ひどい頭痛がしてました。
胸が痛くて、胃の中身を全部戻しそうなくらいムカムカしてました。
M子が美味そうに飲み込んでいるSの精液と、俺の手にベットリと付いた精液を見比べました。
以前、M子に一度俺の精液を飲ませた時、すごくむせてしまって大変な時があったんです。
M子が涙まで流して苦しそうだったので、もう二度と無理言わないからって必死に謝ったんだっけ。
なのに、なんで今あんなに美味そうに、なんのためらいも無くSの精液を飲み込んでるわけ?
俺って無精子症だから、健康な精液よりかなり不味いのかな?
今思うと そんなことある訳無いんだけど、その時は本当に真剣に悩みました。
その後、Sが挿入、体位は騎上位からバック、最後は正常位でフィニッシュでした。
ゴムなんてつけてません、思いっきり中出しでした。
M子は自分から腰を振りたくって、窓ガラス越しにも はっきり聞こえる大きな声でよがり狂ってました。
大きい、すごい、狂っちゃう、いっちゃう、とか、俺とのセックスでは ほとんど聞いたことが無いようなイヤらしいヨガり声がガンガン聞こえてきました。
一番ショックだったのは、正常位の時、M子とSが舌を絡め合うようなディープキスを何度も交わしてた事でした。
そんな激しいキスを俺以外の男としている所なんか見たくもなかった。
M子、自分から求めてたし。
俺は、涙を流し、そして勃起しながらただ覗いているだけでした。
事を終えて、抱き合って寝ている二人を尻目にふらふらと塀を乗り越えた後、俺は二人が最初に出てきたBarに行ってました。
その場に乗り込んで二人に詰め寄る勇気など、その時の俺には ありませんでした。
マスターに二人が ここから出てきたのを見たと伝えると、マスターは店が終わって他に客がいなくなった後、いろいろ話してくれました。
俺が転勤になった後、しばらくしてからM子がSと一緒に ここに来るようになった事、来るたびに親密さが増していってた事、
酔ったM子が、Sと何度も抱き合ったりキスしていた事、
たまに俺とM子が二人で来ることがあったが、その2、3日後には必ずと言っていいほどSと来ていた事、等でした。
俺は呆然と、俺の知らない間にずっとM子とSは今日の様な事を繰り返していたのかと、改めて理解しました。
それにしても、俺といつも来ている店を浮気の現場にするなんて、M子もSも何考えてんだ?
俺って馬鹿にされてるのかな、それとも、もう眼中にも無いのかなって思うと、また涙が滲んできました。
マスター曰く、普段俺と来ているこの店でデートすると、二人とも燃えるらしいとの事でした。
マスターは、転勤前に嬉しそうに婚約指輪を見せながら、M子との婚約を伝えていた俺が可哀相でなかなか言い出せなかったそうで、それを聞いた後、また俺は泣きました。
二十歳台半ばにもなった男が人前で えぐえぐ泣いているのは、かなり見苦しかったと思います。
その後 Barを出ましたが、二人が抱き合って寝ているM子の部屋に帰る事も出来ず、その晩は近くのビジネスホテルに泊まりました。
結局、一睡もできないまま朝になりました。
夢や幻覚なら良いのにな…と思いつつ、俺はM子のマンションへと向かいました。
そこで見たのは、マンションの入り口からM子と一緒に出てきたSの姿でした。
別れ際に、二人は軽くキスをしていました。
ああ…、現実なんだなー…
ホント、その時の気持ちと言えば、怒りとか悔しいとか情けない等は とっくに通り越していて、ただ哀しい、それだけでした。
名残惜しそうにSに手を振っているM子の姿が、まるで他人の様でした。
これが、ただ単にSがM子の部屋から出てきた所を見ただけだったら、その場で二人を問い詰める事も出来たんだろうけど、その前の晩に強烈な浮気の現場を見てしまった後では声をかける事も出来ませんでした。
結局、その日はM子と会うことなく、仕事先に帰りました。
その後の俺の様子は かなり酷かったみたいで、会社の上司から休めと言われたほど憔悴していたようでした。
M子からは、普段と変わらない様子で電話がかかって来ていました。
その日にあった事、今日何を食べたかなどの、他愛も無い話です。
以前は、何でも無い事でも すごく楽しかった会話が、あの時からは苦痛で仕方ありませんでした。
会話の度に、またSと会ったのか、ひょっとしたら今一緒にいて、セックスしながら話してるんじゃないかと、考えたくも無い妄想で気が狂いそうでした。
M子からは、俺が かなり気の無い生返事をしていたように聞こえたんでしょうね。
「ねえ、ホントに聞いてる?」と訊かれた事が、何回もありました。
そう言うこともあって、M子は俺の様子がおかしいと感づいてきたんだろうと思います。