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突然の海外赴任
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それと、単純に子供が欲しかったのも有りましたが、私は一人になるのが怖かったから、どうしてもあなたの子供が欲しかった。
あなたの子供を生んで、あなたとの絆を もっと強くしたかった。
そうなれば お義母さんとも、血の繋がりは無くても子供を通して、もっと本当の親子の様になれると思った。」
「それなら尚更、どうして稲垣と関係を持つ事になったのかが理解出来ない。
本当に俺との絆を強くしたかったのなら、稲垣なんかに抱かれないだろ?
言っている事と、やった事は逆の事だろ?」
銀行は、昼の間も営業している為に交代で昼食をとるそうですが、私と言い争った翌日、偶然稲垣と昼休みが重なり、稲垣を見つけると隣に座って、子供が出来ない事で私との仲が、最近ギクシャクしていると話しました。
「今仕事の事で頭がいっぱいだから、一人にしてもらえないか?」
妻を女性として意識していた稲垣は、周囲の目が気になったのか、素っ気無く答えると席を立ってしまい、残された妻は落胆を隠せませんでした。
稲垣の態度で より落ち込んでしまい、今夜もまた何かで私と言い争いになってしまわないか心配になり、重い気持ちで銀行を出た時に 稲垣が追い掛けて来て、今日はもう少しで帰れそうなので、喫茶店で待っていて欲しいと言われたそうです。
一度は素っ気無い態度をとられているだけに、やはり気に掛けてくれていたという喜びは大きく、私に電話をしてから喫茶店で待っていると、入って来た稲垣は座りもせずにレシートを掴んで言いました。
「ここでは お客さんに会うかも知れないので、要らぬ誤解を受けても嫌だから、私のマンションへ行って話そう。」
妻は、稲垣の奥さんにも聞いて貰えると思い、稲垣に案内されて当時住んでいたマンションに行くとリビングに通され、ソファーに腰を下ろした時、初めて奥さんは実家に行っていて留守だと聞かされました。
疚しい関係では、無いにしても 奥さんに悪い気がして、一度は帰ろうと思ったのですが、じっと見詰める稲垣の目と目が合った時に、この人なら助けてくれると思ってしまい、
不妊で悩んでいる事を話し、どの様にしたら夫婦の仲が上手く行くのか相談すると、何も言わずに ただ妻を見詰めていた稲垣が話し出した内容は、信じ難いものでした。
「このままでは、いずれご主人との仲が取り返しのつかないほど壊れてしまう。全ての原因は子供が出来ないという事だけだ。それならば、子供が出切る様にすればいい。」
「それが出来ないから悩んでいます。お医者さんにも行きました。でも駄目なのです。」
「ご主人も行ったのか?医者は何と言っていた?」
「主人はいずれ行くと言っていて、まだ行ってくれませんが、私はホルモンのバランスが崩れていると言われたので、おそらく原因は私に有ると思います。」
「婦人科の医者をしている友人がいるのだが、智子さんの話を聞きながら彼が言っていた事を思い出していた。
彼が言うには、不妊の中にも色々有って、病的な物には医学的な治療が必要だが、
精神的なものも多く、その中には『慣れ』と言うのも結構有るそうだ。」
「慣れ?・・ですか?」
「ああ。動物には発情期が有って、その時に交尾をするのだが、子孫を残す目的だけで交尾をする彼らは、余程の事が無い限り、ほとんどが妊娠するそうだ。
そうでないと種族が絶えてしまう。
ところが人間には、その様な発情期は無くて年中発情している。言い換えれば年中発情期だとも言える。いつでも妊娠可能だ。
しかし、やはり人間も動物の中の一つにしか過ぎないので、体質によっては、本当の発情期にセックスしないと、ただの排卵日にしても妊娠し難い人が少なく無いらしい。」
「いつが発情期なのですか?」
「言い方が悪かったが、残念ながら どの季節が発情期だというものは無い。
身体が発情期の様な状態になっている時。つまり、身体が発情している時が発情期だ。」
「では、いつ発情しているのですか?」
「新婚時代は、身体も昂っていて、多くの場合、その時期は発情期に当たるらしいのだが、その後は人それぞれなので、いつが発情期なのか、いつ発情しているのかは分からないらしい。
ただ問題なのが、その後、発情期が来なくなってしまう場合が有る。身体が発情しなくなってしまう場合が有る。
興奮や快感は普通に有るので、勿論 本人は気付いていないが、夫婦間でのセックスに慣れてしまい、身体が発情期にならないケースが結構有ると言っていた。
それが彼の言う『慣れ』による不妊症だそうだ。そういう人の特徴は、1番にホルモンのバランスを崩してしまっている場合が多いと言っていた。
2番目が、絶えずイライラしてしまう。本人は他の理由からイライラしていると思いがちだが、本能的に子孫を残そうとしているのに、身体がその状態にならない。
身体が発情しない事のズレから来るイライラらしい。
言い辛いのだが、今の智子さんは『慣れ』から来る不妊そのものだと思う。」
こんないい加減な話に、切羽詰っていた妻は真剣に耳を傾けました。
「どうすれば良いのですか?どうすれば正常になるのですか?」
「残念ながら発情を促す薬などは無いらしい。気持ちを興奮させる薬は有っても、気持ちの興奮と身体の発情とは全く異なるものらしい。」
妻は、稲垣の話にのめり込み、ずっと身を乗り出して聞き入っていましたが、治療法や薬も無いと聞き、気落ちして俯いてしまうと、その時を待っていたかの様に。
「ただ、方法が無い訳では無い。
他の牡と交尾をする。そうすれば、それから暫らくは発情期となる。
つまり、ご主人以外の男とセックスをすれば、その刺激で発情し、その後2、3ヶ月は身体が発情期に入る事が多いらしい。」
「でも、その様な事は聞いた事が有りません。」
一瞬、期待して顔を上げた妻でしたが、内容が内容だけにふて腐れた様にそう呟くと、
「私もそうだった。しかし彼が言うには、この様な事を発表してしまえば、不妊で悩んでいる人の浮気が増えてしまって世の中が乱れてしまうし、
仮に ご主人も納得してそうなった場合でも、その時は良くても、後々その事で夫婦仲が悪くなってしまう可能性が高いから発表は出来ないらしい。
自分の患者にも浮気を進める事になってしまうから、とても言えないと言っていた。
世間に発表出来ないのは倫理的な観点からだと思う。」
この話を事実だと思い込ませる為に、稲垣は必死になって話していましたが、妻は疑っているのではなくて、稲垣の話を信じていても、自分には出来ないと思っていたのでしょう。
「そう言われてみればニュースでも時々有るだろ?
男性関係の派手な女性に限って すぐに妊娠してしまい、子供を産んで殺してしまったとか、捨ててしまったとか。
その様な女性は、それこそ絶えず発情期の状態になっていて、妊娠し易いのは事実らしい。」
何か良い方法が有るのかと、最初から興味深く聞き入っていた妻も 稲垣の話が終わると、いくら子供が欲しくても、やはり その様な事は出来ないと思い、
また、その様な事を出切る相手もいないので、期待が大きかっただけに落胆も大きく、溜息をつくと黙って俯いてしまいました。
この様な嘘を咄嗟に考える事が出切るほど 頭の回転が速い稲垣には、妻の気持ちなど手にとる様に分かるのか。
「智子さんに その様な事が出来ないのはよく知っている。
でも、君が みすみす不幸になるのを見るのは忍びない。
思い切って言うが、私が相手をしても良いと思っている。
私もご主人や妻の事を考えれば、とても出来ないのだが、君が幸せになる為なら、どの様な罪でも甘んじて受ける。
私は一生罪悪感で苦しむかも知れないが、君がその分幸せに成ってくれれば、どの様な苦しみも甘んじて受ける。」
ただ妻を抱きたいだけの言葉が、妻には分かりません。潜在意識の中に、稲垣の事を信頼出来る特別な人間だと刻み込まれてしまっている妻には、少し冷静になれば、誰にでも分かる事が分かりませんでした。
妻の話を聞きながら、もう結果の出ている過去の事なのに、そんな嘘に騙されるなと心の中で叫んでいました。
しかし、稲垣を信頼し切っていて、その上 普通の精神状態では無かった妻は、まるでインチキ宗教の教祖に騙されて行く信者の様に、稲垣の言う事を疑いもせず。
「それでは稲垣さんに悪いです。私の為に、その様な事は頼めません。」
「いや、私はずっと君の事を妹の様に、娘の様に思っていた。しかし、思っていただけで、何もしてあげられなかった。君が苦しんでいた時も、話を聞いてやるだけで何も助けてはあげられなかった。」
「そんな事は無いです。沢山助けて頂きました。」
「そう言って貰えると嬉しいが、そうでは無い。今まで助けて上げられなかった分、今回は何とか力になりたい。
私の様な男が相手でも良ければ、私はどの様な罰でも受ける。」
この時点では、妻は まだ少し躊躇していましたが、それは私への罪悪感からではなくて、自分の事で稲垣にも罪を負わせてしまうという、稲垣に対しての思いからでした。
妻の頭の中には、私との子供さえ出来れば、全ての問題は解決するという考え以外無く、喜ぶ私や私の母、私の父に囲まれて、赤ちゃんを抱いている自分の姿が、既に見えていたのかも知れません。
妻の頬を伝う一筋の涙を見た稲垣は、もう少しで妻は落ちると思った事でしょう。
実際、次の稲垣の話で、妻は私との破局の道を進んで行くのですから。
「今思ったのだが、こう考えたらどうだろう。
これはセックス等では無い、ただの治療だと。
実際、智子さんとセックスしたいと思った事は無い。
これは君に魅力が無いとかその様な問題では無くて、私にとっては その様な存在では無いという事だ。
君も そうだと思うが、セックスの対照では無くて、それとは違う大切な存在だ。
決して楽しんでセックスするのでは無いから、ご主人や妻を裏切る訳では無い。
楽しむどころか今そう考えただけでも胸が苦しい。その様な気持ちでするのだから、決して裏切りなんかでは無い。
これは治療だ。そう考える様にしないか?」
稲垣を信用していて、その上ノイローゼ気味だった妻は、結局、何の疑いもせずに稲垣の提案に乗ってしまいました。
稲垣の欲望を満たす為の行為なのに、逆にお礼を言いながら。
稲垣は妻の話を聞いている内に、普通の精神状態で無い事にも気付き、妻を抱く為にこの様な嘘で妻を騙したのでしょう。
最初、本当に この様な嘘に妻は騙されたのか?この話は妻の作り話ではないかと思いましたが、話の内容は信じ難いものでも、妻の話している様子は嘘だとは思えないものでした。
妻の事を、私よりは遥かにしっかり者だと思っていて、家計は勿論の事、家の事は ほとんど妻に任せ、安心して仕事に打ち込めました。
その妻がこんな事を信じ、騙されたのは、やはり信じ難い事でしたが、妻はそこまで精神的に弱っていたと言う事なのでしょうか?
それとも、私の言うしっかり者と、稲垣のような人間を信じてしまう事は、また別の事なのでしょうか?
よく考えれば、世間では多々有ることです。病気を治す為に、高額なお布施を払う。悩みを解決したいが為に、高額な壷を買う。
そんなニュースを聞く度に、そんな奴が本当にいるのかと思いましたが、本当に切羽詰った悩みが有る時に、実際、騙される人間は少なくないのでしょう。
>>次のページへ続く
何か良い方法が有るのかと、最初から興味深く聞き入っていた妻も 稲垣の話が終わると、いくら子供が欲しくても、やはり その様な事は出来ないと思い、
また、その様な事を出切る相手もいないので、期待が大きかっただけに落胆も大きく、溜息をつくと黙って俯いてしまいました。
この様な嘘を咄嗟に考える事が出切るほど 頭の回転が速い稲垣には、妻の気持ちなど手にとる様に分かるのか。
「智子さんに その様な事が出来ないのはよく知っている。
でも、君が みすみす不幸になるのを見るのは忍びない。
思い切って言うが、私が相手をしても良いと思っている。
私もご主人や妻の事を考えれば、とても出来ないのだが、君が幸せになる為なら、どの様な罪でも甘んじて受ける。
私は一生罪悪感で苦しむかも知れないが、君がその分幸せに成ってくれれば、どの様な苦しみも甘んじて受ける。」
ただ妻を抱きたいだけの言葉が、妻には分かりません。潜在意識の中に、稲垣の事を信頼出来る特別な人間だと刻み込まれてしまっている妻には、少し冷静になれば、誰にでも分かる事が分かりませんでした。
妻の話を聞きながら、もう結果の出ている過去の事なのに、そんな嘘に騙されるなと心の中で叫んでいました。
しかし、稲垣を信頼し切っていて、その上 普通の精神状態では無かった妻は、まるでインチキ宗教の教祖に騙されて行く信者の様に、稲垣の言う事を疑いもせず。
「それでは稲垣さんに悪いです。私の為に、その様な事は頼めません。」
「いや、私はずっと君の事を妹の様に、娘の様に思っていた。しかし、思っていただけで、何もしてあげられなかった。君が苦しんでいた時も、話を聞いてやるだけで何も助けてはあげられなかった。」
「そんな事は無いです。沢山助けて頂きました。」
「そう言って貰えると嬉しいが、そうでは無い。今まで助けて上げられなかった分、今回は何とか力になりたい。
私の様な男が相手でも良ければ、私はどの様な罰でも受ける。」
この時点では、妻は まだ少し躊躇していましたが、それは私への罪悪感からではなくて、自分の事で稲垣にも罪を負わせてしまうという、稲垣に対しての思いからでした。
妻の頭の中には、私との子供さえ出来れば、全ての問題は解決するという考え以外無く、喜ぶ私や私の母、私の父に囲まれて、赤ちゃんを抱いている自分の姿が、既に見えていたのかも知れません。
妻の頬を伝う一筋の涙を見た稲垣は、もう少しで妻は落ちると思った事でしょう。
実際、次の稲垣の話で、妻は私との破局の道を進んで行くのですから。
「今思ったのだが、こう考えたらどうだろう。
これはセックス等では無い、ただの治療だと。
実際、智子さんとセックスしたいと思った事は無い。
これは君に魅力が無いとかその様な問題では無くて、私にとっては その様な存在では無いという事だ。
君も そうだと思うが、セックスの対照では無くて、それとは違う大切な存在だ。
決して楽しんでセックスするのでは無いから、ご主人や妻を裏切る訳では無い。
楽しむどころか今そう考えただけでも胸が苦しい。その様な気持ちでするのだから、決して裏切りなんかでは無い。
これは治療だ。そう考える様にしないか?」
稲垣を信用していて、その上ノイローゼ気味だった妻は、結局、何の疑いもせずに稲垣の提案に乗ってしまいました。
稲垣の欲望を満たす為の行為なのに、逆にお礼を言いながら。
稲垣は妻の話を聞いている内に、普通の精神状態で無い事にも気付き、妻を抱く為にこの様な嘘で妻を騙したのでしょう。
最初、本当に この様な嘘に妻は騙されたのか?この話は妻の作り話ではないかと思いましたが、話の内容は信じ難いものでも、妻の話している様子は嘘だとは思えないものでした。
妻の事を、私よりは遥かにしっかり者だと思っていて、家計は勿論の事、家の事は ほとんど妻に任せ、安心して仕事に打ち込めました。
その妻がこんな事を信じ、騙されたのは、やはり信じ難い事でしたが、妻はそこまで精神的に弱っていたと言う事なのでしょうか?
それとも、私の言うしっかり者と、稲垣のような人間を信じてしまう事は、また別の事なのでしょうか?
よく考えれば、世間では多々有ることです。病気を治す為に、高額なお布施を払う。悩みを解決したいが為に、高額な壷を買う。
そんなニュースを聞く度に、そんな奴が本当にいるのかと思いましたが、本当に切羽詰った悩みが有る時に、実際、騙される人間は少なくないのでしょう。
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