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水遣り
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「社長、この1ヶ月くらい少し変ですよ。特に今週は変。何かあったのですか?」
松下さんも私の変化に気が付いていたのです。
いくら私でも、妻が正社員になってから、急に残業、付き合いで帰宅が遅くなり、出張も毎週のようにあれば少しは変に思います。
会社で空ろな時もあったのでしょう。それがつい先週具体化しただけの話です。
「いや、別に何も。君がこの間 ”妻は僕を愛している”って言ったよね?どうしてそう思った?」
「ええ、奥さんの社長を見る目を見てそう思ったの」
「そうか、有り得ないな」
「えっ、有り得ない?」
感が良いのでしょう、松下さんはそれ以上この話題には触れません。
酔いに任せて喋ります。朝も夜も家で食べていない事、家に帰るのはいつも遅い事。
さすがに妻の浮気の事は言えません。
未だ9時、家には帰れません。
二人でカラオケに寄ります。知っている歌は演歌です。不倫、悲恋、そんなテーマばかりです。
妻と佐伯が目に浮かび、曲が流れても歌えません。
「私も歌っていいですか?」
「勿論だ」
松下さんは60年代のアメリカンポップスを歌います。何処で覚えたのかと思うほど上手に歌います。
「よくこんな歌知ってるね」
「父が好きで、小さい頃よく一緒に聞いていました」
「社長も一緒に如何ですか?」
私もメロディーくらいは知っています。見よう見まねで歌います。
弾けるような若い恋。駄目です、歌えません。妻と出会った頃を思い出します。
「社長、今日は駄目みたいですね。私が一杯歌ってあげるから」
優しい女性です。私が腰を上げるまで、帰るとは言いません。私はもう泥酔しています。
「そろそろ帰ろうか?」
「そうですね、私が送ってあげる」
一台のタクシーに乗り込みます。私の家の前です。
「有難う、おやすみ」
「おやすみなさい。奥さんの代わりをしてあげるから」
小さくそう言って、タクシーで去って行きます。その言葉は私の耳には届いていません。
--------------------
シャワーを浴び、ベッドで横になっても眠れません。
酒の助けを借りて又気絶するように眠ります。
夕方近くまで、眠り続けます。
妻の声で起こされます。
「ただいま。貴方どうかされました?具合でも悪いのですか?」
「いや、何でも無い。昨日半分徹夜だ」
私は言い訳をしています。
『どうして俺が言い訳しなくちゃいけないんだ。全てお前のせいだ』
心の中で毒づいています。何をして来たんだと聞きたいのを押さえています。
「何か召し上がりますか?」
「いや、いい。どうも夜も食べれそうも無い。夜もいい。それから明日も仕事だ。明日も飯はいい」
私に非が有る訳ではありません。
正々堂々としていれば良いものを、こんな態度しか取れません。
怒りをこんな態度でしか現せない自分がもどかしいのです。
しかし、こんな思いも後2日の我慢です。
仕事部屋に篭った私を何度か妻が覗きに来ます。
「貴方、大丈夫ですか?お粥作ったの。召し上がりますか?」
少しは私の事も気に掛けてはいるのでしょうか。心配そうな顔をしています。
「いや、要らない」
私が返す言葉はそれだけです。
夜中の12時を過ぎますと さすがに腹が減ってきます。キッチンに降ります。テーブルの上に皿が並んでいます。私の好物ばかりです。
横にメモがあります。”食べれるようでしたら、召し上がって下さい”。
翌朝、私は出かけます。
「朝御飯、召し上がりませんか?」
「昨日要らないと言った筈だが」
夜、帰るとご飯が用意されています。
月曜日の朝もしかりです。
私はそれを無視して出かけます。
事務所に入りますと、松下さんが声を掛けてきます。
私もメロディーくらいは知っています。見よう見まねで歌います。
弾けるような若い恋。駄目です、歌えません。妻と出会った頃を思い出します。
「社長、今日は駄目みたいですね。私が一杯歌ってあげるから」
優しい女性です。私が腰を上げるまで、帰るとは言いません。私はもう泥酔しています。
「そろそろ帰ろうか?」
「そうですね、私が送ってあげる」
一台のタクシーに乗り込みます。私の家の前です。
「有難う、おやすみ」
「おやすみなさい。奥さんの代わりをしてあげるから」
小さくそう言って、タクシーで去って行きます。その言葉は私の耳には届いていません。
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シャワーを浴び、ベッドで横になっても眠れません。
酒の助けを借りて又気絶するように眠ります。
夕方近くまで、眠り続けます。
妻の声で起こされます。
「ただいま。貴方どうかされました?具合でも悪いのですか?」
「いや、何でも無い。昨日半分徹夜だ」
私は言い訳をしています。
『どうして俺が言い訳しなくちゃいけないんだ。全てお前のせいだ』
心の中で毒づいています。何をして来たんだと聞きたいのを押さえています。
「何か召し上がりますか?」
「いや、いい。どうも夜も食べれそうも無い。夜もいい。それから明日も仕事だ。明日も飯はいい」
私に非が有る訳ではありません。
正々堂々としていれば良いものを、こんな態度しか取れません。
怒りをこんな態度でしか現せない自分がもどかしいのです。
しかし、こんな思いも後2日の我慢です。
仕事部屋に篭った私を何度か妻が覗きに来ます。
「貴方、大丈夫ですか?お粥作ったの。召し上がりますか?」
少しは私の事も気に掛けてはいるのでしょうか。心配そうな顔をしています。
「いや、要らない」
私が返す言葉はそれだけです。
夜中の12時を過ぎますと さすがに腹が減ってきます。キッチンに降ります。テーブルの上に皿が並んでいます。私の好物ばかりです。
横にメモがあります。”食べれるようでしたら、召し上がって下さい”。
翌朝、私は出かけます。
「朝御飯、召し上がりませんか?」
「昨日要らないと言った筈だが」
夜、帰るとご飯が用意されています。
月曜日の朝もしかりです。
私はそれを無視して出かけます。
事務所に入りますと、松下さんが声を掛けてきます。
「社長、お早う御座います。金曜日はご馳走様でした」
そう言いながらお握りと味噌汁を出してくれます。
味噌汁とお握りは、それから毎朝続きます。
携帯に着信があります。所長からです。
「今日、報告を渡せます。5時頃です」
それから全く仕事になりません。
「松下さん、悪いが今日はこれで帰る」
4時半になると私は会社を後にします。
--------------------
事務所から興信所までのゆっくり歩いて15分程度の道が遠く感じます。
「随分早いですな。後4,5分待って下さい」
待っている間、所長も無言です。その無言が堪えられません。
「出来ました。説明しましょう」
所長の説明を受けます。
月曜日の日中、火曜日の夜と水曜日の朝 そして金曜日の夜と土曜日の朝の報告です。
写真が何枚か添付されています。
月曜日の日中:
時間と場所が書かれています。
2時過ぎ、場所は市郊外のラブホテルです。
タクシーを利用しています。
地元でもあり慎重なのでしょう。
車がそのまま、建屋に入り、二人の姿、顔はホテルのドアーを入る時に確認できる程度です。
タクシーを呼んだのでしょう、タクシーが建屋に入った後、4時半頃 二人が出てきます。
妻の表情は良く解りませんが、笑っているようです。佐伯の左腕に自分の右腕を預けています。
火曜日:
妻は いつものシティーホテルに1時頃入ります。
夜7時、二人がホテルから出てきます。
腕を組んでいます。
7時半、北新地のラブホテル街に入ります。
一軒のラブホテルの門をくぐります。
10時半頃、二人は出てきます。
11時頃シティーホテルに戻ります。
水曜日の朝10時頃 妻が一人で出てきます。
金曜日:
二人は新幹線ひかりの同じ車両に乗り込みます。
席は隣り合っています。
米原で特急しらさぎに乗り換え金沢に向かいます。
勿論 席は隣同士です。
夜6時に温泉旅館に二人は入り、翌朝10時に旅館を出ます。
>>次のページへ続く
そう言いながらお握りと味噌汁を出してくれます。
味噌汁とお握りは、それから毎朝続きます。
携帯に着信があります。所長からです。
「今日、報告を渡せます。5時頃です」
それから全く仕事になりません。
「松下さん、悪いが今日はこれで帰る」
4時半になると私は会社を後にします。
--------------------
事務所から興信所までのゆっくり歩いて15分程度の道が遠く感じます。
「随分早いですな。後4,5分待って下さい」
待っている間、所長も無言です。その無言が堪えられません。
「出来ました。説明しましょう」
所長の説明を受けます。
月曜日の日中、火曜日の夜と水曜日の朝 そして金曜日の夜と土曜日の朝の報告です。
写真が何枚か添付されています。
月曜日の日中:
時間と場所が書かれています。
2時過ぎ、場所は市郊外のラブホテルです。
タクシーを利用しています。
地元でもあり慎重なのでしょう。
車がそのまま、建屋に入り、二人の姿、顔はホテルのドアーを入る時に確認できる程度です。
タクシーを呼んだのでしょう、タクシーが建屋に入った後、4時半頃 二人が出てきます。
妻の表情は良く解りませんが、笑っているようです。佐伯の左腕に自分の右腕を預けています。
火曜日:
妻は いつものシティーホテルに1時頃入ります。
夜7時、二人がホテルから出てきます。
腕を組んでいます。
7時半、北新地のラブホテル街に入ります。
一軒のラブホテルの門をくぐります。
10時半頃、二人は出てきます。
11時頃シティーホテルに戻ります。
水曜日の朝10時頃 妻が一人で出てきます。
金曜日:
二人は新幹線ひかりの同じ車両に乗り込みます。
席は隣り合っています。
米原で特急しらさぎに乗り換え金沢に向かいます。
勿論 席は隣同士です。
夜6時に温泉旅館に二人は入り、翌朝10時に旅館を出ます。
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