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水遣り
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思い切ってかけただけに、怒りが湧いてきます。
ホテルの交換経由の電話案内でも、部屋に居ないと返ってきます。
時間をおき 数回繰り返しますが同じ事です。
『洋子はそういう女だったのか。出張中は俺の電話には出たくないと言う訳だ』
打つ手がありません。考えあぐねます。新幹線を降りてもどうしたものか迷います。
まだ4時、取りあえずホテルに向かいます。ホテルのエントランスの場所を確認します。
一箇所だけです。報告書の写真にあるのと同じである事も確認します。
夜二人が何処かへ出るとすれば此処からでしょう。車を使われれば諦める他ありません。
今日二人が外出するとは限りません。
しかし、私にはする事がありません、エントランスを見つめる以外ないのです。
回りを見渡します。
エントランスの道路を挟んだ向かいのビルの2階に喫茶店があります。東京にもある喫茶店のチェーン店のようです。
此処なら粘ってもおかしくありません。窓側の席に陣取ります。
5時半、出てくるには未だ早いでしょう。
6時半店は込んできます。
一杯のコーヒーでは居た溜まれません、お替りをします。
又1時間が過ぎます。
『出てこないか。駄目だったな』
諦めかけたその時です。二人は出てきました、腕を絡めて。
「釣りは要らない」
私は喫茶店を駆け降ります。
道路を渡る信号は丁度青です。
急いで渡り、二人の前に仁王立ちになります。走ったせいか息が切れています。
妻は私を見ても、一瞬 誰だか解らないような顔をしています。
私は妻を見てはいません。佐伯を睨み付けています。
妻は私が解ったのでしょう。
「貴方、どうして此処に?」
私は妻を無視します。
「佐伯、まだ俺が誰だか解らないようだな」
「あっ、宮下さんのご主人」
「やっと、解ったな」
「これから奥さんと業者の打ち合わせに」
「聞きもしない事を言わなくていい。こんな遅い時間に、腕を組んで打ち合わせに行くのか。行く所はラブホテルだろ」
とっさの事に二人は腕を組んだままです。あわてて腕を解きます。
「貴方、これは違うの」
「うるさい。何とどう違うんだ。お前は喋らなくていい」
「貴様っ!」
佐伯の顔面にパンチを2発、そして股間を強かに蹴り上げます。
「ギェッ」
佐伯はもんどりうって倒れます。背広のポケットから財布と何がしかの物が零れ落ちます。
妻は茫然として立ちすくんでいます。
私はピンク色した、形状の違う2つの小さな箱をそっと拾い上げ、自分のポケットに仕舞います。
「貴方、聞いて」
「聞く事は何もない」
「・・・・・」
「俺は帰る。お前はもう帰ってくるな、佐伯と乳繰り合ってろ」
妻を見ると涙を流しているようです。それが又気に入りません。
「俺に佐伯が殴られてそんなに悲しいか」
「違います」
佐伯がのろのろと起き上がってきます。
「佐伯、精々可愛がってやれ」
私は踵を返して その場から立ち去ります。
--------------------
帰りの新幹線の車中、佐伯を殴った感触が手に、蹴り上げた感触が足に残っています。
人を殴るのは気持ちの良いものではありません。後悔している自分がいます。
後悔している事はそれだけではありません。どうして妻を連れて帰らなかったのかと悔やんでいます。
今頃二人は慰めあって抱き合っているかと思うと居た溜まれません。
ウィスキーを注文します。酒で紛らわすしかないのです。
ウィスキーの支払いで小銭を出すのにポケットを探ります。
佐伯のポケットから零れた小箱が指先に引っかかります。
『そうか、こんな物があったんだな』
道路を渡る信号は丁度青です。
急いで渡り、二人の前に仁王立ちになります。走ったせいか息が切れています。
妻は私を見ても、一瞬 誰だか解らないような顔をしています。
私は妻を見てはいません。佐伯を睨み付けています。
妻は私が解ったのでしょう。
「貴方、どうして此処に?」
私は妻を無視します。
「佐伯、まだ俺が誰だか解らないようだな」
「あっ、宮下さんのご主人」
「やっと、解ったな」
「これから奥さんと業者の打ち合わせに」
「聞きもしない事を言わなくていい。こんな遅い時間に、腕を組んで打ち合わせに行くのか。行く所はラブホテルだろ」
とっさの事に二人は腕を組んだままです。あわてて腕を解きます。
「貴方、これは違うの」
「うるさい。何とどう違うんだ。お前は喋らなくていい」
「貴様っ!」
佐伯の顔面にパンチを2発、そして股間を強かに蹴り上げます。
「ギェッ」
佐伯はもんどりうって倒れます。背広のポケットから財布と何がしかの物が零れ落ちます。
妻は茫然として立ちすくんでいます。
私はピンク色した、形状の違う2つの小さな箱をそっと拾い上げ、自分のポケットに仕舞います。
「貴方、聞いて」
「聞く事は何もない」
「・・・・・」
「俺は帰る。お前はもう帰ってくるな、佐伯と乳繰り合ってろ」
妻を見ると涙を流しているようです。それが又気に入りません。
「俺に佐伯が殴られてそんなに悲しいか」
「違います」
佐伯がのろのろと起き上がってきます。
「佐伯、精々可愛がってやれ」
私は踵を返して その場から立ち去ります。
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帰りの新幹線の車中、佐伯を殴った感触が手に、蹴り上げた感触が足に残っています。
人を殴るのは気持ちの良いものではありません。後悔している自分がいます。
後悔している事はそれだけではありません。どうして妻を連れて帰らなかったのかと悔やんでいます。
今頃二人は慰めあって抱き合っているかと思うと居た溜まれません。
ウィスキーを注文します。酒で紛らわすしかないのです。
ウィスキーの支払いで小銭を出すのにポケットを探ります。
佐伯のポケットから零れた小箱が指先に引っかかります。
『そうか、こんな物があったんだな』
見覚えがあります。
中国のメーカーに行った時、女が燃えない時使えば良いと見せられたものです。
一つは経口催淫剤、一つは塗布媚薬。
非合法の物です。普通は手に入りません。それだけに効き目も大きいのです。
『佐伯。こんな物を使いやがって』
飛んで引き返したい衝動に駆られます。
車中、酔うどころではありません、怒りが酔いを打ち消します。
--------------------
家に帰ったのは0時半。
今夜も眠れそうにありません。
ソファーで酒を飲み酔いつぶれ、そのまま寝てしまったようです。
女の声で起こされます。
「貴方、御免なさい。こんなにさせてしまって」
酷い二日酔いで頭がはっきりしません。今の状況が飲み込めないのです。
妻だと解るのに数10秒掛かります。
時計と妻の顔を見比べています。まだ6時半です。
「どうしたんだ、こんな時間に」
場違いな事を聞いています。
妻は説明します。
新幹線の最終は名古屋停まり、そこでムーンライト”ながら”に乗り換えて帰ってきたのです。
『そうか、俺は昨日大阪へ行ったんだ』
妻の説明を聞いている内に徐々に頭が回復します。怒りが込み上げてきます。
「帰ってくるなと言っただろ」
「誤解です。あれは違います。お仕事です」
「何がお仕事だぁ。お前たちは腕を組んで仕事に行くのか」
私も何を細かい事を言っているのでしょうか。報告書を見せれば済む事です。
「あれは、回りの人がみんな腕を組んでいて、じゃあ僕たちもって部長が」
「回りがキスをしたら、お前たちもするのか。馬鹿か、お前らは。お前は人妻だぞ、しかも40過ぎのな」
「そんな事しません」
「俺はお前の携帯に電話した。お前が出れば、あんなところを見られずに済んだのにな」
「・・・・・」
「佐伯と居る時、お前はいつも電源を切っているようだな」
「あっ、あれは部長がお客と話している時は電源を切っておくようにと」
とっさにうまい嘘を思いついたものです。
「腕を組むのも佐伯、電源を切るのも佐伯。あいつの言う事はなんでも聞けるんだな、俺の言う事は何も聞けなくてもな」
「そんな事ありません」
「俺が死んでも、明子が死んでもお前には連絡が出来ない。佐伯に抱かれる方がお前には大事なんだ」
「抱かれてなんかいません」
明子の名前が効いたのでしょうか、妻は涙ぐみます。
「貴方、昨日はどうして大阪へ?」
「解りきった事だ、お前たちが乳繰り合っているところを見たくってな」
「そんな事はしていません」
その時、家の電話が鳴ります。
--------------------
>>次のページへ続く
中国のメーカーに行った時、女が燃えない時使えば良いと見せられたものです。
一つは経口催淫剤、一つは塗布媚薬。
非合法の物です。普通は手に入りません。それだけに効き目も大きいのです。
『佐伯。こんな物を使いやがって』
飛んで引き返したい衝動に駆られます。
車中、酔うどころではありません、怒りが酔いを打ち消します。
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家に帰ったのは0時半。
今夜も眠れそうにありません。
ソファーで酒を飲み酔いつぶれ、そのまま寝てしまったようです。
女の声で起こされます。
「貴方、御免なさい。こんなにさせてしまって」
酷い二日酔いで頭がはっきりしません。今の状況が飲み込めないのです。
妻だと解るのに数10秒掛かります。
時計と妻の顔を見比べています。まだ6時半です。
「どうしたんだ、こんな時間に」
場違いな事を聞いています。
妻は説明します。
新幹線の最終は名古屋停まり、そこでムーンライト”ながら”に乗り換えて帰ってきたのです。
『そうか、俺は昨日大阪へ行ったんだ』
妻の説明を聞いている内に徐々に頭が回復します。怒りが込み上げてきます。
「帰ってくるなと言っただろ」
「誤解です。あれは違います。お仕事です」
「何がお仕事だぁ。お前たちは腕を組んで仕事に行くのか」
私も何を細かい事を言っているのでしょうか。報告書を見せれば済む事です。
「あれは、回りの人がみんな腕を組んでいて、じゃあ僕たちもって部長が」
「回りがキスをしたら、お前たちもするのか。馬鹿か、お前らは。お前は人妻だぞ、しかも40過ぎのな」
「そんな事しません」
「俺はお前の携帯に電話した。お前が出れば、あんなところを見られずに済んだのにな」
「・・・・・」
「佐伯と居る時、お前はいつも電源を切っているようだな」
「あっ、あれは部長がお客と話している時は電源を切っておくようにと」
とっさにうまい嘘を思いついたものです。
「腕を組むのも佐伯、電源を切るのも佐伯。あいつの言う事はなんでも聞けるんだな、俺の言う事は何も聞けなくてもな」
「そんな事ありません」
「俺が死んでも、明子が死んでもお前には連絡が出来ない。佐伯に抱かれる方がお前には大事なんだ」
「抱かれてなんかいません」
明子の名前が効いたのでしょうか、妻は涙ぐみます。
「貴方、昨日はどうして大阪へ?」
「解りきった事だ、お前たちが乳繰り合っているところを見たくってな」
「そんな事はしていません」
その時、家の電話が鳴ります。
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