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誤解の代償
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私は48歳になる会社員です。
つい最近迄、車で4時間位の距離の地方の支社に単身赴任をしていました。
妻は44歳になり、やはり仕事を持っていて、一人娘も手を離れ、地方で一人暮らしを始めていたので、赴任先に妻も一緒に来て欲しかったのですが「仕事を急には辞められないから。」と言われ、渋々一人で行く事を決めました。
私は仕事が忙しく、休日出勤も珍しく無くて月に1度も帰れない時も多く有りましたが、妻は少なくても2週間に1度は来てくれていたので、何とか寂しさを我慢して来られました。
それが赴任が終る9ヶ月位前から、その回数が極端に少なくなって来ました。
妻は“仕事が忙しくて疲れているから・送別会が有るから・風邪を引いてしまった”等 色々な理由を付けていますが、私には『来たくないら、色んな理由を付けているのでは無いだろうか?』と思って仕舞う事が有ります。
それは、たまに来ても、会話らしい会話もなく、なにか不機嫌そうに見えますし、夜妻を誘っても、
「今日は無理して来たけれど、仕事が忙しくて凄く疲れているから・・・また今度にして。」
そんな様な言い訳をして拒み続け、夫婦関係も全然無くなっていました。
何よりも、私を見る妻の目が、汚い物でも見る様な感じがして、しょうがありません。
以前、何かの週刊誌に『妻の浮気を見破る方法』と言うのが載っていて、面白半分に読んだ記事と今の妻の行動が殆ど当て嵌まってしまい、『まさか志保に限って。』とは思っても、ここまで態度が変わってしまっているのには何か理由が有るはずです。
直接 妻に聞けばいいのですが、何となく言い出せなく、私もイライラして些細な事にも怒ってしまい、ますます会話が少なくなり、次の日は、不機嫌そうな顔をして朝早く帰って行き電話も掛けて来ません。
あの態度では、もし不倫をしているのなら、気持ちが もう別の男に行って仕舞っているのでしょうから、何を言っても元に戻る事は無いでしょう。
でも、私には まだ心に余裕を持っていました。
それは、知り合ってから今迄、妻は私だけを本当に愛してくれていて、性格からしても、その様な事を、絶対にしないと言う自分善がりの変な自信を持っていた事と、いつ電話しても、夜は必ず家に居て出て来る事、
もう一つ、以前、会社のある女性が部屋に来て食事の用意をして行ってくれた事を、妻には内緒にしていて、それに気付き、変に誤解をしてしまい、その事の方が妻の態度をああさせてしまっているのだと確信めいたものを持っていました。
その女性とは、新卒の総合職として入社し、新人時代は私が仕事を教えていましたが、頭が良くて、教えた事の飲み込みも速く、その年の新入社員の中ではピカイチでした。
仕事を教えた私を慕ってくれている様で「係長は、私の理想の男性像なんです。」等と言ってくれる彼女に、他の女子社員とは違った感情を抱いていましたが、
何よりそれは、どこと無く憂いを秘めた儚げな感じが、妻とダブっただけで それ以上の物では有りませんでした。
その彼女が3日間の出張で私の赴任先に来た時に「単身赴任では、ろくな物食べていないでしょう?」と、部屋に来て料理を作ってくれたのですが、妻とは滅多に行かないスーパーに二人で行き、買い物をしていると、何か夫婦の様であり変に意識をしてしまいました。
つい最近迄、車で4時間位の距離の地方の支社に単身赴任をしていました。
妻は44歳になり、やはり仕事を持っていて、一人娘も手を離れ、地方で一人暮らしを始めていたので、赴任先に妻も一緒に来て欲しかったのですが「仕事を急には辞められないから。」と言われ、渋々一人で行く事を決めました。
私は仕事が忙しく、休日出勤も珍しく無くて月に1度も帰れない時も多く有りましたが、妻は少なくても2週間に1度は来てくれていたので、何とか寂しさを我慢して来られました。
それが赴任が終る9ヶ月位前から、その回数が極端に少なくなって来ました。
妻は“仕事が忙しくて疲れているから・送別会が有るから・風邪を引いてしまった”等 色々な理由を付けていますが、私には『来たくないら、色んな理由を付けているのでは無いだろうか?』と思って仕舞う事が有ります。
それは、たまに来ても、会話らしい会話もなく、なにか不機嫌そうに見えますし、夜妻を誘っても、
「今日は無理して来たけれど、仕事が忙しくて凄く疲れているから・・・また今度にして。」
そんな様な言い訳をして拒み続け、夫婦関係も全然無くなっていました。
何よりも、私を見る妻の目が、汚い物でも見る様な感じがして、しょうがありません。
以前、何かの週刊誌に『妻の浮気を見破る方法』と言うのが載っていて、面白半分に読んだ記事と今の妻の行動が殆ど当て嵌まってしまい、『まさか志保に限って。』とは思っても、ここまで態度が変わってしまっているのには何か理由が有るはずです。
直接 妻に聞けばいいのですが、何となく言い出せなく、私もイライラして些細な事にも怒ってしまい、ますます会話が少なくなり、次の日は、不機嫌そうな顔をして朝早く帰って行き電話も掛けて来ません。
あの態度では、もし不倫をしているのなら、気持ちが もう別の男に行って仕舞っているのでしょうから、何を言っても元に戻る事は無いでしょう。
でも、私には まだ心に余裕を持っていました。
それは、知り合ってから今迄、妻は私だけを本当に愛してくれていて、性格からしても、その様な事を、絶対にしないと言う自分善がりの変な自信を持っていた事と、いつ電話しても、夜は必ず家に居て出て来る事、
もう一つ、以前、会社のある女性が部屋に来て食事の用意をして行ってくれた事を、妻には内緒にしていて、それに気付き、変に誤解をしてしまい、その事の方が妻の態度をああさせてしまっているのだと確信めいたものを持っていました。
その女性とは、新卒の総合職として入社し、新人時代は私が仕事を教えていましたが、頭が良くて、教えた事の飲み込みも速く、その年の新入社員の中ではピカイチでした。
仕事を教えた私を慕ってくれている様で「係長は、私の理想の男性像なんです。」等と言ってくれる彼女に、他の女子社員とは違った感情を抱いていましたが、
何よりそれは、どこと無く憂いを秘めた儚げな感じが、妻とダブっただけで それ以上の物では有りませんでした。
その彼女が3日間の出張で私の赴任先に来た時に「単身赴任では、ろくな物食べていないでしょう?」と、部屋に来て料理を作ってくれたのですが、妻とは滅多に行かないスーパーに二人で行き、買い物をしていると、何か夫婦の様であり変に意識をしてしまいました。
何より、男と女が夜に同じ部屋に居て何も無かったとは信じて貰えなさそうで、妻には内緒にしていたのですが、残り物をうっかり冷蔵庫に入れて置いたのを、次の日に来た妻に見付かり、慌てて変な言い訳をしたのを覚えています。
その日を、境に妻の足が遠のいたので、これは完全に誤解していると思いましたが、何も無かった事をあれこれ言い訳するのも面白く無くて無視していました。
--------------------
そんな時に、大学時代からの親友の佐野から電話が有り、冗談めかして現状を話し、「興信所にでも頼むかな。」と言うと、「まさか志保ちゃんが そんな事している訳ないだろう。」と、笑っていました。
妻の志保とは、大学の時に佐野の彼女(今の奥さん)美幸さんの紹介で知り合い、お互いに気に入り、妻が大学を卒業してから1年後に結婚しました。
佐野夫婦とは、結婚してからも家族ぐるみの付き合いをしていて、長い付き合いの佐野は志保の事をよく知っているので全く心配していません。
「もっと、そっちに行く様に、美幸に言わせるよ。」
そんな話をして電話を切りましたが、不思議なもので1度口に出してしまうと その事が何故か頭から離れなくなり、気になって仕方がありません。
ただこの時は、私の勝手な妄想であり、何の確証も無いので、それほど心配をしていた訳では有りませんでしたが、仕事が終ってマンションに帰って来ると『今頃 志保の奴』等と勝手な想像をしてしまいます。
そんな妄想を打ち消す為に家に電話を入れると、
「どうしたの?何か用事でも有るの?今日も仕事が忙しくて疲れているのよ。今度、私から電話するから何も無ければ これで切るね。」
愛想の無い返事ですが、ちゃんと家に居るので
『やはり俺の思い過ごしか。だいたい志保がそんな事をしている筈が無いな。』
と安心してしまいます。
そう思っても次の日になると また色々な事を考えてしまうので、来週の休みの日に妻には内緒で、こっそり帰って、探偵の様な事でもしてみようと面白半分に思っていました。
ここ暫らく休日も接待ゴルフ等で ろくに休んでも居なかったので、有給も含めて3連休を取りました。
『こんなにアッサリ休みが取れるなら、もっと早くそうすれば良かった。』
自分の要領の悪さに苦笑いしながらも、何か寂しさも感じて仕舞うのは会社人間の証拠でしょうか?
妻には、今度の休みも接待が有るので帰れないと伝えて、考えて居た事を実行する事にしました。
金曜日の朝に出て電車で帰って来たので、着いたのは、まだ午後1時を少し過ぎた位で時間にはタップリ余裕が有ります。
佐野に電話を入れると、
「お前も良くやるな。まあ、そんな心配をするのも愛が有る証か。今日は、夫婦仲良くやって、明日でも家に遊びに来いよ。美幸に旨い物でも作る様に言っておくよ。」
私も久振りに佐野夫婦と食事でもしながら、志保が誤解をしているなら、佐野達の力も借りて良く話し合おうと思っていました。
私は妻の勤める会社が良く見える所は無いだろうかと思い、少し早めに行って物色していると、丁度、会社の出入り口が見やすい喫茶店が有りました。
入ってみると時間が時間なだけに余り客も居なく、窓際の席に座り妻の出て来るのを待ちました。
--------------------
午後5時26分
妻が一人で会社から出て来て駅の方向に歩いて行きます。
私も喫茶店を出て妻に気付かれない様に後を追いました。
15分程の距離に駅が有りますが、何事も無く一人でプラットホームに入って行き、電車を待っています。
『やはり志保は何もしていなかったのか。疑って悪い事をしてしまったな。』
ほっとした気持ちと、何故か分かりませんが、残念な気持ちも有り、自分でも複雑な心境です。
私は直ぐに声を掛けようと思いましたが、何かプレゼントでもしてやろうと思いつき、今来た道を戻る事にしました。
あれこれ何を買ってやろうか迷っていると、さっき妻に声を掛けて一緒に選べば良かったと、後悔もしましたが、プレゼントを持て、急に帰った方が、ドラマチィクの様に思います。
『いい年をして俺も馬鹿な事を考えているな。』と気恥ずかしくなりましたが、妻が喜んでくれるなら、これはこれで良かったとも思いました。
午後7時10分
買い物に時間を取られて、思ったよりも遅くなっていたので、もうとっくに妻は帰っている筈です。
それが家の前に立つと1階のリビングに明かりが点いていません。
2階を見ると寝室には明かりが点いています。
リビングの明かりを消して、こんなに早い時間に寝室に入ってしまうのも不自然です。
考えてみると、妻が一人で帰って行ったからと言って安心してしまったのは、私の不注意でした。
その日を、境に妻の足が遠のいたので、これは完全に誤解していると思いましたが、何も無かった事をあれこれ言い訳するのも面白く無くて無視していました。
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そんな時に、大学時代からの親友の佐野から電話が有り、冗談めかして現状を話し、「興信所にでも頼むかな。」と言うと、「まさか志保ちゃんが そんな事している訳ないだろう。」と、笑っていました。
妻の志保とは、大学の時に佐野の彼女(今の奥さん)美幸さんの紹介で知り合い、お互いに気に入り、妻が大学を卒業してから1年後に結婚しました。
佐野夫婦とは、結婚してからも家族ぐるみの付き合いをしていて、長い付き合いの佐野は志保の事をよく知っているので全く心配していません。
「もっと、そっちに行く様に、美幸に言わせるよ。」
そんな話をして電話を切りましたが、不思議なもので1度口に出してしまうと その事が何故か頭から離れなくなり、気になって仕方がありません。
ただこの時は、私の勝手な妄想であり、何の確証も無いので、それほど心配をしていた訳では有りませんでしたが、仕事が終ってマンションに帰って来ると『今頃 志保の奴』等と勝手な想像をしてしまいます。
そんな妄想を打ち消す為に家に電話を入れると、
「どうしたの?何か用事でも有るの?今日も仕事が忙しくて疲れているのよ。今度、私から電話するから何も無ければ これで切るね。」
愛想の無い返事ですが、ちゃんと家に居るので
『やはり俺の思い過ごしか。だいたい志保がそんな事をしている筈が無いな。』
と安心してしまいます。
そう思っても次の日になると また色々な事を考えてしまうので、来週の休みの日に妻には内緒で、こっそり帰って、探偵の様な事でもしてみようと面白半分に思っていました。
ここ暫らく休日も接待ゴルフ等で ろくに休んでも居なかったので、有給も含めて3連休を取りました。
『こんなにアッサリ休みが取れるなら、もっと早くそうすれば良かった。』
自分の要領の悪さに苦笑いしながらも、何か寂しさも感じて仕舞うのは会社人間の証拠でしょうか?
妻には、今度の休みも接待が有るので帰れないと伝えて、考えて居た事を実行する事にしました。
金曜日の朝に出て電車で帰って来たので、着いたのは、まだ午後1時を少し過ぎた位で時間にはタップリ余裕が有ります。
佐野に電話を入れると、
「お前も良くやるな。まあ、そんな心配をするのも愛が有る証か。今日は、夫婦仲良くやって、明日でも家に遊びに来いよ。美幸に旨い物でも作る様に言っておくよ。」
私も久振りに佐野夫婦と食事でもしながら、志保が誤解をしているなら、佐野達の力も借りて良く話し合おうと思っていました。
私は妻の勤める会社が良く見える所は無いだろうかと思い、少し早めに行って物色していると、丁度、会社の出入り口が見やすい喫茶店が有りました。
入ってみると時間が時間なだけに余り客も居なく、窓際の席に座り妻の出て来るのを待ちました。
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午後5時26分
妻が一人で会社から出て来て駅の方向に歩いて行きます。
私も喫茶店を出て妻に気付かれない様に後を追いました。
15分程の距離に駅が有りますが、何事も無く一人でプラットホームに入って行き、電車を待っています。
『やはり志保は何もしていなかったのか。疑って悪い事をしてしまったな。』
ほっとした気持ちと、何故か分かりませんが、残念な気持ちも有り、自分でも複雑な心境です。
私は直ぐに声を掛けようと思いましたが、何かプレゼントでもしてやろうと思いつき、今来た道を戻る事にしました。
あれこれ何を買ってやろうか迷っていると、さっき妻に声を掛けて一緒に選べば良かったと、後悔もしましたが、プレゼントを持て、急に帰った方が、ドラマチィクの様に思います。
『いい年をして俺も馬鹿な事を考えているな。』と気恥ずかしくなりましたが、妻が喜んでくれるなら、これはこれで良かったとも思いました。
午後7時10分
買い物に時間を取られて、思ったよりも遅くなっていたので、もうとっくに妻は帰っている筈です。
それが家の前に立つと1階のリビングに明かりが点いていません。
2階を見ると寝室には明かりが点いています。
リビングの明かりを消して、こんなに早い時間に寝室に入ってしまうのも不自然です。
考えてみると、妻が一人で帰って行ったからと言って安心してしまったのは、私の不注意でした。
落ち合うのは何処でも出来る筈です。
ただ、リビングに明かりが点いていないからと言って、不倫をしていると決め付けるのには無理が有りますが、何か嫌な予感がしました。
音を立てない様にドアの鍵を開け、そっと寝室に向かおうとしましたが、心臓の音が聞こえる様で、気を落ち着かせる為に、リビングに入り煙草に火を点けましたが、手が小刻みに震えています。
『自分の家で何を情けない。しっかりしろよ。』
自分を勇気ずけました。
もしも男がいたとしても、その男に恐怖感が有る訳では有りません。
私は子供の時から少林寺拳法を習っていてもう有段者です。
これから遭遇するかも知れない現実が怖いのです。
少し気が落ち着いて来たので、意を決して、静かに寝室に向かうと、階段の辺りでもう、あの時の声が聞こえて来ました。
『志保・・・・お前・・・・・』
この時の感情は何と言っていいのか、頭も中が真っ白になり何をどうしたらいいのか、これまで感じた事のないものでした。
私は階段で、足が竦んで動けません。
妻達の声だけが耳に響いて来ます。
「アーー、もうお願い。ねえ早くぅ。アーーン。」
「まだまだ。」
「ウーーン、もう駄目!アー、堪忍して!」
「なあ、旦那どうしてる?まだ気付いて無いのか?志保は俺に こんな事されているのに。目出度い奴だな。」
「アッ、そんな事は・・どうでも・・アーー、ねえ、もう、もう、アーー、もう駄目!早く!アーーー、駄目イクーー」
悲鳴の様な大きな声が響きました。
私は急いで階段を上がり、寝室のドアを開けると、男は妻を後ろから貫いている所でした。
その光景は一生忘れる事の出来ないものとなり、今も目に焼き付いて離れません。
「誰だ!」
男は妻と繋がったままで、この家の主人でも有るかの様な事を口にしました。
「俺はその女の亭主だ!お前こそ何をしている。」
「あっ、貴方!イヤー!見ないで!見ないで!」
妻が慌てて離れ様としましたが、男は妻を貫いたまま、挑発的な視線を向けて来ます。
「とんだ所を見られたな。まあ、こう言う事だ。」
妻から離れ私の前に立ち、何も悪びれた様子も無く背広の襟を掴もうとしましたが、それよりも先に私の前蹴りが鳩尾を捕らえていました。
声にならない呻き声を出し蹲った所を、今度は顔面に蹴りをみまい、腕を捩じ上げると、
「いっ、痛い!分かった、分かったから離してくれ。」
「うるさい!何なんだお前!ふざけた態度とりやがって!」
腕を捩じ上げたまま、顔面に膝蹴りを入れると、顔を押さえて動かなくなりました。
拳法等、特殊能力を一般の人に使うのは、凶器を使うのと同じで法律で禁止されています。
しかし、この時は そんな事を考え余裕も無く、何の躊躇もしませんでした。
「志保、どう言う事だ?こう言う事で俺の所に来なかったのか?俺は、お前を信じたかった!」
「違うの、違うの。私・・貴方が・・・」
「何を言ってるんだ。何が違うんだ!これの何が、何が違うと言うんだ!」
私は、妻の頬を何回も平手で打つと、口の中が切れた様で血が流れ出ましたが、それでも止めませんでした。
妻は何の抵抗もせずに打たれていましたが、涙を流し「違うの、違うの。」と言い続ける姿を見ていると、虚しくなって来て突き放し、何が違うのか?これからどうするか?混乱した頭を整理する為にまた煙草に火を点けました。
もう手は震えていません。
「志保、何が違うんだ。」
私が妻を問いただそうそうとした時、
>>次のページへ続く
ただ、リビングに明かりが点いていないからと言って、不倫をしていると決め付けるのには無理が有りますが、何か嫌な予感がしました。
音を立てない様にドアの鍵を開け、そっと寝室に向かおうとしましたが、心臓の音が聞こえる様で、気を落ち着かせる為に、リビングに入り煙草に火を点けましたが、手が小刻みに震えています。
『自分の家で何を情けない。しっかりしろよ。』
自分を勇気ずけました。
もしも男がいたとしても、その男に恐怖感が有る訳では有りません。
私は子供の時から少林寺拳法を習っていてもう有段者です。
これから遭遇するかも知れない現実が怖いのです。
少し気が落ち着いて来たので、意を決して、静かに寝室に向かうと、階段の辺りでもう、あの時の声が聞こえて来ました。
『志保・・・・お前・・・・・』
この時の感情は何と言っていいのか、頭も中が真っ白になり何をどうしたらいいのか、これまで感じた事のないものでした。
私は階段で、足が竦んで動けません。
妻達の声だけが耳に響いて来ます。
「アーー、もうお願い。ねえ早くぅ。アーーン。」
「まだまだ。」
「ウーーン、もう駄目!アー、堪忍して!」
「なあ、旦那どうしてる?まだ気付いて無いのか?志保は俺に こんな事されているのに。目出度い奴だな。」
「アッ、そんな事は・・どうでも・・アーー、ねえ、もう、もう、アーー、もう駄目!早く!アーーー、駄目イクーー」
悲鳴の様な大きな声が響きました。
私は急いで階段を上がり、寝室のドアを開けると、男は妻を後ろから貫いている所でした。
その光景は一生忘れる事の出来ないものとなり、今も目に焼き付いて離れません。
「誰だ!」
男は妻と繋がったままで、この家の主人でも有るかの様な事を口にしました。
「俺はその女の亭主だ!お前こそ何をしている。」
「あっ、貴方!イヤー!見ないで!見ないで!」
妻が慌てて離れ様としましたが、男は妻を貫いたまま、挑発的な視線を向けて来ます。
「とんだ所を見られたな。まあ、こう言う事だ。」
妻から離れ私の前に立ち、何も悪びれた様子も無く背広の襟を掴もうとしましたが、それよりも先に私の前蹴りが鳩尾を捕らえていました。
声にならない呻き声を出し蹲った所を、今度は顔面に蹴りをみまい、腕を捩じ上げると、
「いっ、痛い!分かった、分かったから離してくれ。」
「うるさい!何なんだお前!ふざけた態度とりやがって!」
腕を捩じ上げたまま、顔面に膝蹴りを入れると、顔を押さえて動かなくなりました。
拳法等、特殊能力を一般の人に使うのは、凶器を使うのと同じで法律で禁止されています。
しかし、この時は そんな事を考え余裕も無く、何の躊躇もしませんでした。
「志保、どう言う事だ?こう言う事で俺の所に来なかったのか?俺は、お前を信じたかった!」
「違うの、違うの。私・・貴方が・・・」
「何を言ってるんだ。何が違うんだ!これの何が、何が違うと言うんだ!」
私は、妻の頬を何回も平手で打つと、口の中が切れた様で血が流れ出ましたが、それでも止めませんでした。
妻は何の抵抗もせずに打たれていましたが、涙を流し「違うの、違うの。」と言い続ける姿を見ていると、虚しくなって来て突き放し、何が違うのか?これからどうするか?混乱した頭を整理する為にまた煙草に火を点けました。
もう手は震えていません。
「志保、何が違うんだ。」
私が妻を問いただそうそうとした時、
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