私が初恋をつらぬいた話
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160 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:50:10.63 ID:+beSXCVE0
>>159
大丈夫です。皆さん、優しいですね。ありがとうございます。
卒業式が終わる。
当たり前のように、母は出席しなかった。
友人達は皆、泣いていた。
式が終わってすぐに少しだけ懇親会のようなものが予定されていたのだが、私はそれに出る事無く高校をあとにした。
家に戻るのが なんとなく嫌で、あてもなく街中をブラブラ歩く。
街の賑やかな喧騒が耐えられなくて、私は人気の少ない小さな公園に向かった。
その公園は地元では有名な心霊スポットで、街を一望出来る綺麗な場所なのに、普段から誰も近寄ることが無かった。
どっかりとベンチに腰を下ろす。
私は携帯の電源を落とすと、ただボーっと空を眺めた。
思えば最初は天国、最後は地獄の高校生活だった。
先生と再会出来た事、大事な友達が沢山出来た事……色々な思い出が、頭を駆け巡る。
何だか疲れちゃったな……
そう思いながらボーっとしていると、空はあっという間に暗くなっていった。
161 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:52:56.40 ID:+beSXCVE0
辺りが完全に暗くなった所で、私は時間を見るために携帯の電源を入れた。
時間はもう6時過ぎ。
着信履歴は母からのもので埋まっていた。
ボーっとしながら履歴のページをめくっていく。
不思議な事に5時を過ぎた辺りで、母からの電話はピタッと止まっていた。
あーあ…やっちゃったー…なんか色々と大変な事になってるんだろうな…
そう思いつつも、まったく家に戻る気が起きない。
なんとなく そのまま無心で履歴をめくり続けていると、最後の方で堺先生の名前が出てきた。
それを見て、指が止まる。
先生とはあの日以来、連絡を取っていない。
メールが来ることも、こちらから送ることも無かった。
ふと、先生の言葉を思い出す。
ー 人って結局、いつかは自分から離れていくじゃないですか… ー
離れないと決めたはずなのに、私は簡単に先生から離れていった。
その時は本気で離れないと思ったはずなのに、結局は先生の言うとおりになっている。
先生の悲しそうな顔が、思い浮かんだ。
瞬間、離れるのが正しかった事なのだと、私は自分に言い聞かせた。
こんな自分の泥沼のような人生に、もう先生を巻き込んじゃいけない。
そう思いながらも心のどこかでは、先生に会いたくて、このまま離れたくなくて、ダダを捏ねてる自分が居る。
ダメ…でも…いや絶対にダメだ……私は久々に味わう心の痛みに、葛藤していた。
162 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:56:15.85 ID:+beSXCVE0
長い長い葛藤のあと、私は思いついた。
最後に一度だけ、先生に電話をしよう……それで心の踏ん切りをつけよう…と。
よくわからない緊張が、私を支配する。
コレが最後。と何度も自分に言い聞かせながら、私は思い切って携帯のボタンを押した。
「…………」
暫らく鳴らしても、先生は電話に出ない。
やっぱりそうだよな…出るわけ無いよな。でもかえってこれで踏ん切りがついた…。
そう思いながら電話を切ろうとしたその時、呼び出し音がブツっと急に止まる。
「……もしもし…」
先生の声がした。
「……もしもし…渚さん?」
久しぶりの柔らかい声に、胸が一杯になる。
「…お久しぶりです…先生。」
何とも言えない懐かしさで、私の心は一瞬で穏やかになっていった。
>>159
大丈夫です。皆さん、優しいですね。ありがとうございます。
卒業式が終わる。
当たり前のように、母は出席しなかった。
友人達は皆、泣いていた。
式が終わってすぐに少しだけ懇親会のようなものが予定されていたのだが、私はそれに出る事無く高校をあとにした。
家に戻るのが なんとなく嫌で、あてもなく街中をブラブラ歩く。
街の賑やかな喧騒が耐えられなくて、私は人気の少ない小さな公園に向かった。
その公園は地元では有名な心霊スポットで、街を一望出来る綺麗な場所なのに、普段から誰も近寄ることが無かった。
どっかりとベンチに腰を下ろす。
私は携帯の電源を落とすと、ただボーっと空を眺めた。
思えば最初は天国、最後は地獄の高校生活だった。
先生と再会出来た事、大事な友達が沢山出来た事……色々な思い出が、頭を駆け巡る。
何だか疲れちゃったな……
そう思いながらボーっとしていると、空はあっという間に暗くなっていった。
161 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:52:56.40 ID:+beSXCVE0
辺りが完全に暗くなった所で、私は時間を見るために携帯の電源を入れた。
時間はもう6時過ぎ。
着信履歴は母からのもので埋まっていた。
ボーっとしながら履歴のページをめくっていく。
不思議な事に5時を過ぎた辺りで、母からの電話はピタッと止まっていた。
あーあ…やっちゃったー…なんか色々と大変な事になってるんだろうな…
そう思いつつも、まったく家に戻る気が起きない。
なんとなく そのまま無心で履歴をめくり続けていると、最後の方で堺先生の名前が出てきた。
それを見て、指が止まる。
先生とはあの日以来、連絡を取っていない。
メールが来ることも、こちらから送ることも無かった。
ふと、先生の言葉を思い出す。
ー 人って結局、いつかは自分から離れていくじゃないですか… ー
離れないと決めたはずなのに、私は簡単に先生から離れていった。
その時は本気で離れないと思ったはずなのに、結局は先生の言うとおりになっている。
先生の悲しそうな顔が、思い浮かんだ。
瞬間、離れるのが正しかった事なのだと、私は自分に言い聞かせた。
こんな自分の泥沼のような人生に、もう先生を巻き込んじゃいけない。
そう思いながらも心のどこかでは、先生に会いたくて、このまま離れたくなくて、ダダを捏ねてる自分が居る。
ダメ…でも…いや絶対にダメだ……私は久々に味わう心の痛みに、葛藤していた。
162 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:56:15.85 ID:+beSXCVE0
長い長い葛藤のあと、私は思いついた。
最後に一度だけ、先生に電話をしよう……それで心の踏ん切りをつけよう…と。
よくわからない緊張が、私を支配する。
コレが最後。と何度も自分に言い聞かせながら、私は思い切って携帯のボタンを押した。
「…………」
暫らく鳴らしても、先生は電話に出ない。
やっぱりそうだよな…出るわけ無いよな。でもかえってこれで踏ん切りがついた…。
そう思いながら電話を切ろうとしたその時、呼び出し音がブツっと急に止まる。
「……もしもし…」
先生の声がした。
「……もしもし…渚さん?」
久しぶりの柔らかい声に、胸が一杯になる。
「…お久しぶりです…先生。」
何とも言えない懐かしさで、私の心は一瞬で穏やかになっていった。
163 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 17:58:45.42 ID:+beSXCVE0
「お久しぶりです。元気にしてましたか?」
「はい。…先生こそ、元気でしたか?」
昔のように笑いあう。
「元気でしたよ。…渚さんは今日卒業式でしたよね?おめでとうございます。」
「…ありがとうございます。」
卒業という言葉に少しだけ現実を思い出して、胸が痛む。
「どうしたんですか?急に。」
先生はいつもと変わらぬ明るい声で、私にそう尋ねた。
先生の言葉に大きく一回深呼吸をして、私は勇気を出して話し始めた。
「…これが最後のつもりで、先生に電話をかけました。」
「……最後?」
「はい。…先生に電話を掛けるのも…今日で最後にします。」
電話の先で先生が黙り込む。
「…先生には沢山助けてもらいました。だから…今までありがとうございました。もう迷惑はかけません。」
165 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:01:06.93 ID:+beSXCVE0
先生からの返事は無い。
言い終えた私は、胸の痛みを必死で堪えていた。
自然と涙が溢れてくる。
「…今、どこにいますか?」
長い沈黙のあと、先生は私にそう尋ねた。
「…どうしてですか?」
私は泣いているのを悟られないように、明るく聞き返した。
またほんの少しの沈黙の後、先生は小さく「だって…」と言った。
「……これで最後にしますって言われて、しかもその連絡が電話だけ…っていうのは、なんか嫌じゃないですか。」
私は何も言えなかった。
「…これでもうサヨナラするのなら、最後に会って話をしましょう。僕はそうしたい。」
私は少しだけ考えて、「〇〇公園に居ます。」と応えた。
先生は場所にちょっと驚いたようだったが、「わかりました。すぐに行きますから。」といって電話を切った。
あの時のように、泣いてる顔なんて絶対に見せない。
私はそう決心をして、ひたすら何も考えないようにじっと夜景を眺めた。
166 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:03:51.89 ID:+beSXCVE0
案外すぐに涙も止まり、不思議と穏やかな気分になっていた。
これでもう大丈夫…あとは何があっても普通に接していればいい…
心の中でひたすら そんな事を繰り返していると、先生は本当にすぐにやってきた。
「おまたせしました。…やっぱりココ、なんだか怖いですね。」
そう言いながら、私の横にちょこんと腰をかけた。
ラフなスーツ姿の、小学校の時と何も変わらない先生を見ていたら、懐かしい気持ちがこみ上げてくる。
私は少し笑って、「そうですね。」と返事をした。
「…仕事、あれからどうなりました?結構色々と見て回ってましたよね?」
胸がズキッと痛んだ。
「全部、落ちちゃいました。」
私は努めて明るく答える。
先生は凄く驚いた顔をした。
「なんで?あんなに頑張ってたのに…」
「ちょっと色々ありまして…残念でしたけど。あ、でも もう仕事他に決まったんですよ。」
「そうなんですか?…ならよかった。どんなお仕事?」
胸がどんどん痛くなっていく。
「母から紹介されて…脱いで歌うお仕事だそうです。」
私が笑いながら言うと、先生は私を見ながら固まった。
169 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:05:31.78 ID:+beSXCVE0
「脱ぐ…って…」
「はい、歌いながら裸になるそうです。まいっちゃいますね。」
「…ストリップって事ですか?」
「多分、そうだと思います。結局私には そういう仕事しかなかったみたいです。」
私は先生の顔を見ないように前を向いて、アハハと笑った。
もう2度と会う事はない。
このまま嫌われてしまっても構わない。
いや、むしろ嫌われて軽蔑されてしまった方が、気が楽だ。
私は話しながら、そんな事を考えていた。
「そんな仕事を始めるし、私はどんどん先生達の世界から離れていきます。」
「……。」
「だからこれ以上、先生を巻き込みたくないし、迷惑かけたくないんです。私は先生に、幸せになって欲しいから。」
言い終わってホッと溜め息をつく。
先生が隣で固まっているのがわかった。
これでいいんだ…
昔のように痛くなる胸の締め付けを我慢しながら、私はただじっと夜景だけを眺めた。
170 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:07:27.12 ID:+beSXCVE0
そのまま暫らく、静かな時間が流れる。
先生は相変わらず固まっていて、私はじっと前だけを向いていた。
このままこうしていたら、私はきっとまた泣いてしまう…
そう思って、私はバッと立ち上がった。
固まっている先生に振り返る。
「もう行かないと。今日、卒業式が終わったらお店の人に電話する筈だったんですよ。…無視して今サボっちゃってますけど。」
私はニコニコしながらそう言った。
先生はニコリともする事無く、少しだけ下に俯いた。
「…最後に会えて嬉しかったです。…実はずっと会いたかったから。」
そういい鞄に手をかける。
「それじゃ、先生、お元気で…」
先生の顔を見ないようにしながら、私は先生に背を向ける。
ここから離れるのを拒否する気持ちを懸命に振り払いながら、私は歩き出そうとした。
その時、急にぐっと腕を引っ張られる。
驚いて振り返ると、先生は下を向いたまま、私の腕をしっかりと掴んでいた。
172 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:09:30.28 ID:+beSXCVE0
また暫らくの沈黙。
暗い中、下を向いている先生の表情は見えない。
「あの…」
言いかけた私を遮るように、先生は静かな声で呟いた。
「……理由はそれだけ?」
「え?」
「…僕から離れる理由はそれだけ?」
何を言われているのかが解らず、混乱して体が固まる。
「…僕の事が嫌だからとかじゃなくて、迷惑をかけたくないからとか……理由はそれだけ?」
下を向いたままの、先生の冷たい声が怖い。
私は小さく「はい」とだけ返事をした。
「…………………あれから…色々考えたんですよ。」
先生が溜め息まじりにそう言った。あれから?何の事?さらに混乱する。
「何を…ですか?」
「貴女と僕の事。」
何を話しているのかがようやく解って、私の胸はドキッとした。
173 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:12:16.78 ID:+beSXCVE0
「…貴女に好きだと言われて、正直あの時は凄く困りました。でも、何となく気がついてはいたんです…昔から。」
私は黙って頷いた。
「僕は教師で、貴女は教え子だ。どうにかなったらいけない。そう思いながらも、貴女に頼られると心配で ついつい手を出してしまう。」
「……。」
「気がかりで、可愛くて…放っておくと すぐボロボロになって戻ってくる。」
先生はすっと、腕の力を緩めた。
「僕はずっと昔から、貴女の事が好きだったんですよ。気がつかない振りをして、妹のようだって言ったりして、ずっと誤魔化してたんです。」
先生は私の腕をそっと放すと、顔を上げてそのまま前を眺めた。
「でも僕は貴女よりずっと年上だ。自分の気持ちに気がついても、何もすることは出来ない。貴女がだんだん離れて行って、あぁこれでいいんだと…ずーっと言い聞かせました。本心はすっごく嫌でしたけどね。」
先生が遠くを見つめながら小さくハハッと笑う。
胸が苦しくなった。
「今日だって最後って言われて…僕も諦めるつもりで来たんですよ。
貴女には これから未来がある。ずっと僕の傍に居させてしまったら、僕は貴女の未来を摘み取ってしまうかもしれない。
貴女が僕から離れたいって言うなら それが一番なんだと…そう…覚悟してきたのに…」
先生はそういうと、また黙って下を向いた。
塞き止めて仕舞い込んでいた思いが、ガンガンと溢れ出てくる。
「私だって…」
息が詰まる。
「私だって…覚悟してきたのに…どうしてそんな事言うんですか……一生懸命我慢してきたのに…どうして…」
泣かないと決めた思いは、ぽっきりと根元から折れた。私は立ったまま、涙を堪えきれなくなって下を向いた。
先生はスッと立ち上がると「あーあ…」と溜め息をつきながら、私を抱きしめた。
174 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 18:15:06.56 ID:+beSXCVE0
気持ちが抑えきれなくなって、先生にしがみつく。
先生はそれに応えるように、更に強く私を抱きしめた。
「……僕が好き?」
声が出せずに、大きく頷く。
「…本当はこのままずっと一緒に居たい?」
大きく何度も何度も頷く。
「じゃあ もうずっと一緒に居ればいい……僕も渚と一緒に居たい。」
やっと言って貰えたその言葉に、私は嬉しくて切なくて、声をあげてわんわん泣いた。
先生と出会ってから、もう7年が経っていた。
私は そのまま暫らく泣き続け、先生は子供をあやすように私をずっと抱きしてめていた。
先生の腕の中が優しくて暖かくて、涙は次第に止まっていく。
ようやく私が泣き止んだ時、先生は「帰りましょうか…」と優しく言った。
「…帰るって…どこにですか?」
呆けた頭で聞き返す。
「帰る場所は もうひとつしかないでしょう?」
「…ひとつ?」
「アハハ、まぁいいや。…さ、帰りましょ。」
先生は体をゆっくり離すと、私の手を握った。
そして地面に放り出されていた私の鞄を拾うと、そのまま手を引き歩き始めた。
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