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本性
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私は犯されてなんかいない、無理矢理されてなんかいない、
私も気持ち良くなりたくて進んでしているんだから、惨めじゃ無いと思う事にしてしまったんです。
・・・それが今見たビデオです。」
『百合子は完全な被害者じゃないか。それなのに俺は何て事を・・・・。』
「どうして早くに話してくれなかったんだ。」
「・・あなたを裏切った事に変わりは有りません。あなた以外の人に抱かれ、最初は、嫌でも色々されている内に感じてしまい、何回も何回もイカされて、失神までして・・・・私、淫乱なんです。」
「百合子・・・もういい・・何も言うな。」
私は、涙を流しながら妻を抱き締め、妻も私にしっかりと抱き付いて泣いていました。
私達は久し振りに2人でベッドに入ると、
「あなた、私は淫乱なんです。」
「もういい。何も言うな。」
「違うんです。私の事を全て知って貰いたくて・・・・。」
「どういう事だ。」
「私は以前から、抱いて欲しい時も あなたに言えずに1人で・・・。それに、あなたに色んなエッチな事もして欲しかったけれど言えずにいました。」
「だって、俺がしようとすると嫌がったじゃないか。」
「本当はして欲しかった。でも、あなたは淫乱な女は嫌いだと言っていたので、嫌われると思って・・・・。」
「・・・・違うんだ。俺が淫乱な女は嫌いだと言っていたのは、百合子が恥じらいを持った女だったから、百合子が好きだと言う意味で・・。本当は俺の前だけでは、もっと淫らになって欲しかった。」
今迄私達は、セックスに付いて真剣に話し合った事が無かったので、妻は、私に嫌われ無い様に自分の欲求を隠し、私は、妻に嫌われない様に、妻が嫌がるとそれ以上しませんでした。
御互い、相手に嫌われない様に自分を隠していたのです。
「百合子。今から何でも話せる夫婦になろうな。
・・・・悪いけど流石に今は、セックスする気にならないが、気持ちに整理が付いたら沢山してやるからな。
・・・ところで、1人でしていたって言ったが、どうやってしていたんだ。」
「あなたが隠してるエッチなビデオを見ながら・・・指で・・・。他には、あなたがゴルフで貰って来たローターを使ったりして・・・・。」
「おい、あれは捨てたと言っていたじゃないか。・・・やっぱり百合子は淫乱だ。」
「イヤー。言わないでー。」
この夜は裸で抱き合って眠りました。
--------------------
その後の私は、以前より やさしく妻に接し、夜は必ず裸で抱き合って眠りましたが、セックスはしませんでした。
セックスをしなかったと言うより、出来なかったんです。
愛おしさから妻と裸で抱き合って寝ていて、それなりの満足感は有るのですが、妻の裸を見ても、妻に触れていても、私の物は軟らかいままで変化しません。
妻を、完全に許していても、頭の片隅に残っている、妻と加藤の光景を消す事が出来ないのです。
妻には、申し訳なくて身体の事を言えず、今は、抱き合っているだけで充分だと言っていましたが、
1ヶ月ほど経った頃、流石にこれでは駄目だと思い、結婚以来始めてラブホテルに行って、指や口で妻を歓ばせましたが私に変化は有りません。
妻がその事に気付いたので、
「百合子、ごめん。どうも俺は疲れている様だ。」
「ごめんなさい。私の事が原因で・・・。」
「違う、違う、今まで色んな事が有ったから、ただ疲れているだけだ。」
妻は、責任を感じて手や口で一生懸命してくれましたが、興奮はしても、やはり変化は有りません。
その後、家でも何回か試しましたが結果は同じでした。
やがて2人の間では、セックスと言う言葉は禁句になり、私は もう自分の物で妻を歓ばす事は出来ないと、男の自信も無くし、原因を作った加藤への嫌がらせ電話も、日増しに増えて行きました。
--------------------
ところが、春も近い或る日、加藤に電話すると電源が切られていて繋がりません。
私は、てっきり、電話されるのが嫌で電源を切られたと思いましたが、その夜妻から、加藤が入院したと聞かされました。
病名は、進行性の膵臓癌で、噂だと発見が遅れたので長くて2ヶ月だそうです。
加藤がやつれて見えたのは病気のせいも有ったのでしょう。
癌で騙し、本当に癌になってしまった加藤を可哀想だとは思えず、罰が当たったと思いました。
1ヶ月ほど経ち、身体の事で怨みを増していた上にイライラのはけ口を無くしていた私は、とんでもない復讐を思い付いてしまいました。
加藤の病状は かなり悪いので個室に入っていて、奥さんが付き添いをしているらしいと聞いた私は、心配する妻を残して1人面会に行きました。
ノックをすると女の声で返事が有り、中に入ると、
「どちら様ですか。」
「宮本です。宮本百合子の夫です。」
加藤は、力無くこちらを向くと、無言で私を見詰めています。
「はい、聞いております。奥様には主人が大変お世話になっております。」
にっこりと微笑みながら、深々とお辞儀をした奥さんは、やさしそうな目をした綺麗な方で、大きな胸が目を引きました。
『こんな素敵な奥さんが有りながら・・・・加藤の奴・・・。』
奥さんの笑顔に怯みそうになりましたが、胸のポケットから誓約書を出すと奥さんに渡し、
「いいえ、お世話になっているのは妻の方です。人には言えないお世話までして頂きまして。」
誓約書を読んでいる、奥さんの顔から笑顔が消えました。
「今月の振込みが無かったので来てみましたが、死んで行く者からは頂けませんので、もうその紙切れは処分しておいて下さい。」
それだけ言い残して病院を後にし、家に着くと直ぐにこの事を告げましたが、復讐を喜んでくれると思っていた妻は、寂しそうな顔をして無言で俯きました。
--------------------
それから2週間程して、妻から加藤が死んだと聞かされ、妻が会社の同僚と御葬式に行った日の夜、大事な話が有ると寝室に呼ばれ。
「あなた、あれから奥さんは、お医者様に呼ばれた時しか病院に行かなくなり、死に目にも会えなかったそうです。」
「・・・そうか。」
「みんなは、奥さんの事を薄情な女だと言っていました。」
流石に私も後味が悪く、言葉が出ません。
「あなたは昔、喧嘩ばかりしていたけど絶対に弱い者には手を出しませんでした。
それどころか、弱い人を庇って喧嘩になった事も有りました。
私はそんなあなたが大好きでした。
・・・あなたは相手がどんなに悪くても、死んで行く人にこんな事が出来る人では絶対に無かった・・・・。」
「・・・いや・・これは。」
「違うんです。あなたを責めているんじゃ無いんです。
・・そうしてしまったのは全て私です。
・・・身体の事もそうです。・・・・全て私が・・・・。」
妻の目からは大粒の涙が、ポロポロとこぼれています。
「・・・百合子。」
「離婚して下さい。私と夫婦でいると、あなたは立ち直れない。一生苦しみます。そんな、あなたを見ていられません。・・・・お願いします。」
「・・・・俺の事を嫌いになったのか。」
「好きです。大好きだから・・・・・。」
この時、逆に私が妻を苦しめているのだと思いました。
「わかった。・・別れよう。その代わり、どちらかに好きな人が出来る迄一緒に暮らしてくれ。」
「いいんですか。」
「いいも何も、俺は百合子と一緒に居たい。明日離婚届を貰って来るから、それを出せば2人共自由だ。」
離婚届は、書きましたが結局出す事が出来ず、妻には出したと嘘を付いて隠しておきました。
--------------------
私達は、抱き合う事はしませんでしたが、同じベッドで寝て、今迄と変わらぬ生活を送っていました。
加藤が死んで4ヶ月程経った金曜日の昼休みに、私の携帯が鳴り、見ると加藤真一と表示されています。
「はい、宮本です。」
「突然のお電話で申し訳御座いません。私、加藤の妻で清美と申します。」
「あ・・この度はどうも・・。」
>>次のページへ続く
「いいえ、お世話になっているのは妻の方です。人には言えないお世話までして頂きまして。」
誓約書を読んでいる、奥さんの顔から笑顔が消えました。
「今月の振込みが無かったので来てみましたが、死んで行く者からは頂けませんので、もうその紙切れは処分しておいて下さい。」
それだけ言い残して病院を後にし、家に着くと直ぐにこの事を告げましたが、復讐を喜んでくれると思っていた妻は、寂しそうな顔をして無言で俯きました。
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それから2週間程して、妻から加藤が死んだと聞かされ、妻が会社の同僚と御葬式に行った日の夜、大事な話が有ると寝室に呼ばれ。
「あなた、あれから奥さんは、お医者様に呼ばれた時しか病院に行かなくなり、死に目にも会えなかったそうです。」
「・・・そうか。」
「みんなは、奥さんの事を薄情な女だと言っていました。」
流石に私も後味が悪く、言葉が出ません。
「あなたは昔、喧嘩ばかりしていたけど絶対に弱い者には手を出しませんでした。
それどころか、弱い人を庇って喧嘩になった事も有りました。
私はそんなあなたが大好きでした。
・・・あなたは相手がどんなに悪くても、死んで行く人にこんな事が出来る人では絶対に無かった・・・・。」
「・・・いや・・これは。」
「違うんです。あなたを責めているんじゃ無いんです。
・・そうしてしまったのは全て私です。
・・・身体の事もそうです。・・・・全て私が・・・・。」
妻の目からは大粒の涙が、ポロポロとこぼれています。
「・・・百合子。」
「離婚して下さい。私と夫婦でいると、あなたは立ち直れない。一生苦しみます。そんな、あなたを見ていられません。・・・・お願いします。」
「・・・・俺の事を嫌いになったのか。」
「好きです。大好きだから・・・・・。」
この時、逆に私が妻を苦しめているのだと思いました。
「わかった。・・別れよう。その代わり、どちらかに好きな人が出来る迄一緒に暮らしてくれ。」
「いいんですか。」
「いいも何も、俺は百合子と一緒に居たい。明日離婚届を貰って来るから、それを出せば2人共自由だ。」
離婚届は、書きましたが結局出す事が出来ず、妻には出したと嘘を付いて隠しておきました。
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私達は、抱き合う事はしませんでしたが、同じベッドで寝て、今迄と変わらぬ生活を送っていました。
加藤が死んで4ヶ月程経った金曜日の昼休みに、私の携帯が鳴り、見ると加藤真一と表示されています。
「はい、宮本です。」
「突然のお電話で申し訳御座いません。私、加藤の妻で清美と申します。」
「あ・・この度はどうも・・。」
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