水遣り
(14ページ目) 最初から読む >>
\ シェアする /
「浮気調査は来週月曜日、身辺調査はもう少し掛かると思う」
所長の言葉を聞いて、興信所を後にします。
--------------------
会社でも妻の事が頭をよぎります。処理すべき仕事があるのが幸いです。仕事している間は忘れています。
夜、外食し、スイミングクラブに寄って11時頃、帰宅します。
「お帰りなさい。貴方、今日急に出張が決まってしまったの。明日、大阪で一泊、金曜日、金沢で一泊なの。行っていいてすか?」
「行っていいですかって、業務だろ。行くしかないじゃないか」
妻は今まで通り、宿泊するホテルも私に教えます。
『何が行っていいですかだ。勝手に行け』
私は心の中で毒づきます。
顔には出しません 私の心の中には二人に対する怒り、憎しみしかありません。湧いてくる他の気持ちをそれで押さえているのです。
妻と交わした言葉はそれだけです。風呂に入り寝ます。
--------------------
翌朝一番で、所長に電話して、妻の予定、宿泊先を伝えます。
今日は人と会う予定はありません。
昼前、松下さんに話しかけられます。
「社長」
「もう社長はいいよ。こんな小さな会社だ。君と僕しか居ない。宮下でいいよ」
興信所の所長と同じ事を言っています。
「でも私にとっては社長です。社長以外には呼べません」
「そうか、仕方ないか。それで?」
「お弁当作りすぎちゃったんです。良ければ半分食べて下さい」
「それは嬉しいね。勿論頂く」
松下さんが来てくれて3ヶ月余りです。こんな事は初めてです。
それは作りすぎたと言う量ではありません、完全に二人分です。
私がそうさせなかった事もありますが、妻の手弁当を食べた事はありません。
実に美味い弁当です。
「美味い」
「やったー。作り甲斐があったと言うものね」
「何だ。わざわざ作ってくれたのか?」
「ばれちゃいましたね」
良く気が付く女性です。食後にコーヒーを淹れてくれます。
「社長の奥さん奇麗な方ですね」
「そうか」
松下さんは妻に一度会っています。
入社して間もなくの頃、私の忘れものを妻が届けてくれた時に話をしています。
「奥さん、社長の事愛してらっしゃるんですね」
「・・・・・、おっ、もうこんな時間か、ちょっと出かけてくる。お弁当ご馳走さま」
私は返事が出来ません。返事の変わりに用事も無いのに出掛ける事にします。
--------------------
金曜日も、もう退社時間近くになります。
この一週間は酷かった。
妻が家に居る時は、妻の姿が目に入りません、いや見れなかったのです。
妻が出張で居ない火曜日の夜、妻は そこかしこに居ます。
打ち消しても打ち消しても、妻と佐伯が絡んだ姿態が目に浮かびます。
佐伯の男根を咥えている妻、佐伯に尻を掴まれ後ろから貫かれている妻、互いの性器を舐め合っている妻と佐伯、佐伯の背中にに腕を回し爪を立てている妻
家で一人で居ますと妻と佐伯がいたる所に出てきます。
打ち消すには酒しかありません。浴びるように飲み、気絶するようにベッドに倒れこみます。
今日の夜はもう、そう言う思いをしたくありません。
5時、私は松下さんを誘います。
「松下さん、用事が無ければ晩飯一緒にどうだ。僕も一人でつまらない」
「うわっ、嬉しい。連れてって下さい」
松下さんが焼き鳥を食べたいと言う事で、焼き鳥屋に行きます。接待で時々使う店です。
隣の席とは衝立で区切られていて、焼き鳥屋独特の喧噪さは感じません。
「社長に晩御飯をご馳走になるのは初めてですね」
「弁当のお礼と言っては何だが、たまにはと思ってね」
「お弁当のお返しで晩御飯をご馳走して頂けるのでしたら、これから毎日持って来ます」
松下さんと話してると気持ちが和むのが解ります。
酒が進むにれ、食が進むにつれ心が軽くなるのが解ります。
松下さんの口も軽くなります。
「社長、言っていいですか?」
「何でも」
「社長、この1ヶ月くらい少し変ですよ。特に今週は変。何かあったのですか?」
「それは嬉しいね。勿論頂く」
松下さんが来てくれて3ヶ月余りです。こんな事は初めてです。
それは作りすぎたと言う量ではありません、完全に二人分です。
私がそうさせなかった事もありますが、妻の手弁当を食べた事はありません。
実に美味い弁当です。
「美味い」
「やったー。作り甲斐があったと言うものね」
「何だ。わざわざ作ってくれたのか?」
「ばれちゃいましたね」
良く気が付く女性です。食後にコーヒーを淹れてくれます。
「社長の奥さん奇麗な方ですね」
「そうか」
松下さんは妻に一度会っています。
入社して間もなくの頃、私の忘れものを妻が届けてくれた時に話をしています。
「奥さん、社長の事愛してらっしゃるんですね」
「・・・・・、おっ、もうこんな時間か、ちょっと出かけてくる。お弁当ご馳走さま」
私は返事が出来ません。返事の変わりに用事も無いのに出掛ける事にします。
--------------------
金曜日も、もう退社時間近くになります。
この一週間は酷かった。
妻が家に居る時は、妻の姿が目に入りません、いや見れなかったのです。
妻が出張で居ない火曜日の夜、妻は そこかしこに居ます。
打ち消しても打ち消しても、妻と佐伯が絡んだ姿態が目に浮かびます。
佐伯の男根を咥えている妻、佐伯に尻を掴まれ後ろから貫かれている妻、互いの性器を舐め合っている妻と佐伯、佐伯の背中にに腕を回し爪を立てている妻
家で一人で居ますと妻と佐伯がいたる所に出てきます。
打ち消すには酒しかありません。浴びるように飲み、気絶するようにベッドに倒れこみます。
今日の夜はもう、そう言う思いをしたくありません。
5時、私は松下さんを誘います。
「松下さん、用事が無ければ晩飯一緒にどうだ。僕も一人でつまらない」
「うわっ、嬉しい。連れてって下さい」
松下さんが焼き鳥を食べたいと言う事で、焼き鳥屋に行きます。接待で時々使う店です。
隣の席とは衝立で区切られていて、焼き鳥屋独特の喧噪さは感じません。
「社長に晩御飯をご馳走になるのは初めてですね」
「弁当のお礼と言っては何だが、たまにはと思ってね」
「お弁当のお返しで晩御飯をご馳走して頂けるのでしたら、これから毎日持って来ます」
松下さんと話してると気持ちが和むのが解ります。
酒が進むにれ、食が進むにつれ心が軽くなるのが解ります。
松下さんの口も軽くなります。
「社長、言っていいですか?」
「何でも」
「社長、この1ヶ月くらい少し変ですよ。特に今週は変。何かあったのですか?」
松下さんも私の変化に気が付いていたのです。
いくら私でも、妻が正社員になってから、急に残業、付き合いで帰宅が遅くなり、出張も毎週のようにあれば少しは変に思います。
会社で空ろな時もあったのでしょう。それがつい先週具体化しただけの話です。
「いや、別に何も。君がこの間 ”妻は僕を愛している”って言ったよね?どうしてそう思った?」
「ええ、奥さんの社長を見る目を見てそう思ったの」
「そうか、有り得ないな」
「えっ、有り得ない?」
感が良いのでしょう、松下さんは それ以上この話題には触れません。
酔いに任せて喋ります。朝も夜も家で食べていない事、家に帰るのは いつも遅い事。
さすがに妻の浮気の事は言えません。
未だ9時、家には帰れません。
二人でカラオケに寄ります。知っている歌は演歌です。不倫、悲恋、そんなテーマばかりです。
妻と佐伯が目に浮かび、曲が流れても歌えません。
「私も歌っていいですか?」
「勿論だ」
松下さんは60年代のアメリカンポップスを歌います。何処で覚えたのかと思うほど上手に歌います。
「よくこんな歌知ってるね」
「父が好きで、小さい頃よく一緒に聞いていました」
「社長も一緒に如何ですか?」
私もメロディーくらいは知っています。見よう見まねで歌います。
弾けるような若い恋。駄目です、歌えません。妻と出会った頃を思い出します。
「社長、今日は駄目みたいですね。私が一杯歌ってあげるから」
優しい女性です。私が腰を上げるまで、帰るとは言いません。私はもう泥酔しています。
「そろそろ帰ろうか?」
「そうですね、私が送ってあげる」
一台のタクシーに乗り込みます。私の家の前です。
「有難う、おやすみ」
「おやすみなさい。奥さんの代わりをしてあげるから」
小さくそう言って、タクシーで去って行きます。その言葉は私の耳には届いていません。
--------------------
シャワーを浴び、ベッドで横になっても眠れません。
酒の助けを借りて又 気絶するように眠ります。
夕方近くまで、眠り続けます。
妻の声で起こされます。
「ただいま。貴方どうかされました?具合でも悪いのですか?」
「いや、何でも無い。昨日半分徹夜だ」
私は言い訳をしています。
『どうして俺が言い訳しなくちゃいけないんだ。全てお前のせいだ』
心の中で毒づいています。何をして来たんだと聞きたいのを押さえています。
「何か召し上がりますか?」
>>次のページへ続く
\ シェアする /
関連記事
easterEgg記事特集ページ
