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逆転
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そんな生活でしたので、私も出入り業者の女性社員と飲みに行ったりして楽しんでいました。

深い関係では有りませんが、これからの人生を共に過してみたいと思う女性です。

離婚歴はありますが、子供は居ない30歳をとうに過ぎた人です。年よりも若く見え、可愛らしく、何せ性格が明るい。一緒に居て気持ちの暖かくなる女性です。

妻と別れた後は、この人と真剣に付き合いたいと思うのです。

そんな感情が、吹き飛んでしまう程の感情が湧き起ろうとは、全く思ってもいなかった事でした。


気持ちを落ち着かせるために、目に入った喫茶店に入りました。

あれこれ考えていると、気持ちも大分落ち着いて、冷静になる事が出来ました。


私の出した結論はこうです。

男である以上、幾ら予想はしていたとは言え、妻の浮気の現場を目の当たりにすれば、それなりにショックを受けるのは当り前。

確かに妻には物足りない夫であったかも知れないが、私は独身時代とは違い、何一つ家庭に後ろ暗い事をしなかった。

それなのに、私を甘く見て裏切り行為をこんなに長く働いていた妻への怒り。

当然、共犯者への怒りもあるのです。


結局、私は内面が良すぎたのです。

会社では それなりのポジションで充分に厳しい檄も飛ばします。

そんな私を甘く見て馬鹿にした妻達に、プライドを傷つけられた事への怒りが納まらないのでしょう。

ただ離婚するだけでは済まさない。

私が負った傷以上のものを相手にも味あわさなければ納得出来ません。

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帰宅すると、昨日の強気な私の態度が気になったのか妻が先に帰っていました。

妻が激しい言葉を口にした次の日に限って、帰宅が早いのは、相手の男の入れ知恵なのかも知れません。
前日の私との出来事を、不倫相手と どんな顔で話し合っているのでしょう?

そうだとすると、私に不倫が知れるのを恐れているのでしょうか?

と言う事は、相手も家庭を壊す気持ちはないのだと推測出来ます。


妻は それを承知で付き合っているのだとしたら、また同じ考えなのでしょうか。

ただ、どんなシュチュエーションで、前日の私との出来事を話し合っているのでしょう。

ベッドの上でなのか?まあ、勝手にしてくれと言うしか思い浮かびません。

「お疲れ様でした。今日は残業しないで早く帰って来ちゃった。ねえ貴方。昨日言い過ぎたわ。ごめんなさい」

妻は素直に謝罪して来ます。

いつもは、この妻のペースに乗せられてしまう私ですが、今日は、そうは行きません。

しかし、昨日 別れてもいいような口振りだったのに、何で一夜でこんな事を言い出すのか。全く面倒くさい。


「幾ら夫婦でも、昨日のあの場では言うべきじゃなかったな。お前は感情に任せて軽く口をついたのかも知れないが、受け取る俺はそうではなかったよ」


内心、私は困っています。

昨日の続きの話しなら、なんぼか気楽なのに。

そんな私の気持ちとは裏腹に、妻は神妙な表情で俯き加減に答えます。

「本当にごめんなさい。私も仕事で疲れていたものだから、つい感情的になってしまったわ。勿論別れるつもりなんかないの。私にとって貴方は仕事より大切な人だもの。反省しています」

何が仕事で疲れていただ。男との戯れで疲れたのだろう。この神妙な顔も、裏では舌を出しているに違いない。


結婚後、自分の性格の甘さで妻に舐められて来た。

例え、浮気をしても、この馬鹿亭主なら気付かないと高をくくっていただろう。

確かに私は事なかれ主義の一面もある。しかし、ここ一番では やる事はやる男でもあると自負している。だから会社でも今の地位に居るのだ。


「仕事を持っている以上、疲れもするだろう。

それだけ責任のある仕事を任されているのは、俺にとっても嬉しいよ。

だけど、俺の収入で何とか食っては行ける。子供達の学費だって、大変ながらも どうにかなるはずだ。贅沢は出来ないが暮らして行けるだろう?違うか?

それが、お前の仕事で家庭がおかしくなって行くのは話が違うと思わないか?

ところで、そんなに疲れる仕事ってどんな仕事だ?」


この時、妻の表情が硬くなったのを見逃しません。

私は、会社での面接試験にも参加しています。人の表情を見るのは、ある意味プロなのです。


「・・・どんな仕事って・・・・・」


「お前は会社の事を話したがらない。俺も本当に疲れた時はそうだよ。だけど、愚痴の一つも言いたい時もある。

だって、俺の事を本当に理解してしてくれているのは家族だろう?だから愚痴も出るんだよ。

お前は それすらない。お前には家族以上に理解してくれる人間がいるのか?

だから仕事の愚痴の一つも漏らさないのか?その人が、全て聞いてくれるのか?」


この言葉に、妻の表情が ますます硬くなって行きます。半信半疑ながらも、浮気している事がばれたのではと思っているのでしょうか?


「そっ、そんな事はないわ。・・・ただ仕事で疲れて帰って来る貴方に、私の愚痴を聞かせるのが申し訳無なくって」

物は言いようです。いつもなら、ここで『そうか、分かった』と引き下がるところです。

だけど今日は違うぞ。いや、待てよ。ちょっとからかってやるか。


「そうか、分かった。気を使ってくれていたんだな」

妻の表情に明るさが戻ります。馬鹿め。

「そうなの。私は私で気を使っているのよ。そりゃあ愚痴を溢したい事だってあるわ。だけど、そんな事してたら貴方に仕事を辞めろって言われかねないし」
「久し振りに話してみろよ。今日は幾らでも聞いてやる。

アドバイスできる事が有るかないかは分からないが、これでも俺も管理職の端くれだ。参考になる事があるかも知れないぞ。

俺から辞めろなんて言わない。お前が どんな責任のある仕事を任されて、どんなプレッシャーに耐えているのかが知りたい」

私は底意地が悪いとは思っていません。しかし、その日は妻をタップリと意地悪く いたぶりたくなりました。


妻は言葉に詰まります。当然でしょう。そんな責任を持たされた仕事等していないのでしょうから。

きっと妻の頭の中は、どんな言い訳をするかでパニックになっているのではないでしょうか?

生半可な答えなら、私の突っ込みがある位分かっているはずです。


「・・・・どんな仕事って・・・色々有って一口では言えないわ。確かに貴方と関係した仕事だけど、私の居る会社は大きくないから雑用も含めて大変なの」


「ふ〜〜ん。人数の少ない会社は大変だよな。それは疲れるな。

あんな時間迄、責任のある仕事を任されているのに雑用をさせられたら それは疲れる。

帰ってから直ぐにシャワーを浴びないといられない程汗をかくのも これで分かった。

話してくれると色々と不思議に思っていた事が理解出来た。

なあ雅子。たまには夫婦の会話も必要だな。

正直に白状するとな、俺はお前が浮気しているんじゃないかと少しだけ疑っていたんだよ」


妻の顔が その瞬間険しくなりました。人間は本心を突かれると怒り始めるものです。


「貴方、私をそんな目で見ていたの。

確かに仕事はしたかったわ。専業主婦は社会から遠ざかるのよ。

近所の奥さん達だって、話しと言えば子供のことばかり。嫌になるわ。

でも、少しでも家計の足しになれば、貴方にいい服だって買ってあげれるし、子供達にだって・・・・・そんな事を思われてたなんて・・・・私悔しいわ。

私、貴方を信頼出来なくなっちゃう・・・・」


終いの方は涙声にさえなっています。役者です。私の思っていた以上の役者です。

妻は何時から こんな事が出来る女になったのでしょう。私に言い寄って来た、あの若い雅子が もうこんなに役者だったのかも知れません。

内心自分の浮気が発覚したかもと思っていたのかも知れませんが、今はその恐怖から開放されているのでしょう。

女は本当にしたたかな生き物なのでしょうか。私は女の本性が今でも分かりません。


「それは悪い事をした。申し訳ない。

本当は反省してないよ」

私も腹の中で舌を出しました。


「・・・・分かってくれて・・・えっ?何ですって?」

妻が一瞬呆気に取られた表情を見せました。


「うん。反省してない。俺は今の生活に嫌気がさした。仕事を取るか家庭を取るかどっちかにしろ。二つに一つだ。それ以上の選択技はない」


私は、今の男と子供を含めた私達の生活のどちらを取るのだと聞いたのです。

その真意が妻に伝わったかは分かりませんが。切り札はまだ使いません。

まあ、私的には妻の選択は一つしかないのです。

家庭を選んだとしても この家に妻の居場所等ないのです。

気分は良く有りませんが、男と今の仕事を選んだ方が幸せなのかも知れません。しかし、男が誠実な人間ならと言う条件が付きますが。

私は、相手の人間性を この時は何も分かっていません。そんな事はどうでもいい事で、今はじっくりと御話しさせて頂きましょうか。

女房の尻に敷かれていた人生を、ここらで逆転と行きましょう。


「どっちかにしろと言われても・・・・・私には今の仕事も大切だし・・・・」

妻は言葉を詰まらせています。


>>次のページへ続く
 
 


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