水遣り
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出来るだけ詳細な報告をと依頼されたのです。
ここまで聞けば依頼主が誰なのか私にも大凡の見当はつきます。
「その程度の物であれば、佐伯には訓告で済ませたと思う」
「その程度では無かった?」
「その通りだ。女はともかく金が程度を超えていた」
「そうですか」
「言うまでも無いが、この事は奥さんにも佐伯にも時期がくるまで話さないでほしい」
「勿論です。私は私の材料で戦います。でもその時期とは?」
「来週一杯と言っておこう」
佐伯の人間性が解ります、妻を こいつだけには何があっても渡せません。
「妻が昨日入院しました」
「どうしてそれを早く話さない。早く病院に行ってあげるんだ」
「今は会えません。妻の顔を見れば出てくる言葉は一つです」
「そうか。どうして入院したんだね」
「大量の睡眠薬を飲んだと」
私の携帯に着信があります。病院からです。
「奥さんの担当医です。ご主人、今日病院に寄ってもらえますか」
「直ぐ伺います」
--------------------
松下さんに直帰する旨伝え、病院に向かいます。
担当医と話します。
「ご主人、奥さんは相当弱られています。断り無く血液検査をしました。ご主人、少しは控えて頂かないと」
「は?どう言う事ですか」
私には言われている意味が解りません。
「つまりですね、薬を使うのを程々にして欲しいと。求めるのは解りますが」
血液検査の結果、ピルの常用、経口催淫剤の大量常用が残留成分として検出されたのです。
特に経口催淫剤の量は限界を遥かに超えた量だそうです。
その影響は長く持続する可能性があるそうです。
しかたありません、事実を話すしかありません。第三者に話したくはなかったのですが妻の不倫の事を話します。
勿論 相手の名前は伏せたままです。
「そうですか、失礼な事を言いました」
もう一つ気になる事があります、妻の女陰の事です。
「先生、実は妻のあの部分に媚薬を塗られていた可能性があります」
「その部分を見て欲しいと」
「お願いします」
「解りました。今直ぐには手配出来ません、明日朝見る事にします」
「ご主人、お名前は圭一さんですね」
「そうですが、それが何か」
「奥さんが何度も何度も ”圭一さん、御免なさい”とうわ言で繰り返しています」
「・・・・・」
「話掛けてあげればと思いまして」
「いや、余計なお世話だ」
結果は、明日聞きに来る旨言って病院を辞します。
『圭一さん御免なさいか』
余計な事だ。妻がうわ言で何を言おうが、夢で何を見ようが関係ありません。
してしまった事は戻らないのです。許す気持ちはありません。
--------------------
家に戻ります。
憂鬱な夜が始まります。
酒を煽ります。
妻の事、佐伯の事、松下さんの事が頭でぐるぐる回ります。
酔う程に松下さんの比重が大きくなってきます。
携帯を手に取っています。松下さんをコールします。
「松下さん、今から行っていいかな?」
「散らかってますけど、いらして下さい」
松下さんのアパートに始めて訪れます。8階建ての立派なマンションです。2階に彼女の部屋があります。
「こんな時間にお邪魔して申し訳ない」
「いいえ、お上がり下さい」
「君には全て知られている。今日病院へ行ってきた。夜一人じゃ居られない」
「病院では何と」
「今は言えない」
松下さんがウィスキーを用意してくれます。ちびりちびりと飲んでいますが、話す事がありません。私はリビングをあちこち眺めているだけです。
「身分不相応な所に住んでいると思っているんでしょう?」
「いや、そんな事は無い」
「私、両親を早く亡くしたの」
ご両親が早く亡くなり、結構な財産を一人娘の松下さんに遺したのです。
松下さんが成人するまで親戚の方が預かり、成人するの待って、その一部でマンションを買ったのです。
「そうなのか。苦労したんだ。それで そんなに強いんだ」
「強くありません。強いなんて言わないで下さい。それを聞いて女は喜びません」
「ご免、そんな積もりで言ったんじゃない」
「こんな歳まで女一人で不思議だと思っているんでしょう」
「うーん、まあ君のような綺麗な人がとは思う」
「私も色々ありました。結婚を考えた人も居ました。でも、一人暮らしが長いと ついつい慎重になっちゃって。この部屋に入った男の人は社長が始めて。もう結婚は考えない事にしました」
「君がその気になりさえすれば、相応しい相手はいくらでもいるさ」
取り止めの無い世間話をしています。妻の話題は、松下さんも避けているのが解ります。
話題があって来たのではありません。話が途切れます。
松下さんは酒の世話をやいてくれます。
摘みを取りに、チェイサーを取替えにキッチンに何度もリビングと行き交います。
私の目は自然と尻を追っています。
歩を進めるたびにそれは上に、下に、右に、左に揺れ動くのです。
スカートの上からショーツの線が見えています。
チェイサーを取替える時、私の肩越しに腕が伸びます。
薄いセーターのV−ネックから胸の谷間が覗けます。うなじが目の前に現れ、女の匂いが鼻腔を擽ります。
4ヶ月以上も妻を抱いていないのです、
『松下さんを抱きたい』
衝動が突き抜けます。と同時に別の思いが掠めます。
佐伯、妻との決着はついていません。
しかも、妻は入院中です。
ここで松下さんを抱くわけにはいきません。松下さんをも汚してしまう事になります。
「松下さん、急に思い出した事がある。病院に妻のものを届けなければいけない。ご免、これで帰る」
勝手な男です。突然来て、突然帰ります。
松下さんが その気になっていたのかは解りませんが、傷をつけてしまった事は確かです。
松下さんは私の嘘を見抜いていたのでしょう。
「奥さんをお大事に」
これで考えなければならない事が3つに増えました。
妻の事、佐伯の事そして松下さんの事。
しかし、私の生き方は ”すべて水のように”です。
酒を煽って酔いつぶれて寝る事にします。
酒を飲みだすと松下さんの姿態が目に浮かびます。
打ち消すように酒を煽ります。
--------------------
酔いつぶれて寝て翌朝起きたのが11時です。
シャワーを浴びて がんがんする頭を押さえて病院へ急ぎます。
「事後ですが、ご主人この書類にサインを頂けますか?」
担当医が書類を出します。
今朝、私と連絡が取れなかったので、事後になって申し訳ないと一言添えます。
私が酔いつぶれて家の電話にも、携帯の着信にも気がつかなかったのです。
妻に麻酔を施したと、その了解が欲しいと書かれています。
「奥さんに了解を求めても それは無理でしょう。私の判断で麻酔をする事にしました」
「結構です。問題ありません」
サインを済ませ、担当医の説明を聞きます。
その報告は衝撃的な物です。
「失礼だとは思いましたが、奥さんの陰部、肛門とそれから乳房を検査しました」
女陰には、クリトリス、陰唇、膣口と膣のの中に至るまで、そして乳首に大量で強力な媚薬を塗布された形跡があると言うのです。
皮膚から相当量の残留成分が検出されたのです。
しかも、皮膚から血液の中に溶け出しているだろうと。
普通の性交では、皮膚まで破ける筈はありません。
肛門からは何も検出されません。
「聞きたく無い事を言わなければいけません。
皮膚にこれだけの成分を残すには、相当長期間に渡り、大量に常用する事が必要です。
皮膚の糜爛、傷もしかりです。
奥さんの皮膚は普通の成人女性に比べ相当薄いようです。
玩具を使っていないとすれば、相手の男根は普通では無いと考えられます」
「普通では無い?」
「そうです。真珠を埋め込んでいるとか、シリコンで成形しているとかです」
中条さんの言葉を思い出します。
”大人のオモチャのようにゴツゴツしたグロテスクな物だった。こんな恐ろしい物、おぞましい物”
「相手の男は増大手術をしています」
「やはりそうですか」
「奥さんは精神的にも相当弱られています。ご主人のご了解を頂ければ心療内科の方でケアをしたいと思っています」
「心療内科?それで妻は今?」
「麻酔でまだ眠られています。あと3時間位は目が覚めないと思います」
「心療内科の件は考えておきます。先生一つ教えて下さい。薬の影響が無くなるには どれ位の期間が必要ですか?」
「これ程の例は見た事がありません。正直なところ解りません。一週間なのか、一ヶ月なのか。目が覚めれば お話になってあげませんか?」
「いや、今私から出る言葉は矢のような事しかありません。会うつもりはありません」
「そうですか。その方がいいかも知れませんね」
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