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幼なじみとの馴れ初め
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「君を俺に守らせてほしい」

陽子にそう告げた時、陽子は涙を流して抱きついてきた。

俺の胸で泣きじゃくる陽子に、俺は「強くなるから」と誓った。

陽子は「うんうん」と頷いた。



毎朝、5kmのランニング。

そして夕方は、空手の道場に通う日々。

入門当初は、小学生にすら勝てなかった俺。

でも3ヶ月後には、中学生に勝てるようになっていた。

しかも半年後には、大人の有段者相手でも負けなかった。

毎日毎日、ひたむきに稽古をした俺。

そんな俺に師範が、「よく頑張るね」と言った。

俺は俺の稽古に、毎日ついて来る陽子を見て、「彼女の為ですから」と師範に言った。

「そっか」

師範はそう言うと、優しい顔をした。



久しぶりに、香織に会った。

学校で時々、顔を合わす事はあったが、お互いに目を背けていた。

朝のランニングが済み、家に戻ろうとすると香織がいた。

「頑張ってるみたいね」

香織の笑顔を見たのは、別れた日以来だった。
「あぁ」

「顔つきが最近、たくましくなってきたよ」

「ありがと」

「陽子ちゃんと仲良くやってんの?」

「あぁ」

「そっか・・・じゃ、頑張ってね」

たったそれだけの会話だった。

たったそれだけの会話だったけど、俺はやっぱ、香織が好きだと気が付いた。



陽子とは時々、キスならばした。

でも胸を触ったりとか、それからやりたいとは思わなかった。

きっかけがきっかけだけに、傷つけたくないと思ってた。

ちゃんと責任を取れるようになって、それからだとも思ってた。



それから・・・

あの4人組の身元が分かった。

学校周辺では有名らしく、リーダー格は「梅田」と言うらしい。

仕事もせず、パチンコ店なんかに毎日出入りしてるらしい。

腕に自信がついた俺は、復讐しようと思った事がある。

でも陽子に止められ、思い直した。

「復讐なんか、絶対に考えないで」

そう懇願されると、何も出来なかった。



空手に熱中しすぎて勉強が疎かになり、2年時にT大確実と言われてた俺だが、3年時は特進からも外れてしまった。

それでも3年の2学期以降、なんとか持ち直し、同じ六大学のR大に合格した。

陽子も特進で、T大も固いと思われるが、来年はあえてT大を避け、R大を受験すると言う。

ま、1年の差はあるが、俺の後を追うって感じかな。

香織は・・・

噂で聞いた程度だが、私立はR大に合格したらしいが、地元国立にも受かっており、そっちに行くと思う。

それから、梅田の事を新聞で見た。

梅田は喧嘩して刺されて、あっけなく。


他の3人については知る由もないが、ま、どうでもいい。


卒業式の日、「お祝いしたい」と言う陽子に呼ばれ、俺は陽子の家に向った。

テーブルには、陽子お手製のオムライスとサラダが。

陽子以外には、家族は誰もおらず・・・

「もしかしたら?」

そう言う思いも、あるにはあった。


食事が済み、陽子の部屋でしばし雑談。

雰囲気が良くなって、キスするまではいつも通り。

でも相変わらず、それより先には進もうと思わない俺。

「抱いてほしいよ」

煮え切らない俺に陽子が、いよいよ業を煮やしたか・・・

「ちゃんと責任取れるようになってから・・・ねっ?」
そんな言葉すら、陽子を傷付けていた。

「好きだから・・・抱いてほしいんです!」

俺に覆い被さり、唇に吸い付く陽子。

やがて俺のベルトに手を伸ばし・・・

「陽子ちゃん、そんな事しないで・・・」

思わず俺は、そう言ってしまった。



「どうしてですか?」

目に涙をいっぱい溜め、陽子は俺に尋ねた。

「だから・・・ちゃんと責任取れるようにな」

「ウソっ!」

「俊也さん、あの事・・・あの日の事を気にしてます!」

「えっ?」

「あたしの事、不潔だとか・・・汚いとか思ってるでしょ?」

「あの日の事、絶対に引きずってます!」

「そんな事ないよ」

「じゃ、どうして・・・」

陽子は声を上げて泣き出した。

「あの日、あの男達は・・・あたしの体に触る前から・・・」

「でも俊也さん、全然反応しない」

「キスしてもそう。さっきあたしが上に乗ったのに・・・」

「男の人って、『したいもんだ』って聞きました。」

「でも俊也さん、あたしを全然求めない。」

「『責任取れるまで』って言うなら、避妊してもいいじゃないですか?」

「なのに俊也さん・・・触れようとしない・・・」



「帰って!」

そう言われ、家から追い出された俺。

暫く玄関先に留まったが、中に入れてくれる様子もない。

俺は仕方なく、重い足取りで家路についた。

陽子の言葉は遠からず、的を得ていた。

「不潔」とか「汚い」とかは思ってない。

思ってはいないが、「あの日」の事を意識しない訳じゃない。

今付き合ってる事も、俺なりの「あの日」の償いだったから。

でももしかしたら俺・・・



陽子に言われて気付いた事があって、

「陽子にかなり失礼な事をしたんじゃないか?」って事。

好きでもないのに、ただ償いの為に付き合いだした事は、優しさではなく、また償いでもなく・・・



一人の家には帰る気がしなかった。

俺は家の側の公園に行き、ベンチに腰掛け俯いていた。

陽子に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

また、自分が歯痒くて仕方がなかった。


>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春, 胸キュン,
 


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