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私が初恋をつらぬいた話
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84 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:04:00.42 ID:+beSXCVE0
先生はまたフーッと大きく溜め息をつく。
「…僕が女性だったら良かったんですけどね……」
私はまた、下を向いた。
「……僕、ずっと心配だったんです。」
「え?」
予期せぬ言葉に、驚いて先生を見る。
「…僕が赴任してきた頃……渚さん、虐められてたでしょう?」
先生は私を見ずに話を続けた。
「虐められてるのが解って…何とかしてあげたいのに、僕には何も出来なくて……せめてもの償いのつもりで、歌のレッスン引き受けたんです。」
「………」
「…少しでも支えになれば…そう思って始めたんです。
そしたら渚さんは どんどん明るくなっていって、友達も出来て…あぁコレで良かったんだって。
京都行きの話が来た時…正直少し迷ったんですけど、今の渚さんなら大丈夫だろうと思って決心したんです。」
私は黙って頷いた。
「そしたら泣いてる渚さん、見ちゃったじゃないですか。
…良かれと思ってやった事で、僕はこの子を余計に傷つけてしまったんじゃないかと後悔して…。
手紙も出そうかどうか、本当は迷ったんです。
でも、渚さんの先生に会えて良かったって言葉がどうしても頭から離れなくて…」
先生は恥ずかしそうに頭をかいた。
「教師としての自信を無くしかけていた時に言われた言葉だったし…自分が誰かに必要とされた事ってあまり無かったから、余計に嬉しかったんです。」
86 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:06:13.27 ID:+beSXCVE0
「…必要とされた事…ないんですか?」
私が質問すると、先生は苦笑いしながらハイと頷いた。
「お恥ずかしい話ですけど、僕にも ちょっと色々ありまして……まぁこの話はやめましょうか。」
先生はアハハっと笑った。
「本当はいけない事なんですけど、僕は渚さんの事が、大事な歳の離れた妹というか…そんな風に思えてしまうんです。」
胸がギュッと痛んだ。
「大事だから、貴女がまた傷ついたり、傷つけられたりするのが怖いし嫌なんです。
だから…絶対に絶対に自分を守ってください。」
私はまた、大きく頷いた。
「元教え子をそんな風に思うなんて、僕もダメな大人の一人ですね。」
先生は私の目を見ると、何だか哀しそうにニコッと笑った。
夜も更けてゆき、私は先生に家の近くまで送ってもらうと、絶対に約束は守りますと改めて宣言した。
先生は いつものようにニコっと笑うと、「絶対ですよ。」とだけ言った。
先生はまたフーッと大きく溜め息をつく。
「…僕が女性だったら良かったんですけどね……」
私はまた、下を向いた。
「……僕、ずっと心配だったんです。」
「え?」
予期せぬ言葉に、驚いて先生を見る。
「…僕が赴任してきた頃……渚さん、虐められてたでしょう?」
先生は私を見ずに話を続けた。
「虐められてるのが解って…何とかしてあげたいのに、僕には何も出来なくて……せめてもの償いのつもりで、歌のレッスン引き受けたんです。」
「………」
「…少しでも支えになれば…そう思って始めたんです。
そしたら渚さんは どんどん明るくなっていって、友達も出来て…あぁコレで良かったんだって。
京都行きの話が来た時…正直少し迷ったんですけど、今の渚さんなら大丈夫だろうと思って決心したんです。」
私は黙って頷いた。
「そしたら泣いてる渚さん、見ちゃったじゃないですか。
…良かれと思ってやった事で、僕はこの子を余計に傷つけてしまったんじゃないかと後悔して…。
手紙も出そうかどうか、本当は迷ったんです。
でも、渚さんの先生に会えて良かったって言葉がどうしても頭から離れなくて…」
先生は恥ずかしそうに頭をかいた。
「教師としての自信を無くしかけていた時に言われた言葉だったし…自分が誰かに必要とされた事ってあまり無かったから、余計に嬉しかったんです。」
86 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:06:13.27 ID:+beSXCVE0
「…必要とされた事…ないんですか?」
私が質問すると、先生は苦笑いしながらハイと頷いた。
「お恥ずかしい話ですけど、僕にも ちょっと色々ありまして……まぁこの話はやめましょうか。」
先生はアハハっと笑った。
「本当はいけない事なんですけど、僕は渚さんの事が、大事な歳の離れた妹というか…そんな風に思えてしまうんです。」
胸がギュッと痛んだ。
「大事だから、貴女がまた傷ついたり、傷つけられたりするのが怖いし嫌なんです。
だから…絶対に絶対に自分を守ってください。」
私はまた、大きく頷いた。
「元教え子をそんな風に思うなんて、僕もダメな大人の一人ですね。」
先生は私の目を見ると、何だか哀しそうにニコッと笑った。
夜も更けてゆき、私は先生に家の近くまで送ってもらうと、絶対に約束は守りますと改めて宣言した。
先生は いつものようにニコっと笑うと、「絶対ですよ。」とだけ言った。
88 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:08:34.19 ID:+beSXCVE0
意を決して家に入る。
テレビを見ているであろう男と、あいかわらず鼻歌交じりで台所に居る母を無視するように通りぬけ、部屋に戻ってガチャガチャと小物入れを漁る。
「あった…」
随分と昔に買った南京錠。
役に立ちそうな物を部屋中を漁ってかき集め、何とかドアに鍵をつけると、私はやっとホッとしてベッドに座った。
これでひとまず大丈夫…あとは日中どうやって身を守るかだ。
小さな頭で必死に考えた。
まず就寝時や家に居る間は常に部屋に鍵をかけて閉じこもる。
お風呂は母が居る時のみ。
男が休みであろう時は、どこかに出かける。
なるべく二人と顔を合わさずに生活をする。
やれるべき事を一通り考え終わった頃、ふと先生の言葉が頭をよぎる。
「大事な歳の離れた妹…」
私は、いつもとは違う胸の痛みを感じていた。
90 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:10:33.75 ID:+beSXCVE0
それからは 学校が終わるとバイトに明け暮れ、気がつくと家には寝に帰っているだけの生活になっていた。
寝に帰っても二人には一切会わず、家では極力空気のように過ごした。
先生とも会う事はなく、ただ、メールでだけは毎日連絡を取り合っていた。
おやすみとおはようの挨拶だけの、ある意味安否確認のようなメールだった。
それだけでも何だか先生に守られているような気がして、とても心強かった。
季節は梅雨に入る。
いつものように バイトを終えて家に帰ると、電気こそ点いてはいたが二人は居なかった。
珍しい事もあるもんだ…と部屋に戻ってゴロゴロしていると、ガタガタと誰かが帰ってくる音がした。
もう帰ってきちゃったか…と溜め息をついていると、足音はまっすぐ こちらにやってくる。
ビクッとして身構えていると、扉の向こうから「オイ!」と男の声がした。
「……何ですか?」
緊張しながら返事を返す。
「ガキ、産まれたから。男。」
「…そうですか。」
それだけ言うと、男は部屋の前から去っていった。
94 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:12:55.51 ID:OzEUWIFF0
はよっ続きはよっ
95 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:13:10.03 ID:+beSXCVE0
数日後、学校から戻ると母は家に帰ってきていた。
「なぎ〜〜〜〜♪」
帰ってきた私に気がつくと、母は赤ん坊をだっこしながら嬉しそうに近寄ってきた。
「みて〜〜〜〜弟よ〜〜〜〜♪かわいいでしょお♪」
母は抱っこしろと言わんばかりに、赤ん坊を私に差し出した。
私は弟をチラっとみると、「ふーん…」とだけ言って そそくさと部屋に戻った。
急いで扉を閉め鍵をかけると、リビングから母の喚いている声がした。
なんだか疲れてベッドにつっぷす。
血の繋がった弟が可愛くない訳じゃない。
ただ、そこで抱いてしまったら、二人との関わりが一瞬で出来上がってしまうようなして怖かったのだ。
母は わざわざ私の部屋の前まで来て何か叫んでいたが、私はイヤホンをつけると ただひたすらに無視をした。
高校最後の夏休みが始まる。
母とはあれから一切話すことも顔を会わせる事も無く、たまに赤ん坊の泣き声こそ聞こえてきたが、三人がどんな生活をしているのかさえ知らずに過ごしていた。
97 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 16:15:20.60 ID:+beSXCVE0
そんなある日。
私はドスン!!!!という物凄い衝撃で目が覚めた。
ビックリして飛び起きると、一階のリビングから叫び声と赤ん坊の泣き声、男の怒号が聞こえてきた。
時計を見ると まだ夜中の3時頃。
急いで下に降りると、荒れ果てたリビングでは、血だらけの二人が取っ組み合っていた。
「ちょっと!なにやってんの!!!!!」
驚いて二人を引き剥がそうとする。
瞬間、物凄い力で吹っ飛ばされ、私は強かに背中を打った。
痛みで息が出来ない。
苦しくて悶絶していると、母はギロリとこちらを見た。
般若のような恐ろしい顔に、背筋がゾッとする。
母は何か絶叫しながら喚いたと思うと、物凄い速さで私に殴りかかった。
ガツン!と目の辺りを殴られる。
反射的に私は母を突き飛ばした。
勢いよくキッチンまで吹っ飛ばされた母は、今度はその場にあった包丁を握って こちらに向かってくる。
「おい!!!!!!!!!」
流石に男が母を止めに入る。
男に強く腕を握られた母は、包丁を床に落とした。
私は苦しさと恐怖と混乱で固まっていた。
「このアバズレ!!!!!!糞女!!!!!」
母は男に押さえつけられながら、私にそう叫んだ。
訳がわからず更に混乱する。
「ガキの分際で人の男に手ぇだすなんてなに考えてんだ!!!!!!!!!!」
血走った母の目が合う。
「なに…言ってんの…?」
私がそういうと、母はまた言葉になっていない言葉を絶叫しながら喚いた。
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