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幼なじみとの馴れ初め
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と、その時、コーラの赤い缶が、目の前に差し出された。

見上げた俺に、「どうした?彼女と喧嘩でもした?」

香織だった。

俺は立ち上がり、香織を抱きしめた。

「ちょっと、ちょっとー」

香織はそう言ったが、俺は尚もきつく抱きしめた。

そして声を上げ、大声で泣いた。

そう・・・あの日の香織のように・・・



「落ち着いた?」

香織の声に、自分を取り戻した。

「ごめん・・・」

俺は香織に謝った。

「謝るより・・・感謝されたいな、あたしとしてはね」

「あぁ・・・ごめん・・・」

「座ろっか?」

クスリと笑った後、香織はベンチを指してそう言った。

俺は黙って頷き、腰を下ろした。

「喧嘩した?」

「いや・・・そうじゃなくて・・・」

「自分自身が情けなくて・・・そしたらなんだか泣けてきて・・・」
「そしたら香織が目の前にいて、なんだか甘えたくなった。」

「ごめん・・・」

「そっか・・・」

香織はそう言うと、コーラの蓋を取って俺に差し出した。

俺は受け取るには受け取ったが、飲む事が出来なかった。



「3年も前だね〜あたしがここで泣いたの。誰かさんに抱きついてさ。」

「先輩にいじめられた位で、好きな陸上を辞めた自分が、なんだか情けなくてね〜」

「そしたら目の前に、突然コーラが出て来たじゃない?」

「『今、この人に甘えたい』って思った訳よ」

「そしたらさ〜その相手が、幼馴染の俊ちゃんでしょ!もうびっくりでさ。」

「気付いたら、抱きついて泣いてた訳よ」

そう言うと香織は、俺の手からコーラを取り、一口飲んで返した。

「あの日のコーラ、美味しかったよ。缶に砂ついて、ぬるくなってたけどね。」

「あのコーラのお陰で、あたし元気になれたんだ。」

「だから俊ちゃんもコーラ飲んで、元気出しなって!」

そう言って香織は、俺の肩を思いっきり叩いた。



「俊ちゃん・・・」

暫く黙ってた香織だが、口を開いた。

「キス・・・しよっか?」

俺は驚いて、香織の顔を見た。

その途端香織は顔を近づけ、唇を重ねてきた。

「あ〜っ!ちゅーしてるぞ〜!」

遠くで子供の声が聞こえるまで、香織は唇を離そうとはしなかった。

「じゃ、あたし行くね」

唇を離すと、立ち上がった香織。

「オマタ、興奮してるみたいだから、彼女に頼んで沈めてもらいなさい!」

そう言うと香織は、ゆっくりと公園の出口へと歩く。

その背中に俺は、「香織、好きだよ」と叫んだ。

「人をふっといて、今更だぞ〜」

香織は俺の方を見ずに、手だけを振った。



3日後、陽子から手紙が届いた。

俊也さん、あなたがあの日の事の償いの為に、私と付き合い出したって事は知ってました。

あんな事があって辛かったけど、でも結果として、俊也さんと付き合えて良かったと、私は思ってました。

でも俊也さんは、ずっとあの日の償いのままで。

責任とか償いとか、それだけなら愛じゃないです。

愛されてないのに、ずっと一緒にいるのは辛いです。

出来る事なら俊也さんの愛で、あの日の事を忘れさせてほしかった。

でも、もう・・・

俊也さんは十分、償いを果たしてくれました。
これからは自分の為に、俊也さんが愛せる人をみつけて下さい。

ありがとう。楽しかった。これからもっともっと、楽しみたかったけど・・・

さようなら。

陽子



大学に入学した俺。

入学して1ヶ月が経つが、引っ込み思案な性格が災いし、友達はまだいなかった。

一人で登校し、一人で授業を受け、一人で昼食を摂り、一人で帰る生活。

慣れない一人暮らしで、正直寂しかった。

でも、自分からなかなか解けこめない俺。

情けない・・・



「隣り、空いてますか?」

学食で昼食を摂る俺に、声をかけて来た女。

見上げると・・・

「彼女、出来た?」

「いや・・・」

「優しいから、もてるでしょ?」

「いや・・・」

「うそ〜っ!絶対もてるって!」

「そんな事ねぇよ!」

「ごめん・・・怒った?」

「いや・・・」

「怒ってるでしょ?」

「いや・・・」

「あたし・・・迷惑かな?」

「いや・・・」

「静かにしてた方がいいなら・・・黙ってようか?」

「うるさくてもいいから・・・俺の彼女になってほしい。好きだよ。ずっと好きだった。香織・・・」

「あたしだって・・・ずっと俊ちゃんの事・・・好きだったんだよ」

「そうなの?」

「そうだよ。子供の時から好きだったんだからね。」

「えっ?」

「あたしのアルバムね〜・・・俊ちゃんがいっぱい写ってんの!」

「それはそれは・・・奇特な方で・・・」

「『蓼喰う虫も好き好き』って事!」



ヴァージンロードをゆっくりと進む香織。

そしてそれを待つ俺。

「大学だけは、きちんと卒業します。」

香織の家に挨拶に行った19歳の正月に、香織の父親とした約束。

俺たちはきちんと4年で卒業し、香織はOLになり、俺は都内の商社に勤め、2年後にこの日を迎えた。

香織を待つ間、俺は昔の事を思い出してた。

 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春, 胸キュン,
 


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