが、僕にはそうとしか聞こえません。」
「…わかった風なこと言ってんじゃねーぞ?」
母が今にも飛び掛りそうな勢いで、拳を握り締めている。
「わかりますよ。僕はアナタの様な人を、よく知っていますから。」
母の歯軋りが聞こえる。
「いくら欲しいですか?1億でも2億でも、好きなだけ差し上げますよ。アナタが彼女を解放してくれるなら。」
先生の冷たい声に、その場が凍りつく。
そんな大金をいとも簡単に口から出す先生に、私は少し恐怖を覚えた。
198 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:46:05.96 ID:+beSXCVE0
母は予想もしなかった言葉に、戸惑って固まっているようだった。
「借金もある…そうおっしゃっていましたよね?もしかして〇〇さんのお店にですか?」
固まっていた母は その名前を聞くと、一瞬だけビクッとした。
「彼女から仕事の話をされて まさかとは思いましたが…〇〇さんのお店ですよね?この辺りでストリップやってるのは そこくらいですから。」
「それは…」
母はさっきまでの威勢が嘘のように、急に大人しくなった。
「大方、前払いで幾らか貰ったんでしょう。彼女が居なくなって困るのは、そのせいじゃないんですか?」
〇〇さんって誰?あのお店のガラの悪い店長?
二人の間では淡々と話が進んでいく。
私は一人だけついていけなくて、混乱していた。
「〇〇さん、怖いですからね。このまま彼女が居なくなってしまったら、何をされるかわからない。」
母は怯えた顔をして床を眺めている。
「…幾ら、頂いたんですか?それさえ返せば、もうアナタが困る理由は何処にも無くなります。」
だが、母は黙ったまま答えない。
先生はまた大きく溜め息をつくと、持ってきた紙袋を母の前に差し出した。
「2千万入っています。お嬢さんを戴きに来た手前、結納金だと思って持って来ました。」
2千万!?
私と母は驚いて先生を見た。
先生は相変わらず冷ややかに微笑みながら、母だけをじっと見つめていた。
200 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:48:24.32 ID:+beSXCVE0
「いくらなんでも、それだけあれば借金返せますよね?」
母は呆然としながら、小さくコクリと頷いた。
「日取りの取り決めも無く、勝手に持ってきてしまい恐縮ですが、どうぞお納めください。」
先生が頭を下げる。
私は慌てて止めに入った。
「先生ダメです!そんな大金…」
「ダメじゃありません。これは結納金なんですから、普通の事ですよ。」
私を遮るように強く言うと、先生はニコッと微笑んだ。
でも すぐ冷ややかな笑顔になって、また母をじっと見つめる。
「それに これだけあれば、当面は生活していけますね?アナタは僕とさほど歳も変わらない。まだいくらだってやり直しがきくでしょう。」
母は何も答えない。
202 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:50:36.01 ID:+beSXCVE0
「正直、僕はアナタが許せません。
でも渚さんにとっては大事な母親のようです。
このまま捨てるように逃げても、彼女はずっと後悔し続けるでしょう。
だから僕はアナタが憎くても憎みきれないし、捨てたくても見捨てられないんですよ。」
自分でも気がつかない振りをしていた本心を見透かされて、私の胸は何故だかグッと痛んだ。
黙り込んでいる母に目をやると、母も複雑な表情で私を見つめていた。
「…それで身の回りを整理して…やっていけますね?」
先生が言い聞かせるように言うと、母は微かにコクリと頷いた。
母が頷くと、先生は やっといつもの顔に戻った。
「じゃあ、これでもう大丈夫ですね。……渚さん。」
急に名前を呼ばれて、私は慌てて返事をした。
「自分の荷物をまとめなさい。それから…」
先生は正座のまま、辺りをぐるりと見渡す。
「少しだけ、ココを片付けてあげなさい。このままじゃ、いくらなんでも酷い有様ですから。」
え?っと思って先生を見る。
相変わらず穏やかにニコニコ笑っている先生の顔を見ていたら、私の心も不思議と穏やかになっていく。
私は呆けている母をチラリと見ると、ハイと微笑み返した。
>>次のページへ続く
\ シェアする /
関連記事
easterEgg記事特集ページ
