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私が初恋をつらぬいた話
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208 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:57:04.57 ID:+beSXCVE0
母は私にしがみついて、泣き続けている。
「なぎ……なぎ…」
泣きながら、ひたすら私の名前を繰り返している。
「…いいんだよ。もういいから…」
私は宥める様に、母の背中をさすり続けた。
暫らくそうしていると、母の鳴き声は だんだんと小さくなっていき、私はそっと母を放した。
泣いて目を真っ赤にしている母の表情は、心なしか穏やかに見えた。
今までの母とは別人の様に、優しい目で私を見ている。
私はそんな母にニッコリと微笑み返すと、「掃除…しよ?」と言った。
母も少しだけ微笑んで、小さく頷いた。
209 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:01:16.14 ID:+beSXCVE0
母と無言で掃除を終え、私は荷物をまとめに2階に上った。
たった5日帰ってきてなかっただけなのに、随分と懐かしく感じる。
あらかた身の回りの物をカバンに詰め終わると、私はどっとベッドに横になった。
大きく深呼吸をすると、吐いた息の分だけ毒気が抜けていくようで、心地よくなっていく。
私は、様々な事を思い出していた。
小さい頃、母がまだ優しかった時の事。
いつからかイジメられるようになり、暗くなるにつれて母との会話が無くなっていった事。
疎遠になっていきつつも、何故か小学校の卒業式に母は出席していた事。
ふと、母は寂しかったんじゃないかと、そう思った。
18で私を産み、世間からは好き放題言われ、実の両親からも死ぬまで会っては貰えなかった。
そんな中で母は、私と同じように荒んで行ったのではないか…
先生のように、優しく包み込んでくれる人が居たら、母の人生も別のものになっていたのかも知れない…
なんとなく、そう思った。
今まで漠然と母親としか見えていなかった母が、寂しい一人の女性に思えてきて、少しだけ切なくなる。
でも もう大丈夫…母はさっき穏やかな顔をしていたじゃないか……
きっとこれからは もう大丈夫…
私はそう確信してガバっと起き上がると、鞄を手に取り再びリビングに戻った。
母は私にしがみついて、泣き続けている。
「なぎ……なぎ…」
泣きながら、ひたすら私の名前を繰り返している。
「…いいんだよ。もういいから…」
私は宥める様に、母の背中をさすり続けた。
暫らくそうしていると、母の鳴き声は だんだんと小さくなっていき、私はそっと母を放した。
泣いて目を真っ赤にしている母の表情は、心なしか穏やかに見えた。
今までの母とは別人の様に、優しい目で私を見ている。
私はそんな母にニッコリと微笑み返すと、「掃除…しよ?」と言った。
母も少しだけ微笑んで、小さく頷いた。
209 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:01:16.14 ID:+beSXCVE0
母と無言で掃除を終え、私は荷物をまとめに2階に上った。
たった5日帰ってきてなかっただけなのに、随分と懐かしく感じる。
あらかた身の回りの物をカバンに詰め終わると、私はどっとベッドに横になった。
大きく深呼吸をすると、吐いた息の分だけ毒気が抜けていくようで、心地よくなっていく。
私は、様々な事を思い出していた。
小さい頃、母がまだ優しかった時の事。
いつからかイジメられるようになり、暗くなるにつれて母との会話が無くなっていった事。
疎遠になっていきつつも、何故か小学校の卒業式に母は出席していた事。
ふと、母は寂しかったんじゃないかと、そう思った。
18で私を産み、世間からは好き放題言われ、実の両親からも死ぬまで会っては貰えなかった。
そんな中で母は、私と同じように荒んで行ったのではないか…
先生のように、優しく包み込んでくれる人が居たら、母の人生も別のものになっていたのかも知れない…
なんとなく、そう思った。
今まで漠然と母親としか見えていなかった母が、寂しい一人の女性に思えてきて、少しだけ切なくなる。
でも もう大丈夫…母はさっき穏やかな顔をしていたじゃないか……
きっとこれからは もう大丈夫…
私はそう確信してガバっと起き上がると、鞄を手に取り再びリビングに戻った。
211 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:05:12.54 ID:+beSXCVE0
リビングで母と二人静かに座っていると、玄関が開く音がした。
急いで玄関に向かう。
「お待たせしました。用意、出来ましたか?」
先生は私を見ると、ニコッと笑ってそう言った。
「はい、掃除もちゃんとしました。…先生は大丈夫でしたか…?」
「はいこの通り。無事に帰ってきましたよ。…お母さん、どうですか?」
私はリビングの方を振り返った。
「もう…大丈夫だと思います。」
「そうですか、それならよかった。……じゃあ行きましょうか。」
「あ、荷物取ってきます。」
「あ、渚さんちょっと待って」
リビングに戻ろうとした私を呼び止めると、先生は一枚の封筒を差し出した。これは?という目で先生を見る。
「領収書です。念の為、書いてもらいました。お母さんに渡してあげてください。」
あぁなるほど…そう思いながら封筒を受け取ろうとして、私はドキッとして固まった。
差し出した先生の手のひらが、傷だらけで真っ赤になっている。
ビックリして先生を見た。
先生は相変わらずニッコリ微笑んで、「早く」とだけ言った。
「先生…手…」
「いいから、早く。僕は車に行ってますから。」
先生が後ろ手に、玄関を開ける。
私は封筒を受け取ると、慌ててリビングに戻った。
214 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:08:45.71 ID:+beSXCVE0
荷物をまとめた鞄を肩にかけ、母に封筒を渡す。
「…領収書だって。先生が返しに行ってくれたから…」
母はまた泣きそうな顔になって、封筒を受け取った。
「じゃあ…私、行くから…」
そういって母に背を向ける。
玄関でワタワタと靴を履いていると、母は慌てたように「なぎ!」と私を呼び止めた。
振り返ると、母が何やら言いたそうに口をアワアワとさせている。
「…なぁに?」
優しく聞くと、母は少し泣きそうな顔で「またね…」と小さく言った。
私は少しだけ微笑んで「うん。…またね」と返事を返して家の外に出た。
家の前では、先生が車に乗って待っていた。
私は後部座席を開けて荷物を放り込むと、そのまま後ろに座って扉を閉めた。
何故だか、助手席に座るのは気が引けた。
先生は私がしっかり座ったのを確認すると、「さーて、帰りましょうか。」と言って車を出した。
来た時と同じように、二人とも何も話さなかった。
213 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:08:41.05 ID:XlpjaHk90
これなら掲示板に書く必要ないじゃん
話の幕間にスレ主との対話があってボロが出たりリアリティを感じたりするのに連投連投で全然読者との会話が無い
215 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:11:38.36 ID:+beSXCVE0
>>213
申し訳ありません。
私自身も会話を交えて投稿できればいいのですが、思ったより長くかかってしまっているので、急いで投稿しております。
皆さんの貴重なお時間を割いていただき、感謝の念で一杯です。
後もう少しで終わりますので、最後まで聞いていただけたら、幸いに思います。
218 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:14:48.52 ID:+beSXCVE0
はい、続けます。
家に帰りリビングに入ると、先生はフワーッと大きく背伸びをした。
「何だか大変な一日でしたね〜。あー疲れた。」
そう言いながら、ニコリと私を見る。
私はずっと気になっていた事を質問した。
「…手…どうしたんですか…?」
「ん?手?」
先生は自分の両手を広げて、不思議そうに眺めた。
「怪我しただけですよ。傷も深くないし、ほっときゃ直るでしょう。」
そう言うと、ハハっと恥ずかしそうに笑った。
「違います!そうじゃなくって…どうして怪我をしたのか聞いてるんです。」
私が少し強く言うと、先生は困ったように苦笑いしながら、ドカっとソファに腰を下ろした。
「いやぁ…お金を返した後 領収書くれって言ったら、じゃあコレを握れって小さいナイフの束みたいのを差し出されたんですよ。」
先生は楽しい思い出を語るように、ニコニコしながら話している。
「だから それをこう…ギュッと。そしたらいきなり引っこ抜くもんですから……まぁこんなもので済んで良かったですよ。」
先生が笑う。
私はニコニコしながら握ったであろうその時の先生を想像して、思わず顔をしかめた。
「大丈夫、大した事無いですから。心配しないで。」
明るく言う先生の声に、私の目から涙が溢れた。
219 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:15:28.24 ID:ZOSge41I0
俺はさっさと続き読みたいから他の対話無くても平気だよ
対話ばっかりで投下遅いほうがいやだわ
220 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 19:17:02.33 ID:+beSXCVE0
先生は音楽教師。手は商売道具のような物だ。
一歩間違ったら、先生は一生ピアノが弾けなくなっていたかもしれない。
それなのに先生は相変わらずニコニコして、気にも留めてる気配が無い。
「ごめんなさい…先生ごめんなさい…大事な手なのに…」
私は複雑な思いで胸が一杯になって、謝ることしか出来なかった。
立ったまま、泣きながら先生に謝り続ける。
「大丈夫ですって。……それに僕の方こそ、貴女に謝らないといけません。」
「…どうして…ですか?」
私がシャックリをしながら聞くと、先生は凄く神妙な面持ちで下を向いた。
「…貴女をお金で買うような事をしてしまいました。……もう二度としませんから…許してください。」
私は泣きながら、ブンブンと首を振った。
「…先生の…大事な…お金を……先生のお父さんが…遺してくれた…大事な……」
息が詰まって言葉にならない。
「いいんです。それは僕が勝手にやってしまったんですから。…お願いだから、泣き止んで、謝りますから…」
先生が段々と困った顔をしていく。
それでも益々涙は止まらなくなっていき、私は幼い子供のように わんわんと泣き続けた。
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